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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第18章 包囲網編
437/500

437杯目「死の職場」

 数日後、バリスタランド夜空に七色の花火が音を立てながら咲いた。


 閉園時間を迎えた合図だ。バリスタランド内にいる人が一転してメインゲートに列を作り始め、清掃員は入れ替わるように入園を果たす。雁来木染は黒いサングラスをかけながら白い服装に身を包む。


 Gパッドがズレないように着こなしていると、思っていたよりも着替えに時間がかかってしまった。


 雁来木染は名目上女性であるため、本来であれば女性用更衣室に入るが、特別に個室で着替えてから同僚を迎え入れることとなった。一緒に働く連中は黙々と着替えている。


 岡野(おかの)さん、井岡(いおか)さんが更衣室から外に出る。


 2人共20代くらいだろうか。岡野さんは茶髪で、長い髪でおっとりしている女性なのに対し、井岡さんは金髪でトゲトゲしている髪型の女性だ。性格も尖っているのがすぐに分かった。若手も何割かいる。清掃員の大半は氷河期世代で正規雇用を逃し、転職を繰り返している最中、バリスタランドの清掃員の仕事に辿り着いたことが見て取れる奴ばかりだ。特に指輪もはめていないし、今も独身であることが推測できる。2人の性格はどこかピリピリしていて落ち着きがない。絵に描いたような単細胞だ。


 それこそ、まともな企業のまともな人事であれば、真っ先に採用を見送る類の……。


 一度に集まる清掃員自体はそこまで多くなく、エリアと時間帯でグループ分けされ、他のエリアにいる清掃員と出会う機会はほぼないらしい。僕は希望通り、南東エリア閉園後時間に働くこととなった。璃子が雁来木染としての僕を紹介する形式で雇われることとなり、面接なしにした上でエリアと時間帯を指定する条件で入ることができた。譲歩してくれたのは人を選んでいる余裕がないためである。


「ちょっとー、特別待遇だからって、着替えくらい早く済ませないと駄目だよー」

「あー、はいはい。こういう服、全然慣れてなくてねー」

「あのねー、バイトとはいえ仕事は仕事なんだから、時間厳守はしなきゃ駄目。それと言葉使いもちゃんとしてもらわないと困るんだけど」

「非接客の仕事だって聞いたからこの仕事にしたんだけどなー」

「はぁ~、ホントに社会経験ないんだね。そんなんじゃ将来、正規雇用してもらえないよ」

「正規雇用ってことは、出世できるシステムでもあるの?」

「はあ? 面接の時に言われなかったの? バリスタランドには昇格制度があるの」


 そう言われてもなー、面接を受けずにフリーパスで受かったからな。


 労働者としての社会経験はない。僕もあんまり教師のこと言えねえかもな。


「昇格制度?」

「うちらみたいな前科持ちにはありがたい制度や。あんたもそれが目的とちゃうんか?」


 軽口を叩くことに慣れてそうなぶっきらぼうな口調で、井岡さんが話しかけてくる。


 一見ギャルっぽいけど、至って自然体ってことは、ずっとこのスタンスでやってきたんだろう。


「別に。私は遊ぶお金欲しさで来てるだけだから」

「何やその言い方、ホンマムカつく新人やな。あんたはバイトのと思って来とるんやろうけど、うちらは生きていくために必死なんや。一度ここでの礼儀を教えてやった方がええかもな」

「心配しなくても、私は今月限りで辞めるから、礼儀なんて教えてもらわなくて結構。掃除の仕方も知ってるから、教える必要もないよ」

「生意気なやっちゃな! 冷やかしやったら、とっとと辞めた方が身のためやぞ!」


 威嚇するように食い縛った歯を見せながら井岡さんが言った。前科持ちを名乗るだけのことはある。


「他人の働く動機なんてどうでもいいじゃん。それより仕事でしょ。どこをやればいいの?」

「……今日はカフェ大和の掃除。そっちテキトーにやっといて」


 呆れ果てたのか、将又面倒になったのか、岡野さんも井岡さんも、これ以上は話さなかった。


 いきなり短期であることを告げたのはまずかっただろうか。だがこれで距離を置いてくれる。冷静かつ淡々と接していれば大半の人間はいなすことができる。璃子から教わった手法だ。


 予め作業着についている合鍵を使い、バックヤードから掃除をし始めた。毎日掃除しているはずなのに表面しか清掃されておらず、隅から隅まで行き届いていないばかりか、奥の方は埃が目立つくらいに散らばっている。特に客が来にくい場所ほどいい加減な清掃が目立つ。岡野さんが言っていたテキトーはうまくやるという意味じゃない。文字通りテキトーに済ませるという意味だ。他の清掃員は必要最低限の労働しかしていないことくらい部屋を見れば分かる。中山道葉月もそうだ。朝早く来た時、清掃が隅々まで行き届いていなかった。結局、神崎や成美が掃除をする破目になっていたわけがよく分かった。岡野さんも井岡さんも他の清掃員も文字通り怠惰な労働だ。間に合わないわけじゃないが、動きは亀のように遅く、雑巾やモップを持つ時に力が入っていない。


 バイトはプロの仕事じゃない。時間内にマニュアル通りにさえ行動していればそれでいい。


 ……だがそれは、あくまでも仕事上の話だ。そんなんじゃ駄目なんだ。自分の人生を動かしたいなら、上司の開いた口が塞がらないくらいの成果を出して、行く先々で認められる経験を積まなければならないのだ。バイトの仕事すら頑張れない奴が、仮に運良く正規雇用を勝ち取ったとしても、その先で躓くことは目に見えている。ここでの仕事はきっちりできなくても怒られることはなく、客から見える位置さえ綺麗にしていればそれでいいと言われるのがオチだ。さっきの言葉をそのまま返してやりたい。


 僕には救えない連中だ。きっと性根から終わっている。


 数時間後――。


 岡野さんと井岡さんが僕の様子を見にやってくる。


 生まれ変わったかのようにカフェの姿が変わり、目にうるさい物置きと化していたバックヤードは引っ越したばかりのモデルルームのように輝き、2人はさっきまでとは全く違う光景に目を奪われた。


 見たか。これを仕事と呼ぶんだぜ。


「えっ……これ全部雁来さんがやったの?」

「そうだけど、何か不足でもある?」

「いや、そんなことはないけど……」

「カフェって、こんなに綺麗な場所だったんだ」

「次の店舗やろっか」

「あー、それがまだ終わってないの」

「じゃあ手伝ってあげるから、さっさと終わらせよっ」

「でも早く終わったって、結局時間が来るまで清掃してないといけないよ。店内が終わったら、今度は時間が来るまで、カフェ周辺の道を掃除するんだけど、外は寒いから、みんな時間ギリギリまで店内清掃してるわけ。だから早くやればやるほど損をするよ」

「仕事はマストジョブとセルフジョブの2つに分類されるの。マストジョブは絶対にやらないといけない仕事、セルフジョブは暇な時、やってもいいしやらなくてもいいやり込み要素のような仕事、もしくは時間と体力に余裕がある時はやってほしいっていう仕事なの。説明を聞く限りだと、外の仕事はセルフジョブみたいだし、外の清掃は昼間の清掃員がやる仕事だから、実質終わりでいいんじゃない?」


 僕がそう言うと、2人はまたしても呆れた顔を見せる。


 というかそうしてもらわないと困る。清掃に夢中で時間を忘れてしまっていた。


 ずっと仕事モードでやっていたら、あっという間に時間が過ぎちまう。


 清掃員は決められたエリアの店舗を順番に掃除し、閉園後時間で前半を終え、後半は開園前時間の清掃員に任せるわけだが、3日毎に店舗を交代し、1週間あれば全店舗を清掃することができるが、8月末までは1週間しかない。それは珈琲屋川崎を探るチャンスが3日しかないことを意味していた。3日で何も見つからなければ諦めるしかない。ペナルティを受け入れることになるし、本丸である葉月グループ本部株20%を渡せば、残りの本部株を力尽くで買収される危険性が一気に上がるのだ。


 コーヒーイベント直前だ。あわよくばコーヒーイベントで負けるリスクを取る前に買収しちまおうって作戦か。乗っ取れば優勝回数勝負で不利になっても勝ちが決まる。念には念を入れるタイプだ。しかも最下位契約まであるし、こっちでも負ければ、合計50%の本部株を渡さないといけないんだぞ。


 ――璃子、一体何を考えてるんだ?


 僕を信頼してくれるのは嬉しいけど、やはり清掃しながら調べ物をするのは困難を極める。


「仕事ができるのは結構だけど、そうやってサボることばっかり考えてたら駄目だよ」

「何言ってんの。むしろサボりまくって自分磨きの時間を増やすことを考えないと、人生ずっとそのままだよ。1日1時間でもいいからさ、何か夢中になれることに没頭するとか、知見を広めたりとか、自分の知らない世界を少しでも広げることをしていかないと、生活と睡眠と仕事だけで1日を過ごしていたら、10年後も20年後も、多分変わってないと思うよ。中年を迎えたら体の老化が始まって、体力が落ちてくる分不利になるし、年取った分を経験とか知識とかで取り返していかないと、その後の人生も不利になるのが目に見えているよ」

「あんたはどうか知らないけど、私たちは生きるので精一杯なの」

「そうやで。さっきもゆうたけど、うちは前科持ちやから、良い条件で働けないし、昼間は別の仕事を掛け持ちしてるんや。貧乏暇なしってね」


 両手の平を上に向け、自虐を披露するように井岡さんが言った。


 岡野さんも井岡さんも暴行と傷害の罪で捕まり、出所してからは職がない状況が続いた。


 知識がないために生活保護を受けられず、生きるための強盗を繰り返した挙句、バリスタランドの仕事の中で常時募集中の清掃員に辿り着いたという。一歩間違えば無敵の人になっていたはずの連中がこんなにうじゃうじゃいることを世間が知ったら……肝が冷えるだろうな。


 社会保障を受けていい状況にもかかわらず、こいつらは健気に働き、昼間の仕事をこなし、疲労困憊のまま、清掃員の仕事をこなしていたのだから、そりゃ手抜きの仕事にもなるわな。僕は昼までのんびり寝ていたし、細部まで注意が行き届いていたのは当たり前のことだ。僕には十分な休養時間があったことに今更ながら気づいた。忙しすぎて考える余裕もないんだ。かつての僕とよく似ている。


「分かったらサボるんじゃないよ。次は珈琲屋川崎だけど、結構広いから早くしてね」

「任せといて。あっ、そうだ。このお店は私がやるから、2人は他のお店に回ってよ」

「ええけど、大丈夫なんか?」

「大丈夫だって、さっきみたいに綺麗にするから」

「ふーん、まあいいけど」


 夜空の月に照らされている珈琲屋川崎は僕1人だけとなった。


 まずはバックヤードのロッカールームと事務室だ。何かを隠すなら、人に見られない場所がいい。


 どの店の事務室にも床下点検口がある。物を隠せそうな場所を隈なく調べるが一向に何も出てこない。ロッカールームのロッカーも全部調べた。鍵の掛かっているロッカーを見つけたが、鍵は抜き取られていて開きそうにない。中に何かあるのは確かだ。基本的にロッカーの鍵はバリスタランドの外に持ち出してはいけないことになっている。つまり鍵の持ち主はバリスタランドの中にいるってことだ。清掃員が仕事以外でこの場所を利用することはない。考えるだけ無駄か。


 他の清掃員たちが戻ってくるまでに清掃を済ませてから証拠を探れる時間は限られているというのに、それでもいつもの癖なのか、仕事に手が抜けない。僕の悪い癖だ。生半可な気持ちで中途半端な仕事をするくらいなら、堂々と生活保護受給を推奨する社会の方がずっと公平である。


 いっそのこと、中途半端な人間が多数を占める職場はロボットやAIに乗っ取ってもらいたい。でも何か変だ。うちの情報がここまで丸裸にされているなんて、見透かされているにしては出来過ぎてる。


 結局、この日は各店舗を清掃しただけで終わった――。


 こいつらの特徴はよく分かった。怠惰な仕事ぶりが全てを物語っている。


 僕は本来の目的を忘れつつあった。同僚に見せつけるように仕事をした。見ていられなかった。ここに来るまではいい加減な仕事をする奴なんて学校にしかいないと思っていた。仕事中の態度ほど人生を反映するものはないし、少なくとも中途半端に生きてきた連中なのはよく分かった。


 3日後、珈琲屋川崎での最後の業務が終わり、この店で調査を行うことが事実上不可能となった。


 ロッカールームに1箇所だけ鍵の掛かったロッカーが相も変わらずあったが、結局中は覗けぬままだ。ピッキングしたいけど、鍵屋以外はピッキングアイテムを持ってはいけないと法律で決まっている。もう諦めるしかなかった。他の店のバックヤードも調べたが、『物的証拠』は何も見つからなかった。オープンキッチンやクローズキッチンも調べたが、安物の食材と調理器具が置かれているだけだ。


 午前2時、慣れない業務と深夜のためか、僕は大きく口を開け、両手を真上に伸ばした。


 岡野さんと井岡さんを含む清掃員たちが集まってくる。


「あんた凄いじゃん。新人なのにあそこまで綺麗にするなんて」

「うんうん、ちょっと生意気だけど、こんなに仕事ができるなんて思わなかったなー」

「私、雁来さんに負けたくなくて、いつも以上に張り切っちゃった」

「それなら私だって、先週まで廊下の掃除サボってたけど、今日は見違えるくらい綺麗にしたよ」

「新人より仕事ができないなんて思われたくないもんね。小柄の女性にしては体力めっちゃあったし」

「こんなに緊張感を持って仕事したの、生まれて初めてだよ」

「俺も初めてだ。雁来さんが思った以上に頑張るから、体力の限界まで働いちまったよ」

「それが仕事だよ」

「「「「「!」」」」」


 清掃員たちが一斉に僕に注目する。


「あんたたちさー、時間から時間までの間、とりあえずの仕事をしていればそれでいいって思っていたでしょ。そーゆー目的もなければ誠実さもない魂と知性の抜け殻みたいな仕事してたら、死ぬ時絶対後悔するよ。仕事っていうのはね、ただ生活するためだけにあるものじゃない。自分が今この瞬間を生きていることに意味を持たせるためのものでもあるの。仮にも正規雇用を目指して仕事してるんだったら、今の自分の生き方を見直すくらいしたらどう? 前科持ちだか何だか知らないけど、ロクに自制もできない無責任な行動の結果でしょ」

「何だよその言い方。人がせっかく褒めてるってのに」

「あんたたちが就職レールに乗れなかったのは、前科者だからでも、無能だからでもない。そのいい加減な生き方を見透かされたからだよ」

「……だったらなんだよ? お前に関係ねえだろ」

「ないよ。でもこれは君たちの人生に関係あるんじゃないかな。噂で聞いたんだけど、バリスタランドがもっと利益を上げるようになったら、今流行りの『清掃ロボット』を導入する予定だよ」

「「「「「!」」」」」


 清掃員たちは度肝を抜かれ、何人かは顔を震わせている。


 葉月グループはバリスタランドの予定を網羅している。


 今の倍以上の利益を出した場合、清掃ロボットを導入し、客にもゴミ拾いをさせる。自分で消費したゴミや落ちているゴミを拾い、見張り付きのゴミ箱に捨てたゴミの個数に応じて割引券や商品券がついたりと、客にとっても得をする仕組みとなっているため、店外のゴミ掃除をする必要がなくなる。将来的にアトラクションの数を制限し、その分人数にも余裕が出るため、店舗スタッフにも店内清掃義務が発生する予定だ。これらの清掃システムを導入するのは、恐らく吸収合併後の経費削減のためだ。


 今ここにいる清掃員たちは一掃されるだろう。清掃だけに。


 こいつらがこのままじゃ、将来どころじゃない。まさに先行き短い死の職場だ。


 なのにこいつらときたら、これから単純労働がどんどん効率化されていくってのに、何の危機感も持ち合わせていない。茹でガエルのようなこいつらの目を覚まさせてやるには丁度良い。無敵の人にでもなられたら困る。もうあんな思いは二度と御免だ。結果的に伊織と一緒になったが、また同じ思いを他の人に味わわせたくない。この辺に施設が増えるのも不愉快だ。敗北だけは絶対に阻止してやる。


 なんかやる気出てきた。でも珈琲屋川崎にはもう行けない。どうする?


「おいおい、冗談だろ。清掃員がいなくなったら、誰が掃除するんだよ?」

「一応調べたけど、この前キャストの1つが廃止されたばかりでしょ。土産物店のスタッフ、今じゃ機械がやってる。あれって元々試験導入されたものらしいけど、出来が良かったから本格導入されて、そこで働いていたスタッフがみんなクビになったの」

「あっ、それ知ってるー。友達が土産物店のスタッフで、友達に誘われてここの仕事を始めたの。でも友達はクビになっちゃってー、今就活中なんだよねー」

「「「「「……」」」」」


 清掃員たちに気まずい汗が流れる。人生の汚れまでは掃除できなかったようだ。


「まっ、そういうわけだから、今の内から転職に向けて、スキルの1つでも磨いておくことだね」


 真っ先に更衣室に戻り、ロッカーを開けて制服を収納する。


 扉の向こう側から清掃員たちがボソボソと喋る声が聞こえてくる。


 暇さえあれば噂話をし始める職場なんて、これから滅びますよと言っているようなものだ。僕の知る限りではあるが、スタッフ同士が切磋琢磨しない職場は長くない。


「雁来さんって、バリスタランドの事情に結構詳しいね」

「学生にしては大人びた話し方だし、一体何者なんだろうね」

「さあ。でも凄いよねー。あの子が来てから、たった3日で雰囲気を一変しちゃったし」

「どうでもいいよ。それより早いとこ次の職場を探さねえと、俺たちやばいかもよ」

「そうだな。今まで以上に気を引き締めないと、その内リストラになりそうで怖いなー」

「何がコーヒーの楽園だよ。夢もへったくれもねえじゃねえか」


 口々に文句を言いながらも、みんなそれぞれの目標を意識し始めた。


 まっ、清掃員のクビ自体は緩やかなもので、当分はクビなんてないんだけどな。


 機械の導入にも色々と課題はある。まだ本格導入する段階ではない。それより問題なのは物的証拠だ。これがなければ8月末、うちの本部株20%が奴らの手に渡る。残り3日しかねえってのに、こんな状況じゃ、証拠を探すどころじゃない。清掃員が無駄に多い日は探す時間も確保できそうにない。


 着替え終えると、バリスタランド内にあるホテルへと赴いた。


『バリスタランド・スタッフホテル』と書かれた施設には、出張してきた多くの人が泊まっている。


 中に入ると、チェックインを済ませて部屋を借り、クタクタになった体を休ませる。


 バイトも無料で泊まることができ、夜中に仕事を終える清掃員の何割かはここに泊まる。アマチュアチームの面々はコーヒーイベントのため、既に東京へと戻り、代わりのスタッフが杉山珈琲から派遣されている。総入れ替えとなった喫茶処江戸は何の売りもなく苦戦しているようだ。


 今やスーパースターになりつつあるバリスタはそう簡単に代わりは務まらないのだ。


 電源が切れたように、部屋のベッドでぐっすりと就寝するのであった。

読んでいただきありがとうございます。

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