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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第17章 死闘編
423/500

423杯目「不満はあれど」

 4月末を迎え、各店舗がようやく多忙化を覚悟する。


 僕もバリスタとしてよく働いた。役員はバリスタランドの店舗で労働してはならない。しかしながら、僕は完全監修をしているのみで賃金労働をしているわけではないという建前で店の仕事を手伝った。僕がいることがバレないよう、クローズキッチンでの作業に徹した。


 本来はこんなことをしている場合じゃない。人数が足りている時は積極的にアマチュアチームの偵察をしようと心に決めていたが、中央エリアは客が多くてなかなか入れない。そこで今度は中央エリアのアトラクションを見に行こうと決めたが、ここも客が大勢押し寄せている。優先パスを持っているお陰で通常よりも早く乗ることができる。一度くらいは客になったつもりで楽しんでみるか。


 雁来木染に変装してからバリスタランドに入園すると、優先パスを持つ客の列に並ぶ。


 僕より背の高い人ばかりで、背伸びをしても前が見えないが、一般パスを持つ客よりも早く列は進んでいき、図らずも羨望の眼差しを受けていた。明暗を分けたのは勉強をこなす努力の差だけじゃない。あらゆる格差が反映された結果だ。値段を見ずに優先パスを買えるようになれるかどうかは最終的には運が物を言う。努力なんて生きている時点で誰もが既にやっている。それ自体に価値はない。


 自分のやるべきことに集中できるかどうかの差、要点にフォーカスしていたかどうかの差、好奇心を伸ばせたかどうかの差、才能を見つけやすい環境の差、あまり注目はされてないが、こういった1つ1つの差が、成人後に反映されている気がするのだ。きっと間違いではない。


 カップコースターと呼ばれる、コーヒーカップを模した円形の座席がある。全方向を見渡せる設計だ。下にはコースターに固定されたタイヤがあるが、特にシートベルトや安全バーがあるわけでもなく、人を乗せてゆっくりと園内を回るように進んでいくアトラクションだ。カフェ巡りもテーマの1つだし、コーヒーを飲んだ状態でジェットコースターなんて激しい乗り物には乗りたくない。この時点で独自路線を歩まざるを得ないわけだが、コーヒーファンが増加の一途を辿るコーヒー業界に乗っかる形だ。


 コーヒー業界がこれまでどんな経緯で詰み上がってきたのかをまるで考えていない。


 もしコーヒー路線が駄目でも、すぐにショッピングモールとして再展開できる設計となっている。どちらに転んでもアフターケアは万全というわけだ。目の前にはアマチュアチームのバリスタたちが見える。


 村雲、鷹見、エヴァ、アナの4人の姿が見える。喫茶処江戸には他の4人が勤めていることが見て取れるが、アマチュアチーム8人全員が喫茶処江戸にいるのは、二正面の戦争に対処しながら両方で利益を上げるためだろう。もちろんアトラクションで利益を上げる方法もある。


 村雲たちはアトラクションスタッフを担当しているようだが、顔はやや不満気味、アマチュアチームのファンたちからはアイドルのように扱われ、握手をしている。ファンサービスのせいか、進行が遅くなっている。コーヒーイベントにはまだ時期が遠い。アマチュアチームの連中にはシード権があり、コーヒーイベントでの準決勝から参加できるが、こんなことをしていていいのか?


 アナが項垂れながら受付近くのベンチに腰かけ、正面には鷹見が佇んでいる。


「はぁ~、これいつまで続くの~?」

「交代時間まで我慢しろ。もうすぐ店に戻れる」

「でも何でここまでして利益を上げないといけないの?」

「杉山社長が言ってただろ。バリスタランドの成功は俺たちに懸かってるって。何を考えてるかは分からねえけど、少しでも宣伝するためだ。今は大人しく従うしかない。一生分の年金を貰うまでの我慢だ」

「でも何でここまでして葉月グループに勝たないといけないのかなー?」

「そりゃ葉月グループに勝って、コーヒー業界の覇権を握るためだろうな。今までのたくさんの不祥事で信用が下がってるし、杉山グループの必死ってことだ。この前も裁判で負けちまってるし」


 愚痴を言いながら自販機の穴に硬貨を投入し、緑茶の下に書かれたボタンを2回指で押す。


 液体の入った缶が音を立てながら落ちてくると、両手でのっそりと拾い上げた。


「ほらよ」

「ありがとう」

「ロシア代表になること、まだ諦めてないのか?」

「当たり前でしょ。葉月グループに勝てば、個人での出場を認めてくれるよう、杉山社長がワールドコーヒーイベントに言ってくれるって約束したし」


 にっこりと希望に満ちた表情を浮かべながらアナが言った。


 アナの健気な顔を見ていられなかった僕はカップコースターに足を乗せた。


 合計10人で円を描くように同席し、バリスタランドを眺めて回った。道路上には線路が敷かれ、その上を移動することになるわけだが、ガイドはしっかりとついている。店舗スタッフではないことからも、かなり優遇されていることが窺える。いくつかのカップコースターが前後に連なる形で案内されるように進行していくが、カップコースターが現代的すぎて臨場感が台無しだ。


 隣を見てみると、真凜の横顔が見える。


 ――あれっ、もしかして遊びに来てるとか?


 一瞬、真凜と視線が一致する。


「どうかしたの?」

「あっ、いや……可愛いなと思って」

「ありがとう。私は足羽真凜。よろしくねー」

「私は雁来木染。よろしく」

「実は私、バリスタランドで働いてるの。南東エリアに中山道葉月っていうお店があるんだけど、普段はそこに勤めてるの。よかったらさー、後で一緒に行かない?」

「いいねー。是非行くよ」

「1人で乗ってるみたいだけど、お父さんとお母さんは?」

「……私大人だよ」

「えっ……マジ? 女子中学生だと思ってたー」


 甘えるように体を摺り寄せてくる真凜。香水の匂いが容赦なく鼻を刺してくる。


 これ完全に気づいてないな。何なら子供と間違われてるし、まあ本来の僕もだけど。


 やっぱり僕って、周囲からは女子中学生にしか見えないんだな。僕と同じくらいの体格を持つ女性が非常に多いためか、見事にカモフラージュしている格好だ。男として複雑だが、ここまで誤魔化せるのか。1つ分かったのは、変装中はただの他人という認識なのか、みんな本音で話してくれる。グループ企業総帥になってからは、胡麻をする人とばかり出会うようになったが、一般人でいられないのは地味に辛い。


 皮肉なもんだ。変装中の方が、いつもの自分でいられるのだから。


 総帥とは孤独な存在なのかもしれない。


 カップコースターを降りた場所には、土産物が販売されており、販売用のテーブルの上には、アマチュアチームのサインが書かれた食器がずらりと並べられている。さながらスーパースターのような扱いだ。アマチュアチームが直々に接客をこなし、相乗効果を出している。サイン入りの食器は飛ぶように売れ、商業的には成功している。葉月グループのバリスタに勝ち越したのも大きい。


 アトラクションの出口には土産物を売っているが、これは担当した店舗の利益になる。


 うちもアトラクションを行う際は利益を上げる仕組みを作ろうと考えているが、まさか僕が参加した大会がここで役に立つとは思わなかった。璃子はここまで考えて僕を大会に参加させたのだと思うと、敵に回さなくて良かったとつくづく思う。5月を迎えるのが楽しみだ。


 真凜に抱き枕のように扱われながら、カップコースターを後にする。


 豊満な膨らみが僕の脇腹を圧迫し、赤面を隠そうと後姿を見せながら足を進めた。


「へぇ~、バリスタ派遣会社の社長かー。木染ちゃんって凄い」

「今はどこの地域でも、バリスタを目指す人が増えてきたからね」

「私もバリスタやってて、大手コーヒー会社にいたんだけど、結局戦力外通告されちゃってねー」

「今も正社員を目指してたりするの?」

「うん。正社員になってお金を貯めて、自分のカフェを持つことが私の夢なの」

「素敵な夢じゃん。実現できるといいけど、プロとして通用しないんだったらさ、アマチュアチームに入ろうとは思わなかったのかな」

「――実は私もアマチュアチームの一員として誘われてたんだけど……断っちゃった。杉山社長に実家のカフェを押し退けられたし……受け入れられるわけないよ。調べてみたら、丁度実家のカフェがあった場所に中山道葉月が建っていたの。たまたまかもしれないけど、運命だと思った。だってさ、杉山グループ率いるアマチュアチームが倒そうとしている葉月グループの店舗があるんだよ。ここに仕えて、復讐の機会を待てっていう天からのお告げと思うと、妙に納得がいくの」

「葉月グループに誘われるってことは、他の店からも誘われていたとか?」

「うん。あのコーヒー越廼村からも誘われたけど、杉山珈琲からの出店だし、もちろん断った。勝てば出世のチャンスだし、葉月グループだからって、負ける気もない……私にも意地ってものがあるから」

「……そうなんだ」


 うちの店は真凜の両親がいた生前のカフェ代わりか。そういや呪われたように店の状況が悪かったな。


 待ってろ。安心して成仏させてやる。いずれここは()()()しないとな。


 真凜はとんでもない宿命を背負っている。だがそのことを意識するあまり、仕事を頑張りすぎている。理恩のように働きすぎているわけではない。どこか荒々しくて殺気すら感じるのだ。被害者意識を持ち続けている苛立ちが接客態度にも表れている。本人も気づいているはずだ。接客機会のない掃除や買い出しをしていたのはこのためらしい。しかも事ある毎に、ついてないと口からボソッと吐き出す始末だ。


 店の状況が悪かった原因の1つがここにある。


 目の前にはコーヒー越廼村の看板が右から書かれている。この時点で戦前と分かるが、喫茶処江戸と同様に明治時代を意識しているようだ。真凜が引き戸を開け、真っ先に中へと入っていく。店内は誰もいない状況だ。オープンキッチンにも人がいないし、休みではなさそうだが、人がいないのは何故だ?


 僕らはカウンター席に腰かけるが、スタッフがやってくる様子はない。


「みんな出かけてるのかな」

「流し台に皿とコップがあるから、どこかにいるのは間違いないね。休みだったら看板がクローズになってて、鍵もかかってるはずだし、1日も休めないことを考えれば、スタッフが不足してるのかも」

「スタッフが不足してるって、どういうことなの?」

「明日から他のエリアでもアトラクションが始まるでしょ。そのためにどこの店舗も慌ててスタッフを雇って研修してるとこなの。当分はどこも大した催しすらできないでしょうけど、その分うちが有利ね」

「うちが有利?」

「あっ、いや、その……バリスタ派遣会社にとっては儲かりやすい分有利ってこと」


 あっぶねぇ……いつもの僕に戻りかけてた。


 幸いにも気づかれていない。だが2人だけだと気まずい。


 カフェとしての雰囲気なんて全くないし、サードプレイスというものを履き違えている。人が落ち着くためのカフェではなく、エンターテイメントのための場所になってしまっているが、一般大衆はそんなことなど忘れているばかりか、バリスタをパフォーマーとして見ているのだ。


 背景でしかなかった職業が表立って活躍するようになったはいいが、バリスタはコーヒーを愛する者たちが同じ空間を共有しながら、実家に帰ったような気持ちで過ごせるようにする仕事だ。かつての静けさに恋い焦がれてはいるが、こんな色々と間違えている店を所望した覚えはない。


 そんなことを考えていると、4人のスタッフらしき人物がぞろぞろと入ってくる。


「あっ、いらっしゃいませー」

「すぐにメニュー出しますねー」


 悪びれる様子もなく、スタッフがオープンキッチンに入り始めた。


 胸元についている名札には、東条(とうじょう)西村(にしむら)南口(みなみぐち)北畠(きたばたけ)と書かれている。服装を見る限り、マスターは北畠さんのようだ。


 北畠さんが2人分の水が入ったコップをカウンターテーブルに置く。


「いやー、すみませんねー。うちは今研修中でして、午前の営業はお休みしていたんですよー」

「いえいえ、気にしないでください。研修って、何かやるんですか?」

「ええ。明日からアトラクションとして出し物を始めるんですけど、そのために何人も雇わないといけなくなりましてねー。それで午前中は休まざるを得なくなったんですよー」


 コップを置いた北畠さんがカウンターテーブルを挟んだ向こう側のオープンキッチンに戻る。


 昼飯時だし、ランチメニューでも注文するか。


 そう思った僕らはコーヒーランチセットを注文する。思ったよりも時間がかかり、カルボナーラとナポリタンが同時に配膳されるが、どちらも明治時代の時点でまだ登場していない。歴史を知らない連中が作ったと言えばそれまでだが、それなら戦後の昭和カフェにするべきだろうに。


 いい加減な店作りに気づけない時点で、きっと何も考えていないその他大勢の1人だ。


 真凜は美味しそうに食べるが、雰囲気と合ってない時点で味わいが損なわれている。


 人は五感で食事をする生き物であることを自覚すらしない連中が上層部にいる。何でもありの不規則なメニューにしたがるのは居酒屋の発想だ。居酒屋チェーンが主力事業なだけあり、ここまで考えずにメニューを作っている。事業参加はそう簡単じゃない。対照的に喫茶処江戸はアマチュアチームが運営しているだけあり、メニューに時代考証的な矛盾が存在しなかった。


 穂岐山珈琲はコーヒーだけじゃなく、カフェの歴史も研修で教えていた。


「あっ、髪の毛入ってるー」


 真凜がパスタとは明らかに色の違う細長い長髪を指で取り除いた。特に不満を言うこともなく食べ続けているが、多分あの髪の長い女性スタッフがへまをしたとすぐに見抜く。


 さっきからずっと手を口に当てながら欠伸してるし、仕事への集中力を失っている。睡眠時間が足りないばかりか、休むことなく常に働いている人の顔だ。休日が足りないのではない。休日がないのだ。確か杉山グループは休日ですら感想文を書いて提出させる社風だ。会社に疑問を持たせないようにするため、余計なことを一切考えさせないよう、わざと忙しくしているのだ。


「あーあ、待たされるし、髪は入ってるし、ついてないなー」

「真凜ちゃん、ついてないは禁句。運が逃げちゃうよ」

「えー、じゃあ何て言えばいいのー?」

「運が良かったって言えばいいじゃん。何があっても運が良かったと思えば、人生なんていくらでも明るくなるんだからさ。髪が混入したって、当たりくじを引いたと思えばいいの」

「……何も知らないくせに……分かったような口叩かないでよ」


 冷え切った顔からは、小さくも重苦しい言葉が放たれた。


 真凜の怠惰な労働とは、希望を信じられないことである。


 杉山社長への復讐心も絶望から湧き出るものだ。希望さえ持てていれば他人のことなど気にならない。僕としても、敵には一度痛い目を見てもらうだけでいい。二度と敵対してはいけないと、体に教えるだけでいい。成功こそが逆境への最高の解答なのだ。全ての経験は成長の布石でしかない。世の動きを知るための貴重な機会と考えればいい。なのに被害者意識の塊で居続け、過去への執着を捨てられず、今を生きることさえ放棄する姿勢の人間が、人生を良い方向に導けるはずがない。


 ネガティブな精神的姿勢は、やがて周囲にも悪影響を及ぼす。


「何かあったの?」

「私はいつも運が悪かった。小学生の時は、タッチの差で定員オーバーになって女子グループに入れず、ぼっちのまま過ごしてた。中学生の時は、お父さんが会社をクビになって、望みの高校に行けなかった。高校生の時は、担任の先生が願書を出し忘れて大学受験ができず、高卒で就職せざるを得なかった。私はバリスタとして、死に物狂いで修業しながら、育成部に入るチャンスを窺っていたけど、結局サポーターチームに入れただけで、育成部昇格を前に杉山珈琲に乗っ取られて、実家に戻ってみれば、鍛冶議員に強引な買収をされた後で、私が住んでいるボロボロのアパートは家賃が払えないまま、危うく追い出されそうになったの。あず君が時給を上げてくれなかったら、どうなっていたか」

「……あんたも選ばれし者みたいだね」

「どういう意味?」

「どこを探しても希望がないなら、あんた自身が希望になればいいの。真凜ちゃんは決して不幸なんかじゃないと思うよ。ちょっとは自分の人生の幸運に気づいたら?」


 また真凜の眉間に皺が集まった。神経を逆撫でされている人の顔だ。


 食事の手は止まったまま、責められているかのように顔を下に向け、再びサングラスをかけた僕の顔に真剣な眼差しを向け、真意を問うように口を開いた。


「……あんたに私の気持ちが分かるの?」

「分からない。でもあんたは健気に戦い続けている人の気持ちが分かる。それで十分じゃない」

「私は社会からずっと殴られ続けてきた。でも大丈夫……絶対に殴り返してやるから」


 急にフォークを持つや否や、唇を汚しながら急いでナポリタンを食べた。


 さっきまで上品に食べようとしていた手は外面的な側面を忘れ、家で食べているかのように、雑に大きく丸めたパスタを口に放り込んでいる。男の前ではまず見せない本来の姿だ。


 女子高でスカートを気にせず股を開いて座るタイプなんだろうか。女性は男性の居ない所で本性を表すと言われているが、雁来木染の姿でいる時は、女性の本音も聞きやすくなる。両性の視点が分かるようになればとても心強い。今までは女性の気持ちなんて、微塵も分からなかった。人は大丈夫という言葉の裏に色んな気持ちを抱えていると璃子は言った。この人には知られたくないと思い、つい隠してしまう情報って、実は当事者にとってはかなり重要な情報だったりする。


 僕は人知れず情報を隠され続けていた。


 敵だけじゃなく、味方からも避けられているのだとしたら――。


「真凜ちゃんはラッキーだと思うよ。失ったものだってあるかもしれないけど、今じゃ葉月グループという最強の味方がいるじゃん。今までの真凜ちゃんの言動を見れば分かる。下手に群れなかったことで自分の課題に集中することができた。収入源を失ったことで早く将来を意識することができた。高卒だったからハングリー精神を鍛えることができて、穂岐山社長に買われてバリスタの道に進むことができた。杉山珈琲を抜け出したからこそ、中山道葉月という最も適性を発揮できる居場所を得た」

「何が言いたいの?」

「何事も考え方次第ってこと。今後は何があっても、運が良かったって声に出してみて。もし何も変わらなかったら私が責任を取るから、一度騙されたと思ってやってみて。これ、マストだからね」

「……分かった」


 パスタを平らげ、コーヒーを飲み干し、ゆっくりと頷く真凜。


 飯を食えない大人たちは少なからず負け犬根性を植えつけられている。


 何を見ても悪い方向に感じる癖を取り除いてやれば、人生は好転する。実際は何も変わらなかったとしても、好転したと思わせるだけで十分なのだ。運勢は認識でできている。認識が変われば運勢も変わる。


 真凜は運が悪いのではない。運良く本当の意味での厄災を避け続けていたのだから。

読んでいただきありがとうございます。

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