42杯目「好きを貫く難しさ」
5月を迎え、徐々に効いてくる猛毒の如く、経営が厳しくなる。
やばい……今月は赤字になりそうだ。身内と外国人以外で稼ぐ手段がない。
預金通帳の数字と睨めっこをしながらため息を吐く。
ゴールデンウィークには親戚の集会がある。リサからは進路相談をされていた。僕に進路相談をされたところで、僕は背中を押してやることしかできないんだが……これをやってみたいという未然の相談であれば、やってみればいいじゃんとしか言いようがなく、まるで答え甲斐がない。
これをやってみたという過去の相談であれば具体的なアドバイスができるが、この手の相談をされることは少ない。みんな背中を押してほしいだけなんじゃないかと思う。そりゃずっと自分のしたいことよりも、周りに合わせることばかりを考えて生きていたら、自分が分からなくなるのは当然だ。
学生の時は何も考えない従順な生徒が評価されるが、社会に出たらちゃんと自分で考えられる人が評価される。思考停止をしっかりと叩きこまれた学生がいきなり就活で自分の考えを聞かれた時、必ず学校と社会の乖離に驚かされるだろう。これがサバンナ理論である。ずっと動物園で餌だけを与えられてきた動物が、急にサバンナに放出されても生きていけないのだ。
リサもこのままだと、確実にこの道を辿ることになるだろう。
それにしても……美羽が言っていた良いものって、一体何なのだろうか?
大した期待もせずに連絡を待つ。
「あずくーん、また行きつけのお店が潰れちゃったよぉ~」
話しかけてきたのはエマだった。リサとルイはブロンドだがレオとエマは黒髪だ。エマは肩に届かないくらいの長さだ。どうやら楽しみの1つがなくなってしまったらしい。
「行きつけってどこ?」
「商店街の中にあるでしょー。知らないのー?」
知らないんだよなー。商店街から離れて1年以上も経つからなー。
だがこんな知らせを聞くことは少なくない。
それだけ葉月商店街の衰退が進んでいる証だ。特に子供は時代や環境の変化には敏感だ。子供の口から潰れるという言葉が出てくるってことは、警鐘を鳴らされているのだ。
「普段は引き籠りだし、そういうのは知らないんだけど」
「あー、そういえばそうだよねー」
「ずっと前は僕の行きつけのラーメン屋が潰れちゃったからな」
「確かその人なら、今名古屋にいるよ。今度一緒に行く?」
「マジでっ!? ……日曜日なら空いてるけど」
またしても誘われてしまう。だが普段は暇な高校生を演じていないと怪しまれる。
ここは大人しくエマの誘いに乗ることに。
「じゃあ僕も連れて行ってよ」
横からレオが話しかけてくる。レオも大のラーメン好き。近所のラーメン店は全部知っている。こいつがコーヒー通だったら、今頃僕の店を発見されてたんだろうな……。
「僕もあず君と一緒に行きたい」
「だーめ、吉樹は中間テストがあるでしょ」
「えー、いいじゃーん」
吉樹が僕と一緒にラーメンを食べる一向に加わろうとするが、エマに咎められてしまう。中間テストで何点取ろうが、将来に変化なんてほぼないんだがな。
「あず君モテモテだねぇ~」
からかうようにリサが話しかけてくる。
「気のせいだろ」
「僕もあず君と一緒にラーメン屋行きたいけど、中間テストだぁー」
ルイも相変わらずの様子だ。
「エマは定期試験ないからまだ分かるけど、レオは中間テストないの?」
「僕はいつも平均80点以上取ってるから何も言われないの」
「テスト強者の特権だね」
「ちょっと手を洗ってくる」
お手洗いを済ませ、席まで戻ろうとすると、廊下越しに吉樹たちの声が聞こえた。
音もなく、ついそーっと部屋の引き戸に近づきながら耳に手をあてがう。
「僕ねー、時々あず君の家に遊びに行くんだけどさー、いつ行っても全然いないんだよねー」
「いないってどういうこと?」
「えっと……私よく、お兄ちゃんと散歩したり、カフェ巡りをすることがあるから、それでいないんだと思う。それに『テスト勉強』とかもあるから」
「あず君って、確かテストはいつも0点だったはずだよ。あれでよく高校に入れたよねー」
――まずいな、確実に疑われてるぞこれ。
いつもテストで0点を取ってたことがここで裏目に出るとはっ!
璃子もこれに気づいたのか、顔には出さないが黙り込んでしまう。
「あず君は勉強してるの?」
「してるぞ。いつも赤点ギリギリだけど」
「やっぱ留年があると、あず君でも勉強するものなんだねー」
「最初はずっと0点を貫いているのがカッコ良いって思ってたけど、なんかがっかりだなー。テストのシステムがくだらないって言ってたけど、結局あず君でも抗えないってことだよ」
言いたい放題だな。本当なら学校なんてくだらない生き地獄なんか行ってないことを今すぐにでも伝えたいが、目先の目標のために、長期的な目標を台無しにするのはナンセンスだ。
店を営んでいることがばれて、貸した金返せーなんて言われようものなら一巻の終わりだ。
それが分かっているからこそ、耐えるしかなかった。
この国で好きを貫くのは非常に難しい。段々高校生のふりをするのが辛くなってきた。演技は昔から苦手だ。誰かにフォローしてもらわないとすぐにボロが出てしまう。ここまでばれてないのが奇跡だ。
いつかばれることを憂い、璃子と帰宅するのだった。
1週間程度の時が過ぎ、約束の日曜日がやってくる――。
今日は僕とレオとエマの3人で名古屋に引っ越したおじさんのラーメン屋に行く日だ。
午前11時、レオとエマが住む家まで迎えに行き、電車で名古屋まで赴いた。群衆が怖い。段々と体の震えが止まらなくなってくる。散歩の時は人のいないコースを選んで歩いていたわけだが、電車でどこかへ行く時は直近ルートを使うことになり、当然群衆とも遭遇する。
レオとエマが僕の前を歩き、僕が後ろを歩く。
日本人が近くにいるだけでも怖いというのに、話しかけられたりすればたまったもんじゃない。この日の夜も学校で迫害を受けていた夢を見て、起きた時は情緒不安定となり、嫌な汗をかいていた。璃子にも心配されたし、この症状はどうにかならないのだろうか。
大体3日に1回くらいペースでこの悪夢を見る。寝るのが怖い。でも寝ないと疲れが溜まり、次の日の仕事に支障が出る。僕は毎日、この板挟みと人知れず戦っているのだ。
「あず君、何でそんなに怖がってるの?」
「人見知りなんだよ。他人に会うのが怖くて」
「いつもは平気そうにしてるのに」
「見かけはな。でも本当は怖い」
「あず君がここまで何かを怖がってるところ初めて見た」
「うん、あたしも初めて見た」
2人共不思議そうに僕を見つめながら歩いている。道を知らない僕はエマの案内に従って歩いているのだが、もう少し人通りの少ない場所じゃ駄目だろうか。
しばらく歩いていると、エマの足がピタリと止まった。
「着いたよ。ここがうちの商店街から引っ越した、おじさんのラーメン屋だよ」
「なんかボロいね。ホントにラーメン屋なの? 誰もいなさそうだし」
「誰もいないのは好都合だ。早く入るぞ」
古い小屋のような1階建ての建物……客は全然いない。
枯れた木の葉を飛ばす風が吹いているような侘しい雰囲気だった。
店長らしき人は見覚えがある。あの人がおじさんだ。汗をかいているから店内の厨房は物凄く暑いんだろう。ラーメン屋って常に何かを熱してるイメージがあるが、そうしないと回らないんだろう。そんなことを考えていると、エマが引き戸を開けた。
「いらっしゃい。あっ! エマちゃん! 来てくれたんだ」
「やっほー、哲郎さんが引っ越してから寂しかったんだよー」
「いやー、悪いねー。岐阜にいた時は全然人が来ないから、思い切って名古屋まで来てみたはいいが、ここでも全然売れなくてねー」
鈴木哲郎。ずっと前までうちの近所でラーメン屋をしていた店長だ。
まさか名古屋で店長やってたとは。
熱狂的な野球ファンであり、表の暖簾に書かれている店名には、某日本人メジャーリーガーに肖っているのか、テツローとカタカナで書かれている。店名は商店街にいた頃から変わってない。レオとエマがカウンター席に座ろうとするが、僕が端っこのテーブル席に座ったために、レオもエマも僕のところまで移動してくる。気を使わなくてもいいんだぞ。
「じゃああたし、味噌ラーメン」
「僕は豚骨ラーメン」
「醤油ラーメン、麺硬め野菜抜き」
「ふふふっ、あず君野菜苦手だもんね」
「見るのも嫌なんでね」
「はいよ。ちょっと待っててね」
野菜嫌いがそんなにおかしいか? 野菜を見るたんびに、警察の取り調べのような完食指導を思い出すんだぞ。仕方ねえだろ。ただでさえあれが原因で、会食恐怖症でもある。
「常連根づかなかったの?」
「あー、岐阜にいた時は常連のお陰で店が持ってたけど、ここじゃ知らない人ばっかりだからさ」
「宣伝はしたの?」
「してねえよ。あん時は店を引っ越すので精一杯だったからなー」
そんなんじゃ駄目だ。宣伝しないと存在すら知ってもらえないまま潰れることになる。
行動力があることには感心するが、それじゃ自分の首を絞めるだけだ。
「何か良い方法はないかなー。うちは1人だからさー、営業中に出かけるわけにもいかねえし、このままだと店が潰れちまうんだよなー」
「もう岐阜には戻らないの?」
「無理だな。啖呵切った以上は戻れねえ。だから店が潰れたら、就職して細々と生きていくわ」
この店が潰れたら、哲郎さんは一生貧乏生活だろう。
資格なしの中年おじさんがなかなか就職できないことは親父が証明済みだ。親父が僕に執拗なまでに就職を勧めるのは、店が潰れた時のことを想定しているからだ。
失業も就職も絶対に嫌だっ!
「俺は自他共に認める不愛想だからよー、会社員とか絶対無理だって死んだ親父に言われてな……不愛想でも許されるラーメン屋を始めたんだよ」
なるほど、不愛想だから宣伝ができなかったわけか。
黙ってチラシ配りができないのも、プライドが邪魔をしているからだろう。
「はい、できたよ。味噌ラーメンと豚骨ラーメン。それから醤油ラーメンの麺硬め野菜抜きね」
「うわー、凄い」
「食べたらもっと凄いぞー」
目の前に注文したラーメンが置かれる。麺にスープにチャーシューにナルト。
ふーん、見た目は美味そうだけど、味の方はどうかな?
まずはスープから飲んでみるか。
……! 美味い。あぁ~、この魚のような食感のスープ、商店街に住んでいた頃を思い出す。時々親戚に誘われては、よくおじさんのラーメン食べに行ってたなー。
今度は黄色と茶色が入り混じった色のラーメンを啜ってみる。
――この味っ! 覚えているぞ。この小麦粉の風味を帯びたシコシコ麺、噛み応えのあるモチモチとした食感。潰れるには惜しい味だ。
「あず君、美味しい?」
「うん。スープからは仄かに魚の旨味を感じるし、麺には小麦粉の風味があるし、もしかして、手揉みで作ったやつかな?」
「なんかプロの食レポみたい」
「よく分かったねー。このラーメンは手揉みで、スープにはカツオ出汁を使ってるんだよ。ほんっとーに大した味覚だ」
哲郎さんが驚きつつも、僕の味覚を褒め称える。
「「おおーっ!」」
レオとエマが同時に拍手喝采を浴びせる。
こんなことで拍手されても困るんだが……どう反応したら。
「カツオ出汁って、哲郎さんのアイデアなの?」
「ああ、そうだ。めっちゃ美味いだろ?」
「うん、また時間が空いたら食べに来るね」
「それまで店が持つかな」
「うっ! 手厳しいなー」
「あず君、失礼だよ」
「……こんなに美味いんだ。宣伝すれば間違いなく売れる。だから店潰したくなきゃ、宣伝することだ。知ってもらえない内は、存在してないのと一緒だぞ。それが商売だ」
「お……おう」
目を逸らしながら少し重めの声で哲郎さんに伝えた。
――何故だ? 何故僕はこんなことを言ってしまったんだ? 自分でも分からない。
ただ……哲郎さんの身に降りかかろうとしている苦難が、とても他人事とは思えなかった。僕は哲郎さんよりも、自分自身にそう言い聞かせたかったのかも。
「……あず君、一体どうしたの?」
エマがドン引きした顔でこっちを見ている。
「あず君って、そんなこと言えるほど商売やってないよね?」
やってるんだよなぁー。でも今は言えない。あぁ、もどかしい。もどかしいよぉ。
「えっと、僕は将来世界一のバリスタを目指してるからさ、こういうことにはうるさいんだ。美味いのに売れないなんて勿体ないじゃん」
言い訳をして誤魔化すしかなかった。
何かをやるんだったら、細々と生きる程度の覚悟じゃ駄目だ。
僕自身、のんびりと気楽な生活ができればそれでいいと思っていた。だが競争社会でそれが許されるのは成功した人だけだ。まさか僕自身の言葉に気づかされるなんて……思ってもみなかった。のんびり生きるのは、世界一のバリスタになってからでも遅くはない。早い内に一生分稼いで、親の借金返して、璃子の背中を押せるくらい稼いでやるっ!
静かに心の中で誓った。夢を叶えるまでは……のんびり生きることを考えるのはやめる。こんなことを言っておいて、自分だけのんびり生きようとするのは卑怯な気がする。
新しいアイデアを考えた方がいいのかもしれない。
勘定を済ませると、のっそりと店から出た。
「ご馳走様でしたー」
「おう、また来てくれよー」
僕らは店を出た後、名古屋を散策してから帰宅するのであった。
ある日のこと、哲郎さんに刺激を受けたのか、新たにアイデア商品を考えることに。しかし、なかなか思いつかず、璃子に聞いてみることに。
「璃子、何か良いアイデアないか?」
「日本人の入店を認めたら、すぐに赤字から回復すると思うけど」
「それは断固拒否する」
両手をバツ印にしながら抵抗する。ハッキリ言って問題外だ。
日本人恐怖症が発動している状態で、良質なコーヒーは淹れられない。
「じゃあさ、新しいメニューを考えてみたら?」
「新しいメニューか。やりたいのは山々だけど、もう予算がねえよ」
「えーっ! じゃあどうすんの?」
「璃子は客に商品のことで何か言われたことある?」
「商品のことって言われても――あっ、1つだけあるかも」
璃子が何かを思いついたように人差し指を挙げる。
僕の経験上、こういう時の璃子は凄く頼りになる。何か画期的なアイデアがあるといいのだが。
「アイスコーヒーがすぐにぬるくなっちゃうって言う人がいたよ」
「あー、それかー。僕も気になってたんだよなー」
うちの店のドリンクメニューは全部氷なしがデフォルトだ。
氷が必要な場合、店の端っこにある小さな冷蔵庫の下にある冷凍庫から客が自分で投入する。
もっとも、氷なんて入れれば味は薄くなる上に水っぽくなるし、個人的にはお勧めしない。できることなら氷なんて廃止したいのだ。ナイフ、フォーク、スプーンといった食器も、作業効率を良くするために客が自分で食器置き場まで取りに行くセルフサービスだ。
客にもできることは客にやってもらう。
「氷を使わずにアイスコーヒーの冷たさを保つ方法かー。それさえ分かればいいんだけどねー」
「お兄ちゃんはいつもドリップコーヒーを淹れる時って、コーヒーカップを温めてるよね?」
「そうだな。予めコーヒーカップを温めておけば、コーヒーが冷える時間を大幅に遅らせられる――」
台詞を言い終える前にあることを思いつく。
「お兄ちゃん? どうしたの?」
「それだっ!」
「ええっ! なっ、な、何っ!?」
「その手があった」
「どの手があるの?」
「カップを冷やしておけばいいんだ。予め冷やしたカップにアイスコーヒーを注げば、アイスコーヒーがぬるくなる時間を遅らせられるんじゃねえかな?」
「! それいいかも。やってみようよ」
早速実験を開始した。氷を入れて解決する方法は採りたくない。
温度計を2つ用意し、常温のまま置いたカップと氷水に浸けて外側の部分をしっかり冷やしたカップの2つを使い、それぞれのカップにアイスコーヒーを注ぎ、10分以上放置した後で飲み比べてみた。氷水に浸けたカップはタオルで拭いてからアイスコーヒーを注ぐ。
まずは常温のカップに注いだアイスコーヒーを飲んでみる。
「――やっぱりちょっとぬるくなってるね」
「そうだな。僕は気にならないけど、お客さんの中にはぬるいのが気になって、つい氷を入れちゃう人もいるし、そこが課題だなー」
「もう片方は大丈夫かな?」
「ぬるくなってないといいけど」
呟きながらもう片方のアイスコーヒーを飲んだ。
「「温度が下がってない!」」
実験は成功だった。僕らは温度計で温度の変化を記録し、氷水に外側だけ浸けたカップのアイスコーヒーは温度の上昇が常温のカップよりも緩やかだった。カップの内側を氷水に浸けなかったのは、カップの中に残った水分が気になったからだ。今度は僕1人で実験を行い、この光景を動画として投稿し、しばらくはぬるくならないアイスコーヒーとして宣伝した。
すると、冷たいままのアイスコーヒーを飲もうとアメリカやヨーロッパから客が集まってきたのだ。数はそこまで多くなかったが、これで常連以外の客足が戻った。
そんな時だった。唯が葉月珈琲の扉を開けた。
「あの、アイスコーヒーください」
「分かった。早速動画を見たな」
「はい。私もぬるい味が気になりますし、ぬるくならないアイスコーヒーは興味深いと思ったんです」
「すぐに飲んでしまえば、ぬるくならずに済むのに」
「それだけここはのんびりできるカフェってことですよ」
「それは嬉しいけどさ、コーヒーは手早く飲むのがモットーなんだよねー。エスプレッソの賞味期限がどれくらいか知ってるか?」
「分かりません。どれくらいなんですか?」
「10秒だ」
「10秒なんですか!?」
「そうだ。スプーンで混ぜれば、味の低下を緩和できるけどな」
完璧なエスプレッソは、ゴールデンブラウン色の最上層のクレマ、キャラメル色の中層ボディ、ダークブラウン色の最下層からなる3層が綺麗に分かれることが理想とされる。3層を保てる時間は持って10秒である。淹れたてだからこそ楽しめる贅沢な1杯だ。
創業1年目が終わった時点で、店舗チャンネルの登録者数は1万人を超えていた。影響力はまだまだ小さいが、動画が刺されば客が来てくれる。遠すぎて来れないと言う人もいたが、本当に行きたいのであれば距離は関係ないはずだ。つまり、遠くても行きたい店だとみんなに思わせれば勝ちだ。
6月を迎え、僕は17歳になっていた。去年はヴェネツィアまで赴いて参加したが、今回はアトランタまで赴く予定である。手続きの後は現地まで行って参加するのみ。
飛行機でアトランタまで赴いた。毎回思うのだが、遠征は楽しみである反面、慣れない環境に体力を奪われる。体調管理はしっかり行っていきたい。コーヒーがなかったら、僕は一生引きこもりだった。
コーヒーが……僕を広い世界へと導いてくれた。
リアル準拠の世界ですので所々に実在の有名人や企業や作品の描写があります。
名前を出さずにぼかしているのは念のためです。
鈴木哲郎(CV:立木文彦)