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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第17章 死闘編
411/500

411杯目「死のグループ」

 Dグループの争いは熾烈を極めた。


 昼休みの後、チーム葉月珈琲は8勝1敗で最終戦を迎えた。


 チームシアトルは既に脱落したチームに対して不戦勝の扱いとなり、見事10勝無敗で決勝トーナメント進出を決めた。残った枠は1つ。ボーダーラインは9勝1敗なわけだが、僕らはもう1つ越えなければならないハードルがある。ヨーロッパ予選を勝ち抜いたチームモルトボーノも8勝1敗だった。


 予選抜けができるのは2チームのみ。他のDグループのチームは2敗して敗退が決まっており、ここがチーム葉月珈琲にとって最大の山場であることは確かだ。凜は落ち着いているが桃花は落ち着かないまま胸に手を当て、深呼吸を何度も繰り返している。精神疲労が溜まっているようだ。


 凜が僕のTシャツの袖を優しく引っ張った。


「次の相手はあの人たちなの?」

「ああ。チームモルトボーノ。イタリア人とフランス人とドイツ人がいるチームだ。ベルティーナ・スカヴォリーニ、セゴレーヌ・メゾン、ヘレナ・シュパーマー。いずれもメジャー競技会代表レベルだ。特にべルティーナは去年のWLAC(ワラック)チャンピオンでもある」

「ヨーロッパ勢3人で手を組んでくるなんて」

「アメリカ代表は西から東まで色んなバリスタがいるけど、ヨーロッパは1つ1つの国だけで縛っているとアメリカに勝てないと踏んで同盟状態だ。前回大会は決勝トーナメントに進出したチームにヨーロッパ人がほとんどいなかったからな。北アメリカ代表どころか、ヨーロッパ代表も南アメリカ代表もアメリカ人ばかりで、結局アメリカ人が3人のイギリス代表が優勝した」

「国の代表って、ややこしいんですね」

「現地の店舗で働いていれば、どこからでも参加できる大会だ」


 凜は覚悟を決めたようにステージに足を進めた。


 小さな体で戦い続けた限界を僕が知る由もない。


 スタートの合図と共に6人で作業が始まった。全員が2丁のスプーンを使う光景は滑稽だ。指先に全神経を注ぎ込み、動物の形をミルキューで作り上げた。エスプレッソにペンスティックの先端を浸し、目や口や体の模様を描いた。さっきの桃花の仇を取るかのようにキリンを完成させた。エスプレッソの茶色さがキリンの本来の色と見事なまでに一致している。チーム葉月珈琲の牛乳は相手側の牛乳よりも固まりやすい分、高さを追及できるのが強みだ。当然相手も脂肪分が多い方が有利であることは知っている。


 難度の項目には高さも含まれている。


 安心しきった時、ふと、隣のアイランドキッチンを見てみる。


 何やら凜の様子がおかしい。いつもの余裕の顔が見られない。


 1杯目のカップが凜から離れた場所に置かれ、2杯目のカップに手をつけていた。よく見ると凜はミルキューの組み立てに失敗し、慌てて2杯目のコーヒーカップで作品を作っていた。制限時間内であれば何杯作っても構わないが、提出するのは1作品のみ。失敗した場合は完成直前であるほど大きなタイムロスになる。リカバリーの練習もしてはいたが、咄嗟に作った付け焼き刃の作品で勝てる相手ではない。


 凜は可愛らしい熊の頭をミルキューで作り上げ、エスプレッソで絵を描いたが、制限時間ギリギリだ。


「それでは結果を発表します。チーム葉月珈琲対チームモルトボーノは……1対2でチームモルトボーノの勝利となります! これでDグループからは無敗のチームシアトルと、1敗で済んだチームモルトボーノが決勝トーナメント進出となりましたぁ~! おめでとうございます!」


 大喝采が僕らの耳に食い込んでくる。


 今度は凜が顔を下に向け、言葉を全く発することなく肩を落とした。


 従来通りならこの時点で決勝トーナメント進出が決まっていたはずだが、そうは問屋が卸さなかった。チームモルトボーノは高さのある恐竜、ブラキオサウルスを作り上げていたのだ。Dグループには高さのある動物を作れる3Dラテアーティストがどのチームにも集中的にいたのだ。一歩間違えれば、今頃は僕らが敗退していたかもしれないことをここにいる全員が理解している。追い詰められた時にこそ、人は潜在能力を発揮できるものだと僕は改めて思い知る。大変さと同時に手応えすら感じている。


 勝てるかどうかが最後まで分からないこのギリギリの感覚、まさに僕が追い求めていた大会の姿だ。


 奇しくも五大陸の予選を1位通過した5チーム全てが集中している。


 そんな事情からDグループは観客から『グループオブデス』と呼ばれていた。


 ――僕らにとっても……文字通り『死のグループ』だった。


「ごめん……集中切らしちゃって」

「無理ねえよ。遠征のストレスに耐えながらアウェーの洗礼まで受けて、しかも連続で強豪とばかり対戦していたんだからさ。よくやった方だ」

「ごめんなさい……あたしがミスをしたばっかりに」

「私もごめん……あんなに調子に乗っておいて負けるなんて」


 桃花と凜の大粒の涙が頬を伝う。敗者復活戦に進むなんて、よくある話だってのに。


 司会者が1日目の全日程が終了したことを告げると、魔法が解けたように熱狂の渦が収まり、人々が会場の外へと散っていく。彼らを楽しませていた祭りは終わったのだ。


 僕は2人の頭を優しく撫でた。とてもサラサラしていて気持ち良い。


「謝ることねえだろ。気にすんなって。まだ敗者復活戦がある。今日はもう休め」

「でもこのままだと、決勝トーナメントまでいけても厳しいよ」

「だからどうした。厳しいってことは確率が低いってだけで、絶対に勝てないわけじゃない。諦めたら僅かな可能性もなくなっちまうぞ」

「あず君は全勝だもんね」

「ああ、そうだ。つまり2人の内のどっちかが勝てば優勝できる。これは僕1人の大会じゃない。2人の手に全てが懸かってる。明日の試合で勝てばいい。負けた経験は決して無駄にならない。こんな思いは二度としたくないよな? だからみんな努力してんだよ。明日もこんな思いしたいか?」


 皐月が僕らに近づこうとするが、チェンは皐月の顔の前に手を出した。


 気づいた皐月は足を止め、前に伸ばしそうな手を引っ込めた。僕らは今、正念場にいる。技術が足りないわけじゃない。食材に不備があるわけでもない。勝利への執念が足りなかったのだ。経験の差はそう簡単には埋まらない。生まれてから今までの差なんてどうしようもない。世代交代の波を待つか、自ら波を起こすか。だが葉月グループに携わる者ならば、自ら波を起こしてみせろ。


「……絶対やだ」


 耳を澄ませなければ聞こえないくらいの声で凜が呟く。


「あたしも……こんな思い、絶対したくないです」


 刀の矛先を見つめるような目を僕に向ける桃花。


 闘志剥き出しの顔を見た僕は安心を覚えた。


 練習はもちろんのことだが、何より自信を取り戻させる必要があった。


 だがその必要はなかったようだ。生きる力を身につけさせておけば自己修復ができる。鍵となるのは自己肯定感の育成だ。15歳までに自己肯定感を持てるようになっていれば、この程度の困難では折れなくなる。桃花は成人後にもかかわらず、岐阜に引っ越してからは自ら葉月珈琲塾に入った。普通の人は大人にもなって塾なんてと考えるものらしいが、決してそんなことはない。


 ホテルに戻ってからは無心になって3Dラテアートの練習に明け暮れた。


 僕は少しばかりの休憩に入ると、皐月が僕の座るソファーの隣に腰かけた。


「2人共昨日までとは全然違うな」

「ああ。大会が終わるまでは遊ぶことなんて微塵も考えない。今のことだけを考える。それが没頭だ」

「前々から気になっていたんだが、何故チーム名が都市名の名前ばかりなんだ?」

「基本的には自分が勤めている店名をつける。でもバリスタの中には店に所属していない人もいるから、その場合はチームリーダーが拠点にしている都市名をつけるのが習わしだ。バリスタの世界大会チーム戦で最初に優勝したチームが都市名をつけたチームだったのもある」

「確かチームシアトルを最初につけたのがマイケルだったな」

「そゆこと。2016年に世界初のバリスタの世界大会チーム戦があってな。あれでマイケルが優勝した影響だろうな。インタビューの時もシアトルを背負ってるって言ってたし。登録する時に都市名が被って使えなかった場合は、町名とかチームリーダーの名前で登録する。要はみんなチーム名にそこまで拘りのないめんどくさがりってことだ。以前マイケルジュニアが参加した時はチームマイケルだったし、自分の名前を使ってるってことは、登録するのが遅かったってことだ」

「チーム名で登録の早さが分かるのか。あず君はずっと同じチーム名なんだな」

「うちは根っからチーム葉月珈琲だからな。まず被ることがない」

「私もいつか――チーム戦に出てみたいな」

「弥生と一緒に出てるとこ、見てみたいな」


 皐月はほんのりと笑みを浮かべた。


 さて、そろそろ僕も練習を再開するか。明日はもっと厳しくなるんだ。これくらいのことで落ち込んでいる暇などない。たとえ僅かでも……希望があるのなら、前に進むしかないんだ。


 桃花と凜に度々チェンの指導が入った。ただ積み重ねるだけじゃなく、スプーンで乗せたミルキューを押し潰すことで質量を増やし、細長くなっても折れない工夫をしている。


 食べることも忘れ、僕らは寝不足を考慮し、早めに床に就いた。ベッドがふかふかで柔らかい。セレブが泊まったことがあるというホテルだけあり、実家に帰ったかのように居心地の良い部屋だ。バルコニーからはロサンゼルスの町並みが見え、摩天楼が一枚絵の一部のように夜景を彩っている。


 束の間の夜風を楽しみつつ、日が変わらない内に、ベッドの睡魔に襲われるのだった――。


 ――大会2日目――


 早朝、目覚まし時計に叩き起こされた僕とチェンは洗面所で顔を洗い、脳の奥底に眠っている意識を外に押し出した。チェンはまだ髪がボサボサで、目がとろーんとしている。鍵を開けてもらってから隣の部屋に入ってみると、桃花と凜は1杯のコーヒーを口に含み、皐月は既に飲み干していた。腰まで伸びている髪の先端まで手入れが行き届いている。お嬢様は身嗜みにも気を使っておられるようだ。


 朝の眠気覚ましはコーヒーに限る。コーヒーのために起きて、コーヒーのために寝る。


「あずくーん、まだ朝の6時だよー」

「何言ってんの。ようやく時差ぼけせずに済むようになったんだ。今から早朝練習だ。他のバリスタはまだ寝ているかもしれないけど、みんなが休んでる間に練習する。本番前の練習が1番身が入る。今はルーチンワーカーだって才能が問われる時代だ。僕が最初に出た大会も、早起きして練習してから会場まで行った。そして欠伸をしながら参加していた奴は全員予選で落ちた。この意味が分かるか?」

「ギリギリの時間に起きて、ロクに準備をする時間がなかったんだろうな」

「そゆこと。人間の体は感覚をすぐに忘れる。早朝練習をするのは目を覚ますためでもあるし、いつ競技時間になっても最高のパフォーマンスを発揮できるようにするためだ。お祭り感覚でやっていた人もいるけど、僕は店の存続が懸かっていたからな」


 もう一歩も後ろに下がることを許されないあの感覚、しばらく忘れていた危機意識。


 優勝回数勝負と昨日の敗北が、かつてのハングリー精神を思い出させてくれた。


 みんなの緊迫して強張った表情を見れば、納得しているのが見て取れる。皐月に至っては感心したようにスマホにメモを取っている。自主的にここまでやってるのかと凜は驚いた。


 参加チーム100組の内、10組は決勝トーナメント進出を決めている。


 残り90組全員が敗者復活戦を戦う。6種類のグループに分かれ、それぞれのグループ上位1組、合計6組が決勝トーナメント進出を果たし、ベスト16が決まる。


 敗者復活戦のテーマは『水生動物』。海の生き物となるが、幸いなことに、これは僕の得意な課題だ。如何にして敗者復活を果たすかは桃花と凜(あいつら)にかかっている。新しいコーヒーというよりも新しいアートを作る別の大会のような気もするが、コーヒーが関わる以上、決して無視はできない。


 AグループからFグループまでの各グループには15組のチームが入る。2回負ければ即失格となる。全勝すれば勝ち抜け確定、1敗でもオポネントや3対0の試合が多ければ勝ち抜けだ。


 各チームのリーダーがぞろぞろと集まった。


 チーム葉月珈琲は――またDグループかよ。


 しかもチームワシントンやチームキャンベラといった強豪も一緒だ。1日目の他のグループでギリギリ決勝トーナメント進出を果たせなかった上位勢のチームが集中していたのだ。他のグループは練習不足で連敗したチームばかりだが、特に気にすることはなかった。問題があるのは対戦相手ではない。むしろ相手にとって不足なしだ。頭をがっくり下げることもなく、淡々とした顔のまま戻った。


「どうでしたか?」

「うちはDグループだ。生き残る最後のチャンスでもある。集中してやれ。今回は全力でやれば勝てる相手だ。対戦相手が誰であろうと気にするな。ハードルが高くても低くても関係ない。常に最高の結果を目指せ。今日の相手は死に物狂いで立ち向かってくるぞ。昨日までの桃花と凜は対戦相手を意識しすぎた。緊張して勝負を焦ったのが敗因だ。対戦が終わるまで相手を一切気にしないこと。いいな?」

「「はいっ!」」


 桃花と凜が同時に言葉を返し頷いた。葉月ローストで一緒に過ごしていただけあって、息ピッタリだ。良くも悪くも素直で、スポンジのように知識を吸収していく気質の人間はこういった新しい分野の大会には滅法強い。それを見込んでの抜擢や、僕の言うことなら素直に従うところも扱いやすい特徴と、璃子が見抜いていたのがよく分かる。後はこの2人を如何にして大会に没頭させるかが問われている気がした。


 試合が始まると、コーヒーの水面を海面に見立てた3Dラテアートが数多く描かれた。


 海面から頭を見せている可愛らしい鯆、背中から潮吹きしている鯨、大きく口を開けている凶悪な鮫などを描き、昼前にはチーム葉月珈琲が8勝無敗でトップに躍り出た。昼休み中もランチタイムを返上し、朝食の分で済ませる算段だ。腹一杯になると集中が途切れやすくなるし、空腹の時が最も集中力が増す。


 昼休みが終わり、競技が再開する。既に半数以上のチームが敗退し、早々に帰宅準備を始めている。


 そして――。


「さあ、遂に最後の試合が終わりましたー! 既に皆さんがご存じの通り、Dグループから決勝トーナメント進出を果たしたのは……チーム葉月珈琲です! おめでとうございます!」


 僕、桃花、凜の3人でハイタッチを交わした。


 昨日必死こいて考えた僕の戦術は見事に功を奏した。


 強豪チーム全てに勝利し、不戦勝を含めて14連勝を果たした。しかも全試合3対0の圧勝。これで決勝トーナメント進出し、16チームの中にチーム葉月珈琲が組み込まれた。


「今日は昨日と違って凄く集中できたし、対戦相手があんまり集中できてなかったね」

「そりゃ無理もないよ。他のチームはみんな昨日の戦いで疲労困憊だったし、まさか2日目を戦うとは思わなかったチームも少なくなかったからね。昨日と違って1敗でも進出が厳しくなるわけだし、たとえ強豪であったとしても、咄嗟の対応を迫られると、案外脆いもんだよ」


 会場内で買ったハンバーガーを食べながら、淡々と感想を述べるチェン。


「でもあたしたちは普通に集中できてましたよね」

「うん、確かに全然疲れとか感じてないし、みんな体力がなかったんじゃないのかな」

「そうでもないぞ。あれだけの量をこなせば、人並みの体力であればヘトヘトになる。たった15分の競技でも集中していれば思った以上に消耗する」

「あたしは最近体力ついてきたし、いつもの練習量に比べたら少ないもんね」

「そーそー。これくらい全然平気だよ~」

「桃花さんも凜も……本当にタフだな」


 確かに皐月の言う通り、桃花も凜もピンピンしている。


 強化合宿の成果がようやく表れたようだ。バリスタとしての実力を底上げするだけじゃない。僕が昔から手探りで編み出した準備方法を浸透させたことで、基礎体力が身についていたのだ。


 特に大会前の人は規則正しい生活に加え、無理のない範囲で運動メニューを取り入れる。大会に出る以上はアスリート同然だ。体力増進を図り、自らのルーチンを確立し、大会前に遠征して徐々に時差ぼけを修正する。無論、桃花と凜も強化合宿でかなり体力が身についている。日が暮れるまでコーヒーに没頭する習慣を身につけてきた真価をようやく発揮し始めた。流石に僕のようにはいかないが、大会の勝ち方を体で理解しつつある。トップバリスタとしての才覚だ。


 山岳地帯を選んだのも正解だった。


 こっちの動きを悟られないし、登山をすることで、継続力が身につく。


 辛い遠征を乗り越えるのに最も必要な資本は体であると、改めて思い知らされた気がする。特に北アメリカ以外の代表の疲労が顕著だし、遠征の疲れを癒しながら時差ぼけを解除して最高のパフォーマンスを出すには日頃の訓練が重要となる。ここまでできているのはどこの大会でも少なかった。桃花は以前よりも体が引き締まり、全体的なグラマラス感がなくなった。見事なスレンダー巨乳だ。


 凜はそんな桃花の豊かさを羨ましそうにチラ見している。


 1人でコーヒーを買いに行くと、もう1人の足音が聞こえた。段々大きくなってくる。


「やっぱり決勝トーナメントまできたね」


 観客席に座り続けていたジェシーが下りてくると、気さくに声をかけてくる。


「あったりまえだろ。ここで終わるタマじゃない」

「体調管理は万全ってわけね。今まで色んなバリスタを見てきたけど、大会に向けた準備がここまで行き届いている人はそうそういないよ。あの2人もあず君に相当鍛えられたみたいだけど、昨日までと全然違うね。何かやったんじゃないの?」

「特別なことは何もしてねえよ。背中を押してやっただけ」


 試合開始前、僕はDグループに強豪がいないと嘘を吐いた。昨日のスイスドローでベスト5に入っていた強豪ばかり。またしても死のグループだったが、昨日のように相手チームの情報は一切話さなかった。今回はみんなが全力を尽くせば勝てる相手だと言った途端、気が軽くなったように集中し始めた。


 2人には暗示をかけた。練習の時、チェンと皐月に相手チームの情報を調べさせていた。


 桃花と凜には相手の情報を伏せ、僕にだけ敗者復活戦に参加する強豪チームを全て教えてもらったが、その全チームと当たってしまった。情報を伝えていれば、自信喪失は避けられなかっただろう。


 素直な性格の2人だからこそ、この作戦がうまく刺さったのだ。


 遠征戦略、暗示戦術、誰もができる工夫を地道にこなした末の勝利だった。

読んでいただきありがとうございます。

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