408杯目「備える勇敢さ」
3月上旬、僕らは3Dラテアートの練習に明け暮れた。
桃花もクローズキッチンに引きこもることを覚え、人前に出せるくらいの腕前に成長した。
ずっと同じ場所にいても苦痛を感じなくなっている。物事に没頭している証拠だ。3Dラテアートの世界大会なだけあってか、3月開催は前々から決まっていたんだとか。
璃子はこの大会での僕の活躍が命運を握ると言った。
ロサンゼルス行きまで残り2週間。それまでに画期的なアイデアを思いつかなければ――。
1位通過したとはいえ、アジア予選の1位通過と、北アメリカ予選の1位通過じゃ意味が違う。感覚的には1位と30位くらいの差があると言っていい。手順さえ覚えれば、何だって作れそうな技術はある。ジェシーは無事に北アメリカ予選を通過し、ロサンゼルス行きを決めている。アウェーゲームではある。だがむしろ望むところと心が騒いでいる。やはり僕は生粋の戦闘民族らしい。
金曜日を迎え、千尋と桃花は強化合宿のために欠席する。
皐月は2人の不在をまたしても疑うような目だ。
「あず君、千尋と桃花は今日も新人研修なのか?」
「ああ、この頃優秀なバリスタがうちに転職しようと躍起だからな」
「福井のカジモールに新しい店舗を構えるんだな」
「……何で知ってるの?」
「親父から聞いた。カジモールの施設は立花グループが建設する予定だからな」
「じゃあカジモールができたら、立花社長も来るのか?」
「もちろんだ。一度会ってみたいと言っていたしな。葉月グループは1月が新年度だが、大体の企業は4月が新年度で、この時期に新しいプロジェクトを始める企業も少なくない。立花グループもカジモールという1つの大きなプロジェクトに社運を懸けている。立花グループと葉月グループの初コラボだ」
「そいつは楽しみだな」
さて、そろそろ出かけた方が良さそうだ。
何度も皐月に疑われている内にボロが出そうで怖い。
2階で唯に服を仕立ててもらい、雁来木染となった僕は、岐阜県内の山岳地帯へとタクシーで赴いた。
1階では伊織が皐月を釘づけにしてくれているから安心だ。徐々に森林の割合が高まり、建物がまとまった場所が少なくなっていく。時折見える飲食店を無意識の内に目で追ってしまう。目の前に1軒のロッジが見えた。明るい色の木材が見えると、料金を払ってタクシーを降りた。
――ここは相変わらず空気が澄んでいて、仕事をしていることさえ忘れられる。
こんな空間でカフェを開けたら最高だろうな。変装を解いてからロッジに向かうと、そこにはいつものような人だかりはなく、ただ静かに強化合宿に務める愉快なバリスタたちがいるだけ。
JBrCに参加予定の桃花と美咲が大会用のドリップコーヒーを淹れると、JCTCに参加予定の弥生と陽向が綺麗に並べられたコーヒーカップを1つ1つカッピングする。自分の競技に集中できるばかりか他の競技を行う者の助けにもなる。
「強化合宿は順調かな」
「見ての通り順調だよ。みんなより遅れてくるなんて、お兄ちゃんも偉くなったもんだね」
「今日は皐月の出勤日だからな。ところで、いつまで隠すつもりなのかな?」
「立花グループがうちの味方かどうかも分からない状態で、皐月ちゃんに易々とうちの事情を知られるわけにもいかないでしょ。それに皐月ちゃんは2つの世界大会があるし、集中させてあげたいじゃん」
何を隠そう、皐月に優勝回数勝負の件を告げないと決めたのは璃子だ。
以前杉山グループに背後を突かれてからというもの、璃子は人が変わったように相手のグループに対して慎重な立ち回りを心掛けているが、皐月が立花グループが送ったスパイの可能性があると、疑いの目を向けているのだ。僕の直感では大丈夫だと思うけど、そうは問屋が卸さない。
立花グループは建設業が主力だ。今じゃコーヒー器具も手掛けている。うちには皐月がいるとはいえ、気になるのは立花グループがカジモール計画にも加担しているところだ。もし杉山グループと癒着しているのであれば、警戒しなければならない相手だ。外交とは銃を突きつけ合いながら握手をすることだと璃子は言った。つまり先に銃を捨てさせた方の勝ちだ。璃子は立花グループが胸ポケットに隠し持っているかもしれない銃を警戒している。杉山グループと手を結んでいるならば、葉月グループに牙を剥いてくる可能性もないとは言い切れない。相手側の社長令嬢である皐月を第一に警戒するのは当然か。
今年に入って皐月を葉月珈琲に移籍させたのは璃子が美羽に頼んだからだ。
動きを把握しやすくするためなのか、常に警戒するよう言われた。千尋もこの件は把握している。皐月としても結果を出しているために、自然な加入にしか見えないのが幸いだ。大会が一刻一刻と近づいてくるにつれて練習量が増え、新人研修への疑念が薄れている。
3Dラテアートの練習を始めようと、千尋たちにこっそり加わった。
僕がコーヒーカップを飲み干す前、2回鳴らすと共に千尋が歩み寄ってくる。
2回鳴らすのは2人きりで会議をする合図。なるべく自然な形で、味方にすら気づかせない。
「カジモール計画、なんか分かったか?」
「とりあえず分かったのは、立花グループがカジモール計画の全ての建物を設計から建設まで手掛けるってこと。しかもカジモール全体が1つの会社になって、株の一部を立花グループが持つことになるから、利益を得るのは間違いないだろうね。ということは葉月グループがカジモール計画を妨害するようなことがあれば、自動的に立花グループまで敵に回すことになる。何が何でも邪魔をさせないつもりだね」
「邪魔はしない。利用させてもらう。要は立花グループの不利益にならないようにしながら、杉山グループと戦えばいい。今から楽しみだ」
「カジモールに店を構えてどうするつもり?」
「あいつらの利益を横取りする。参加しているコーヒー会社はプロ契約制度に反発的な企業、もしくは懐疑的な企業で、バリスタが高い年俸を稼ぐことを良く思っていない。でもな、プロバリスタの本気の競技を見ればどれほどの利益になるのかをあいつらは思い知る。オープンすれば大勢の客が来る。そいつらがプロの活躍を認めるようになれば、プロ契約制度の廃止を見直さざるを得なくなる」
「プロアマ対決をどんな形式でやるかにもよるけどね」
千尋は両手を頭の後ろに結びながら僕の元を離れ、何事もなかったかのように璃子たちに合流する。
なんかややこしいことになっちまったな。
皐月が葉月珈琲塾にやって来たタイミングを考えても、既にこの事態を仕掛けられていたとしても何ら不思議ではない。ここまで想定できる璃子の賢さよ。駆け引きは得意だけど、それはゲームのように対戦相手がハッキリしている場合のみ。現実はこんなもんじゃないんだな。水面下の攻防は苦手だ。いつの間にか奇襲されているなんて、もはや勝負以前の問題だ。この世界にはルールがある。だがルールに記されていない行為はやってもいいんだ。後づけで禁止されるまでは。
経営者は卑怯者というより、卑怯にならざるを得ないんだ。競争を生き抜くために。
璃子は卑怯者になる覚悟をした。なのに僕はずっと生半可だ。自分の未熟さをまた思い知らされた。
風が木々を揺さ振る音が耳に染み渡る。困った時、詰みそうな時、どうしようもない時、誰もいない場所で空を見るのが日課だったことを忘れつつあった。1人でいる時間は寂しくない。何なら僕にとっては貴重な時間になりつつある。独身でも通じ合う仲間がいる人は、本当の意味で独身とは言えない。
トイレ休憩を済ませてからみんなに合流する。
すると、機嫌の良い小夜子が子供のように千尋に近寄った。
「ねえねえ、千尋君がバリスタを始めたきっかけって何?」
「あず君の活躍かな。前々からコーヒー事業をやりたいと思っていたのもあるし、日本酒を使ったコーヒーカクテルにも興味あったよ。吸収合併される形で貢献するとは思わなかったけど。僕のアイデアを伊織ちゃんが大事な決勝で使うのも想定外だよ。村瀬グループにいた時は、旧態依然の仕事に息が詰まるような思いだったけど、葉月グループは奇想天外な発想をする人ばかりで大変だよ……退屈はしないけど」
「でも千尋君、昔よりずっと明るくなってるよ。あず君のお陰かな」
「そうかもね。あず君って昔っからああなの?」
「うん、全然変わってない」
「今でもあず君が好きなの?」
「もちろん、今でも好きだよ……人としてだけど。でもあず君のことはとっくに諦めてる。なのにみんな揃って結婚できないというか、何でなのかな……」
小夜子が顔を背けながら静かにため息を吐く。
みんな今も結婚を夢見てるのか。天国になるか墓場になるかは自分次第。
美咲、香織、紗綾は相も変わらず3人で仲良く話している。この3人を見るだけで、今が休み時間であることがすぐに分かる。仕事中は大真面目だが、手が空くと気の知れた者だけで固まり、延々と会話を繰り返す。千尋はチラッと見ただけで原因を把握したようだ。
「本気じゃない人が、本気の人を退けて結婚するのは難しいかもねー」
「そーゆー千尋君は、本気の出し方を知ってるの?」
「あったり前じゃん。小夜子さんはもっと自分本位になってもいいと思うけど」
「自分本位って言われても」
「あず君のことを好きなまま、他の人のことも同時に好きになるのが怖いんでしょ」
「ふふっ、まさかそんな――」
「誤魔化したって無駄だよ。見れば分かるもん。小夜子さんたちが強化合宿に来たのって、あず君に会えるからだよね。暇さえあればあず君と雑談しちゃってるし」
「……」
図星を指されたかのように小夜子が黙り込んだ。
小夜子たちを誘ったのは身内だからだ。マイナー店舗のマスターを務めているだけあり、バリスタとしてもある程度の才能は保証できる。だがトップを目指せるほどではない。
今うちが彼女たちに求めているのは、アマチュアチームに勝てる程度の実力だ。だが千尋でさえ苦戦するような相手に、身内だからというだけで誘ったのは僕の人選ミスだと千尋は言いたげだ。かと言って今更人選をやり直すのは僕の本意ではない。他にアマチュアチームに対抗できるほどの逸材はいないのだ。
チェンたちは海外スカウトの仕事で忙しい。有能な人材の大半は人事に集中している。
じっくりと次世代トップバリスタを育成する方針が仇となっている。今必要なのは即戦力だ。でも今はこいつらしかいない。穂岐山珈琲も戦力の大半が杉山珈琲に取られてしまっているばかりか、僕らに牙を剥いている。うちも外国人バリスタの募集を考えたが、ディアナもアリスも自分の居場所を見つけてしまったし、外国は日本以上にプロ契約制度が進んでいて隙がない。
しかもアマチュアチームはまだ募集を続けている。
一生分の年金と引き換えとなれば、相応の実力を持つバリスタが食いつくのは間違いない。だが僕は大金でバリスタを釣るようなマネだけはしたくなかった。マネーだけに。
「あず君はバリスタ競技会で勝てる人材育成に社運を懸けてるんだよ。中途半端な気持ちじゃ、決勝にもいけないよ。僕としてはバリスタ競技会で優勝して、あず君が恋人に選ばなかったことを後悔するくらいのバリスタになれば、小夜子さんを好きになる人も出てくると思うよ」
「なんか手厳しいなー」
「プロ契約制度の廃止する条例が各都道府県で打診されてるんだよ。みんなでアマチュアチームに勝たないと、もしプロなんて大したことないと見なされたら、次世代まで続かなくなる。これは葉月グループにとって、危機以外の何ものでもないっていう自覚ある?」
千尋が氷のような声で言った。言葉に詰まりそうになりながらも口を開けようとする小夜子。
らしくない焦りが滲み出ている。現場で戦うバリスタに真相を明かしたのはまずかったか。いっそ何も知らずに生きている方が幸せなのかもしれん。
「それは――」
「そうかっかすんなって。雑談はこれくらいにして、そろそろみんなの試作品を見るぞ」
「……何で逃がしちゃうわけ?」
小夜子はそんな大袈裟なと顔が言っている。
存亡を懸けた戦いを明かさずにやらせることの難しさよ。
「千尋が満足するだけの回答はできない。うちの戦力不足に気づいてるんだろ?」
「最初っからね。この中で実績があるのは、僕と桃花さんと響さんの3人だけ。他は決勝進出すればラッキーな中堅クラスのバリスタばかり。アマチュアチームはプロ契約していないとはいえ、一生分の年金と絶望が懸かっていて、全員が世界大会に出られるくらいの逸材だし、このままじゃ勝負にならないよ」
「また皐月頼みになるのか」
「その皐月ちゃんも疑われてるわけでしょ。もしスパイだったら当てが外れるし、最悪今年で勝負を決められる危険性すらあるし、もっと戦力になりそうな人を雇った方がいいんじゃないの?」
「これ以上外国人を増やして参加させたら、コーヒーイベントがパニックになるし、何か裏があるんじゃないかとこっちが疑われる恐れもある。即戦力ってのは、すぐ使えなくなるって相場が決まってる。そーゆー事態を防ぐための再教育システムだ。即戦力に頼るのも、相手の戦力を削ぐのも好きじゃない」
「好き嫌いで何でも都合良く決まるんだったら、そんなに楽なことはないよ」
詰めの甘さを皮肉るように千尋が言った。
方針と状況がまるで一貫しない……が、千尋は新たな案を模索している。
兎にも角にも、まずはロサンゼルスでの戦いを考えなければ。桃花も凜も本当はコーヒーイベントに集中したいはずなのに、嫌な顔1つせず、僕の手の込んだ計画につき合ってくれている。彼女たちの方がずっと大人だ。練習時間を削ぎたくないし、今回はサポーターなしで挑もう。
「心配すんな。こんな時こそ、ケセラセラ」
呪文を唱えるように千尋を宥めた。
だが本当のところは――僕自身を宥めたかったのかも。
吉樹たちに焙煎を教えていると、璃子は帰ってしまった。珈琲班も喫茶班も、僕と神崎の指導のみで既に完結している。璃子の本職はショコラティエ。ラテアートなら教えられるが、今となっては桃花や凜の方がずっと精通している。この時点で璃子が強化合宿に来る意義が大いに薄れてしまったが、1月からは初日だけ来てくれている。僕と直接連絡を取れる数少ない機会だ。
それにしても、また問題が浮き彫りになっちまった。
千尋たちの気持ちとは裏腹に、小夜子たちには危機意識がない。アマチュアチームとの競争に敗れたところで、小夜子たちはクビになることはないし、吸収合併されてもマイナー店舗マスターの地位は安堵されるだろう。仮にクビを示唆したところで、うちのバリスタたちは他の企業でも生きていける。何も怖いものがない状況が、かえって彼女たちの危機意識を薄めてしまっている。
他の企業では通用しないような井の中の蛙であれば、負けたらクビと言うだけで、死に物狂いでこの状況を乗り越えようとするはずだが、生きる力を与えてしまったために、弱みがなくなってしまったのだ。葉月珈琲塾の方針は個人にとっては有益だが、企業にとっては都合が悪いことが浮き彫りとなった。
皮肉にも僕が最も重要視している次世代育成と生きる力が足を引っ張る格好だ。
一生食うのに困らなくなった代わりに、備える勇敢さがなくなってしまった。
杉山社長はここまで読み切って、この計画を考えたのだろうか。
「コーヒーのアロマに全神経を集中しろ。最高のタイミングはコーヒーが教えてくれる」
吉樹と香織にロースティング指導を始めた。
大きな焙煎機から流れるように出てくるコーヒー豆は色がついていて香ばしい。パチパチと音を立てる様は焼き上がりを謳っているようだ。僕くらいになると、彼女がもうそこでいいよと言っているのが聞こえる。しっかりと聞き取ったところで焙煎を止めると、鮮やかで漆黒の焙煎豆を前に惚れ惚れする。
色も香りもかなり上物だ。店で売ればかなり値が張るだろう。
吉樹は焙煎したてのコーヒーを当たり前のように嗅いでいる。焙煎に集中するため、今年から葉月ローストで働くこととなった。慶さんは定年を迎えてからユーティリティー社員となったが、ユーティリティー社員の中でも上位に位置する店舗監修顧問に就任した。年を取っても指導力が衰えていない場合は教える側に回る。親父とお袋も店舗監修顧問として各地の店舗を回り、マイナー店舗の補強に務めている。
言わば2軍監督のような立場だが、お陰でメジャー店舗の連中もうかうかしていられなくなった。
千尋たちが僕の焙煎したドリップコーヒーをほぼ同時に淹れると、水滴の音が聞こえなくなる。吉樹と香織が不意を突かれたように目を見開き、コーヒーを見つめた。
「――美味しい」
「うん、全く同じコーヒーを使っているはずなのに、ここまでフレーバーを引き出すなんて」
「あず君はロースターとしてもずば抜けてるねー」
「ねえねえ、どうやったらコーヒーの声が聞けるの? それさえ分かれば、あたしもちゃんとできると思うんだけどなぁ~」
「五感を研ぎ澄ませることだな。コーヒーの色は目で見て、温度は肌で感じて、フレーバーは鼻で嗅ぎ分けて、醍醐味は舌で理解して、焙煎の音は耳で聞き取る。基本的なことだ。休み時間に1人で、焙煎からカッピングまでを全部やってみろ。周りに誰もいなければ、もっとコーヒーに向き合えるはずだ。極限まで集中できる環境を整えるのも実力の内だぞ」
「へぇ~。分かった。あたしやってみる」
意気揚々と焙煎機に向かい合う香織。何かを掴んだような目でそばにある生豆を嗅ぎ取り、どんなコーヒーになるのかを自分の中で直感し、実際に味を描くように焙煎すれば、コーヒーも応えてくれる。
全ての物事に五感を意識して使うだけでも、いつもと違った感覚を得ることができる。何なら目的以外は何も見えない、聞こえない、感じない、分からない、興味ないくらいが丁度良い。
没頭とは、他が全く見えなくなることである。
香織は僕の言葉通り、意識して五感を使い、コーヒーがどんな風味を求めているのかを理解するためだけに全神経を注ぎ込むように焙煎を始めた。他の連中を遠ざけ、僕も少し離れた場所から見守った。
そして――。
「――やればできるじゃん! これだよこれ! 流石は香織だ!」
みんなの前で大袈裟に抱きつきながら惜しみのない言葉を送った。
「えっ、そ……そうかな。でも嬉しい」
顔を真っ赤にしながら骨抜きにされたように微笑む香織。
「嬉しいのは僕の方だ。これならコーヒーイベントでも十分通用すると思う。香織だったらきっと優勝できる。優勝したらさ、一緒にデート行こうよ」
「「「「「!」」」」」
「でっ……デートって、唯ちゃんと伊織ちゃんがいるのに」
「いいのいいの。デートは浮気じゃない。葉月グループのために貢献してくれた人に報いるのは当然だ」
千尋と話してみてよく分かった。ただ奮い立たせるだけでは不十分だ。アマチュアチームに勝てるくらいの優秀なバリスタを育てるには相応の動機が必要だ。
香織とはまるでカップルのように振る舞い、夜は2人だけの席を設け、一緒に食事までした。
この日以降、小夜子たちは人格が入れ替わったかのように没頭するのだった。
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