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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第17章 死闘編
406/500

406杯目「立体ラテアート」

 3日後、正午を迎えた頃――。


 空が見える難波の会場で観衆たちが見守る中、WTD(ワテッド)アジア予選の火蓋が切られた。


 制限時間は1時間、この間に3人で10種類の3Dラテアートを完成させる必要がある。1チーム毎に10個分のコーヒーカップが置けるくらいの長いテーブルが用意され、10種類の3Dラテアートを2列に並べるわけだが、1種類につき、コーヒーカップは1つしか使えない。


 3Dラテアート自体には制限もなければ固定観念もない。コーヒーとミルキューさえあれば、他は何でもありの芸術作品であり、自由度が非常に高い。だが大会ではラテアートの延長線上のものとしての意味合いを強くするために、必ずコーヒーカップは使用するらしい。


 結果発表後、アジア予選で作られた作品は全てその日限りで一般公開され、多種多様な3Dラテアートは博物館の記念品ように飾られる。ラテアートが存在感を増している中、凜のようにラテアートのみを専門としたラテアーティストが続々を表れているのも良い傾向だ。


 チーム葉月珈琲の他、根本、芽衣、黒柳の3人がチーム穂岐山珈琲を結成し、松野のサポートを受けながら競技を行っている。うちにもチェンが強力なサポーターとして指導を行っている。今はチーム戦でもサポーターが欠かせなくなっているし、参加者は可能な限り競技に集中するべしという結論も出ている。


 アマチュアチームはどうかと言えば、二手に分かれている。


 日本人社員だけで構成されたチーム杉山ジャパン、外国人社員だけで構成されたチーム杉山インターナショナルの2チームだが、波長の合う者だけで固めたらしい。チームは国籍ではなく所属する企業で決まるため、外国人も日本の企業に所属していれば、アジア予選に参加することができる。


 桃花はミルキューを丁寧に作りながら凜に渡した。落ちないようにと細心の注意を払い、いつもより遅い動作でミルキューを扱う人が多い中、凜はいつも通りの作業をするかのように、両手に持っているスプーン捌きを見せながらミルキューを乗せた。人目は気にならないらしい。


 見ているだけで心を救われる。


 見事なまでの『癒し系キャラクター』を作ってしまった。


 何を隠そう、これがチーム葉月珈琲のテーマだ。


 くっきりと表情まで描けるのだから、ここは活かさないと勿体ない。


 エッチングはペンスティックを使い、エスプレッソの色をペン先につけてから目や口を描いた。仕事時間にもかかわらず、スーツを着たビジネスマンたちが足を止め、3Dラテアートを見入っている。忙しいことさえ忘れ、飲んで良し見て良しの芸術作品へと姿を変えていくコーヒーから目を離さない。


「なあ、あの子のラテアート、めっちゃ可愛いな」

「ああ、なんかすげえ癒される。あれ写真に撮ってアップしようぜ」

「あず君が参加するって聞いたから、来てよかったよ。今の内に見ておきたいしな」

「だな。来年にはあず君もアラフォーだし」

「えっ、あず君って来年アラフォーなの!?」

「ああ。ていうか知らなかったのかよ。でもまあ、いつか引退した後も語り継げるように、生き証人としてあず君の参加する大会を見届けていれば一生自慢できるからな。うちの子供がバリスタ目指してるんだけどさ、あず君に認められれば、トップバリスタになって億万長者になってくれるかもな」


 おいおい、バリスタになる理由が億万長者って……。


 憧れるのはいいが、バリスタという職業を誤解する人までいるとはな。


 バリスタとは、本来コーヒーが好きで好きでたまらない人がなるものだ。稼ぐためだけにバリスタを目指すなんて愚の骨頂だ。僕はそんなことのためにコーヒー業界の地位を上げたわけじゃない。拝金主義が当たり前の風潮をどうにかしないと、歪んだ連中が押し寄せてくることになる。


 好きなことをして、それで稼げるようになればラッキーくらいにしか考えていないし、利益だって事業を回すための過程にすぎない。世間の価値観を変えるには、やはり背中で語るだけじゃ足りないのか?


「あず君、こんな感じでいいかな?」

「ああ、それでいい。次はこっちを頼む」

「あのー、ずっと気になってたんですけど、これって全部凜ちゃんが作ってもいいんですか?」

「本戦だとワンオンワンだから、全員が作品を作る必要があるけど、今回は総力戦だ。他のチームは全員で同じ作業をしながら作ろうとしてるけど、1人で作っちゃいけないルールがない以上、作るのは1人でいい。僕と桃花はエスプレッソとミルキューを作って供給するだけ。モチーフの絵もあるし、その方が凜も集中できる。凜が良い案を思いついてくれた。コーヒーの種類によって、色が異なることを利用して、違う色のコーヒーを使えばいいと言った時は、度肝を抜かれた。コーヒーだけで複数の色を賄う発想は、僕には到底思いつかない。他の人のマネをするだけじゃない。あんなバリスタも……いるんだな」


 今にして思えば、僕はコーヒー以外の料理、他のバリスタから技術を盗んだだけだ。


 特に柔軟な発想においては、早い段階で不登校になった者には敵わない。


 土台用とエッチング用のエスプレッソを作るだけの1時間はあっという間に過ぎた。桃花はミルキューを作って凜に供給し続けた。凜は10種類の3Dラテアートを完成させ、見る者を圧倒しながらも、可愛さに釘づけだ。アニマル革命に倣い、のんびりした動物を描き、土台がコーヒーであることを利用した。さながら動物が温泉に浸かっているかのような3Dラテアートまで作ってしまった。


 カップの隣にモチーフを添えて完成させると、早速審査が始まり、後は結果発表を待つだけだ。


「お疲れさん。2人共よくやってくれた」

「ふう、やっと終わりました」


 桃花が目を閉じながら胸に手を置いた。


 普段の競技は10分だし、1時間が長く感じるのも無理はない。


「通過できてるといいね。他のチームも独創的だけど、私が思いついたアイデアも負けてないもんね」

「凜ちゃん結構自信あるんだ」

「だってロサンゼルス行ってみたいもん!」


 目をキラキラと輝かせながら、まだ見ぬ外国への憧れが止まらない凜。


 うん、分かるぞ、その気持ち。僕も初めて外国に行った時は、ユートピアを期待したものだ。正直に言えば、日本よりもずっと住み心地が良かった地域もあった。


 夕方にかけて214チーム全てが競技を終え、結果発表が行われた。


 20チームがロサンゼルスに行ける。そこでジェシーと決着をつけるには、アマチュアチームを倒した上で1位通過を決めるしかない。当然あいつらも通過するだろうけど、これでどうするのかは璃子のみぞ知る。順不同でロサンゼルス行きを決めたチームが発表されていき、周囲は歓喜の声に包まれた。


 予選抜けしたかどうかは観客たちの動向を見れば分かる。人気作品には多くの人が集中する。


 エスプレッソの色が雑だったり、ミルキューを作ってもすぐに崩れてしまったりと、基礎が疎かなチームがちらほら見える。何を隠そう、この総合力勝負は役割分担が大きな鍵を握っていた。チーム内の全員がミルキューにエスプレッソに3Dラテアート作りの全てをこなそうとする場合が多かったが、それは間違いだとすぐに気づいた。璃子がこの2人を選んだ意味がよく分かった。


 そして――。


「アジア予選通過を決めた14組目は……チーム葉月珈琲だぁー!」


 桃花は軽くガッツポーズを決めた。僕と凜がハイタッチを始めると、慌てて桃花も加わった。


 通過順位は1位、モチーフは全て僕が考えた。


 3Dラテアートは技術的に最もうまい凜に任せ、エスプレッソ選びは僕が担当し、牛乳選びは桃花に任せたわけだが、僕は璃子から言われた桃花の配置理由を知ることになる。


「桃花が選んだ牛乳だけど、あれ凄く固まりやすくて扱いやすいな」

「あれ、実はうちの実家が牧場を営んでいて、そこから取り寄せたんです」

「えっ……実家だったの?」

「はい。でもお役に立てて良かったです。与える餌によって牛乳って味も固さも変わるので」

「だから最適な牛乳を選べたんだな」

「通常のラテアートは柔らかくて固まりにくい脂肪分少なめの牛乳が最適ですけど、3Dラテアートはミルキューが固まっていることが重要と聞いたので、普通の牛乳よりも脂肪分が多めで、固まりやすいものを使いました。凜ちゃんが牛乳が固まりにくくて困ると言ったので、脂肪分が足りないと思ったんです」


 そこまで考えて実家の牛乳を使ったのか。


 間違いない。桃花は牛乳のスペシャリストだ。


 WTD(ワテッド)はコーヒーも牛乳も持参できる。持参しなくても運営側が用意したコーヒーと牛乳を使うことができるが、選べるなら最適なコーヒーと牛乳を選びたい。それができるバリスタを璃子は見抜いていたようだ。人事を務めていた頃の経験が活きている。


「……よくやってくれた。桃花のお陰だな」

「ありがとうございます。でもあず君と凜ちゃんのお陰ですよ」

「本戦は桃花にも3Dラテアートを作ってもらうことになる。必要があればクローズキッチンを貸し出すから、ちゃんと練習しておけよ」

「はい、本戦も頑張ります」


 両腕を握りながら、気持ちを新たにする桃花。


 閉会式にはアジア予選通過を決めた20組が揃う。


 1位から5位まではロサンゼルス行きのチケットが渡され、渡航費と宿泊費が免除される。


 他は自腹で行かなければならないわけだが、更に練習場所までも確保しなければならない。アマチュアチームは最初から世界大会に出ないつもりで参加したのだろうか。何故かそんな気がしてならない。競技中のあいつらからは、本気を感じられなかった。


 閉会式を終え、もう解散しようという時だった――。


「たった1人に3Dラテアートを作らせるなんて、常勝軍団は随分と余裕があるようだ」


 皮肉るような声が後頭部を刺すように聞こえた。


「――誰だっけ?」

「村雲だよ! 村雲政宗! んでこっちは鷹見輝元だ。もう忘れたのかよ」

「アマチュアチームの方々ですね。お疲れ様です」


 笑顔を振り撒きながら礼儀正しく頭を下げる桃花。


「なんか用か?」

「次のプロアマ対決は負けない」

「プロアマ対決?」


 大きく目を空けながら首を傾げる凜。


「4月にカジモールがオープンするだろ。そこでうちと杉山珈琲が対決することになってる」

「そんなのあず君が圧勝するに決まってるじゃん」

「舐められたものだな。まっ、うちは両方共落ちてるし、しょうがないか」


 杉山珈琲から参加したアマチュアチームは2チームとも予選落ち。


 まるで本戦出場を拒むかのように、チーム杉山ジャパンは最終23位、チーム杉山インターナショナルは最終28位に終わっている。アマチュアチームだからと言って舐めてはいけないが、作品の所々に目立つ粗い造形からも、3Dラテアートはまだ不慣れであることが見て取れる。


 3Dラテアートはまだ発展途上の分野だ。メジャー競技会でもない以上、本気で挑む者とそうでない者に差が出ている。アジアにも強豪はいる。最近は韓国に中国にタイにシンガポールの代表までいる。日本代表はチーム葉月珈琲以外にはいなかった。


「桃花、凜、今日はお疲れさん。もう帰っていいぞ」

「う……うん。お疲れさん」

「お疲れ様で~す」


 僕だけの方が話しやすいと思い、2人を帰らせると、人目につかない場所まで歩き、村雲と鷹見の2人と改めて対面する。だが桃花と凜は桜子が乗る車を待たせている。


「僕に用があるんだろ。早いとこ済ませようぜ」


 通過できたのは幸いだけど、アマチュアチームの意図が分からないままだ。


「3Dラテアートを究めたくて参加したのか?」

「ああ、そのつもりだよ。アジア予選を通過すれば、世界大会で戦えたってのに」

「俺たちも最初はそのつもりだった。でもさっき杉山社長から電話があって、カジモールのイベントに専念するように言われて、途中から雑にやって終わらせた。あれくらいのレベルならいつでも通過できる。俺たちには優先順位ってもんがあるんだよ」

「だったら何でここにいるのかな?」

「葉月社長の様子を見に来たんだよ。まさか俺たちを参加させることで練習時間を削ぐとは、なかなか狡いマネをする。杉山社長に教えてもらえなかったら、このまま予選を通過するところだった」


 なるほど、璃子の狙いはこれか。


 僕が参加することをばらして誘い出し、少しでもコーヒーイベントに向けた準備時間を削る。


 もしこいつらが予選を通過すれば、世界大会に出るか、去年のように世界大会を辞退するかを選ばなければならなくなるが、あんなことがあれば、次回大会に参加できなくなる。いくつかのマイナー競技会は参加辞退を防ぐためのルールがあり、予選を通過したにもかかわらず代表の資格を放棄した者には罰則が科せられる。それにこれだけ注目されている中で辞退などすれば、杉山珈琲の信用は下がり、奴らのモチベーションにも悪影響である。アマチュアチームは予算が全て自腹だ。


 練習場所は杉山珈琲が提供してくれるものの、試行錯誤を繰り返す毎に経費は増していく。


 これを3年も繰り返せば、経費は莫大なものになるだろう。それでも戦いに勝てば自由になれる。やる気を引き出す術は杉山社長が考えたものに違いない。あの手この手を使って社員をギリギリまで過重労働させているのは本当のようだ。璃子はそんなアマチュアチームの経費を増大させ、練習時間を削ぎ、負けた時のプレッシャーで押し潰そうとしている。敵の自滅を狙うのは璃子らしい戦略だ。


 勝てば一生分の年金生活だが、負ければ借金地獄に陥る極限状態。


 WTD(ワテッド)も辞退罰則ルールが適用されるが、璃子は敵を罠にかけようとしたわけだ。


 焦土作戦を思いついた璃子も凄いが、この作戦に気づいた杉山社長も策士だ。


「今年もコーヒーイベントで優勝したら、また辞退するつもりか?」

「当たり前だろ。世界大会には参加しないように言われてるからな。コーヒーイベントで俺たちが葉月珈琲に勝ち越せば、もう生活費で悩むことはなくなる」

「年金で経費を返したらチャラになるんじゃねえの?」

「それなら心配ない。葉月珈琲に勝ち越せば、経費は全部杉山珈琲が負担するって契約だ。俺たちは一生分の年金を丸々受け取れるわけだ。ていうかホントついてねえよな」

「何がついてないわけ?」

「杉山社長は悪の帝王と呼ばれていて、あの人に目をつけられて生き延びた企業はいない。だから富裕層ですら杉山社長には逆らねえんだよ。なのによくやるよ。何でそこまで自分を貫くかねー。素直に従っていれば、無難に一生を送れるってのに」

「うちのスタッフの受け売りだけど、無難な人生よりも、有難い人生の方がずっと面白いぞ。君らにとって権力者に従う人生は、魂が震えるような生き方って言えるか?」

「「……」」


 面白くない……とは言えない……が、顔にはしっかりとやるせなさが表れている。


 口を閉じながらも目が泳いでいる。言わずとも分かる。つまんないって思ってる奴の顔だ。難波を彩っていた人だかりは徐々にその数を減らし、今度は歩行者として大都市の背景と化した。大会が終わってしまえばこんなものだ。次の日には結果のことなんてすっかりと忘れている。一般人にとって、大会はただのお祭りでしかない。マイナー競技会を通過できなかったプロバリスタには応える1日となった。


「一生分稼いだらさ、何か新しい事業でもやるわけ?」

「別に何もやらねえよ。稼いだらとっととリタイアする。労働なんてクソくらえだからな」

「そーそー。ずっと貧乏な生活を強いられてきたんだ。こんなチャンス滅多にねえよ。やるべきことさえちゃっとやってれば、労働から自由になれるんだ。宝くじなんかよりずっと確実だ」

「……なんかあったの?」


 村雲はあっさりと事情を話してくれた。


 仙台に生まれた村雲は貧困線以下の生活を余儀なくされ、担任教師に生活保護をバラされてからは学校でいじめを受けるようになり、集団生活に馴染めなかった村雲は苦戦を強いられた。


 しばらくして彼の人生に転機が訪れた。


 貧困ながらも大学受験に受かり、入学が決まったが、その希望はたった1日で脆くも崩れ去った。東日本大震災で家族を失い、入学が決まっていたはずの大学は学費を払えないまま中退してしまった。生活保護を断られた村雲は、毎日カフェのバイトに明け暮れた。馬車馬のように働かされ、同僚からはあんな身分にはなりたくないと陰口を叩かれても、我慢料と思いながら生活のために耐えた。


 テレビで僕を知るや否や、僕のマネをしながらシグネチャードリンクを作り、これが大好評となった。中身は僕の作品の模倣であったが、葉月珈琲にカフェ巡りをしたことのあるコーヒーファンは、僕が作ったものと全く変わりない味わいと評価した。どうやらコピーの天才らしい。


 覚えたことをしっかりとこなすのが得意なのか、テストはいつも学年トップだが、どうにも人間関係の形成は苦手らしく、こいつの言動からも社会に出てから必要な知識はまるで教わっていなかったことが見て取れる。肝心なことに限って教えてくれない学校教育が村雲の人生を物語っている。


 耐えに耐え、穂岐山珈琲に入ってしばらくしてから吸収合併騒動が発生し、社内のアマチュアチームの募集広告を見かけると、杉山珈琲にあっさり鞍替えした。葉月珈琲の対抗馬として活躍すれば、一生暮らせるという言葉に頭がクラッとなったのだろう。拝金主義もまた、教育の成果なのだ。


 働けば自由になれると言われ、働かされた挙句、殺されていった避難民たちの映像が脳裏に浮かんだ。


「俺は学校でも職場でもずっと馬鹿にされてきた。だから一生分の生活費を手に入れたら、都会を離れて隠居しようと思ってる。労働なんてマジで馬鹿げてるし、ましてや人と関わる仕事なんてクソくらえだ。俺だけじゃねえぞ。大半の社畜共は、みんな同じことを考えてるだろうよ。金さえあれば、誰がこんな国で労働なんかするかってんだ」

「……ボケまっしぐらだな」

「何だと?」


 何故だか他人事のように思えない。のんびり暮らすのが将来の夢だった僕を揶揄しているかのようだ。


 仮に熱意なき労働者たちが、みんな似たようなことを考えているというなら、それは紛れもなく教育を施す社会側の責任だ。ただ知識を詰め込むだけじゃなく、好奇心を引き出し、居場所を自分で掴み取れるようにしてやらなければ、教育をしたとは言えない。ただ飼い慣らしてるだけだ。


 こいつは飼い主を失った犬だ。犬は巣に帰ろうとする本能がある。


 生活費以外で労働市場に居座る理由がない以上、さっさと一生分稼いで隠居するのが関の山……か。


 実にくだらない。かつての僕は、こんなしょうもないことを考えていたのかと思うとイラッとくる。


 生きている限りはのんびりもいいけど、普段は楽しく過ごしたい。

読んでいただきありがとうございます。

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