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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第17章 死闘編
404/500

404杯目「現代教育」

 WTD(ワテッド)開催まで残り2週間を切った。


 それだけ練習時間があれば十分だ。参入のハードルが比較的低いとはいえ、この大会にも多くのプロが参加することになる。アマで参加する者もいるが、アマのレベルも上がっているのだ。


 プロバリスタの世界人口は早くも10万人を超えた。


 もしプロで通用しなければ路頭に迷うなんて声もあるが、それは昔の常識である。今を生きる僕にとってはどこ吹く風と言いたくなる。今は複数の仕事をするのが当たり前の時代だ。プロバリスタの良いところは、他の仕事を兼任しながらこなせる選択肢の多さにある。


 大会も時期に合わせた準備さえできていれば、他は何をやってもいい。


 味覚を保つために味が極端な食べ物を味わえないという縛りはあるが、技術の進歩により、兼業しながらプロの仕事ができる夢のような生活ができるのだから、プロで駄目だったら食えなくなるなんて考えは早く廃れるべきだ。何ならサラリーマンしながらやったっていいわけだし、幼少期からマルチスキルを身につけていれば、そんなつまらない考えに至ることはないわけだし、肝心なことに限って教えてこなかった結果だ。ていうかそもそもプロで通用しなかったくらいで詰むような人間を作るなって話だ。


 葉月珈琲塾ではマルチスキルを習得することを目的としており、バリスタ+アナザースキルの合わせ技で将来を生きることを基本としている。もちろん、バリスタから離れて別のスキルを習得してもいいし、好奇心旺盛な子供の背中をいかに上手に押すかが、葉月珈琲塾の本質である。


 ほとんどの生徒はプロにならない。だがバリスタとしての立ち振る舞いを学べば、礼儀作法や接客スキルも学べるし、コーヒーを淹れる技術やラテアートによって、手先の細かさや芸術的な感覚を養えるし、他の仕事でも通用する基礎的なスキルばかりだ。その中で生き延びた卒業生がここにいる。


「凜ちゃん、塾で3Dラテアートやってたもんね」


 桃花は腰を折り曲げ、凜の作品を見下ろしながら言った。


「うん。凄く簡単だよ。牛乳の成分を分離させて固めてから、こんな風にポフッと乗せるの」


 丸く柔らかくなった牛乳の塊をスプーンですくうと、綺麗に別の塊の上に置いた。


「『ミルキュー』はとても柔らかいから、形を崩さないよう丁寧に乗せないといけないよ」

「ミルキュー?」

「この牛乳でできた塊の名前、球落としからヒントを得て名づけたの」

「へぇ~」


 思わず頷いてしまった。特に名称のない物体に名づける機転の良さ。


 これだよ……僕はこれができる人間をずっと求めていたんだ。


 正解のない問題を自ら考え……答えを導き出せる人間を。


 僕が小6の頃、英語の授業で外国人教師が訪れた時だった――。


 外国人教師は生徒たちに、世の中を良くするために新しい法律を考えて発表しようと提案し、何も書かれていない1枚のプリントを配った。英語が話せない生徒は、日本語で話してから付属の教師が訳すというものであったが、それでもほとんどの生徒が書けず、提案ができた生徒は、僕を含めて1割しかいなかった。これは意味が分かれば怖い話だ。外国人教師は解答率の低さに空いた口が塞がらなかった。


 何でも、ほとんどの国では全員が当たり前のように解答できたという。自主的に考えて行動に移す力がないばかりか、どんな法律を作ろうかという好奇心さえ感じられなかったと英語で嘆く始末。魂と知性の抜け殻は、小学校の段階でも高い完成度を誇っていた。これでも学校を必要と思う人は、きっと頭が手遅れなのだ。少なくとも、今の時代に合った教育ではない。当時の僕はやけに白紙が多いなと思うだけだったが、外国人教師はこの結果の恐ろしさに気づいていたのだ。生徒たちの将来が心配になったんだろう。


 大人になって初めて、あの驚愕の顔を崩せなかった理由が分かった。


 しかも休み時間、わざわざ遊んでいいかどうかを教師に聞く生徒が後を絶たない光景に、摩訶不思議な感覚に包まれたんだとか。たとえ子供であったとしても、休み時間に遊んでいいかどうかの判断を大人に仰ぐのは流石にやばいと思った。あのまま大人になったら、良くて社畜、悪くてニート一直線だ。


 子供たちには入学から1週間は強制登校させ、次の週からは自分で決めさせる方針だが、今のところは全員がホームスクーリングを選択している。1週間も行っていれば大体どんな場所か分かるし、この短期間で行きたくないと思うなら、きっと集団生活には向いていない。僕が子供の頃にはなかった選択肢だ。


 期待はしていなかったが、子供たちには友達もできていた。


 皮肉なもんだ。案外こっちの方が普通の人に近づけるのかもしれん。


「なるほどねー、牛乳と球を組み合わせたんだー」

「ミルキューか。うちで広めてみるか」

「もう広まってるよ。SNSでも話題になってるし、みんなミルキューって呼んでる」

「情報が早いな。凜だったら、立派なラテアーティストになれるかもな」

「ラテアーティストかー。この大会で優勝したら……世界一のラテアーティストに近づけるのかな」


 複雑な笑みを浮かべている凜の瞳には迷いが見られた。


「もちろんだ。桃花、凜、必ず優勝するぞ」

「はいっ! あたし頑張りますっ!」

「……私も頑張る」


 テンションには差があるが、桃花と凜の想いは本物だ。


 桃花はJLAC(ジェイラック)にも参加した経験があるし、何度か決勝にも進出している。凜は今年から参加するわけだが、どちらにも優勝経験がないのがネックのはずだが、何故か不安がない。


 この2人はもっと評価されるべきだと気づいているからだ。


 3Dラテアートを作るには、泡立った牛乳をいかに準備するかが重要だが、牛乳は40度から60度の時に最も泡立てやすいと言われている。温度管理には気を使いながら、キッチン温度計などでしっかりと測り、牛乳を温めたらミルクフォーマーを使って牛乳を泡立てる。


 泡立ったフォームミルクがある程度の量必要になるため、3分間くらいは時間をかけてしっかりと泡立てる。泡立て終わったら、ホットコーヒーをマグカップに入れて、上から泡立てたホットミルクを注ぐ。牛乳を注いでから1分間ほど放置すると、泡立った牛乳と普通のホットミルクが分離する。牛乳が分離してきたらスプーンを駆使しながらミルキューを作りたい動物などの形に仕上げていく。


 新しいことにおいては子供の方が先進的だ。凜はうちでも特にトレンドに敏感である。凜は竹串にコーヒーを浸けると、点のように丸くて小さな目、横に長い閉じた口、ひょっこりと出している顔に添えるように爪までを刺すように描き、ナマケモノの3Dラテアートを完成させてしまった。


 それにしても……可愛い。見ているだけで癒される。久しぶりに見たが、これが凜の3Dラテアートなんだな。見た者を一瞬にして虜にし、ラテアートワールドへと引き摺り込まれる。キュートな絵のタッチからものんびりしているのが伝わってくる。これは本当に飲み物なのか?


 こんなにも鈍そうなのに、ナマケモノは何故絶滅しないのか。本当に謎の多い生き物だ。


「白と茶色だけでここまで表現できるなんてねー」

「そういえば、着色はありなの?」

「着色はコーヒーによる着色のみだから、実質茶色だけだな」

「コーヒーによる着色だったらいいんだ」


 顎に手を当てながら凜が唸っている。


 かと思いきや、次の作品を作り始めた。


 何もやりたがらず、部屋の隅っこで三角座りしていた凜の姿はなかった。


 僕が作った葉月珈琲塾のルールは、不登校を選択した子供たちにピッタリとハマった。


 葉月珈琲塾に時間割はない。学校では子供が集中している時に無理矢理スイッチを止めてしまい、次の授業に移行するのが当たり前だが、うちは帰宅時間まで常に没頭していてもいいことになっている。


 大人になってから物事に集中しきれないのは、没頭した経験に乏しいからだ。


 短所を満遍なく補強することに特化した義務教育が抱える弱点をカバーするべく、好奇心と自主性を伸ばすことに特化した教育システムを考えた。


 いかにやる気をなくさせないようにするかをエドガールのおっちゃんに相談した。


 まずは子供に選択肢を与えてはどうかと言われ、選ばせるだけじゃなく、遊びで学習するという方針を取り入れた。かるたで漢字や英単語を覚えたり、ラテアートのカップ数を数えて数字の勉強をしたりと、遊びに勉強の要素を取り入れたことで、生徒の学力は不登校直後よりも大幅に伸びたのだ。


 この結果を受け、隣の都道府県からも葉月珈琲塾を設置してほしいという声が相次いだ。


 葉月珈琲塾の目的は勉強をさせることじゃない。


 子供たちが社会に出た後、自力で飯を食えるようにすることだ。塾にはみんなで好きな遊びやコーヒーの淹れ方を学ぶ演習室と、個人で好きな学習ができる自習室がある。


 昔の僕が塾に来ていたら、どうすればいいかを熟考したが、結論はあっさりと決まった。


 全く同じ年齢の生徒だけで人間関係を固定化する方針もない。うちは年齢の上下が激しく、同じ教室の中で大人の生徒が子供の生徒に教えることもあるし、子供が大人に教える場合もあり、厳しい上下関係もなく、対等語でも敬語でも好きな方を使っていい。むしろどちらかを強要することが禁止となっているわけだが、1つでも年が違えば、どちらかが接し方を変えなければならない儒教的なやり方では、社会に出てから無意識に地位や年齢で人を分け隔てるようになる。それじゃ権威主義の再生産だ。


 まずは年上というだけで、無条件に敬服する文化をぶっ壊すところからだ。


「凜ちゃん、この作品も塾で教えてもらったの?」

「自分で考えたよ。葉月珈琲塾は自分で考えた作品が先生たちに認められて、合格ラインを突破しないと卒業できないの。一通り単位を取った人は、卒業試験を3ヵ月に1回受けられるんだけど、私は一発で合格したよ。考える癖がついてたから、結構簡単だったよ」

「単位がゲームのやり込み要素のような仕組みなので、気づいたらいくつも取ってるんですよねー」

「弥生ちゃんも葉月珈琲塾に通っていたの?」

「はい。皐月ちゃんと一緒に入塾して、成績次第で葉月グループの店舗に配属できるって言われて、神経を擦り減らすことを覚悟してましたけど、入ってみたら凄く楽しくて、教わるだけじゃなくて、小さい子に教える経験もできるので、色んなことを学べるんです。教える側に回るには、たくさん勉強しないといけないので、皐月ちゃんと一緒にコーヒーの本とかを探しに行ってたんです」

「塾で教える側に回るって、前代未聞じゃないですか?」

「教える授業は単位が大きくて、卒業にグッと近づけるんです」


 葉月珈琲塾にいた時の思い出を赤裸々に語る弥生。


 時折燥ぐ時に揺れる大きな膨らみに思わず目が吸い込まれる。


 うちの塾は出席さえしていれば単位が取れるわけではない。出席点もノート点もないし、テストは全て実技や制作だ。実生活でどれほど使える人間なのかが問われる現代社会において、ペーパーテストはあまり有効とは言えない。この仕組みにより、ただ暗記がうまいだけの人間は卒業できなくなっている。どちらかと言えば、どれだけ課題に没頭できたかが問われる珍しい塾だ。


 学校の勉強に関しては、小学校の分までは面倒を見るが、それ以上は別の塾の管轄だ。中学以降の勉強に関しては、社会に出てからほぼ使わないパターンが多いことを考慮した結果だ。基礎以外の勉強は全部雑学と言っても過言ではないし、社会に出た後使う知識を重点的に教える方がずっと役に立つ。


 将来的に起業や就職を目指す生徒は、経営や税金の勉強を自ら進んで行っている。


 卒業後は自ら問いを作りながら、人生を謳歌していくことだろう。


 失敗しない人間ではなく、失敗しても挫けない人間を目指すべきだ。


「遊び半分で勉強と仕事を習得させるなんて、結構やるじゃん」


 両手を頭の後ろに添える千尋。やっとまともな人間ができたかと言わんばかりの顔だ。


「単位はちょっと頑張ったら取れるくらいのものにして、ここまで頑張ったっていうのが明確に分かりやすくなってるし、人によって課題も違うから、他の生徒と比較する必要もない。比較するべきは過去の自分だ。これなら劣等感を持つこともない。1人1人の適性も考慮しないまま、全員に同じ課題を与えて点数なんてつけるから、優劣が生まれて嫉妬したりするわけで、それを16年も続けたら、足の引っ張り合いをする人間ばかりになるのは必然の流れだ。生徒同士を比べない方針は絶対に取り入れたかった」

「僕は璃子さんがこのルールを作ったものだとばっかり思ってたなー」

「葉月グループの仕組みはほとんど璃子が築き上げたものだけど、葉月珈琲塾は僕が考えた。学習指導要領なんて守っている内は、現代に合った教育はまず無理だと思って、既成概念を壊すところから始めた。子供が自ら課題とか授業内容を選べるようにして、自分の意思を表明できるところを意識した。子供の好みが分かりやすくなるし、それに合わせたカリキュラムを組みやすくなる」

「じゃあ……生徒の数だけカリキュラムがあるってこと?」

「もちろん」


 青褪めた顔の千尋がその場に腰を下ろした。


「僕、葉月珈琲塾の人じゃなくて良かった」

「当たり前のことをしてるだけだ。本当は40人いたら40通りのカリキュラムを用意する必要がある。でもそれができないのは、教育にかけている予算が少ないからで、画一的にやらないと間に合わない事情もある。葉月グループが最も投資しているのは教育だ。優秀な社員が足りないなら、うちで作ればいい」

「だから子供の内から塾に通わせてたわけかー」

「不登校児ならまだ修正が間に合うし、学校が好きな奴はうちに来なくてもうまくやっていける。うちの子供たちも定期的に遊びに行くような感覚で来てるし、1番上の子は、3つ上の生徒の課題をやってる。要領の良い生徒はレベルを上げていけるし、その分卒業も早くなる仕組みだ」

「そこまで進んでるんだー。うちの子供たちも入れようかな」

「1人につき年間1万円だ」

「えっ、そんなに安いの?」

「いくつか条件がある。子供が集団生活に馴染めていないこと、完全不登校になること、親は子供のやりたいことに干渉しないこと。ニートは親と学校が作ってる。その要因を極力排除するのが目的だ」

「へぇ~」


 千尋がゆっくりと頷いた。実に好意的な反応だ。


 たった1人の力でプロになった人間がいないように、ニートも自力でなっているわけではない。周囲から否定に次ぐ否定の言葉を貰い、好きなものに限ってあれも駄目これも駄目、嫌いなものに限ってああしろこうしろと言い続ければ、子供の好奇心はゴリゴリ削られていく。


 好奇心がなくなった人間は、やがて全てを諦め、何もしなくなり、せめて迷惑にならないよう家に引き籠るようになるのだ。ニートは自己責任と考える者も少なくないが、ニートの多くは自分の力ではどうにもならない要因で好奇心を削られている。親と学校のカリキュラムは多数派向けに作られているが、少数派の人にとっては無理難題だ。多くの人は無自覚に無理難題を少数派に押しつけている。もはや虐待と言っていい。多数派の連中も好奇心を削られ、風邪を引いても休めない社畜に成り下がっている。


 泣き寝入りして何の対応もしない人、組織の暴政を黙認する人、こういう被害者ぶった奴らも、社会を腐敗させているサイレントテロリストだ。被害者が抵抗しないからこそ、加害者がつけ上がり、社会がより生き辛い方向へと進んでいく。皮肉にも学歴を積むことで理不尽への抵抗力を失っているが、学歴が大事だと言っている連中に限って、毎日死んだような目で満員電車に乗っているのが実に滑稽だ。あれが学歴主義者たちの望んだ姿なのかと言ってやりたくなる。


 一度失業でもしないと、目を覚ますことはないんだろう。


 まともな人間とは、自分の仕事に責任を感じている人間のことである。


「ところで、大会は璃子さんに言われたの?」

「ああ。カジモールが始まる前に世界大会に出て結果を出せば、アマチュアチームに対する牽制になる」

「負けたらアマチュアチームを勢いづかせちゃうけど、あず君には関係のないことだね」

「あくまでも優勝前提なんだな」

「法則みたいなもんだよ。個人戦の時もチーム戦の時も、あず君は毎回突拍子もないことを思いついて、いつの間にか逆転の一手を打っていたよね。天性の才能だよ。僕でもマネできないし……生まれて初めてだったよ……人に妬いたのは」


 千尋は決して褒めたくはないと、ムッと口を尖らせた。


 プロの身でありながらアマチュアチームに敗北した千尋にとって、コーヒーイベントはリベンジの場、プロ契約制度はリベンジの機会だ。千尋のモチベーションが上がっているのは幸いだ。


 周囲を見渡してみると、桃花と凜は雑談をやめ、3Dラテアートのミルキューを作っている。楽しそうにしていたのは単なる雰囲気作りか。練習はもっと地味なものだが、凜は作業を楽しそうに続けている。ミルキューをスプーンですくい、丁寧に乗せたかと思えば、2つのコーヒーカップの縁を接触させた。


 コーヒーカップを複数使うことで、ラテアートの総面積を増やしたのか。3Dラテアートはコーヒーカップの上に作るものだが、複数使ってはいけないというルールはない。牛乳を凝固させることで立体化を可能とし、通常よりも自由度が高く、より複雑なラテアートを描くことができる。ミルキューを乗せる技術以上に、発想の柔軟さが今まで以上に問われている。


 何度か動画で投稿したこともあるが、どれもごく簡単なもので、大会入賞どころじゃない。


「凜、僕にも3Dラテアート、教えてくれないか?」

「……あず君でもできないことってあるんだ」

「あるぞ。凜は僕よりもずっとラテアートの素質がある」

「3Dラテアートはミルキューを乗せるだけの簡単な作業だけど」

「僕が教えてほしいと言ったのは技術じゃない。斬新な発想だ。シグネチャーはともかく、3Dラテアートは模倣しかできない。新しい作品をたくさん作ってほしい。その中に世界大会攻略のヒントがある」

「えー、ホントかなー」

「本当だとも。新しい発想が入った作品を作るのは本当に難しい。凜はそれが当たり前のようにできる。これは大人よりも子供の方が遥かに長けている」

「子供じゃないもん……」


 両頬を膨らませながら僕の顔を見上げる凜。周囲が笑い出すと、凜は千尋に突っかかった。


 怒った時の伊織みたいで可愛い。白いシャツの上から着用している藍色のオーバーオール、サクランボを模したヘアゴムで巻かれた髪型、どれも凜の子供っぽさをより一層強調している。傍から見れば小学生だが、大きな力を持っている。璃子が推薦したくらいだし、何か光るものがあるはずだ。


 包囲網が敷かれた強化合宿は、僕にとっても立派な練習場所となっていた。

読んでいただきありがとうございます。

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