39杯目「広がっていく秘密」
段々と僕の秘密を知る人が増えていく。
厳密に言えば、脅されたらお金を出すレベルじゃなく、できれば内緒と言っていいレベルだ。全世界に公開されたら困るようなことはまずしていない。
当たり前のことだが、これが意外と難しい。美咲たちの場合は、秘密保持が来店条件となっている。今のところはこれで等価交換だ。紗綾と香織もクリスマスに誘ったのだが、既に他の友人に別のクリスマスパーティに誘われて来れなかった。
――時は流れ、2007年がやってくる。
僕と璃子は年末年始ということもあり、久しぶりに実家へと戻る。どこか懐かしい感じがする。実家のある商店街は年末年始なのか、がらーんとしている。店はどこも休みだった。今頃みんな、のんびりと年末年始のスペシャル番組を見ているのだろう。
みんながそうこうしている間にも、この年に売り出すコーヒーのアイデアを考えていた。売れるコーヒーを出すだけでは駄目だ。売れるカフェにしなければ。そのためには、バリスタの大会に出て、店を宣伝する必要がある。実家に帰るまでの間、片っ端からバリスタの世界大会をネットで調べまくった。
――本当に色んな大会があるんだな。
だが今のままでは通用する気がしなかった。
去年の大会だって、最高のコンディションだったから勝てたようなものだ。もっと練習して、色んな大会に出てみようと初めて思った。ここまでに何度か税金を払わされたが、払った分の対価を享受した覚えがない。当然ながら、うちの親には仕送りなんてできる状態じゃない。むしろこっちが欲しいくらいだ。家賃を親に負担してもらっているが、うちの親は以前より貧しくなっていた。
黒字スタートできたのは幸いだが、手取りはギリギリ生活ができる程度だ。
これが、低身長、低学歴、低収入が揃った三低男子だ。
無事に年を越せたのはいいが、店を成功させたとは言い難い。
元日には親戚の集会に参加する。リサたちに僕が実家に不在である件を尋ねられた。
「あず君、この頃何度か遊びに行ったけど、全然家にいないよね?」
「! えっと、それはその……」
「お兄ちゃんこの頃散歩が趣味になって、遠くまで散歩に行ってたんだよね?」
璃子が慌てながらも機転を利かせてくれた。渡りに船だ。ここは話を合わせよう。
「そ、そう。そうなんだよ。僕運動好きだからさ」
「なーんだ、そういうことかー。あず君、腹筋がうっすら割れてるもんね。昔は生粋のインドア派だったのに随分変わっちゃったねー」
変わってないんだよなー。単に自分の店にいるから実家にいないだけなんだけど。
璃子が誤魔化してくれなかったらどうなっていたか……。
「そういえば、璃子ちゃんも家にいないこと多いよね?」
今度は吉樹が璃子の不在を指摘してくる。こういうところは妙に鋭いよなー。
「私は友達の家に遊びに行ったり、一緒に勉強したりすることが多いし、全然家にいないんだよね」
「へー、じゃああず君も友達と遊びに行ったりするの?」
「僕、友達いないんだよね。だから1人で散歩行ってる」
冷や汗をかきながら答えた。誤魔化すと後でボロが出るし、自分に嘘をつけなかった。
僕にとって友達というのは、時間泥棒でしかないのだ。
「ご……ごめん。そういえばあず君、集団苦手だったよね」
「いいんだ。気にするな」
「じゃあさ、今度僕と一緒に散歩行こうよ」
機嫌を良くした吉樹が唐突に僕を散歩に誘ってくる。
えっ!? 何でそうなるの!? でもここで断ったら怪しまれるだろうし、ここは店のためだ。
「い、いいよ……じゃあ今度の休みでいいかな?」
「うん、じゃあ迎えに行くよ」
「あー、いやいや、僕が迎えに行くよ」
「えっ? いいの?」
「いいんだよ。これも散歩の内だ」
こうして、僕は散歩好きの高校生という偽りのキャラクターが親戚の中に根づいた。
うう……どうしよう。運動自体は好きだし、この美しい体を維持するには必須項目だ。
しかし、この寒い季節に散歩はきつい。どうする? 毎日起きた後の準備運動として腹筋とかダンベルとかしてるけど、このメニューに散歩が追加されるのか。
運動自体は気持ちの良い目覚ましにもなる。何とか継続できたわけだが、散歩は僕の体力が持つかどうかが心配だ。どこまで遠くへ行くかにもよるが。
言い訳を繰り返し、この場は何とか誤魔化したが、疑いが晴れる様子はなかった。僕が基本的に引き籠りであることは既に知られていた。
実家に戻ると、うちの親から店の状況を聞かれた。
「店はどうなの?」
「順調だけど」
「常連はできたのか?」
「できたけど」
常連ができたのは事実だ。だが順調なのは嘘だ。とても貯金ができるような状態じゃなく、生活費を支出すれば、貯金はあっという間にゼロになるし、休んでいる暇はなかった。
「じゃあ2008年までは頑張ってね」
「えっ……2008年までってどういうこと?」
「話し合って決めたの。あず君のお店が3年続いたら、店が成功したと見なして独立を認めるってね」
「その頃にはあず君も18歳だし、きりがいいと思って、猶予期間は創業から3年にするって決めた」
「……」
創業から3年とは無茶なことを。1年目でヒーヒー言ってる状態だってのに勘弁してくれよ。大体3年続いたとしても、その後潰れてしまえば、結局借金は返せないままだぞ。
とはいえ親のお陰で起業できた手前、逆らうことはできなかった。
渋々親の案に乗ることにしたが、3年は長いな。
要するに、店が潰れないまま2009年を迎えなければ、僕は一生親の言いなりルートが確定してしまうわけだ。一応店が途中で潰れた場合の話を聞いておいた。ここが僕の人生の分かれ目だと思った。うちの親が言うには、親父の同級生の1人が東京の大手コーヒー会社の社長をしていて、うちの店が潰れた場合に備えて一度会わせておきたいらしい。
まだ僕を大手の会社に入れることを諦めてないのか。
こういうのを有難迷惑って言うんだよなー。年末年始はどこのカフェも閉まってるし、逃げようにも逃げられない。親父の同級生は僕を気に入っているらしい。原因は親父が僕のラテアートを写真に撮って同級生に見せてしまったことだ。しかもその同級生が岐阜市に帰省している。
明日にも僕に会いに来るらしい。
おいおい、聞いてねえぞこんな話。ていうか僕の病気忘れてるだろ。
親父の同級生は僕がどんな子かを確認したいらしい。
一応、目を合わせられないシャイな子だと釘を打ってくれたらしいが。
「というわけだからさ、一度だけ会ってくれないか?」
「……何でもっと早く言わなかったわけ?」
「あいつの方から急に岐阜に戻るってメールがあったからさ、それであず君のことを話したら、是非会いたいって言ってきたんだ」
「……会うのはいいけど、後ろ向きでいいか?」
「ああ、いいぞ。しかもな、あず君よりも3つ上の娘さんを連れてくるそうだ。一度会ったことがあるんだけどな、めっちゃ美人だぞ。彼女もあず君に会いたがってた」
――マジかよ? もうそんなところまで話が進んでいるとは。
しかもこの話にお袋まで乗っかってきた。
「じゃあその子、社長令嬢ってことでしょ? あず君、その子と仲良くなって結婚したら、貧乏生活から脱出できるんじゃない?」
「何逆玉狙わせようとしてんだよ。ていうかそんな理由で結婚とか絶対嫌!」
残念なことに、うちの親は拝金主義者である。
お金のために卑怯なことまではしないが、何よりもお金が大好きなのだ。
僕はお金には興味がない。あくまでも大半のことができるツールとしか思っていない。だが世の大人たちはそうは思っていないようだ。稼ぐことが幸せならそれでもいいが、稼いだ後はどう生きるつもりだろうか、そこまで分かった上で実行しているのだろうか。僕はひたすら暇潰しに生きるという結論を出している。お金に興味を持たないことは許されても、稼がないことは許されない。それが資本主義という名の呪いなのかもしれない。完全独立を果たしてから店が潰れてしまった場合、100%自己責任で自立して生きるか、親が敷いたレールを歩くかを選択できるらしい。それなら僕は自己責任を取る。
この日は璃子と一緒に実家で寝た。布団は来客用だが、結局僕ら以外は誰も使わなかった。
「――ここで寝るの、久しぶりだね」
「そうだな。でもどちらかと言えば、泊まりに来た気分だ」
「……ここもお兄ちゃんの家だよ」
「まさか僕の進路を勝手に決められるとは思わなかったな~」
「3年続いたら独立を認めてもらえるんだよね?」
「うん。ただ、うちの親が親戚からの借金をどうするかは別問題だ。300万円なんてそうそう用意はできないし、独立を認められた後も、しばらくは内密にするかも」
「じゃあ……もう店を成功させる以外に道はないね」
璃子が覚悟を決めたように僕と同じ希望を持った。
「やっと分かったみたいだな」
「お兄ちゃんが店を成功させて、親の借金を親戚に返す。それを今年の目標にする」
「あのなー、それは僕の課題であって、璃子の目標じゃないだろ。璃子は璃子で自分の夢を目指せばいいんだ。そのための支援は惜しまないから。なっ」
念を押すように璃子の夢を応援する。
夢とか目標とか課題とか、そういったものを考えるんだったら、まずそこに自分がいなきゃ駄目だ。あくまでも他の誰かじゃなく、自分の意思で自分のために羽ばたかないと。
「そんなこと言ってられる状況じゃないでしょ。私はお兄ちゃんが心配で、今はとても夢なんて追いかけようとは微塵も思えないかな」
「気持ちは嬉しいけど、その考え方は璃子の人生を殺すことになるぞ」
「……」
璃子はだんまりしてしまい、複雑な心境のまま眠りに就いた。
翌日、親父の同級生のおじさんがやってくる。しかも自分の娘を引き連れてだ。
実家のインターホンがゆっくり鳴った。客が来た時の押し方だ。
「はーい。今行きまーす」
お袋が玄関まで相手を迎えに行く。1階からは会話が聞こえていた。
「どうも穂岐山です。おっ、和人じゃん」
「穂岐山、久しぶりだなー。ん? 娘さんか?」
「ああ、去年大学に入ったばかりなんだ」
「こんにちは。お父さんがお世話になってます」
陽気な声をかけているのは穂岐山美羽。僕より3つ年上の大学1年生だ。
清楚で大人しく、良家のお嬢さんという印象だ。璃子と同じく可愛らしいポニーテールであり、染めたての茶髪が輝いている現代っ子。そして何より……でかい。
「おーい、あず君、璃子、早く降りて来い」
僕らはそう言われると、2階からのっそりと下りていく。僕は璃子の後ろから下りた。1階まで移動すると、見知らぬ顔が2人もいた。姿を確認すると、すぐに璃子の後ろに隠れた。僕の体はこれ以上近づくなと言わんばかりにブルブルと震えていた。
「こっちが俺の娘の璃子、後ろに隠れてるのが、息子の梓だ。あず君と呼んでやってくれ」
「えっ!? 男子なんですか? とてもそうは見えないですけど」
「これでも男なんだ。こいつは昔から変わっててな。女の子向けのものばかり好きになるんだ。しかも先代に似たのか、超がつくレベルのコーヒー好きだ」
親父が僕らを雑に紹介する。もっとマシな言葉を思いつかなかったのか? 璃子に至っては名前しか紹介してないし、もっとなんか言ってやれよ。
「ふふっ、面白い子ですね」
「へー、この子があのラテアートを描いた子かー」
この時、僕は璃子と親父とお袋、親父の同級生のおじさん、穂岐山の6人と一緒にいた。僕は親父たちの話につき合わされることになり、僕は部屋の端っこの方で後ろを見ながら話すことに。
「君のラテアート見たよ。凄く繊細だね」
「――そりゃどうも。親父が迷惑をかけたな」
「あず君、ホントに人と目を合わせるの苦手なんだねー」
「……せっかくで悪いけど、僕みたいなのは雇わない方がいい。組織だとポンコツだから」
親父の同級生に迷惑がかかれば親父の顔に泥を塗ることになる。
これは集団組織に絶対に属さないという抵抗の意志の表れだ。
「ワールドデザインカプチーノチャンピオンなのに?」
一瞬、僕の顔色が空色のように青褪めた。
――はぁ? ……何でそんなこと知ってんだ? 嘘だろ?
「えっ!? ……親父……僕のこと話した?」
咄嗟に親父を睨みつけながら尋ねた。
「話してねえよ。2人共ニュースで知ったんだよ」
親父が片手を振りながら否定する。ニュースで知ったってどういうことだ?
「ニュース? まさか日本にも伝わったとか?」
「そうだ。アジア人初のワールドデザインカプチーノチャンピオンだからな。テレビで放映されるほどじゃないけど、知ってる人は知ってるってことだ」
親父はドヤ顔で自分の手柄のように言い切った。
「良かったぁ~」
もしテレビで放映されていたら、僕の事情がばれていたかもしれない。
当時は野球とフィギュアスケートが大人気だった。メジャーリーグで毎年200本安打を達成している某日本人メジャーリーガーや、天才少女と呼ばれた某フィギュアスケーターの話題で持ち切りだ。
コーヒー業界はマイナーな部類だし、放送するに値しないと見なされたのだろう。いや、単に人気者たちの陰に隠れているだけなのかもしれん。
「たまたまヴェネツィアにいた日本人記者がその大会に居合わせてたんだよ」
「じゃあ、あず君にも会ったんじゃないのか?」
「それが、声をかけたらいきなり怖がって、カフェの奥まで逃げちゃったんだって」
「お兄ちゃん……本当なの?」
「うん……本当だけど……」
「はぁ~。うちの兄は昔から社会性が壊滅的なんです」
――まあ、そう言って誤魔化すしかないよな。
僕の社会性が壊滅的なのは間違いないし、そこは誰もが同意せざるを得ない。
「そうなのかー。でもまさか優勝とはねー。まだ高校生なのに凄い」
「ああ、自慢の息子だ。高校には行ってないけどな」
よく言うよ。昔は問題児のように扱ってたってのに。
もはや手の平返しというより、手の平ドリルだな。
「あず君は将来バリスタになりたいの?」
「うん、そうだけど」
「あたしもバリスタ目指してるの。よかったら色々教えてよ」
「バリスタの基礎知識なら、ネットで調べてたら出てくるけど」
「あたしが知りたいのは基礎じゃなくて、一流のバリスタになる方法なの」
「一流のバリスタならいくらでもいる。その中で僕から教わりたい理由は何?」
「……えーと、それは」
穂岐山が回答に詰まった。どうやらそこまで考えていなかったようだ。
「お兄ちゃん、なんか面接みたいになってるよ」
「ふふっ、はははははっ!」
「穂岐山、何がおかしいんだ?」
「気に入った! この子が高校卒業したら、俺の会社で雇うよ」
「それ本当か?」
「俺が嘘つくわけないだろ」
あーあ、また性懲りもなく、僕の人生路線を規定し始めちゃったよ。
親父はうちの店が潰れた時の保険として、穂岐山珈琲への入社を検討しているようだ。うちの店が潰れたら、僕は一生うちの親の言いなりにならないといけない。失敗すれば東京で懲役刑か。それだけは何があっても絶対嫌だっ!
穂岐山が少しずつ近寄ってくるが、僕は後ろ向きで気づかなかった。
「そういえば、葉月は今何やってんだ?」
「今はカフェのアルバイトだ。元々は大手でブイブイ言わせてたんだけどな、バブル崩壊のせいで全部台無しだ。生活も変わっちまった」
「そうかー、それは大変だなー。俺でよかったら、相談くらい乗るぞ」
「ありがたいねー。もうあんたには頭が上がらねえかもな」
「大袈裟だなー」
親父の同級生のおじさんは穂岐山健三郎という人だ。
話を聞く限り、この人は『株式会社穂岐山珈琲』という大手コーヒー会社の社長である。元々は岐阜市民で、親父が勤めていた会社の同期でもある。本社は東京にあるため、今は都内に住んでいる。
――ということは、途中で辞めたってことか?
「経営は順調か?」
「お陰様でね。バブル崩壊の時は大変だったけど、社員たちが踏ん張ってくれたお陰で乗り切れたよ」
親父とは対照的だ。なるほど、つまりは元サラリーマンの社長ってことか。
穂岐山社長が言うには、僕は東京のバリスタの間では有名になっているらしく、ヴェネツィアで僕に声をかけてきた日本人は、東京から大会を見に来た記者だったそうな。インタビューしに来てたのか。穂岐山社長は同じ岐阜県民として誇らしいねと言っていたが、僕は岐阜県のためでもなければ、日本のためでもなく、店の宣伝のために参加したにすぎない。僕にとって優勝は店を宣伝する手段であって、これ自体が目的になったことはない。優勝が目的になったら、それはバリスタではなくただの賞金稼ぎである。優勝よりも店の方が大事だ。親父は穂岐山に対してお見合いのように紹介する。
また悪い癖が出ている。一応釘だけ刺しておくか。
「僕はカッコ良くないし、力仕事もできないし、社会性も壊滅的。つき合いを持たない方が賢明だぞ」
予めこっちの欠点を晒しておけば、まず近寄ってくることはないだろう。
男らしさのない男なら幻滅するだろう。だがこの女は違った。
「あたしはあず君なら大歓迎だよ。可愛いし、手先も細かいし、一見クールだけど、誰よりもコーヒーに対して情熱を持ってる」
「何でそこまで知ってるんだ?」
「お父さん知らないの? あず君は動画サイトにラテアートとピアノの動画を投稿してるんだよ!」
「「「!」」」
僕、璃子、穂岐山社長が一斉に口を大きく開けた。
「そうなのか。後で見てみようかな」
「いやいやいやいや、見なくていい! 頼むから見ないでくれ! 恥ずかしいから!」
僕後ろを向いたまま、慌てて止めに入る。
動画がばれただとっ!? 全部英語にしたはずなのに……何故だ? まずいな――これは早く手を打たないと、僕が想定する最悪のシナリオに辿り着くかもしれない。
「あず君、どうしたの?」
「親父、僕の事情を全部説明した上で口止めしといてくれ」
「ああ……分かった」
慌てて実家から出ようと立ち上がり、靴を履いて外に出ようとする。
「おいおい、どこに行く気だよ?」
「帰るんだよ。僕がいるべき場所へ」
動画まで網羅されているなら、事情を全部話した上で秘密の共有をするしかない。僕が店を成功させるまでは、親戚にばれるわけにはいかないんだっ!
そんなことを考えながら葉月珈琲まで走り続けた。あそこは僕の居場所ではないのだ。のんびりと家族団欒なんてしてる場合じゃねえ。あのやり取りで気づかされた。いつかはばれるだろう。何もかも全てが。だが今はバリスタの仕事に熱中するべきなんだ。後で何を言われても大丈夫なくらいに、稼ぎ続けなければいけないんだ。悪いけど、僕は店を潰す気もないし、穂岐山珈琲に就職する気もない。
僕の情報が載ったニュースや動画だけで、ここまで見抜かれたのは初めてだ。
穂岐山美羽……あいつは一体何者なんだ?
後で親父から聞いのだが、彼女は僕を動画で知ったらしい。しかも英語が分かるのか、動画のタイトルや説明まで全部読んでいたのだ。当然店をやっていることも知られていた。
まいったなこりゃ。某世界的な動画サイトの宣伝力が裏目に出ている。
このまま親戚一同に全てがバレることを恐れるしかなかった。
創業3年以内に倒産したらゲームオーバー。
今回は新キャラも出てきます。
穂岐山美羽(CV:喜多村英梨)
穂岐山健三郎(CV:大和田伸也)