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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第15章 最果てのバリスタ編
351/500

351杯目「内気なロースター」

最果てのバリスタ編スタートです。

今度はどんな場所で戦いを繰り広げるのかをお楽しみください。

 東京を後にした僕は葉月珈琲に戻り、根本落選の理由を伝えた。


 真実を知った穂岐山社長はどこか迷っている様子だ。あいつにも才能がある。ここで終わらせてしまうには惜しいと思えるくらいには……根本が最後の望みに懸けて準備をしているかは知らん。落とされた理由は、穂岐山社長の誤解によるものであっただけに、穂岐山社長も後悔の念を隠せずにいた。


 美羽が言うには、すぐさま根本の元に謝罪へと赴き、無事に了承を得たんだとか。


 9月中旬、コーヒーイベントのため、東京へと場所を移した。


 選考会の会場には多くの人が集まり、過去最多の人数となっている。


 コーヒーイベントに選考会専用のブースが追加され、マイナー競技会もコーヒーイベントに誘致されることが決まり、参加人数も観客も更に増えた。もはやこっちの方が正規のオリンピックに見えるくらいには盛り上がりを見せている。それを考えれば、大会は祭りの一環でなければならないことがよく分かる。


 コーヒーイベントは2021年からバリスタオリンピックと同様、1週間にわたって続くことが決まったが、メインとなる大会は大会3日目には終わるため、僕らは途中でコーヒーイベントを切り上げる形となっている。ワールドコーヒーイベントが2021年からはバリスタオリンピックの有無にかかわらず、1週間分のイベントとして開催されるようになったことを受け、便乗したものと思われる。


 ――大会1日目――


 僕、伊織、千尋、桜子、皐月、弥生の6人は会場内のカフェで寛いでいる。


「あの、根本さんは本当に来るんでしょうか?」

「分からん。選考会は大会5日目からだ。もし大会4日目が終わる前にキャンセルする人が出てこなかったら、あいつに参加する機会はない。僕が助けてやれるのはここまでだ」

「松野さんに聞いたんですけど、選考会に参加する30人の内、会場に来ているのは23人だそうです」

「まあ、流石に初日からは来ないだろうな。選考会に参加する場合は、企業単位だと他の同僚も行くわけだし、初日から同行することもあるけど、個人事業主の場合は参加する前日まで地元の店とかで練習できるし、東京が地元の人ならいつでも来れるからな。移動の負担がない所に住むのも作戦の内だ。うちは大会前から練習場所を確保することを重視してる」

「根本さんの競技には隙がないですし、前回の選考会でも圧巻の競技でした。また見たいですねー」


 僅かな希望に想いを託す弥生。


「このまま欠場してもらっても構わないが、それはそれで張り合いがないな」


 腕を組みながら皐月が言った。


「ふふっ、なんか他の人には全く勝ち目がないみたいな言い方だね」


 根本のことを内心では心配しながらも、第一に伊織と千尋の本戦内定を願っている。


 いつも一緒にいる皐月と弥生だが、思ったことをそのまま言い合える仲なだけあって、傍から見れば遠慮も配慮もない会話だ。公の場でここまで言えるのは、それだけ人慣れしている証でもある。2人はまだ参加資格こそないが、サポーターとして早くから経験を積むことができている。


 皐月は伊織のサポーターに、弥生は千尋のサポーターになった。この2人がサポーターとしてバリスタオリンピック本選進出ができるかどうかは伊織と千尋に懸かっている。エースが勝てなければ、後に続く者たちの経験値にも影響が出るからこそ、責任が重く伸し掛かるのだ。


「桜子さんはJCRC(ジェイクロック)に参加するんですよね?」

「はい。大会4日目にグリーングレーディングの発表をして、その後で結果発表なんです。決勝のスコア自体はもう出ているので、チャンピオンは決まってるんですけど、お客さんからはグリーングレーディングの発表でスコアが決まるように見えてるんです。演出のためでしょうか?」

「というより、最後まで望みを持たせるためだろ。8月の決勝時点で発表するのも味気ないし、トロフィーの授賞式を全部コーヒーイベント内で行うためだろうな」

「何だか緊張してきました」

「みんながいる前で発表してこなかった今までがおかしかった。やっと正当な評価を受けるようになったと思えばいい。僕が大会に出ていた時なんて、決勝ですら狭い部屋でやってたからな」


 しかも放送されることさえなかったのだから、競技会としては異例の出世だろう。


 伊織と千尋は、皐月と弥生とは元々仲が良く、コーヒーの話題ですぐに打ち解けた。


 コーヒーがきっかけで結ばれた人も多いだろう。向上心溢れる者たちばかりが集まれば、足の引っ張り合いに飲み込まれる心配もないだろう。出会うべくして出会ったみんなだ。伊織たちはコーヒーカップを片手に、情報交換をしながら知見を深めている。伊織が新しいアイデアに気づくきっかけを与えたことからも、かなりの刺激になっていることが窺える。


「伊織さん、千尋さん、大会5日目からはよろしくお願いします」

「よろしく頼む。ここまで大きな舞台に出るのは初めてだ」

「こちらこそ、よろしくお願いします。サポーターは大変ですけど、競技中は間近で競技するバリスタを見ることができるので、それだけでも得るものはあると思います」

「伊織さんって、あず君のサポーターを務めた経験があるんですよね?」

「はい。あず君から学べることはとても多かったです。大勢に見られている中で、冷静に競技することができるようになったんです。あず君が自分も緊張してるって言った時は、何だかホッとしました。あず君も緊張してるんだなって思うと、気が楽になるんです。自分だけじゃないって」

「伊織さんも緊張するんですか?」

「もちろんです。大会中はいつも緊張してます。でもお店にいる時の雰囲気に慣れているので、いつでも本来の力を発揮することができるんです。2人はお店にいる時、緊張しますか?」

「いや、全然緊張はしないな」

「大勢人がいても緊張しないのは思い込みで、自分自身を無意識の内に洗脳しているからです。大会の場でもできるようになれば、緊張していても自然な競技ができます。そのために必要なことは、お店の中でお客さんを相手に競技をすること、大会で場数を重ねること、この2つが大事なんです」

「「「へぇ~」」」


 皐月と弥生だけでなく、桜子までもが同時に頷いた。


 自慢げに講義をする伊織もなかなか可愛いな。これはコーヒーが進む。


 みんながコーヒーを飲み干したら店を出る合図だ。伊織と千尋は穂岐山珈琲の社員たちが見学できることを条件に、穂岐山珈琲本社ビルに練習場所を設けることが認められている。会社という枠を超え、知識や技能まで提供しているのは、選考会が終われば、会社に関係なく日本代表だ。


 違う会社であっても、日本代表なら優勝してほしいと思うのは自然である。


 穂岐山珈琲は以前からこの方針を貫いており、これには僕も助けられた。


「穂岐山珈琲の人って、勉強熱心なんだな」

「葉月グループのバリスタと決定的に違うのは創造性だ。穂岐山珈琲の連中は、学習能力は高いけど基礎止まりっていうか、今までに得た知識を元に、新しい発想を取り入れるのは不得手だから、減点方式の色が強い国内予選は活躍できるけど、加点方式の色が強い世界大会は苦戦する」

「穂岐山珈琲が世界大会で優勝できない理由はそれか」

「失礼ですね。穂岐山珈琲もその弱点は克服しつつあります」


 不意に後ろから高めでキザな声が聞こえた。


 声の正体を見ようと振り返ると、ジト目で皐月を見ている根本が佇んでいる。


「根本さん、来てくれたんですね」

「誰かさんが僕に最後のチャンスを与えてくれましたからね」

「じゃあここで練習するんだ」

「ええ。実は1人欠場することになったんです。そこで僕が代わりに入ったんですよ」

「欠場ってことは、病気か何かですか?」

「いえ、松野さんが選考会を辞退したんです……僕を参加させるために」

「「「「「!」」」」」


 松野……あいつも男だな。今回が最後のチャンスって言ってたのに。


「おいおい、それは言わない約束だろ」

「松野さん」

「前回大会でお前のコンディションを整えられなかったのはコーチである俺の責任もある。だからその贖罪としてだ。実を言うと、本当は石原が辞退するって言ってたから、それで俺が名乗り出たってわけだ」

「石原さんが?」

「ああ。石原だけじゃなく、みんな反省してたぞ。俺たちが何故葉月珈琲に勝てないのか、お前のお陰でその理由が浮き彫りになったからな。だから優勝しろ。俺の分も頑張ってくれ」

「……はい」


 機械的な返事ではなく、自らの意思で言葉を返した。


 それほどにまで期待されている。奇しくも僕と松野の愛弟子対決となった。


 穂岐山珈琲初の優勝を懸け、根本は別室で大会の準備を始めるのだった。


 ――大会4日目――


 3日後、コーヒーイベントも中間地点を過ぎた。


 各競技会が行われたが、例年よりもレベルは低く、各社の主力は選考会に狙いを定めている。いつもは国内予選ファイナリスト止まりとされている連中が優勝を狙える数少ない機会だ。


 僕は観客席からJCRC(ジェイクロック)のステージ上でグリーングレーディングの発表をしている桜子を静かに応援している。あがり症の桜子は顔を真っ赤にしながらマイク越しに概要を話している。


 全員の発表が終わると、すぐに結果発表が始まった。


 プレゼンの内容からして、勝負はもう見えていた。


 ファイナリスト5人が順位の低い順に全く色の違うトロフィーを受け取っていく。


「今年のジャパンコーヒーロースティングチャンピオンシップ優勝は、株式会社葉月珈琲、葉月珈琲岐阜市本店、朝日奈桜子さんです。おめでとうございます」


 観客席から拍手が送られ、前回チャンピオンから優勝トロフィーをその小さな手で掴み取る桜子。


 千尋も大会3日目にJBrC(ジェイブルク)の前回チャンピオンとして優勝トロフィーを今年のチャンピオンに手渡している。黄金に輝くスプーンが土台に固定化されたトロフィーで、昔のものよりもコンパクトだが、今の桜子を称えるには十分な大きさだった。マイナー競技会を含めれば、これで2回目の国内予選優勝だ。WAC(ワック)で優勝した勢いはまだ残っていた。ここからが本当のスタートだ。


「桜子さん、おめでとうございます」


 伊織に続いて千尋たちも祝いの言葉をかけた。


「ありがとうございます。皆さんのコーヒーを手掛けている内に、焙煎が得意になったみたいです」

「元から得意だったんだよ。時間対効果を見れば分かる。これで分かっただろ。桜子の適性は間違いなくロースターだ。エアロプレスの大会で結果を残せたのも、焙煎されたコーヒーの風味特性を逸早く見抜いたからで、ロースターとしての適性がなければ、あの短時間で見抜くのは無理だ」

「そうですね。バリスタを目指していた手前、ちょっと複雑ですけど」

「ロースターもバリスタの一種だ。コーヒーを淹れるよりも炒る方がたまたま得意だっただけで、それがバリスタ競技にも活かされているからこそ、バリスタの大会でも結果を残すチャンスは十分にある」

「あず君、私、次の目標ができたんです。2027年のバリスタオリンピックに参加して、ロースター初の優勝を目指します。自分で焙煎した豆で勝負してみたくなりました」

「大きく出たな。桜子がそのつもりなら、全力でバックアップするぞ」

「はいっ!」


 乙女のような顔で桜子が言った。最後の写真撮影も終わっていたが、その顔はまだ赤かった。


 実績を重ねたことで自分に自信が持てて何よりだ。もうあの時の桜子じゃない。向上心もなく、ただ働いて生きていくので精一杯だった頃とは大違いだ。


「伊織ちゃん、選考会の競技順が発表されたよ」

「えっ、もう発表なの?」

「むしろ遅いくらいだよ。1人入れ替わったわけだし、ギリギリまで粘ってたんだろうね」


 協会側の心境を代弁するかのように千尋が言った。


 選考会での競技順が発表されると、会場中央にある掲示板に競技順と順番が張り出された。


 何の因果だろうか。伊織、千尋、根本の3人は、揃いも揃って大会7日目だ。


 30人の参加者の内、大会5日目から7日目にかけて1日10人ずつ競技を行う。


 競技時間1時間を要する長丁場だが、選考会はレパートリーポイントのない一度きりの競技だ。僕に至っては競技時間を12時間も経験した後であり、1時間がとても短く感じる。一度ハードルを越えてしまうと、何でこんなものを難しく感じていたんだろうと思ってしまうものだ。


「私が7日目最初の競技者ですか。早く終わる分楽ですね」

「僕は昼からだね。根本さんは最後か。1番不利な条件だね」

「油断はできんぞ。仮にも前回の選考会で優勝してる。日本の選考会史上初めての連覇が懸かってる」

「皐月ちゃんの言う通りだと思いますよ。松野さんが根本さんのために辞退することを以前から根本さんに教えていたなら、ちゃんと準備をしていても不思議ではありません」

「僕は負けないよ。うちは世界大会で優勝を重ねてるし、根本さんが国内予選に滅法強いことは知ってるけど、葉月珈琲の実績には遠く及ばないよ。それに今回はレパートリーポイントなしだから、全てのアイデアを注ぎ込む場でもあるし、本戦とはまた違った面白さがある。前回は真理愛さんが本戦決勝までいってくれたし、次は僕の番だよ。やるからには優勝を目指す」


 自信満々に語る千尋。普段のクールで知的な姿とは大違いだ。


 感情を剥き出しにするのは、それだけ力を入れている証でもある。


 千尋はこれまでのデータが示す通り、ゲイシャやシドラといった高級豆で勝負するつもりだ。それに対して伊織は高級豆に頼りきらず、コーヒーの個性を活かすことを重視している。特に力を入れているのは自らが苦手としているシグネチャーだ。桜子のアイデアを組み込んだ上で隙をなくそうとしている。


 千尋が長所を活かす競技なのに対し、伊織は短所をなくす競技姿勢という真逆の姿勢なのは意外だ。


「2人共桜子さんが焙煎した豆を使うんですか?」

「うん。桜子ちゃんの豆が優秀なのは、今回のコーヒーイベントで証明済みだし、大会が終わったらオファーが殺到するだろうなぁ~。また引っ張りだこになるよ」

「どうして私が引っ張りだこになるんですか?」

「バリスタ競技会ではコーヒーを改造することは認められていない。でも精製から焙煎といったプロセスには特に規制がないし、大会で結果を残しやすいコーヒーを作れるようなプロセスを踏んでいるコーヒーファーマーとロースターは必然的に取り合いになるってわけだ。同じ種類のコーヒーでも、プロセスに関わる人が変われば風味も変わる。コーヒー業界の地位が上がったことで、大会で結果を残した農園とロースターは、コーヒー会社と有利な条件で契約を結べるようになった」

「あぁ~、だから大会が終わった直後に色んなコーヒー会社から契約の話を持ちかけてきたんですね」

「契約の話を持ちかけたって、どういうこと?」

「さっきあず君たちと合流するまでの間、コーヒー会社のスカウトの人から話しかけられたんです。それも1人や2人どころか、数十人はいました」


 さっきの桜子は多くの人に囲まれていたが、伊織たちはてっきり彼女が優勝したから注目されていたものとばかり思っていたようだ。だが彼女を囲んでいたのはスカウトだった。


 全国から才能のある人を集めるのは穂岐山珈琲だけではなくなっていた。


 特にバリスタやロースターにプロとしての価値が出てきた今、コーヒー会社はプロ球団のような立ち位置となっているのだ。必然的にバリスタを目指す人が多く現れることになる。大変嬉しいことだが、それだけ競争が激しくなれば、頂点に君臨する者と、落伍する者が出てくることも必至。


「何を言われたんですか?」

「コーヒー会社に所属するバリスタたちと相談しながら、要望通りに焙煎豆を提供する仕事です」

「年俸はどれくらい提示されたの?」

「1番多い額で、1億円でしたけど」

「……いっ、1億円って、もはやアスリートじゃないですか」

「アスリートだ。むしろ今までが過小評価されすぎてた。難しい仕事なのに不当に安月給で、数自体もあんまり多くなかったからな。1億円は極端な例だけど、トップクラスのロースターであれば1000万円は貰っていい仕事だ。コーヒーの美味さの半分はロースターの腕で決まるんだ。業界を背負ってると言っても過言じゃねえ立場だし、桜子がそれだけ評価されてるってことだ」

「でもお断りしました」

「ええっ!?」


 脊髄反射で声を出す伊織。すぐに口を塞ぐと、落ち着きを取り戻した。


「……断ったんですか?」

「はい。私は葉月珈琲にいたいので。それこそ、お金よりもずっと価値のある体験ができました。あず君たちのお陰で、私は生きる力を取り戻すことができました」

「あーあ、せっかく出世するチャンスだったのに、勿体ねえことしちまったな」

「あず君は私にいなくなってほしいんですか?」


 半ば怒り気味に声のトーンを下げる桜子。こっちの意図がまるで分かってないようだ。


「そーゆー問題じゃねえよ。うちにだって優秀なロースターがいてくれるに越したことはない。でもな、もっと自分のことを考えてもいいんだぜ。葉月グループだって永久不滅じゃねえし、実力のある奴はみんな後継者を育成して独立していく。僕はね、うちを離れても生きていける人間を育てたいんだよ。本当は親と学校がやらないといけないことだけどな。今のこの国には、雇われ社員を量産する能力はあっても、自我を持って自立した人間を育てる能力はない。社会に出た時に飯を食える人間を育てた時点で葉月グループとしての役割は完了してる。もう自分で道を選んでいいんだ。もっとも、葉月グループが好きというなら、ポストくらいは与えてもいいけどな」

「……私がここまでやってきたのは、そういうことのためじゃありません」


 唇を震わせながら訴えるように桜子が言った。


 みっともない顔色を見せたくないのか、桜子は僕らから離れていく。


 何を考えているのか全然分からないが、何か怒らせるようなことを言ったか?


 思わず首を傾げた。きょとんとした僕を伊織たちが真っ直ぐ見つめている。呆れ顔と真顔を足して半分にしたくらいの表情だが、これは僕に対して意外性を感じている時の顔だ。


 一体何を間違えたというんだ? 桜子は千載一遇のチャンスを逃した。僕はそれを指摘しただけだが、そんなことを言ってほしくはなかったと顔が訴えていた。桜子の顰めっ面は始めて見た。今年が終わればもう3年目だし、うちでは那月や響に教える立場だ。


 教える立場になるってことは、独立が近づいているってことだ。


 独立すれば不自由な思いをせず、好きな人とだけ仕事ができる。1人で家に閉じ籠っていても生きていける立派な御一人様にだってなれる。そう思えるほど対人関係に疲れているわけでもなさそうだが、あがり症の桜子にとっては、これ以上ないほど良い環境だ。


 ロースターとして家に引き籠って、職人仕事をするのが最適解と思ったのだが……。

読んでいただきありがとうございます。

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