342杯目「水泳休暇」
5月上旬、WBB優勝の恩恵を受けていた葉月珈琲は多忙を極めた。
コーヒー業界だけでなく、他の飲食業界からも目を向けられ、葉月グループの利益は更に伸びた。
だが守りに入るつもりはない。利益は全て教育に投資する。当たり前のことだ。葉月珈琲塾ではパソコンを使ったオンライン教育を充実させ、家にいても自習できる子供を育てていた。不登校児たちの中から徐々に成果を出す者が現れた影響を受けてか、公教育を放棄し、塾に入る者まで現れた。
千尋と響は6月の世界大会に向けて準備を進めている。
響は大会続きだが、こうでもしなければ、伊織や千尋と同じ土俵に立つこともできないと判断していることが見て取れる。那月が実家から戻ってくると、満足した様子で扉を開けた。
「あっ、お帰りなさい」
「伊織ちゃ~ん。久しぶりー! 元気してた?」
親戚に会ったかのように、伊織の頭を優しく撫でる那月。
「子供扱いしないでください」
「あははっ! ごめんごめん。パティスリークリタニにお客さんがたくさん集まっていて、お父さんもすっごく喜んでたの。でも店員が足りないから、しばらくは加勢しに行ってたわけ。今日から復帰するね」
「那月さんはうちの戦力なんですから、いてくれないと困ります」
「えへへ、でも誰があたしの代役だったの?」
「あたしだよ」
クローズキッチンから音もなく現れ、僕の肩に身を寄せたのは優子だった。
「優子さん!」
「そんなに驚くことないでしょー。あたしだってユーティリティーなんだから」
那月不在の間、代わりに優子がうちのクローズキッチン担当となり、新店舗のマスターとなってから3年ぶりに葉月珈琲へと戻ってきたのだ。再会した時の喜びは何物にも代え難く、生き別れた恋人のように僕に抱きついてきた時は、伊織がムスッとした顔で優子を迎え、僕と優子を引き離した。3年ぶりに再会した2人は、下手をすれば親子くらいの年齢差で、とても同じ職場にいたとは思えなかった。
優子はあの短期間で目覚ましい成長を遂げている伊織に奇異の目を向けた。
「あず君、マスターもユーティリティーになれるの?」
「ユーティリティーはマイナー店舗に在籍しているスタッフ限定の職務で、メジャー店舗への貸し出しから技能習得を目的にしているものだけど、マイナー店舗のマスターも知見を広げる目的で、自動的にユーティリティーの権利を取得することになってる」
「まっ、そういうわけだから、結奈ちゃんにマスター代理を任せて、しばらくはここにいたわけ。丁度近くに愛梨ちゃんが住んでる実家もあるし、それでしばらくは実家にいたの」
「葉月商店街の皆さんも、優子さんが久しぶりに戻ってきて、とても喜んでましたよ」
「真理愛ちゃん、メジャー店舗のマスターになったとは聞いていたけど、お客さんが毎日絶えないから、本当に驚いたなー。バリスタオリンピックが終わってから、より一層成長したって感じ。あず君に指導を受けていたあの子が、今じゃバリスタの卵に指導する立場で、指導の仕方があず君にそっくりだったの」
「とても分かりやすい教え方ですよね」
「いつかは伊織ちゃんも、真理愛ちゃんみたいに教える側になるのかなー」
伊織の手が止まり、思い詰めるように下を向いた。
那月と再会した時の喜びは既に消え、未来のことを考えていると顔が言っている。その口元は少しばかり寂しそうで、一瞬だけ唇を強く閉じた。ここを離れたくないと訴えるように、短くため息を吐いた。
「どうしたの?」
「あっ、いや、何でもないです」
「ふーん、じゃあさ、ゴールデンウイークの後、みんなで一緒にプールに行こ」
「えっ、プールですか?」
「それいいねー。最近プール行ってないから行きたいなー」
「店はどうすんだよ?」
「親戚の集会がある日はお店休みでしょ。あたしたちがプールに集合して、あず君は後から伊織ちゃんと一緒にプールに行くの。夏になってからだと、大会やら繁盛期やらで行けなくなるし、プールも人でいっぱいになっちゃうから、今の内に行くの。唯ちゃんと子供たちも連れてきてよ。ホームスクーリングは別にいいけど、たまにはどっかに出かけて刺激を受けないと」
「プールか……」
そういや、全然行ってないや。子供の頃は蛇の抜け殻みたいに肌が破れてたな。
紫や巻はともかくとして、雅も祈も病気がちだ。雅は虚弱体質を克服しつつあるが、今度は祈が虚弱体質であることが発覚し、主にビデオゲームで運動はしているが、あまり外では遊んでいない。
幸い、僕と同様に一生つきまとう程のものではないが、平均的な人よりも体が弱いという事実は変わらないため、プールに行くのは躊躇していたが、一度唯に相談してみるか。
「プールですか。いいですよ」
「唯、いつからいたの?」
「ユーティリティー制度を説明していたあたりからいましたよ。私は大賛成です。子供たちも外に遊びに行きたがっています。あず君だって、何度も外国に遠征を続けている内に、段々と体力が伸びていったじゃないですか。今の内からちゃんと運動しておけば、大人になる頃には健康な体になれるって、お医者さんも言ってましたよ」
「決まりだね」
「……しょうがねえな」
押しの強さに完敗し、久しぶりのプールに同意する。
僕がプールに行く話はすぐ身内に広まり、美羽も柚子も来ることが決定した。
プールは小学生時代の苦い思い出があるから、以前は唯と子供たちだけでプールに行っていた。海水浴は事故率が高いため、大人になってからデビューするのが無難である。のんびりコーヒーを飲んでいたかったが、たまには一緒に出かけるのも悪くないか。
もう断れない。唯も乗り気みたいだし、仕方あるまい。
プールよりも温泉に浸かりたい気分だ。4月の第1日曜日には岐阜コンがあった。運営スタッフとして駆り出されていた桜子が、男に声をかけられて困っていたんだとか。桜子もプールには来てくれるみたいだが、誘われにいくようなものだと僕は確信する。何故温泉じゃないのかと優子に聞いてみれば、温泉だったら僕と一緒に入浴できないと、自信満々にハッキリと本音を吐き出す始末だ。
やっぱりこいつ……僕に欲情しているんだ。浴場だけに。
数日後――。
親戚の集会が始まる頃、珍しく欠席し、市民プールへと足を運んだ。僕、唯、伊織、子供たちと一緒に施設に入ると、僕だけ男性用更衣室に入るが、中にいる男共が異様な目で監視するように眺めている。
「あの――」
1人の男が僕に声をかけた。ここは男性用だと言うつもりだろ。
男女別に分かれている更衣室とか浴室とか、あんまり好きになれないんだよな。
「葉月梓さんですよね?」
「そ、そうだけど……」
「えっ、マジ? あず君だー!」
起爆剤のように男が騒ぐと、その声に反応した周りの連中からサインを求められた。
男性用更衣室はちょっとしたサイン会場のようになり、少しの間、僕はサインを書き続けた。
恐らく更衣室に居座った時間は最長記録になるだろう。急いで着替え、プールまで足を運んだ。僕は全身水着を着てから長い髪をまとめ、扉を開けてプールサイドに出た。
「遅いですよ。いつまで待たせるんですか?」
スクール水着姿の伊織が両頬を膨らませている。
胴体が紺色に包まれ、真っ白で細長い手足はまるで幼子のように小さい。
まな板のように真っ平らでスレンダーなキッズボディがそばに居るだけで事案になりそうだが、僕はよく女と間違われるため、その危険はないと言っていい。
「悪いな、僕ぐらいの立場になると大変なんだよ」
「またサイン書いてたんですか?」
「サイン書くような職業じゃないんだけどな」
「それだけバリスタの地位が高くなったってことじゃないですか。私もサインを書いたことありますよ。しかも筆記体を習いましたから、あず君よりもうまいです」
胸に手を当て、鼻息が目に見えるくらいのドヤ顔で語る伊織。
なんか背伸びしてる子供みたいで可愛い。そんな彼女も22歳か。レールに乗っていれば、これでも大学4年生ってわけだ。伊織には悪いけど、もう違和感しかねえよ。
「あっ、あず君いたー!」
伊織の後ろから優子が声をかけた。しかも葉月珈琲の面々に加えて璃子たちまでいる。
しかもみんなでかい。横にずらりと並んでいるダブルメロンが僕を誘惑する。このためだけでも、ここに来た意味がある。桜子は真っ赤な水着を着用し、たっぷりとした膨らみを両手で覆っている。張りも艶もある半球型が僕の目を釘づけにし、若々しい色白な肌が日光を跳ね返し、眩しいくらいに輝いている。
男を誘うように設計された腰回りのカーブまでもが絶妙なラインを引いていて、この肥えた目が視野狭窄になるほどに惚れ惚れとさせ、血液を沸騰させる。
「お兄ちゃん、あんまり私たちをジロジロ見ないでくれる?」
「それ以外にここに来る理由があるか?」
「ボコボコにされたいの?」
「その足で踏みつけてくれ」
「変態……」
璃子の隣でクスクスと笑っている静乃を連れて僕から離れてしまった。
「あず君でも色欲には勝てないか」
「優子、一体何が目的だ」
「だってさー、あず君この頃ずーっと仕事ばっかりでしょ。たまにはこうやって、息抜きをすることも大事だと思うの。元々のんびり暮らしたかったあの頃のあず君はどこに行っちゃったのかなー?」
「今でものんびり暮らしてるつもりだよ。でもあの頃とは条件が違う。のんびり暮らすっていう言葉の意味をあんまり考えずに使ってた。そもそものんびりっていう言葉の意味を履き違えてた」
「履き違えてた?」
「のんびり暮らすっていうのは、一生分稼いだ後は死ぬまで怠けて過ごすって意味だと思ってた。でもそれはあくまでも世間にとっての意味であって、僕にとってはそうじゃなかった。世間にとって、のんびりっていうのは、定年までずっと働いたんだから、余生は休ませてくれって意味だ。僕には定年という概念がない。だから世間にとっての意味は、僕にとっては別の世界の出来事だ」
「ふふっ、あず君らしい理屈だね。でも何だか分かる気がする」
黒い水着を濡らしたままの優子が恋人のように寄り添ってくると、冷たい横顔から本音が窺えた。
「あず君にとっては、のんびりってどういう意味なの?」
「やりたいことをマイペースにやること。何かしら没頭できることがないと楽しくないっていうか、今でも現役でバリスタをやっているのは、楽しいからなのかも」
「ここんとこずっとチーム戦だよね。以前は個人戦だったのに」
「個人戦はやり尽くしたからな。それに個人戦とは言っても、水面下で色んな人のサポートがあったし、実質チーム戦だ。ずっと誰かと一緒に戦っていたのが、チーム戦という名目で表面化しただけ。やってること自体は全然変わらないというか、今まではサポーターと呼んでいた連中が、ようやく正式にチームメイトになったっていうか、自分1人で状況をコントロールしてたわけじゃないってことがよく分かった」
「1人で戦うのも勇敢だと思うし、みんなで戦うのも素敵なことだよ。あず君が本当に大切なことに気づけただけでも、今まで色んな大会に参加してきた意義があったと思う」
「僕にとってコーヒーは、最愛の恋人にして、人生を教えてくれた最高の教師でもある」
「あたしにとってもスイーツはそんな感じの存在だよ。それとね、今日は大事なことを伝えたかったの」
「どんなこと?」
優子の瞳は覚悟を秘めているようで、簡単には近寄らせてくれそうにない覇気だ。
だがそれでも、彼女は忌憚なく僕との距離を詰めた。
アラフォーを迎えた今でも美人でスタイルが良いし、結婚しようと思えばできたと思うが、そんなことは望んでいないことは明白だ。僕以外の男とつき合うことは彼女にとっては妥協でしかない。
優子も社会不適合者だったのだ。
就職せずに実家の店を継いだのも、自分の生き方に妥協したくなかったからだと考えれば説明がつく。
「あたし、今年から愛梨ちゃんを養子に迎えることにしたの」
「えっ……養子縁組って……じゃあ、法律上は優子の娘ってこと?」
「そういうことになるかな。お母さんの姉の孫、つまりいとこの子供だから、血縁関係はあるけど、感覚的には親子って感じだし、愛梨ちゃんもあたしにすっかり懐いてるみたいだから、愛梨ちゃんの面倒を見てくれる人がいない以上、もうこうするしかないって思ったの。身内からも見捨てられて、あず君が拾ってくれなかったらどうなっていたか。あず君には感謝してる。ますます好きになっちゃった」
「その言い方は誤解されるぞ」
「誤解も何も、あたしは真剣だよ。だからずっと、あず君に身も心も捧げるつもり」
「気持ちは嬉しいけど、その頑張りは仕事に活かしてくれよ」
「ふふっ、そうさせてもらうね」
優子の言葉から僕は1つの結論を感じ取った。彼女はもうヤナセスイーツを復活させるつもりはなく、あくまでも葉月グループの一員として一生を僕に捧げるつもりだ。妥協したくないのは優子も同じか。
愛梨が優子に養子入りしたことで苗字は柳瀬に変わった。
――ん? 待てよ。もしかして優子は……。
「なあ、優子が愛梨を養子入りさせたのって、愛梨にヤナセスイーツを復活させるためか?」
去ろうとする優子に声をかけると、その足をピタリと止めた。
「……やっと気づいたんだ。やっぱりあず君は天才だね」
「何で愛梨に引き継がせたいわけ?」
「そりゃー仮にもあたしの身内だし、愛梨ちゃんにもあたしの技能を継承させようと思ってるからだよ。あず君が愛したヤナセスイーツの味を伝えていきたい。だからね、あの家はもう愛梨ちゃんに譲ったの」
「葉月商店街には戻らねえのか?」
「いつか引退した時のために、愛梨ちゃんに部屋を開けてもらってる」
「優子だったら、一生スイーツからは引退しないだろうけどな」
「でも愛梨ちゃんが結婚したら、その時はあたしの部屋を夫か子供の部屋にしてもいいって言ってるの。そしたら愛梨ちゃん、顔を真っ赤にしちゃって、ホント可愛かった」
「あんまりからかうと恨みを買うぞ。あのタイプは刺激しない方がいい」
「それは一昔前までの愛梨ちゃんだよ。本当はとても優しい子なの。あず君も気づいてるくせに」
「ちょっとー、優子さんばかりずるいですよ。あず君はみんなのものなんですから。ねー」
オレンジ色の水着を着た美羽が僕の背中に貼りついてくると、脊椎にとても柔らかな感触が伝わった。
「美羽さんもですよ」
唯が僕の体を引っ張り、桜が描かれたピンク色の水着が僕の腕を飲み込もうとする。
「子供たちは?」
「伊織ちゃんと遊んでます」
細い指を差した先には伊織が子供たちと燥ぎながら水をかけ合っている姿がある。
子供たちがチームに分かれて楽しそうに泳ぎ始めると、僕も早速柔軟体操を始めた。
両足を床に広げて腰を左右に曲げた。毎日のルーティーンに股割りを取り入れているが、プールの前にも必要であることは言うまでもない。唯も僕の隣でマネをするように股割りを始めた。
今度は黄色い水着を着用している那月が興味津々に僕に歩み寄ってくる。
「うわー、あず君も唯ちゃんも体柔らかいねー!」
近いっ! 近いって! 那月の豊満な胸が僕の目の前に迫っている。
「じゃあ、あたしも久しぶりにやってみようかなー」
那月が僕と向かい合い、負けじと両足を接地すると、近くにいた桜子も同様に股割りを始めた。彼女らが前に体を倒すと、ダブルメロンがクッションを押しつけるように地面に着いた。
何故みんなして僕と同じことを始めるんだ? そりゃ体操は大事だけども。
僕に気づいた伊織たちも集まってくる。
「うーん……全然曲げられないですー!」
伊織が股割りをしようとするが、僕のように横から見てI字型にはならず、くの字型だ。この時点でかなり辛そうではあるが、伊織は更に手を足に伸ばそうとする。
しかし、体が硬いのか、全然届かない。
そんな伊織を尻目に、桜子も顔をプールサイドの地面に近づけるように体を曲げた。
「無理すんな。僕は幼少期から柔軟体操をしてきた。伊織は運動とかしてなかったんじゃねえのか?」
「体育の授業でスポーツをやったことならあります。でもあず君みたいにはいきませんね」
「伊織、君がこれから相手にするのは世界だ。運動くらいしとけ。選考会が始まったら体が持たねえぞ」
「分かりました。唯さんも子供たちも、当たり前のように両足を左右に伸ばせるんですね」
「小さい頃からしなやかな筋肉をつけておけば、将来アスリートになる時役立つし、そうでなくても最低限の体力は身につく。根性論は好きじゃねえけど、今の社会で生きていくには根性も必要だからな」
「あず君がそう言うなら、間違いないんでしょうね」
伊織が諦めて立ち上がりながら言った。明日は間違いなく筋肉痛だな。
でも伊織の弱点の1つが分かった。体力が不足していることだ。
唯にスタミナが出る献立を考えてもらうとして、仕事が終わったら毎日ジョギングをこなせば、少しでもアイデアを拾う助けになるだろう。伊織は慢性的なスランプに陥り、選考会に向けたアイデアを考えられずにいた。全ての課題の内、半分はもう埋まったのだが、最も得意とするブリュワーズ部門、伊織にとっては鬼門となっているエスプレッソ部門における課題に至っては、まだアイデアが出揃っていない。
伊織はどうすればアイデアを釣れるのかを僕に聞いた。
僕が発想の面において詰みそうになった時は、気分転換に外に出て、そこから色んな学びを得るのだ。発想力と人生経験は比例する。これは数学者でなくても分かる法則だ。
「お父さん、一緒に遊ぼ」
紫が僕の手を引きながら立ち上がらせる。
その後に続くように、雅、巻、祈までもが僕に甘えるように貼りついてくる。
「ずっと仕事だったんですから、たまには遊んであげてください」
「いつも遊んでるけどな」
「家でのゲームじゃなく、外で遊ぶ経験も必要ですよ」
「しょうがねえな。じゃあ遊ぶか」
「「「「わーい!」」」」
興奮しながらプールに向かって走っていく子供たち。
みんな浮き輪をつけないまま、子供用の浅いプールへと降りていく。
てっきり飛び込むものだとばかり思っていたが、唯の躾がかなり効いているようだ。躾ができていない子供は好き嫌いが激しく、粗暴狼藉を働くことからすぐ目立つ。昔の僕がその典型例だったことからも、唯の家が教養に富んでいることが窺える。育成能力では完全にお手上げだ。
飯を食える大人になるには、好奇心を潰さないようにしながら経験を積ませるしかない。
いつか子育ての教科書でも書くか。ただ、教育に正解はない。不正解を回避する内容にするだけでも、育成に大きな影響を与えることは確かだ。僕は子育てのプロではない。だが子供視点を忘れず、自然な形で生きる力を育むことが必要であることだけはよく分かる。
伊織も僕らに混ざると、すぐに鬼ごっこを始めてしまった。
もはや伊織がうちの長女のように見えてしまう。傍から見れば1番上の子だ。
美羽の子供や静乃の子供を巻き込み、鬼ごっこの人数が増えていく。うちの子はあんまり話さないが、コミュ障だと思ったことはない。本来子供の世界にコミュ障なんてないのかもしれない。1人で遊びたい気分の子と、みんなで遊びたい気分の子がいるだけで、立場が入れ替わることもあるくらいに気まぐれなのが子供の本質であることが見て取れる。親も子供から学習している自覚を持たなければならないのだ。
久方ぶりの遊びは、子供だけでなく、僕や伊織にも刺激をもたらしたのであった。
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