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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第14章 コーヒー業界転換期編
340/500

340杯目「ブース巡り」

 根本は僕に羨望の目を向け、すぐに後ろを向くと、ドリップコーヒーを淹れ始めた。


 背中はさっきの彼の言葉以上に多くを語っている。


 穂岐山珈琲の仲間たちがいるにもかかわらず、いつも1人で戦ってきたような感じがするのだ。


 お見合いがしたくないのは、伊織に自らの想いを伝えてないからだろう。じゃなきゃこんなに悩むことはない。ただの独身主義であれば、スパッと断って終わりだ。


「伊織が立ち直ったのは、伊織のお袋が守ってくれたと感じているからだぞ」

「話は本巣さんから聞きました。でも僕はそれだけじゃない気がします」

「それだけじゃない?」

「葉月社長が支えになったことも大きかったと思います。悔しいですけど、僕はもう本巣さんには手が届かないみたいです。全く、葉月社長はずるいです」

「僕が何かやったか?」

「ええ、本巣さんの人生に大きな影響を与えました。葉月社長が拾わなければ、ずっと暗い人生のまま、母親と一緒に殺されていた人生だったんですよ。そんな窮地から自分を救ってくれた人に対して、何も思うことがないと思ってるんですか?」

「何が言いたいわけ?」

「……本巣さんに聞いてみればいいじゃないですか。食べ終わったら帰ってくださいよ。これから書き入れ時になるんですから」

「分かった。じゃあそのコーヒーをくれ」

「自分で飲む予定だったんですけど……まあいいでしょう」


 淹れたての赤茶色のコーヒーが僕の目の前に置かれた。底まで透き通っているこのコーヒーのアロマが僕の鼻を突いた。かなり洗練されているな。また腕を上げたか。


 ムスッとしながらそっぽを向く根本。お呼びでないと顔が言っている。


 遠回しに言われても何が言いたいのか分からないが、こいつが不機嫌であることはよく分かる。


 接客態度としては最悪だが、それは僕がセンサリージャッジではないと知っているが故だ。人の本性なんてそんなもので、接客とは相手を怒らせないよう設計された演技行為だ。


 僕はそれに反するように、自然体でやってきた。親父との約束をずっと守り続けている内に、いつもの自分でいることが板についてきた。いつ仕事を辞めても悔いはないし、バリスタでなくてもコーヒー業界の発展に貢献する方法はいくらでもある。子供たちには、無理にバリスタになれとは言わない。


 コーヒーを飲み、チーム穂岐山珈琲のブースを後にしようと立ち上がった。


 真向かいにあるブースを訪れようと席を離れた。


「葉月さん」


 自信のない拗ねたような声が真後ろから聞こえた。


「まだなんか用か?」


 根本が不機嫌そうだから離れようとしたってのに。


 どこまでも優柔不断なのがこいつの良いところであり、悪いところでもあるのだが、迷う暇があるのは若いということだ。僕は若い時でさえ迷う暇はなかった。こいつは幸せ者だ。


「僕は次のバリスタオリンピックを最後に、穂岐山珈琲を辞めることになるかもしれません」

「あのさー、辞めるかどうかくらい自分で決めたらどうだ?」

「選考会には全力で挑みます。絶対に辞めたくないんで」

「バリスタオリンピックに挑むことと、君が辞めることと、何の関係があるわけ?」

「父さんは大手の社長で、僕が穂岐山珈琲に入る時にも手助けをしてくれたんです。でも去年の暮れに父さんが兄さんと一緒に会社を継いでほしいと言ってきたんです」

「恩返しのために辞めないといけないって思ってるのかよ。断ればいいじゃん」

「もし辞めないなら、穂岐山珈琲を潰してでも辞めさせると言われてもですか?」


 信じられないことに、根本は穂岐山珈琲の倒産を示唆したのだ。


 大手を潰せるほどの権力を持っているとはどういうことだ?


 もし本当なら、穂岐山珈琲は組織内に爆弾を抱えていることになるわけだが、根本自身は既にその自覚があるようで、内心複雑なのが見て取れる。彼は自分自身のために生きるべきか、穂岐山珈琲のために生きるべきかで、ずっと悩んでいたのかもしれない。


「本巣さんも選考会に参加させてください。最後の勝負になるかもしれませんから」

「穂岐山珈琲がそう簡単に潰されるかな」

「過半数の株を取得したら、経営権が他の人に移譲されること、ご存じですよね?」

「――まさか」

「ええ、そのまさかです」

「……」


 根本何かを言いたそうにしていたが、これ以上は何も語ることはなかった。


 数時間かけて色んなブースを回ったが、どのブースも来客数に偏りがあり、どのチームがグランドファイナル進出を果たすのかを暗に表していたが、必ずしも人気のブースが通過するわけではない。あくまでもチームとしての立ち回りや、メニューの見た目から味までをも審査されている。


 客の数で勝負が決まるなら、ただの有名人選手権だ。


 午後9時、4日目のチームの競技が終わった。


 結果発表が行われるため、全チームの参加者が一堂に会する。会場中央にいると、那月と響が近寄ってくる。那月は少しばかり酔っぱらっているが、響は涼しい顔のまま手を振っている。


「どうだった?」

「行列が並んでいるチームの多くは通過できそうにないな」

「えっ、どうして?」

「那月は今まで何のために味見をしてきたんだ?」

「それは……」

「通過できるチームを見極めるためだろ?」

「そうだ。前回ファイナリストのチームは行列の有無に関係なく味が洗練されていた。行列を作っているチームの多くは、万人受けしそうな曖昧な味だ。どの層に向けて作られたものかがハッキリしていない」

「よく分かったな。流石は響だ」


 響の顔が若干赤くなる。彼女はどこかで僕の意図を知ったようだ。


「当然だろ。私も味の傾向くらい分かる」

「でも、あたしたちのブースには人が来ていたよ」

「それはあず君の淹れたコーヒーを飲むためだ。コーヒーファンなら、グランドスラム達成者のコーヒーを飲まずに帰るわけにはいかない。あず君はあえて値段を高くすることで、客層を絞って確実に飲みに来るセンサリージャッジを絞ろうとしていた。一見失敗したように思えるが、私は何も心配はしていない」

「ふーん、あっ、そういえば、チームの売り上げはどうなるの?」

「7割は大会の運営資金に充てられて、3割は持って帰ることになってる。しかもグランドファイナルで優勝した場合、賞金は1億円だ」

「1億円っ!」


 両手を上げながらのけ反る那月。どうやら自分が社長令嬢だという自覚がないらしい。


 それだけパティシエの世界にぞっこんだったのだ。この反応だけでも、那月は利益とか関係なく世界一の作品作りを目指していることが見て取れる。優子が気に入るわけだ。


「お集まりいただき、ありがとうございます。各国代表の方々、ここまでの競技、お疲れさまでした」


 マイク越しに話す司会の声に全員が目を向けた。


 グランドファイナル進出を決める大事な結果発表だ。


 次々とグランドファイナル進出者が発表されていく――。


「続いての通過チームは……チーム葉月珈琲だぁ~!」


 歓声がドッと沸き、僕ら3人は抱き合いながら喜びを露わにした。


「良かったぁ~」

「力尽きるのは早いぞ。勝負はここからだ」

「えへへ、そうだね」

「よくやった。まさかグランドファイナル進出が決まるとはな」

「予想してなかったのか?」

「僕は響の言う通り、バリスタというより、ずっと経営者だった。現役とは言っても、バリスタ競技会の最前線で戦っているのは、那月と響だ。僕だけじゃまず不可能だ。これは2人の功績でもあるんだから、もっと自信を持て。グランドファイナルも勝つぞ」

「ああ」

「うん」


 那月と響が力強く頷いた。3人で肩を組み合いながら明日の戦いに一筋の光を差し込んだ。


 チームロンドン、チームテロワール、チームアイリッシュ、チームフォルモサ、チームニューヨーク、チームハワイアンコーヒー、チーム葉月珈琲、チームゲシャビレッジ、チームカリビアンコーヒー、チームバンコクの10チームが通過を決めた。少し離れたところには懐かしい顔もいた。


「あっ、あず君久しぶりー」


 僕と視線が合った途端、太陽のように明るい顔で僕に呼びかけた。


 背丈も外見もあまり変わらないが、肌の色は僕よりもずっと濃いからすぐに分かる。


「チェン、久しぶり」

「えっ! ええっ! あず君が2人!?」

「知らねえのかよ。こいつはリー・チェンミン。チームフォルモサのリーダーで、台湾で行われた世界大会の時、僕を店に泊まらせてくれた人だ」

「その時はいなかったんだけどね」

「えっと、チェンミンさんも参加してたんですね」

「チェンでいいよ。僕もバリスタオリンピックを目指してる。それで色んな世界大会に出てるんだけど、まさかあず君も参加してるとは思わなかったよ」

「へぇ~。あたしは栗谷那月。那月でいいよ」

「棚橋響だ。響でいいぞ」


 自己紹介を終えると、僕らは今までのことをチェンにも話した。


 チェンもまた、世界通貨危機の影響を受けているようで、店の売り上げを盛り返すために、バリスタオリンピックチャンピオンを目指しているんだとか。ただでさえ観光客が少なく、優秀な人材は海外へと旅立ってしまい、地元台北はコーヒー業界としても肩身が狭く、一刻も早くトップバリスタを輩出する必要に迫られていたのだ。那月と響も人生がかかってる。だがこいつは地元の期待を一身に背負っているし、バリスタ人気がチェンに懸かっていると言っても過言ではない。


「じゃあ、あず君とはバリスタオリンピック2015年の東京大会で知り合ったんだ」

「うん。あず君がアジア人初の準決勝進出を決めた時、あず君の背中を押したんだよね」

「あぁ~、確か喜んでたせいで、ステージに上がるのを忘れてたんだよなー」

「じゃあ、3大会連続での参加を目指してるってこと?」

「そうだよ。でも台湾の選考会はかなり規模が小さくて、ほとんど僕がバリスタオリンピックの舞台に送り出すためのものだったというか、全然張り合いがなかったんだよね」


 流暢な日本語で台湾のコーヒー事情を語るチェン。


 台湾にもトップバリスタはいるが、昔は世界大会での実績は芳しくなく、他の道がありながらわざわざバリスタを目指す人自体が少なかった。しかし、僕がアジア人初のバリスタオリンピックチャンピオンに輝いたことを皮切りに、台湾でもトップバリスタを輩出しようとする動きが生じた。


 その甲斐あってか、WBC(ダブリュービーシー)WLAC(ワラック)で実績を残す台湾人バリスタが現れるようになり、チェンもそこに名を連ねた。


「だから僕、あず君のことすっごく尊敬してて、台湾のあず君なんて呼ばれてるけど、まだ実力では到底及ばないから、そう呼ばれても違和感のないトップバリスタを目指してる」

「ふーん、今までの実績ってどんなもんなの?」

「チェンはWLAC(ワラック)2020年大会準優勝、WBC(ダブリュービーシー)2021年大会優勝を果たしてる。しかも今年3月に行われた選考会も通過してる。バリスタオリンピックに出たら、予選でセミファイナリストの枠を争うために必ず当たることになる。だからチェンを超えるくらいのつもりでやらないと、予選通過どころか、選考会通過も厳しいだろうな」

「……凄い」


 響が敬服するように指の力を抜くと、反射的に那月が口走った。


 チェンは確実に力をつけているし、次のバリスタオリンピックでも、多くのバリスタコーチから優勝候補の1人として挙げられている。そんな実力者を前に2人は足が竦んでいる。


 ――那月と響は、まだ選考会には程遠いと感じた。


 チェンが天真爛漫な笑顔を向け、少し離れた所まで手を振っていた。


 彼と別れた後、僕らはグランドファイナルのルールを確認する。


 グランドファイナルはバリスタ、バーテンダー、パティシエの3人が共通のオープンキッチンで作業を行い、コーヒー、カクテル、スイーツの3種類をセンサリージャッジ10人分を作り、総合スコアが最も高いチームが総合優勝となる。グランドファイナリストの中からバリスタ部門賞、バーテンダー部門賞、パティシエ部門賞、キャラクター部門賞、パーソナリティ部門賞が用意されている。


 見た目、味の相性、プロフェッショナルなサービスなどが問われ、コーヒーメニューの場合、カクテルやスイーツとのコーヒーマリアージュが考慮されているため、孤軍奮闘があまり意味を成さない。


 誰か1人でも味にムラが出るようなことがあれば、減点を免れないシビアな側面がある。


 作るメニューは客となるセンサリージャッジのオーダーに合わせ、どのメニューを誰が作っても構わないし、何なら3人で協力して作ってもいいことになっている。制限時間はないが、2時間程度を目安に、センサリージャッジ10人分の量を作り終えれば競技終了となる。


 司会者がジャッジを務めた人たちを並ばせ、1人1人を紹介していく。ベルンハルトもいた。彼の名前が呼ばれると、会場内が最も盛り上がった。コーヒー業界ではあまり知られていないが、レストラン業界やスイーツ業界ではかなりの有名人らしい。どうやらあの人がセンサリージャッジ筆頭格のようだ。


 僕らはホテルに戻り、グランドファイナルのメニューを再確認するのだった。


 ――大会5日目――


 グランドファイナル当日、僕らはグランドファイナリストチームとして、会場へと足を運んだ。


 今は午前12時、競技開始は午後3時、仕込みを済ませる時間と場所を運営に与えられ、僕らは今大会最後のミーティングに臨んだ。3時間の準備時間が与えられ、それまでにメニューの仕込みを済ませるわけだが、接客や商品の担当を誰にするかで細かい役割分担をする必要があった。あれだけのセンサリージャッジがいるんだ。他の連中も同時にやるんだろうな。ブースの多くは片づけられ、たったの10ヵ所だけが残されていた。その中にチーム葉月珈琲のブースがあり、僕らは早速仕込みを始めた。


「いよいよ、グランドファイナルだね」

「那月、そんなに緊張していたら、センサリージャッジにも伝わるぞ」

「だ、だって、世界大会の決勝なんて初めてだし」

「緊張するな……と言うのは無理な話か。実を言うと、私も緊張してる」

「えっ、そうなの?」


 那月を安心させようと、響が那月の肩に手を回した。


「私にとってもチーム戦初の決勝だからな。那月が世界大会に出るのは初めてじゃないんだろ?」

「パティシエの世界大会なら何度か出たけど、決勝は戦ったことがないの。バリスタの大会は国内予選も制覇したことがないの。あず君が倒れた時、バリスタ担当をうまくこなせるか心配だったけど、思っていた以上に不思議だったなー。何かがあたしに力を貸してくれたような、そんな気がしたの」

「それは紛れもなく那月自身の力だと思うぞ。ずっとバリスタ修行とパティシエ修行をしてきた成果が、意外なところで発揮された。二刀流の意義がようやく見出せたな。どちらかを究めただけでは救えない危機だった。那月の選択は間違ってなかった」

「思いついたのは優子さんだけどね」

「だとしても、ここまで両方の分野で一流の活躍を見せた存在を私は知らない。もっと胸を張れ。那月は十分世界に通用するバリスタ兼パティシエだ」

「響さん……」


 思わず顔を赤らめる那月。だから頬染めんなって。誤解されるぞ。


 那月のような気分屋は、何度も励ましてやる気を継続させてやる必要があると優子は言っていた。この小さな蕾が大きくなったら、誰もが驚く巨木になる。


 そんなことも知らないまま、潰された蕾の何と多いことか。


 だがうちなら、育つまではずっと守ってやれる。


 どんな種だって、最初は誰かに守ってもらわないといけないほど脆いもの。だがそれでいい。わざわざ厳しい環境に身を投じなくても、自分に合った環境で伸び伸び育つ方法もあるのだ。


「コーヒーカクテルはどうする?」

「2人で作る。コーヒーは僕が淹れて、カクテルと混ぜ合わせる作業は響に任せる。一度に複数のセンサリージャッジから注文が入ることもあるけど、3人いれば何の問題もない」

「予選は12時間だったけど、グランドファイナルは2時間程度だ。時間が少ない分楽ではあるが、審査は今まで以上に厳しくなる。昨日やっていたことの繰り返しではあるが、客は全てセンサリージャッジという明確な違いがある。それに今回はクローズキッチンがない。那月も接客に参加する必要があるぞ」

「任せて。英語なら大丈夫だから」

「接客の問題じゃない。相手の注文の意図を汲み取れるかどうかも問われるんだ。センサリージャッジは具体的な商品名を言わない場合がある。那月はその時、ちゃんと要望通りにできてなかっただろ。私がいなかったら、相手の意図に沿わない商品を出すところだったんだぞ」

「えっ、そうなの?」

「……うん。やっぱり間違っちゃ駄目だよね。あたし、後ろの方で目立たないようにするから」


 遠慮気味に小さな声で那月が言った。


「何言ってんの。那月にも参加してもらうぞ」

「でも注文通りにできなかったらどうするの?」

「その時は僕が責任を取る。どうしても分からない時は、僕か響に聞け」

「うん、分かった。あず君って、なんかどこのリーダーよりもリーダーっぽいよね」

「好きでリーダーやってるわけじゃねえよ。他に責任能力のある奴がいなかっただけだ。みんな失敗することはいけないことだと学校で教えられてる。通学すればするほど、みんな個性も好奇心も行動力も失っていくからな。でも安心しろ。那月という個性は僕が命懸けで守ってみせる」

「あず君……」


 またも顔を赤らめ、たっぷりとした膨らみにポフッと手を置く那月。


 通学程度で潰される個性は個性じゃないと言う輩もいるが、そうやって個性を摘み取られた者たちは高確率でニートかフリーターになり、ひたすら無気力なまま生きることを余儀なくされ、中年を迎えたあたりで親が年金生活となり、やがて生活保護を受けることになる。


 個性を摘み取ることを容認した連中は、その報いを社会保障費の増加によって償うことになる。


 それを考えれば、通学で個性を潰すことを容認する発言が如何に不勉強であるかがよく分かる。社会保障を受ける側の人間を無駄に増やすようなマネをして、誰がその社会的コストを払うことになるのかという観点が欠落しているのだ。飯を食えない大人を減らすには、根本的な意識改革が必要であると感じた。


 ウェリントンに来る前、優子から那月がうちに入社した頃の話を聞いた。


 当初は無気力で元気がなく、パティシエの仕事にさえ身が入らなかった。才能の片鱗を見せながらパッとしなかったが、優子は那月の言葉からはいくつかのヒントを受け取っていた。


 それはバリスタになりたいということ、コーヒー業界におけるパイオニアになりたいということ。優子は那月の言葉から、バリスタとパティシエの両方を目指すことを提案した。バリスタになる夢も叶うし、両方で一流になれば、ある意味ではパイオニアになれる。


 優子の補佐であった結奈は那月をバリスタ担当とパティシエ担当のどっちにするのかを優子に聞いた。両方やらせてみたらいいと優子が提案し、どっちも才能があるから自分は賛成と結奈は言った。


 このことを那月に伝えた時、彼女の目に再び炎が灯ったと優子は僕に教えてくれた。


 葉月グループの方針を誰よりも理解していた優子ならではのアイデアが那月を復活させた。

読んでいただきありがとうございます。

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