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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第2章 自営業編
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32杯目「本場からの招待」

 葉月珈琲創業から3ヵ月後――。


 店の経営は相変わらず安定しない。皮肉な話だが、僕は安定が嫌いなのに、利益には安定を求めてしまうのだ。岐阜市が路面電車を廃止してから1年が過ぎようとしていた。


 人通りは更に少なくなり、これで衰退に拍車が掛かった。商店街で商売をしている人の大半が年金暮らしや蓄えのある人だ。老い先短く、将来の心配をしなくても済むような連中だ。


 ある日のこと、親父とお袋がやってくる。


 2人共気になることがあるようだったが、遂に親から日本人規制法の看板を指摘された。


「ねえ、外国人観光客限定って書いてあるけど、店は大丈夫なの?」

「何とかするしかねえだろ」

「有名店でもねえのに、客を選んでどうすんだよ」

「体があいつらを受けつけねえんだよ。どうしても反射的に避けたくなる。こればかりは僕の意思じゃどうにもならねえからな」

「まだ治らないの?」


 お袋が心配そうに尋ねた。てめえらも原因なんだぞ……。


「原因はあいつらが僕を散々迫害したからだ。茶髪だからとか、髪の長い男だからとか、しょうもない理由でだ。あいつらが全面的に悪い。どうしても……身内以外の日本人を見ただけで、悪夢のような日々を思い出して、全身から殺意が溢れ出てくるんだ! 相手の顔を見ずに接客するのもどうかと思うし、日本語だと……どうしてもぶっきらぼうになる。あいつらを見ても何も感じなくなるまでは無理だ!」


 日本人を目の当たりにした時の心境を包み隠さず説明した。


 僕は一体……あいつらに何を望んでいるんだろうか。


 恨みはある……だが消えてほしいとも思わないし……そっとしておいてほしいだけなのかも。


「それ多分病気じゃない? 一度医者に診てもらうか?」


 親父が僕の病院行きを示唆する。別に精神病ってほどでもないし、日常生活に支障をきたしているわけでもない。病院に行けばお金がかかる。これ以上家計を圧迫することは避けたかった。


「そんな余裕ねえだろ。日本人とさえまともに会わなければ症状は抑えられるんだし、あいつらとは目も合わせたくない。理屈じゃねえんだ。ただ、迫害されたから会いたくないとかじゃなくて、会うたんびに思う。また迫害してくるんじゃないかって」


 あいつらを拒絶するのは、単に痛い目に遭わされたからじゃない。あいつらに対して絶望的なレベルの不信感を抱いているからだ。つまり原因は僕自身にあるということだ。


 僕自身の心が――いかんせん疲弊しきっていた。あいつらを受け止める余裕すらなくなっている。


 壁を作ったのは日本人だが、それを完成させたのは僕だ。


 事情を一通り説明すると、親父もお袋も同情するしかなかった。


 しかし、うちの親は納得がいかない様子だった。


「過去のことは忘れた方がいい。ずっと過ぎたことを思っても辛いだけだ」


 親父がやるせない顔で僕に過去を捨て去るよう言った。


「……広島長崎の人にも同じことが言えるか?」

「えっ?」

「目に見える傷跡を残されても、同じことが言えるかって聞いてんだよっ!?」


 いつの間にか、感情に任せて怒鳴ってしまっていた。もちろん、大半の過去は忘れてしまったところで何ら問題はない。どれもこれも単なる思い出に過ぎない。


 しかし、今後の人生に重大な影響を与えるレベルの出来事はどうだろうか。


 例えるなら、記憶とはガラスの破片のようなものだ。


 大半の破片は浮いているだけで特に問題はないが、時として辛い記憶は尖った破片として牙を剥き、皮膚の奥深くまで刺さり、過去を突きつけるように常時痛めつけるのだ。迫害の痛みがズキズキと脳裏に焼きつく……なかなか抜けないこのもどかしさ。辛い記憶を抱える者は、いつもそんな状態だ。


 修学旅行で広島に行った時、見るに堪えない惨状を知った。


 とても忘れろとは……言えなかった。


「……すまん」


 親父が言い過ぎたと言わんばかりに謝る。僕はただ、誰にでも忘れられないことの1つや2つあるってことを伝えたかっただけなのに、どうしてこうも感情的になってしまったのか。


 はぁ……自分が情けねえ。あいつらに対するこの反射的な拒絶は……誰得なんだろうか。


 親父もお袋も、これ以上何も言えなかった。うちに貢いでくれるのは嬉しいけど、あいつらのことは話さないでほしいものだ。以降、うちの親が日本人規制法を話題にすることはなかった。うちの親は僕が出しているコーヒーに興味を持っていた。いつも飲んでいる種類とは違うものだ。親父は大手コーヒー会社に勤めていたこともあり、色んな種類のコーヒーを知っていた。


「よくこんな高いの仕入れたな」


 親父は元々大手コーヒー会社にいたこともあってコーヒーの目利きができる。珍しい品種はすぐに分かるのだ。あまり手に入らない種類のものもあって驚きを隠せない様子だ。完全に利益度外視だし。


 親にも日本人恐怖症のことは内密にするよう口止めした。親戚にも告白する勇気はなかった。ていうかこれも高校に行かないことがバレかねないものだ。客足は振るっていないが、宣伝は効いたらしい。客が全く来ない日はなかった。特別多い日もなかったが……。


 段々と4月が近づき、卒業シーズンがやってくる。


 僕の同級生はみんな高校に進学した頃だろう。ただ残念なのは、小中学校時代に散々な目に遭ったにもかかわらず、世間に流され、嫌々高校へ行かされている人が多い所だ。


 義務教育じゃないんだから、行かなくてもいいのに。


 店の1階部分は客席が10席分程度の小さい店だ。カウンター席の向かい側にキッチンがあり、業務用エスプレッソマシンもある。水出しコーヒーはペーパードリップもサイフォンもネルドリップもフレンチプレスもあるが、うちが店で出しているのはペーパードリップだ。時々客からのリクエストで別の抽出器具を使うこともある。もちろん、抽出器具によって味も変わる。


 品種、収穫、精製、焙煎、水質、温度、器具、抽出によってコーヒーの風味特性は変わる。コーヒーの味は無限にあると言っていい。使っている水は軟水である。水道水を一度沸騰させ、活性炭が入っている浄水器を取りつけることで、純度の高い水でコーヒーを淹れることができる。他にも蛇口から出る最初の水は使わないようにしたり、水出しの場合はコーヒーカップを予め温めたりと工夫を凝らした。


 お陰で質の高いコーヒーを提供できる。


 2階部分は僕と璃子の寝室になっている。ベッドが欲しいけど高いから買えない。だからいつも実家から持って来た布団で寝る。ここにも小さなキッチンがあり、料理は僕が作る。普段は洋食だが、和食や中華も作れる。スペシャルティコーヒーに認定されているコーヒー豆だけを仕入れることに拘った。インスタントコーヒーに使われているような安い豆は絶対に店には出さなかった。


 高級な豆は各種共に無くなり、次第売り切れの限定商品にした。これは親父のアドバイスだ。仕入れるべき量を調整していくと、少しずつではあるが、以前よりはマシになった。しかし常連を増やしていかなければ、ただの延命処置でしかないことは火を見るよりも明らかだった。


 そんなある日、某世界的な動画サイトのコメント欄を見ると、興味深い英語のコメントを発見する。


『実力があるみたいだし、この大会に出てみたら?』


 大会ウェブサイトのリンクつきコメントがある。クリックしてみると、ワールドデザインカプチーノチャンピオンシップ、略してWDC(ダブリューディーシー)という大会のウェブサイトに辿り着く。英語版の詳細を見てみると、今年の6月下旬に開催されると書いてあった。この大会は2002年から毎年ヴェネツィアで行われている。登録を済ませてから現地参加する形式でデザインカプチーノの技術を競う世界大会だ。毎年100人程度のバリスタが参加する。得点の上位30人が準決勝進出で、10人が決勝進出だ。優勝賞金は5000ユーロ、悪くない数字だ。


 僕のラテアート動画は英語圏を中心に多少なりとも反響があった。まだ15歳で見たこともないラテアートを描いていたからだ。それを見たヴェネツィア住民の1人が痺れを切らし、僕に大会のウェブサイトに案内してくれた。もし来てくれるなら、宿泊先を提供すると言ってきたのだ。僕はこの人とウェブ上で英会話をする。相手はイタリア人だが英語も堪能だ。


『本当にいいの?』

『うん、構わないよ。顔も分かってるし、可愛い女の子だね』

『僕、男なんだけど』

『えっ、そうなの? ……ま、まあいいや。来てくれるなら、うちの店の住所を載せてそっちのメアドに送るから。大会前にそこに来てほしいの。待ってるから』


 まだ創業し始めて間もないのに、僕のラテアートの技術を評価してくれる人がいる。


 しかもコーヒーの本場、ヴェネツィアの人からだ。ヴェネツィアはカフェラテ発祥の地で、歴史あるカフェが立ち並ぶバリスタの名所。事情を知っている僕にとっては願ってもない申し出。しかし、そのために璃子を1人にして行ってもいいのか? 店の仕事もあるし、一体どうすればいいのか。


 璃子と相談することを決意し、僕の後で璃子が風呂に入った。いつも飲んでいるのは麦茶。コーヒーばっかり飲むと夜眠れなくなる。同じくカフェインが入っている緑茶も夜は飲まないようにしている。璃子が風呂から上がり、パジャマに着替えると、寝室で璃子を待つ。


「璃子、ちょっといいか?」

「うん、聞いたげる」


 璃子がいつものように僕の隣に三角座りをすると、話を聞く態勢に入る。


 僕はピンクのパジャマで、璃子は水色のパジャマだ。経緯はどうあれ、親から独立してからは堂々と好きな服を着られるようになっていたのだ。


「実は迷ってることがあってさ」

「ふふふっ、何それ?」


 璃子が手で口を隠しながら不敵に笑う。


 えっ? 何か変なこと言ったか?


「何で笑うかなー」

「だっていつもはスパッて決断するお兄ちゃんが迷うとかおかしいもん。ふふふっ」

「僕にも迷うことの1つや2つくらいある」

「で? お兄ちゃんは何を迷ってるのかな?」


 璃子が悪戯っ子のようなニヤニヤした顔で尋ねた。


 風呂上がりのスベスベした光沢を放つ肌、中学生とは思えない幼い声。程良くついた肉。パッと見は歴とした女子小学生にしか見えないのがまたいい。


 あぁ……可愛いなぁ――ハッ、いやいや、感心してる場合じゃなかった。


「6月下旬にデザインカプチーノの世界大会に招待された」

「えっ……凄いじゃん!」

「宿泊先だけ提供してくれるんだってさ……もし参加するなら、1週間はヴェネツィアに行くことになるんだけどさ、璃子は1人でも平気か?」


 璃子が一瞬絶望的な顔になるが、すぐにそれを隠すように笑みを浮かべる。うちの妹は根っからの寂しがり屋なのだ。口では何とでも言えるが、それを見抜けない僕ではなかった。


「……平気だよ。私のことは気にせず行ってきたら?」


 まるで背中を押すように璃子が僕の耳元で囁く。ホントにこういう強がりなところは僕に似たな。


「分かった。じゃあ早速登録する。ちゃんと留守番しとけよ」

「もう中学生なんだから大丈夫だって」

「学校行ってないのにか?」

「それは言わない約束でしょ」

「てへっ、冗談だ」


 猫の手を頭に添えながら片目を閉じて舌を出す。


「キモッ……やめてくれる? そういうの」


 璃子が汚物を見るような目でこっちを見ながら低い声で制止する。


「酷いなー。一応僕、インターネットアイドルだから」

「へぇ~」

「それと、僕がいない時は、あんまり外出しないようにな」

「何で?」

「うちの住所が親戚か親戚の知り合いに特定でもされたら面倒なことになる」

「それはいいけどさ……いつまで隠すつもりなの?」

「……」


 璃子が核心を突いた質問をする。僕は回答に詰まり、しばらくの間は沈黙が続いた。


「……ほとぼりが冷めるまで……かな?」

「ほとぼりが冷めるっていつ?」

「じゃあ……5年」

「5年もずっとばれるかどうかに怯え続けるわけ?」

「まあバレたところでどうってことねえよ。そりゃ親戚中から怒られて、しばらくは親戚の集会に出禁とかはあるかもだけど、既に使った金だ。返せって言われても返せない。だから何としてでも、この店を成功させて、みんなが忘れた頃に、こっそり借金を返せばいいんだ」


 うちの親は僕が高校に行くための就学費用として、親戚一同から合計300万円を貸してもらっているのだが、それを全部起業資金に使っていることを親戚一同は知らないのだ。


 バレてもそこまで問題にはならないだろうが、バレない方が無難ではある。


 そんなことを考えながら明かりを消して床に就き、大きく口を開けて欠伸をする。


 動画を投稿し始めてからというもの、色んな人とやり取りをするようになった。世界には多種多様な人がいることを肌で知ったし、ラテアートだけじゃなく、ピアノ動画を評価してくれる人もいた。僕はその人からピアノのコンテストに誘われたが断った。


 午前10時、僕を起こそうと太陽が日差しを放ってくる。


 学校に行っていた時よりもずっと遅い時間に目が覚めた。


 ――ん? なんか柔らかいぞ。


 この違和感の正体を確認するべく、頭までかぶっていた布団から出ようとする。


 えっ! ちょっ! 近い、近いんだけど!


 今、僕の顔のすぐそばにはスヤスヤと眠る璃子の顔がある。


 鼻息が分かるほどの至近距離だ。普段は璃子と少し距離を置いた位置に布団を敷いているが、璃子はいつの間にか僕の布団に入ってきていたのだ。どうしてこうなった。


 それにしても……この可愛らしい寝顔から漂う花のような香り……サラサラとした(からす)濡羽色(ぬればいろ)のような髪……そして何より……でかい。


 僕は璃子の豊満な膨らみを鷲掴みにしていた。璃子の胸は小4を迎えたあたりから急に大きくなり始めた。パジャマ越しでも大きいのが分かる。形も申し分ない。


「……! お、お兄ちゃん!?」


 璃子が唐突に目を覚まし、僕が隣にいることに気づく。恐る恐る目線を自分の胸へと向け、胸を揉まれていることが分かると、熱した鉄のように顔が赤くなった。


「な、なっ、何やってんの!?」

「無法地帯に入ってきた璃子が悪い」

「もう……やめてよ、変態!」


 璃子は僕の腕を振り払って布団から出ると、自分の胸を恥ずかしそうに腕でガードする。


 もちろん、不覚にも僕の息子は反応していた。


「何で僕の布団に入ってきたわけ?」

「……それは……その」

「やっぱり寂しいんだ」

「そ、そんなこと……」


 無理をしている璃子をそっと抱きしめた。


 身支度を済ませると、僕らはこの日もまた店の営業を始めた。


 午前12時、店を開くが、一向に客は来ない。


 璃子を1階に見張りとして残すと、2階に戻ってパソコンを始める。客が来ない時間帯はパソコンで情報を集めたり、動画制作に明け暮れたりする。しばらくすると、誘ってくれたヴェネツィアの人に返事をした。僕のメアドにこの人の店の住所が届いた。どうやらこの人はカフェのマスターらしい。


 一体どんな人なんだろう。僕を待ち受ける世界はどんなものなんだろうか。僕は海外渡航などしたことはない。期待と同じくらい不安も大きかったが、日本よりも治安が悪いことは知っていた。とりあえず荷物を取られないことだけは心掛けることに。


 問題はその日に参加する余裕があるかどうかだ。優勝すればお釣りも出るからいいか。


 それなら結果はちゃんと残さなければ……これは世界大会ではあるものの、あくまでもヴェネツィア開催のイベントであり、参加者の半数以上がヴェネツィア市民。あまり知られていないこともあり、バリスタの世界大会の中ではマイナー競技会の部類だ。しかし、参加者は毎年世界中から来るため、厳しい戦いになるのは確かだ。競争嫌いの僕にとっては不本意だが、参加することに抵抗はない。勝ちたいのもあるけど、1番の目的は店の宣伝だ。うちの店からチャンピオンが出れば客も増えるに違いないと思った。バリスタの実力=店のレベルと言っても過言ではないのだから。


 璃子1人に店を任せることもできないし、旅行中は売り上げなし。人を雇う余裕もない。ヴェネツィア旅行で失った分は賞金や売り上げで取り返せばいい。店の営業に必要なことだから経費になるよね?


 まずは旅行費を貯めよう。コメント返しを積極的に行い、チャンネルに店の住所を張り、良かったら一度来てみてねと返信した。コメントを見てくれる人がいるなら、相手に宣伝すればいいんだ。僕だと分かるよう動画に顔出しもした。顔出しは良くないと思われがちだが、実はメリットの方が大きかったりする。顔出しをしている人が有名になったりすれば、それだけで売り上げが上がる。自分自身をアイドル化することで、来店するメリットを増やす。僕を知っている人が増えれば自己紹介をせずに済む。


 コミュ障にとってはありがたいことだ。1人の時間を奪われたくないし、ファンサービスは一切しないと公言している。うちの店にはいくつかルールがある。喫煙禁止、挨拶禁止、同調圧力禁止だ。会話などは全部横社会方式だ。もちろん、相手に敬語を強制してはいけない。客との会話も全部対等語だ。


 日本にはお客様は神様という理不尽極まりない言葉がある。元々は客を大事にするという意味で使われていたのだが、いつしか客が我が儘を通すために使う言葉になってしまった。無論、僕はこんな言葉につき合う気はない。もし日本人客がいたら喧嘩になっていただろう。縦社会が絶対的な店はいくらでもあるのだから、1つくらいフラットに話せる店があってもいいだろう。


 大体『店<客』っておかしいだろ。もちろん逆もおかしいけど、日本以外だと対等なのが当たり前なのである。海外にも客を重んじる文化はあるが、客の我が儘を通すような傲慢な文化はない。お金を払っている方が偉いというのは間違った常識だ。店側だって相応のサービスや商品を提供しているのだ。これで対等じゃないのは解せない。上下関係の存在のそのものがハラスメントの温床だ。奴隷みたいな言葉遣いや過剰なサービスを要求するなら、相応の料金を払ってしかるべきだ。この考えに納得がいかない奴は絶対うちに来ないでほしい。せめてうちくらいは崇高な店でありたいのだから。


 葉月珈琲は日本の中にある外国と言っていい。


 僕はあることに気がついた。学校を追放されてからは風邪すら引いていなかったのだ。学生の時は無理をさせられる度、熱が出て休んだりしていたが、学校に行かないようになってしばらくしてからは、虚弱体質が大幅に改善されていたのだ。やっぱり体質的に集団組織は合っていなかったのかもしれん。


 体が受けつける生き方をしないとな。徴兵制度がある時代に生まれていたら、僕は戦死してなくても長生きはできなかっただろう。体が弱いから徴兵さえ怪しいけど……。


 こうして、僕は大会への参加を決意するのだった。

あず君の自由すぎる生活が始まり、

動画を通して世界の動きを知ることになります。

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