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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第13章 群雄割拠編
305/500

305杯目「返ってきた借り」

 3月上旬、桜子の不満を解消できないまま、渡米の時期を迎えた。


 店をユーティリティー社員たちに任せ、再び大会へと一歩を踏み出した。


 シアトルに飛んでから3日後にはWBTC(ワブトック)が始まる。


 僕らは桜子も連れていくことになったわけだが、彼女は依然として不満が顔に表れている。普段の業務に早く戻りたいと目が言っている。だが彼女は自らの殻を破らなければならない。


 ユーティリティー制度に反発しているのは、桜子自身が派遣の仕事を軽んじているからだ。派遣社員として苦労してきた母親の背中を見てそう思うのは勝手だが、本来こういう仕事にはもっと高い給料を支払うべきなのだ。ここにも教育改革をしてこなかった弊害が現れていると言っていい。


 氷河期世代の子供にまで同じ枷は背負わせない。


 シアトル行きの渡航便では、僕、伊織、千尋、桜子の4人が乗り、僕は桜子の隣に座った。伊織は千尋の隣に座りながら楽しそうに話している。傍から見れば恋人同士だ。


「私のお母さんは派遣社員でした。家が貧しくて、高校を出た時には就職の枠がなくなっていたんです。それでしばらくしてから何度も派遣切りに遭って、自棄になって先代がいた頃の朝日奈珈琲に転がり込んできて、そこにいたお父さんと出会いました。お父さんは近くの会社に勤める正社員でしたけど、今度はリーマンショックで会社が潰れて、しばらくは共働きです。その時には私を含めて3人も子供がいましたから、先代が倒れた時は、真っ先に朝日奈珈琲を継いで、繁盛すれば家族に楽をさせてやれるって、ずっと信じていました。今は葉月珈琲のお陰で助かってますけど」

「うちの親戚にも氷河期世代がいるからよく分かる。だからさ……色んな仕事をこなせる派遣の仕事はもっと評価されていいと思う。スタッフの多い部署と店舗からスタッフが少ない部署と店舗に出張するユーティリティーの給料が高いのはそのためだ。続けていればマルチスキルが手に入る。そうなれば一生食っていける。葉月グループの究極の目的はコーヒー業界の地位を上げるだけじゃない。バリスタの仕事を通して、氷河期世代の再生産を防ぐためのグループにしたい」

「……もし私が……バリスタの大会で優勝したら、その夢に近づくことはできますか?」

「もちろん。迷ったらバリスタを目指すくらいでいい。何かを目指してみようって思わせるきっかけを与えることが大事だ。今の若者にはやりたいことを決める力とか、決めたことをやり抜く力とか、そういう根本的に大事なものが欠けているし、それが生命力のない引き籠りの増加に繋がってる。稼げるんだったら引き籠っててもいいけど、老後1人になったらどうすんのって話だ」

「そこまで心配しているなんて、あず君は優しいですね」

「そんなんじゃねえよ。無敵の人になったあいつらに強盗殺人とかされたくないってだけ」

「人をゴキブリみたいに……」

「その言い方はゴキブリに失礼だ。自然界では落ち葉を分解する森の掃除屋としての役割があるし、鳥の餌にもなる。でもあいつらはどうだ? 働くでもない学ぶでもない。ただ年を取っていく保護者にぶら下がるだけで、やがて生活費がなくなったら生きるために強盗をし始める。こんなことを言ったら怒られるけど、社会貢献度で言えばまだゴキブリの方がマシだ。今の教育はゴキブリにさえ及ばない人間を作り続けてる。僕はその流れを断ち切りたいだけだ」

「真っ直ぐなんだか捻くれてるんだか、よく分かりませんね」


 目を半開きにしながら呆れ返る桜子――璃子の目によく似ている。


 桜子を見ながら口に手を当て、クスッと笑った。僕が持つある種の矛盾に彼女は気づいていた。


 僕はそれでも……素直な自分でいたい。


 しばらくの時間が経つと、僕らを乗せた渡航便がシアトルに着いた。


 大会3日前、ホテルでチェックインを済ませ、僕は千尋と、伊織は桜子と同じ部屋に泊まり、会場の下見をすることに。シアトルはコーヒー三大聖地の1つである。


 ここにやってきたのは10年ぶりだが、この街並みはほとんど変わっていない。


「あれっ、この会場、どっかで見たような」

「一度来たことがあるんですか?」

「確か10年前のバリスタオリンピック2011シアトル大会の会場になった場所だよ。動画で見たから知ってる。この時マイケルが優勝したこともね」

「因果の再現だな」

「どういうことですか?」

「あず君は10年前のバリスタオリンピック選考会で、書類選考を不当に落とされた過去があって、もし書類選考に通っていたら、史上最年少での本戦出場になっていたと言われているんです」

「そんなことがあったんですね」

「まっ、あの時の僕じゃ、優勝どころか、予選突破すら怪しかったけどな」

「あず君はここで見てたんだ」

「まあな。複雑な気分だ」


 美羽が何故この大会を僕に勧めたのかが分かった。


 これは僕が過去のトラウマを完全に消去する機会だ。


 僕はこの場所でアジア勢が予選落ちしていく様を目撃し、新たな課題を僕に示してくれた。


 コーヒーカクテルを本気で究めるようになったきっかけの場所とも言える。ここで見た経験を次の東京大会に活かしたことが昨日のように思える。


「でも、あず君にとっては、過去の屈辱を取り戻す絶好のチャンスですよ」

「ふふっ、僕にはまだ……やるべきことがあるらしいな」

「千尋君、絶対負けるわけにはいきませんよ」

「当然だよ。あず君を手ぶらで帰すわけにはいかないよ」

「2人共気合入ってますね」

「そりゃそうですよ。あず君の連勝記録を私たちが止めるわけにはいきませんから」

「世界大会だけでも15連勝中で、国内予選優勝も含めると25連勝だからね」

「「にっ、25連勝っ!」」

「もう絶対抜かれない記録だと思うよ。1回優勝するだけでも骨が折れるのに。よくやるよ」


 ――もうそんな領域にまで達していたのか。


 地道に努力を積み重ねていくことが、途方もなく遠い所に辿り着く方法であると、10年連続200本安打を達成した某日本人メジャーリーガーが言っていた。その意味がやっと分かった気がする。


 毎日試行錯誤を積み重ねてきた経験が今に活きている。子供の頃からずっとバリスタ競技会で輝くことを夢見ていたが、いつの間にか、輝きを放つ存在となっていたことに、今更ながら度肝を抜かれた。


「千尋もよくそこまで数えてたな」

「当然だよ。僕はあず君の1番のファンだから」

「何言ってるんですか。あず君の1番のファンは私です」

「僕はあず君に人生を救われたんだよ」

「私も同じです。千尋君はあず君がいなくてもご飯を食べていけたと思いますけど、私はあず君がいなかったら、ご飯を食べられなかったんです。一緒にいた時間も、私の方が長いです」

「じゃあ勝負しようよ。どっちがより優勝に貢献できたか。それで全て分かるでしょ」

「いいですよ。あず君の1番のファンは私ですから」


 伊織と千尋との間に花火のような光がバチバチと鳴っている。どっちが1番のファンかなんてどうでもいいが、日本にいた時も2人の息が合っていない。予選と準決勝が心配だ。とりあえず練習するか。


 僕らはこの3日間、ホテルの近くに会社名義で練習場所を借り、みっちりと準備を進めた。


 予選の課題であるスリーオンスリーは文字通り3人で協力するデザインカプチーノだ。


 1人目がエスプレッソを淹れ、2人目がスチームミルクを投入し、3人目がペンスティックでエッチングをして1杯のデザインカプチーノを完成させるというものだ。芸術点のみが評価され、スコアが高いチームの勝利となる。3回勝負であるため、先に2勝した方の勝ちとなる。


 まさか3人で1杯のコーヒーを淹れる形式を作ってくるとは。


 誰かがミスをすれば――それだけで芸術点が下がる。


「難しいですね。制限時間も3分しかないなんて」

「3分もあれば十分だ。3人いるってことは、エスプレッソを淹れている間に2人目がスチームミルクを作れるってことだ。しかもこれを決着がつくまで立ち位置を入れ替えてやる。3戦目まで縺れ込んだら、全員一度はペンスティックを持つことになる」

「課題は運営側がルーレットで決めるし、自分たちで決めることもできないし、予め提示されているラテアートを全員で練習しなきゃいけないのがねー」

「どのラテアートが出題されてもいいようにちゃんと覚えていないと、バトンパスができないんですね」

「まあそういうことだ。この大会はラテアート寄りで、シグネチャーはないけど、何よりチームワークが求められる。1人でできる作業を3人でやらないといけないことの必要性がよく分からないけど」

「お店だったら、こんな面倒なことしませんよね」


 伊織がクスッと笑いながら言った。確かに1人で十分な業務だし、チーム戦という名目のために無理矢理競技化した感がしなくもないが、これはこれで楽しめそうだ。


 そんな期待をしながら、僕らは静かな夜を過ごすのだった――。


 ――大会1日目――


 これはラテアート寄りの大会であるため、ラテアートを得意としている璃子と美月を連れてくれば良かったとも思ったが、夢を叶えた璃子を再び巻き込むわけにはいかない。


 美月は葉月ローストの主力として上半期の大会は全て放棄しているのだ。美月は今年のJLAC(ジェイラック)優勝を狙い、更にはJCRC(ジェイクロック)における女性初の優勝を目指している。


 とても誘える空気じゃなかった。みんなうちの傘下ではあるが、事実上独立した存在なのだ。


 総勢300組900人のバリスタが集まる中で開会式を終え、司会者から大会スケジュールを大まかに説明されたところで、観客席から最初の組を観察する。観客席には大勢の客が詰めかけており、その数は5万人を超えている。バリスタオリンピックの時と良い勝負だ。


 1日目の予選はスイスドロー方式を用いたスリーオンスリー。


 300組いるバリスタたちは10組で1つのグループに入り、グループ内で勝ち星を競う。総当たりで不戦勝を含めた9戦行い、勝率上位2組の合計60組が準決勝進出となり、勝ち数で並んだ場合は1戦あたりの『勝率』の高い方が優先され、同じ場合は直接対決で勝っている方が優先される。


 ダブルエリミネーションルールにより、2敗した時点で強制ドロップとなる。


 予選を突破するには全勝か1敗に留める必要があるのだ。


「僕らの試合は12時からだってさ」

「まだ時間がありますね」

「最初に競技を行う連中の腕を見させてもらうか」

「3分で3人のバリスタが1杯のデザインカプチーノを淹れるとは言っても、エスプレッソの段階で2杯分は淹れる余裕がありますね」

「1杯目を失敗しても、2杯目でやり直すことはできるし、1戦目でミスをしても、2戦目と3戦目で取り返すチャンスがあるし、ミスることもそれなりに許されてる。今までに比べたらちょっと緩いかもな」

「勝ち数で並んだ時のために、なるべく『スイープ』した方がいいかもね」

「スイープって何ですか?」

「相手チームに全勝すること。対戦回数を減らすことで体力の温存にもなるし、スイープの回数が多いほど勝率で有利になるから、勝ち試合であっても敗北数は極力抑えるようにね」

「分かってます」


 伊織が不満そうに言った。まるで実力を信用されていない。


 それもそのはず、伊織も千尋もラテアートはあまり得意ではない。美羽が僕らにチームを組むように仕向けた理由がここにある。来年の2022年にはバリスタオリンピック選考会がある。それまでにラテアートの実力を鍛え抜く意味もあった。ここで様々なラテアートの技術に触れることができる。


 簡単なラテアートの場合はシングルショットでもいいが、より複雑なラテアートをこなすにはダブルショットでこなす必要がある。2つのタンパーを使っても3分で仕上げるなら2杯が限界だ。


 ペンスティックで描く時間はなるべく長くしたい。


「ペンスティックを持つ順番は好きに決められるから、伊織は3戦目担当だ」

「……分かりました」

「それはいいんだけど、2戦目のペンスティック担当は、全部あず君がやってくれないかな?」

「別にいいけど、何で?」

「2戦目ってかなり重要だよ。1戦目で勝っていればそのまま勝利を決められるし、逆に負けていれば後がない。他のチームを見てよ。どのチームも1番うまい人を2戦目に置いてる」


 千尋が言うには、エスプレッソ担当、ミルクピッチャー担当、ペンスティック担当の中で最も重要なポジションは、芸術点を大きく左右するペンスティック担当だ。1戦目はプレッシャーに強い切り込み隊長タイプを、2戦目はチーム内で最もラテアートのうまい最強バリスタを、3戦目は連勝して不戦となる可能性があるため、実力はあるが、体力に自信のない人を置くべきという結論を出した。


 これが2番最強理論というやつか。


「本当ですね。あっ、穂岐山珈琲も参加してますよ」

「やっぱり来たか」

「ペンスティック担当は、1戦目が御嵩さん、2戦目が根本さん、3戦目が石原さんですね」

「どの試合も2戦目の根本さんで決めてるね。あの人たちも多分気づいてるよ」

「既に無傷の5連勝か。チーム穂岐山珈琲は確実に上がってくるだろうね」

「私たちも負けていられませんね」

「そうだな」


 千尋の方針により、1戦目は千尋、2戦目は僕、3戦目は伊織がペンスティック担当となり、一度決めたポジションが1戦毎にベルトコンベアー式に代わる。


 問題は僕がペンスティック担当の時、千尋がエスプレッソ担当で、伊織がミルクピッチャー担当になる時だ。伊織が特に苦手としているのはミルクピッチャーである。エスプレッソ担当はオートタンパー機能なしであるため、粉量とドーシング技術が必要である。ここは全員問題なくこなせるが、ミルクピッチャー担当はペンスティック担当がラテアートを描きやすいように工夫して淹れる必要がある。


 伊織は『球落とし』を習得していなかった。


 少し高めの位置からスチームミルクを上手に落とすことで、綺麗な丸を描くことができるラテアートのテクニックの1つだが、課題が何であれ、持っていた方がいいスキルだ。


 綺麗な丸であれば、ペンスティックで花を描くのが非常に楽になる。


 ここはまたしても腕の見せ所だな。


「あの、私は何のためにここに来たんでしょうか」

「もちろんサポーターだ」

「サポーターって、私にできることなんてないですよ」

「僕らにとってWBTC(ワブトック)は初めてのチーム戦だ。慣れない部分もある。だから観客目線で分かったことを言える人が必要だ。桜子もこういう舞台には慣れてないだろ。予選突破して、コーヒーイベントの舞台に参加した時のために、この雰囲気に慣れさせておきたいと思ってさ。試合が始まる前に手伝ってもらうぞ。これも仕事だ」

「それは構いませんけど、本気で私を決勝まで連れていくつもりなんですか?」

「もちろん。何なら優勝してもらいたいと思ってる。いきなりこういう舞台に立ったら、緊張でいつもの動きができないだろ。歴代の参加者は必ずサポーターかコーチ、もしくは観客としてコーヒーイベントに参加してる。これが本気で優勝を目指すということだ」

「無理ですっ!」

「「「!」」」


 桜子が悲しそうな顔で叫んだ。何かに押し潰されているかのようだ。ステージに立っているだけでも観客からの目線を一身に受ける。桜子はこの重圧に耐えられないことを自覚している。


「無理って、どういうことですか?」

「私はあがり症なんです。あれだけ大勢の人の前でステージに立つなんて……無理です」


 顔を赤らめ、体を震わせながら桜子が言った。


「――大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃないです。サポーターなら、私以外の人に頼んでください」


 桜子が逃げるように走り出した。大会独特の雰囲気に心が悲鳴を上げている。


「あっ、ちょっと」

「私が連れ戻してきます」

「駄目だ。もう時間がない。3人で準備するぞ」

「3人だと、準備時間内にできるか怪しいですよ」

「それでもやるしかないだろ。もっと桜子に配慮するべきだった」

「でもJBC(ジェイビーシー)予選は出られたんだよね?」

「予選は人もあんまりいないし、無名人だったら、大した期待もされないからな」

「ステージの設置を時間内に終わらせるには、あと1人必要ですよ」

「そんなこと言ってもしょうがねえだろ。行くぞ」

「「……」」


 ステージの近くまで行くと、運営スタッフに案内され、ステージに上った。


 午前11時50分、僕らはステージ上にエスプレッソマシンやコーヒーカップなどを設置する作業が始まった。だが伊織が懸念した通り、やはり人手が足りない。


 10分以内に準備を終えないと失格だ。ただでさえ参加人数の多い競技会だ。準備時間の延長なんて許してもらえるはずはない。どうすればっ、どうすればいいんだっ!


「お困りのようだな」

「マイケル、何でここに?」

「私の息子もこの大会に参加しているんでね。息子のチームのコーチとして来た。その様子だと、サポーターがいないようだな」

「サポーターとして連れてきた人があがり症でな、さっき逃げられちまった」

「なるほど。おい、こいつらを手伝ってやれ」

「えぇー、何で俺が?」

「いいから早くしろ。アズサと勝負したくないのか?」

「ちぇっ、分かったよ」


 マイケルが自分と同じくらいの身長の男に手伝いを命じた。


 どうやらこいつらが、マイケルがコーチを務めているチームらしい。


 チームマイケルの1人が伊織と千尋を手伝うと、あっという間にステージの設置が終わってしまった。どうやらコーヒーは僕を見捨ててはいなかったらしい。


「……ありがとう」

「東京大会での借りを返しただけだ。もしアズサが失格になったら、息子のチームが優勝した後で文句を言われかねないからな」

「相変わらず素直じゃねえな」

「君が言えたことじゃないだろう」


 僕とマイケルはお互いの目を見て笑った。かつて最大のライバルと呼んでいた戦友が、今は立場を逆にして同じステージにいる。何とも滑稽な光景である。でも本当に助かった。首の皮1枚で繋がった。


「紹介しよう。息子のマイケルジュニアだ」

「あんまり似てないな」

「母親似なんだよ」

「マイケルジュニアだ。アズサ、あんたと戦えることを楽しみにしている」

「こっちこそ、悔いのないよう全力を尽くす」


 握手を交わしている内に準備時間が終わり、マイケルたちが去っていく。マイケルたちの後姿を眺めながら手を振っていると、伊織と千尋がそそくさと戻ってくる。


「まさかマイケルたちが助けてくれるなんてな」

「借りを返されちゃいましたね」

「借りって何?」

「そんなことより試合だぞ。せっかく拾ったチャンスだ。気を引き締めていくぞ」

「そうですね」

「やれやれ。じゃあ久しぶりに本気出そうかな」


 僕が右手の甲を掲げると、伊織と千尋が僕の手に自分の手を乗せ、覚悟を決めた。

読んでいただきありがとうございます。

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