302杯目「心に引っ掛かる思い」
午後5時30分、営業初日のラッシュが終わり、ラストオーダーの時間を迎えた。
段々と客足が減っていき、文字通り最後の注文を終えた後で僕らはホッと胸を撫で下ろした。
桜子は慣れない行列の対応に追われ、カウンター席の真向かいでぐったりと突っ伏している。椿と花音はそんな桜子を宥めながら仲良く話している。
「はぁ~。もう動けません」
「そりゃー新人がいきなりあの数を捌いたらそうなるよー」
慰めるように花音が言った。金華珈琲も何度か葉月ローストの売り上げが上がった影響で行列ができたことがある。奇しくもその経験が生きていたのか、椿と花音は捌き終えた後も息を切らすことがない。
特に花音はタフさが顕著であり、ラッシュ続きの客を何人捌いても全くペースを崩すことがなかった。か弱そうな見た目に反して大した体力だ。
「花音さんはまだ元気なんですね」
「私は以前のお店で朝から晩まで毎日働いてたから」
「花音ちゃんは金華珈琲で働き始めてから運動始めたもんねー」
「はい。まずは体力をつけないと何も続かないって思ったので」
相変わらず単純な発想だが、物怖じせずすぐ行動に移せるあたり、悪魔の洗脳は解けたようだ。
花音がここまでの体力を身につけたのには訳がある。
ニートだった期間を少しでも取り返したいのだ。そこで運動して体力をつけることを勧めた結果、8時間くらいの労働なら、ぶっ続けでも平気で乗り越えられるようになったんだとか。やっぱ体は資本だな。以前よりもスタイルが良くなっている。椿は元から細い方で、体型は伊織と変わらないくらいだ。
「コーヒーの粉量を調節する余裕、全然なかったです」
「何でうちがオートシステムに頼っているかが分かっただろ。粉量が足りない時は自動で出る分量をもう少しだけ追加して、逆に多すぎる時はちょっと減らしてたんだよ」
「あの一瞬の間に、全てのコーヒーの適切な粉量を判断していたんですか?」
「もちろん。味が薄めのコーヒーは粉量を多めにして、味が濃いコーヒーは粉量を少なめにすればいいからな。オートシステムがなかったら、全部自分の勘でやらないといけないけど、これのお陰で適切な分量の数字を決めるだけで済むようになった。分量は最新式エスプレッソマシンに付属しているこの上下ボタンで数字を変更するだけでいいから、いちいち分量を量る必要もなくなった」
「最新式エスプレッソマシンって、ここまで進化していたんですね」
「ただコーヒーを淹れるだけなら、レシピ通りにやれば誰でも淹れられるようになった。僕らバリスタは新しい味を創造するクリエイターである必要に迫られてんだよ」
「……世知辛いですね」
「逆だ。創造性が問われるようになったってことは、本当に努力した人がちゃんと報われるようになったってことだ。悪いことばかりじゃない」
「……そうですか」
バリスタが持つ新たな可能性を桜子に説いた。
それはまだ、桜子本人でさえ、気づいていないものだった――。
顔は納得しなかった。桜子は僕らの中で最初に帰宅した。
まだ慣れない新天地での仕事は、彼女を疲弊させるには十分だった。
1月中旬、新人3人が段々と葉月珈琲の業務に慣れてくる。
営業時間は6時間だが、連日超満員になることも珍しくはない。その時には縺れることなく仕事ができるようになっていたが、自らの甘さを思いの外痛感したようである。
「桜子」
「はい」
「前々から気になってたんだけどさ、競技会自体は好きなの?」
「……いえ、以前も言いましたが、宣伝の手段としか思ってません」
「君が出ていた時の動画を見せてもらった」
「えっ、見たんですか?」
「うん。凄く楽しそうにしていたぞ」
「……プレゼン中ですから」
後ろを向きながら桜子が言った。美羽に頼んで動画を見せてもらった。
まだ15歳だった時の桜子は笑顔に満ちており、プレゼンであることを忘れさせてくれるような内容だった。コーヒーは特に珍しくもないキリマンジャロであり、奇しくも僕が朝日奈珈琲で最初に飲んだコーヒーと全く同じものだった。桜子は先代の味を忘れていなかった。どうりであれをプレゼンの題材に選んだわけだ。しかも3年連続で同じコーヒーか。余程気に入ってるんだな。
「キリマンジャロ、好きなんだろ?」
「! ――はい。タンザニアのコーヒーで、100年以上も前から風味を守り続けたコーヒーなんです。今でも定期的に私の家に届けられるんです」
「そのコーヒー農園とは親交があるんだな」
「はい。一度訪れたことがあります。広大で環境の厳しい土地で育ったコーヒーは、樽熟成したワインのように、とても濃厚で深みのある味わいになるんです」
「だから最初に飲んだ時、仄かにあのコーヒー特有のテロワールを感じたわけだ」
「テロワール?」
話を聞いていた伊織が首を傾げた。
伊織にとってもコーヒーの話題は、淹れたてコーヒーのアロマに同じである。
「葡萄畑を取り巻く自然環境要因のことです。元々はフランス語で土地を意味するテールが語源になった言葉で産地特性という意味合いで使われます。全く同じ品種であっても、育った土地が違えば風味も変わるので、どこのコーヒーであっても、1つとして全く同じものはないんです」
「それこそがコーヒーの持つ最大の魅力ですもんね」
「はい。今度キリマンジャロが届いたら、持ってきましょうか?」
「是非お願いします!」
伊織が食いつくように懇願する。まるで獲物を待つ野獣のようだ。
風味特性の違いについては伊織もかなり精通しているようで、業務そっちのけで桜子と話し込む始末である。コーヒーのことになるとすぐのめり込むところは、2人共共通しているようだ。
それにしても、桜子が持っているというキリマンジャロ、気になるな。
「私、今年こそはJBCで優勝を目指しているんです。なので桜子さんのお気に入りを是非とも参考にさせていただきたいんです」
「……そうですか」
さっきまでの笑顔が消え、再び思い詰めたまま伊織と距離を置いた。
「桜子さん?」
「えっと、もう掃除の時間ですよね。ラストオーダーも過ぎましたし」
「そうだな。じゃあ客席の掃除を頼む」
「……はい」
桜子をみんなから引き離し、客席の奥まで彼女を誘導する。
一度でいいからちゃんと話したい。どうしてバリスタ競技会を避けるのかを。
「桜子、ちょっといいか?」
「はい。どうしました?」
「これも何かの縁だ。終わったら葉月商店街を案内したい」
「あー、確かあず君が育った商店街ですよね?」
「ああ。元々はおじいちゃんたちがみんなの商売を守るために色んな店を集めて、それがいつの間にか葉月商店街って呼ばれるようになって、おじいちゃんが初代会長になった」
「みんなの商売を守るため?」
「当時の日本は貧しかったから、みんなで手を取り合って、身内同士で仕事を回すようにした。そうすることで、他が不況になっても、金回りが悪くならずに済む。不況の原因はみんなが守りに入って買い物をしなくなることで、経済が麻痺を起こすからだ。おじいちゃんはそれを見抜いていた。だから好景気に入るまで、耐えることができた」
「ふふっ、分かりました」
こうして、僕は店の営業を終えてから桜子と一緒に葉月商店街へと赴いた。
夕食が遅くなることを唯に告げると、唯はまた浮気ですかと、両頬を膨らましていた。
僕の行動は全て筒抜けのようだ。決して浮気ではないが、気にならないと言えば嘘になる。ここは何としてでも探りを入れたいところだ。じゃないと千尋が聞き出しそうで怖い。
葉月商店街は人で賑わっている。葉月グループ系列の店が2店舗あるが、営業時間が異なるために住み分けができていることを伝え、葉月ローストに寄った。
「この子が葉月珈琲の新人か」
「ふーん、結構可愛いじゃない」
「新人でいきなり葉月珈琲で勤務なんて凄いじゃないですか」
「そ、そうなんですか?」
「はい。みんなできればあず君の下で働きたいと思ってるんですよ」
「そうですか……」
美月に対して若干固い受け答えをする桜子。
緊張しているのではない。どちらかと言えば、期待に押し潰されようとしている人の顔だ。
うちの店で働くのは、本来であればトップバリスタのみ。葉月ローストは店仕舞いを始めている。入れ替わりに葉月コーヒーカクテルが開くと、早速客足がこことは別の方向へと向いた。
「あそこも葉月の字がありますけど、あれもあず君のお店なんですか?」
「ああ。あそこはコーヒーカクテルバーで、将来的にJCIGSCへの出場を目指すバリスタが日々修行している場所だ。奢るからさ、あそこで一緒に飲もうよ」
「構いませんけど、かなりの行列ですし、私未成年ですよ」
「今日はもう予約してあるから大丈夫だ。それにアルコールなしのメニューもある」
「また浮気ですか? そういうの感心しませんよ」
「浮気じゃねえよ!」
「ふふっ、冗談です」
美月の冗談は冗談に聞こえないから困る。みんなして唯とおんなじこと言いやがって。
誰かにこんなことを言われたのは一度や二度じゃないが、流石に慣れてきた。
「桜子ちゃんだっけ、一度行ってみるといいよ。凄く良い所だから」
慶さんが迷っている桜子の顔に向かって声をかけた。桜子の様子には既に気づいているようだ。
「は、はい。あの、もう少しだけ、ここで見ていきたいです。色んなコーヒーが揃っていて、とても興味深いので……ゲイシャにシドラまで揃ってるんですね」
「そうだね。ここにいるみんなはバリスタ競技会に毎年出てるんだけど、ただ優勝するだけじゃなくて、葉月グループが生産しているコーヒー豆を宣伝する目的もあるからね」
「コーヒー豆の宣伝?」
「うん。結果を残すことも大事だけど、何よりコーヒーが持つ魅力をみんなに届けることが第一の目的なんだよ。だから桜子ちゃんのように、魅力のあるバリスタが入ってきてくれて、みんな喜んでるんだよ」
「……」
奇しくもバリスタ競技会の話題になってしまったことで、再び桜子の顔に迷いが生じた。
「――? どうかした?」
「あっ、いえ、パナマゲイシャとエクアドルシドラを頂けますか?」
「もちろん。お買い上げありがとうございます」
うちの豆が気に入ったのか、桜子は今のコーヒーのトレンドであるゲイシャとシドラを購入する。
そういえば、朝日奈珈琲にはトレンドの豆はなかった。ただでさえ経営状態が厳しかったんだ。仕入れが困難であることは言うまでもない。
親父たちに見送られ、僕と桜子は葉月コーヒーカクテルへと向かった。
「いらっしゃいませー。あっ、あず君、席空けてますよ」
真理愛が僕らを2席分あるカウンター席へと誘導する。
「ありがとう。いつもの」
「はい、かしこまりました」
「今度はこれまた一段と優れた美人を連れてきたな」
「美人ってほどでもないですけどね。いつも違う女性を連れているんですか?」
「ああ。あず君の浮気性にも困ったもんだ」
「……もうツッコむ気にもなれねえよ」
調子に乗っている俊樹を軽くあしらうと、僕らは席に腰かけた。
「あのー、私、未成年なんですけど、大丈夫なんですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。ノンアルコールカクテルもありますから。ただ、あまり飲みすぎないようにした方が賢明ではありますね」
「ですよね」
若者たちが成人した後で常連になりやすいよう、ノンアルコールカクテルを勧めていたのが、ここで功を奏した。何杯かのノンアルコールカクテルを飲んだ。
桜子は半球型の豊満な膨らみをカウンターテーブルに押しつけながら突っ伏してしまった。顔を確認すると、目を半開きにさせながら、恋する乙女のように赤くなっている。
「もしかして……酔ってる?」
「酔ってるわけないじゃないですかぁ~。はぁ~」
「あちゃ~。どうやら桜子さんも下戸みたいですね」
「一応ノンアルコールでも、僅かにアルコールが含まれてるからな。プラシーボ効果もあるだろうけど、こりゃあ記録ものの下戸だな」
「後は僕に任せてくれ」
コクッと頷くと、真理愛も頷き返し、僕らの真向かいから俊樹を連れて、少し離れた場所へとさりげなく移動すると、店の常連たちと雑談をし始めた。
「桜子、葉月珈琲での仕事は楽しいか?」
「……はい。ただ、競技会の話をされる度に辛くなります」
「それは何で?」
「私、JBCにもう3回出場しているんですけど、一度として予選突破ができていないんです。先代もバリスタ競技会に何度か挑みましたが、結局、決勝の舞台には上がれないまま亡くなりました。先代の代わりに決勝の舞台に上がろうと学校をそっちのけにしてコーヒーの研究をしました。でも……駄目でした。先代は三度目の正直という言葉を信じていました。3回で駄目なら才能がないと」
「……なるほど、そういうことか」
桜子の言い分には妙に納得できるところがあった。
バリスタ競技会に3回出場して1回も決勝までいけなかった。そこに先代の言葉が足枷のように引っ掛かり、もうこれ以上は参加するべきではないと考えているんだろうが、それはあまりにも早計である。
つっかえ棒が取れたかのように、僕も桜子もすっきりした顔へと変わり、お互いの顔を見つめた。桜子の澄み切った瞳からは、涙がこぼれ落ちていた。これ以上競争に巻き込まれたくないと目が言っている。彼女の気持ちが嫌でも分かってしまう自分の勘が辛い。
「何だよ。そんなことで諦めちまうのか」
意外にもこの静寂を破ったのは俊樹だった。黙って見守ってくれているだけでよかったのだが……。
「俺もバリスタ競技会に何度も参加してるけど、決勝にいくまで何回落ちたことか。今年開催のJCIGSCだってさー、今回でもう6回目の参加だ」
「6回目っ!? ……どうしてそんなに参加し続けられるんですか?」
「さあな。具体的に説明するのは難しいけど……何というか、全く結果を出さずに終わるのが許せねえんだよ。他の誰でもない、自分自身に対してな」
桜子の中で何かが動いた。今まで抑え込んでいた何かが。
誰かのために結果を出すなんて、考えてもみなかった。
それはそれで尊いが、ましてや死人のために結果を出すとなっては、いずれ限界がやってくる。桜子は自分のために生きることを放棄している。それが浮き彫りになってしまった。
「死んじまった先代のために結果を出したいのは勝手だけどよ、それは本当に先代が望んだことか?」
「……いえ、先代は……無理に跡は継がなくていいと仰っていました」
「バリスタの仕事は、普段の業務はどっちかって言うと地味だし、脚光を浴びることも少ない」
「先代はあず君がバリスタの印象を変えたと喜んでいました。でもみんながあず君みたいになれるわけじゃないってことが……よく分かりました」
「あったりめーだろ。あず君は規格外だ。100年に1人のバリスタなのは間違いねえよ。その先代とやらが若い頃ってのは、チャンスが少なかった時代だ。だから三度目の正直っていう言葉が重宝されていたけど、今の桜子ちゃんにはあず君がいるだろ。何度でも挑ませてくれる土壌があるってのに、それを活かさないなんて勿体ねえぞ。今はバリスタの定義も変わった。好きな仕事をさせてもらってるんだからさ、それに報いようとする気持ちがねえとな」
「ふふっ、俊樹さん、段々あず君に似てきましたね」
「おっ、俺は元からこうだからな」
僕と桜子の目の前で、俊樹と真理愛がイチャイチャと話している。
確かに俊樹の言う通りだ。チャンスが3回しかないなら、僕みたいなのはとっくに落ちこぼれていただろう。バリスタとして成功するためには、一見失敗と思われる過程を何度も踏む必要がある。うまくいかないことを恐れるなんて発想は持ち合わせていなかった。
精神的に独立しているかと思いきや、今でも先代の影を追っていたとはな。
「桜子、バリスタの仕事は誰にでも才能があるものじゃないし、何度も予選落ちしていたら、いずれ見切りをつける時だってやってくる。葉月珈琲塾も生きる力を養うトレーニングの一環でやっているだけで、常に張り詰めた糸の上を歩くような商売だ。だからさ、子供たちには無理にバリスタになってほしいとは思わないけど、今はまだ見切りをつける時じゃない。それは確かだ」
「……バリスタ競技会に出ていれば、何か掴めるんでしょうか?」
「桜子には先代から受け継いだ秘密兵器があるだろ。それを使う前に諦めるのか?」
「……」
思い詰めた顔のまま、桜子が下を向いた。
「何だよ? 秘密兵器って」
「桜子がJBC予選を突破したら見れるかもな」
「言っちゃったら秘密じゃなくなりますもんね」
「何だよ真理愛まで」
「どうしても嫌なら無理にとは言わん。でもやらないならやらないで、どこかで見切りをつける覚悟はしておけ。人生は長い。バリスタに拘る必要はないけど、何かしら一生を懸けて没頭できるものを見つける必要はある。どうせ一生働くことになるんだ。それだったら好きな仕事で生きていく方が幸せに決まってるだろ。自分に嘘を吐いて生きてたら、詰むぞ」
「……」
しばらくしてほろ酔いの桜子に肩を貸しながら葉月商店街を歩いた。日が沈んだこともあり、人はもう少なくなっていた。なんかサラリーマン同士で2軒目3軒目を渡り歩いているような気分だ。
葉月商店街には、昔潰れかけていた古い居酒屋が何件か並んでいた。
数人の客が入り、見事に復活しているようだった。
ここらの連中は不況の時期に胡坐を掻いている。変化に対して保守的なのか、とても努力をしているとは言い難い。故に彼らはうちの店にやってきた客のお零れで復活したようなものだ。
それを自分たちの努力である勘違いしているようだが、小さな努力で大きな成果を得ている人は、ほとんどの場合において誰かの残り物の恩恵であることに気づいてない。騒がしい葉月商店街の外に出ると、夜風のお陰か、酔いが醒めた桜子が僕から離れ、雲から見えた月が僕らを明るく照らした。
「あれは……先代が私のために……残してくれたものなんです。きっと一生の思い出にしたかったんだと思います。無理までしてシグネチャーを開発して、先代が倒れる少し前、私にローヤルコーヒーのレシピをメモに書いて渡してくれたんです」
「この前飲んだあれ、めっちゃ美味かった。味にムラがあったけど、それを修正できれば、準決勝以降も勝算はあるぞ。去年は穂岐山珈琲の連中に優勝回数でリードされちまったからな」
「――あの、本当に何回失敗してもいいんですか?」
「全力でやっての失敗だったら、会社が続いている内はいくらでもOKだ。うちにとって最も大事なのは好奇心だ。仕事ができるかどうかも大事だけど、試行錯誤を恐れない好奇心がないと、これからのバリスタ競技会で生き延びるのは難しいからな。桜子ならできる。僕も全力でサポートするからさ、今度こそ予選突破しようぜ。多分、先代は死期を悟っていたんだと思う。だから君に希望を託した」
「……」
再び桜子が目を細め、口を閉じながら顔の正面で月光を浴びた。
悩み抜いた末、桜子は何かを覚悟した顔で僕の目をジッと睨みつけた。
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