300杯目「思い出の年末」
12月下旬、クリスマスが段々と近づいてくる。
葉月珈琲の営業も大詰めである。うち以外の店舗も年末年始は業務を休むのだが、流石にまとまった休みがないのはどうかと思ったのが理由だ。
葉月珈琲傘下の店舗は、来年度から年末年始以外年中無休となる。
休日もバリスタたちは、当たり前のように店に来ては、開発や研究に勤しんでいるため、休日は自分で決められるようにした上で、普段は無休となった。
葉月珈琲の社長として、この年最後の仕事を終えたところで、ホッと一息吐いている時だった。
「年末年始が休みとはいえ、本当に大丈夫なんですか?」
「大丈夫かどうかは、一度やってみれば分かる話だ。今までは週1日強制的に休ませる週休1日ルールを設けていたけど、休日を選べるんだったらあんまり意味ないと思ってさ、だから今後はみんなの裁量に任せることにする。働かせすぎるのも良くないけど、働きたい時に休ませるのも、それはそれで才能の芽を摘むことになりかねないし、何より不完全燃焼になるからな」
「あず君が最も嫌っているものですね。でもよくよく考えてみれば、あず君に休日って、全然なかったですね。毎日が日曜日じゃなく、毎日が金曜日って感じでしたし」
「休日なんて作るから平日とのギャップに苦しむことになるんだ。何なら休日の方がつまんないから、毎日でも働きたいって思えるような仕事を見つけるべきだ。生活費のために働くんじゃなく、遊んで稼ぐ時代だってことに気づけば、みんな今よりもずっと良い人生を歩めるはずだ。生活費が働く理由になってる人とか雇いたくねえよ。モチベーション低いだろうし」
「だから人を採用する時は、好奇心重視なんですね」
「そゆこと。バリスタは始める年齢が低いほど経験を積めて有利だ。だからなるべく学歴の低い中卒あたりを雇いたいと思ってる。学校で培ってきた知識はうちでは全然通用しないし、最低限のマニュアルさえこなせれば後は才能次第だ。中卒や高卒は他の企業が採りたがらないからブルーオーシャンだし、競合せずに済むのがうちの良いところだ」
「その人たちをそれぞれのお店で採用するんですね」
「今はまだ試験段階だけど、うまくいけば今まで見捨てられがちだった低学歴の連中を活かせるかもしれない。1人でもいいから成功してくれることを祈ってる」
一般的に低学歴は学習能力が低く、知識の幅が狭いというイメージがあるが、それは単に彼らを取り巻く環境が悪かったために、真の力を発揮できなかっただけである可能性が高いのだ。
余程人格や頭脳に問題を抱えていない限りは、ポテンシャル採用の価値があると言っていい。玉石混交で言えば、石の割合が高い。だが彼らが磨けば光る石であることもまた事実である。
低学歴の多くが出世できないのは、個人的要因よりも環境的要因の方が大きいと結論を出している。どんなに価値のある宝石も、磨かれなければただの原石だ。磨けば光る石なのに、磨ける環境にいなかった。それだけの話だ。だがうちには実力を磨ける環境が揃っている。故に誰も採りたがらない彼らにこそ価値があるのだ。問題は親ブロックだ。できれば伊織のように小学生の段階から修業を積み、中卒と共に採用できることが望ましいが、学歴至上主義に染まりきった親が1番の壁になる。才能があればうちで働けるし、才能がないなら進学でもいい。これこそが本当の意味でのポテンシャル採用だ。
高卒や大卒の資格ならいつでも取れる。
だが若い内に何かに没頭したという経験は、年を取ってからでは絶対に取得できない代物だ。没頭して自信を身につけ、生きる力を培っていけば、レールになんか乗らなくても、力強く生きていける。
「葉月珈琲の社員教育は脱レールがテーマでしたね」
「そうだ。ポテンシャル採用だろうと、中途採用だろうと、最終的には自分で人生を選んで、自分の足で歩いていける人間を育てるべきだ。今はみんな安心しきってるけど、そう遠くない将来にレールが崩れるのは間違いない。そうなった時、レールを頼らないと生きていけない人間は、みんな飯を食えなくなる。そこまでいけば、ようやく脱レールという生き方が見直されるようになるはずだ」
「先のことまで見通してるんですね」
「ちょっと考えれば誰でも分かる」
某大手自動車会社の社長が言っていた終身雇用は難しいという発言は世間に衝撃を与えた。あれは世間が信仰してきたレールが脆くも崩れ去ることを示唆している。
レールは人々の生活を守ってくれる代物ではなくなった。パンドラの箱が遂に開かれたのだ。
それを裏付けるかのように、某大手電機メーカーが台湾の某大手企業に吸収合併され、大勢の社員がリストラされてしまった。リストラが発生するということは、人件費を確保するだけの余裕がないというだけでなく、みんなと同じことしかできない人間は残す価値がないと見なされた証でもある。
大手社員の多くは、自分で自分を養う方法を知らない。これは紛れもなく、生きる力を育ててこなかった親と学校の社会的責任である。うちだっていつリストラの時期を迎えても、何ら不思議ではない。何なら倒産する可能性だってあるくらいだ。そうなった時に備え、クビになっても自分の力で生きていける人間を育てるという他の企業が今までしてこなかったことを始めているのだ。
「ところで、クリスマスイブに朝日奈珈琲で閉店パーティを開くって、本当なんですか?」
「本当だ。唯も来るか?」
「私は子供がいますから、あず君だけ行ってください。桜子さんが朝日奈珈琲を閉店するって、そんなに惜しいことなんですか?」
「僕のバリスタ人生を変えるきっかけになった店だ。ちゃんと供養してやりたい。下手したらあそこに行くことはないかもしれないからさ」
「桜子さん、どこに行くんでしょうね」
「まだ決まってないらしい。クリスマスが終わってから発表だとさ。でも桜子を他のコーヒー会社に紹介するっていう奴、本当に信用できるのかな」
「そこまで他の女性のことを心配するなんて、何だか嫉妬しちゃいます」
不機嫌そうに唯が僕の左腕に自分の腕を巻きつけ、豊満な胸をこれでもかと押しつけてくる。
――また1人増えちゃうよ。でも……唯には悪いことをしたな。
「嫉妬されても困るんだけど」
「……他には誰が行くんですか?」
「柚子と伊織と千尋、それから小夜子たち4人を連れていくことになってる。他の身内はクリスマスパーティーに来てくれることになってる」
「小夜子さんたちも、一度行ったお店なんですよね?」
「うん。あの時は1人で行きたかったけど、みんながどうしてもって言うからさ、それで美咲の計らいでピアノを弾くことになって、あれが岩畑の怒りに触れる原因になったんだよなー」
「ふふっ、その相手を施設から救うことになるなんて当時のあず君は思ってもみなかったでしょうね。私はそんなあず君も好きです」
唯が顔を近づけてくると、流れのまま口づけを交わした。ありもしない浮気を警戒しながらも、最終的には僕のことを信じてくれている。僕にはとても嬉しく感じた。
クリスマスイブがやってくると、僕と柚子は小夜子たち4人と合流した。
吉樹と美羽も誘う予定だったが、育児や人事の仕事で忙しいと断られた。朝日奈珈琲はクリスマスイブを最後に閉店することが決まっており、この日は僕らだけで貸し切りの状態だ。この日の思い出は特別大切にしたいと思った。もう20年も前のことなのに何故か名残惜しい感じがする。
高山市の山々には僕らを歓迎するかのように雪が積もっており、真っ白な銀世界が辺り一面に広がっていた。建物の屋根にも雪が積もっており、その周囲には屋根の雪を削ぎ落とす人々の姿があった。
「「「「「うわぁ~!」」」」」
以前林間学舎で行った時は春であったためか、この雪景色に全員が口を開けて驚いている。
まるで子供のように伊織と千尋が目を輝かせている。このまま雪合戦でも始めてしまいそうで怖いのだが、そんなことを考えている内に本当に始めてしまった。
千尋がピッチャーのように雪玉を投げ、咄嗟に庇った伊織の腕に直撃した。
「うわっ! 何するんですかっ!?」
2人が楽しそうに雪合戦をしているのを見て、小夜子たち4人も二手に分かれて加勢し始めた。
「やれやれ、何やってんだか」
「でもこういう時くらいしか、雪合戦ってできないよね」
「よくこういう所に住もうと思ったな」
「それが故郷ってものだよ。多少不便でも、思い出深い場所は守りたくなるもんでしょ」
「柚子は優しいな。そういうとこ、好きだぞ」
「……馬鹿なこと言わないの」
柚子がそっぽを向きながら言った。
柚子の烏の濡れ羽色のような髪は、僕の目にはとても可愛らしく映った。伊織たちは自分が大人であることなどすっかり忘れ、雪合戦がヒートアップしている。勢いだけで雪が溶けそうだ。
――ここんとこ、家以外の場所で全然遊ばなかったな。
伊織も千尋も、本当は外でこんな遊びをしたかったのかもしれない。
「ほーら、遊んでないで、みんな行くよー」
「「「「「はーい!」」」」」
柚子の一声で全員が統率され、終焉を迎えようとしているカフェへと続く道を再び歩み始めた。
もはやどっちが社長なのか分からん。坂の上に哀愁漂う木造の建物が見えた。屋根の雪化粧が朝日奈珈琲の最後を飾っている。扉を静かに開けると、チリンチリンとドアベルが来客を知らせた。
「いらっしゃいませ。お待ちしていました」
「あの、今日で最後なのに、貸し切りでいいんですか?」
「はい、構いませんよ。今日は葉月珈琲さんの貸し切りですから、好きなだけ注文してください。近所の方々とも、昨日ここで閉店パーティを開いたんです」
「だからバイトを1人も雇ってなかったんですね」
「そうですね……もう雇う余裕もないので」
「時代の流れだよねー」
「千尋君、失礼ですよ」
「いいんです。もう潮時ですから。それよりも、新天地での仕事が楽しみです。バリスタの仕事は保証してもらえるそうなので、またどこかで会えるかもしれませんね。ここを離れるのは……身を刻まれるような思いですけど、運命かもしれません」
桜子が恋人と別れた乙女のような顔で目線を下げた。
それほどにまで思い出深いこの場所を売りに出すのは辛かろう。しばらくは忙しそうに注文の品を桜子が作り、僕らに振る舞ってくれた。誠意に溢れた立ち振る舞いは最後の足掻きのように思えた。カフェでバリスタとして働けることを心から喜んでいなければ、あんな笑顔にはまずなれない。
久しぶりに訪れた賑やかな風景を桜子は心底楽しんでいる。
「ねえ、固定資産税がかかるにしてもさー、働き続けるんだったら払えるんじゃないの?」
アイリッシュコーヒーでほろ酔い状態の千尋が素朴な疑問をぶつけた。
これにはさっきまで笑顔の絶えなかった桜子も、まるで辛い過去を思い出したかのように、愛想笑いを浮かべた。柚子と伊織は小夜子たち4人組と仲良くテーブル席で話している。カウンターテーブルやテーブル席の上は、コーヒーカップや料理皿でいっぱいになっていた。
人の奢りの時だけはめっちゃ食べるんだよなこいつら。
「……理由は他にもあるんです。ここは先代の遺言で、先代の子供、私の祖父の甥に所有権が渡っているんです。祖父の甥はここを売ったお金を遺産にするつもりでしたけど、私の我が儘でこの店が潰れるまでは貸してもらえることになっていたんです」
「ということは、ここの経営が終わったら返さないといけないわけか」
「はい。親戚はみんな、カフェの経営にはあんまり興味がないみたいで。ここを売ったら数千万円はするそうなので、今こうしている間にも、売却の話が進んでいるんです。私の両親は既に離婚していて、2人共ここを離れたまま疎遠になっているので、残る理由がないんです。先代や祖父の墓があるので、年に一度は戻ってくることになりますけど」
「そう考えると、墓っていうのはその場所に人を繋ぎ留める絆かもね。僕も名古屋に戻る気は全然なかったけど、父さんのために何度か戻ることになりそうだよ。死せる親父生ける息子を走らすってね」
どこかの故事を捩ったような台詞を当たり前のように言えてしまうことからも、千尋が高等な英才教育を受けていたことが見て取れる。こりゃ千尋の親父も報われんな。結局会社を継ぐことを拒否しちゃったし、一体どうなることやら。村瀬元社長の死期を見切って早々に孫の顔を見せたことからも、村瀬元社長のことを少なからずリスペクトしていた部分はあるのだろう。幅広い知識を蓄えた分、世の動きを見通せるようになっているのを見ると、千尋の親父の貢献によるところが大きいと言える。
「そうですね。お墓はその場所で生きた証と言っていいと思います。たとえ命尽きたとしても、その志は次の世代へと引き継がれていく。私は先代の志を継いで……何とかこの店を盛り立てていくつもりだったのに……これからもう……どうしたらいいか」
感極まった桜子の目からは涙が零れ、それが彼女の頬をゆっくりと伝っている。
桜子は見えない未来に確かな不安を抱いている。店が潰れかけた頃の僕と似ている。倒産寸前のまま捨て身の覚悟で世界を相手に戦っていた頃を思い出した。
おじいちゃんの志は確かに僕に引き継がれていた。もしおじいちゃんが今の岐阜を見たら喜んでくれるに違いないと確信している。バリスタに必要な心構えを三流ながらも常に持ち続けた結果、やがてコーヒー業界をも動かした。これは一生ものの誇りである。
「桜子、本当は新天地に行くのが不安なんだろ。僕だって最初に外国に行った時は不安でいっぱいだったし、志を叶えられるか、心配になった時もあった。でも思い切って飛び込んでみれば、今まで見えなかった世界がそこには広がっていた。桜子が先代から引き継いだ志を叶える方法は、何もここだけじゃないと思うぞ。志は新天地で叶えればいい。そこで仲間を作って力を借りるんだ。そしていつかここに戻って、この店を買い戻せるくらいになれば、先代も喜んでくれるんじゃねえか?」
桜子の顔色が変わった。何かに目覚めたかのように、自信がその目に戻る。
新たなインスピレーションが彼女の中で大きく弾けたようだ。
「確かに筋は通ってますね。私、このお店を買い戻してみせます」
「そんなことしなくてもさー、あず君がこの店を買い取って、プレゼントしてあげたらいいじゃん」
「それじゃ意味がねえだろ。桜子自身の手で取り戻すことに価値がある。なっ?」
「はい。未来に怯えていてもしょうがないですよね。私も覚悟を決めます。新天地で我武者羅に働いてから、またここに戻ってきます。それまでは……もう嘆きません」
桜子が力強い声で言った。その目つきは自信に満ち溢れたバリスタだ。
彼女の健闘を心から祈った。僕はこの笑顔をずっと忘れることはないだろう。人の幸せを願っている自分までもが幸せに思えてくる。おじいちゃんがよく言っていた。本当に頭の良い人とは人を幸せにできる人だと。フリーだったらつき合っていたかもしれない。
朝日奈珈琲での最後のご馳走を食べ尽くし、僕らは帰宅するのだった――。
翌日、クリスマスパーティーの日がやってくる。
小夜子たち4人組は流石に来れなかった。2日続けてパーティ料理なんて食べたら、太ること間違いなしだ。例年通りリサたちや吉樹たちも遊びに来てくれた。
伊織と千尋も身内を連れていつものように集合してくれたが、クリスマスイブでも食べていたのか、クリスマス料理にはあまり手をつけていなかった。だがケーキは全然食べていなかったため、優子が持ってきてくれたクリスマスケーキを切り分け、みんなで一緒に食べた。
「なあ美羽、来年のうちのスタッフはどうするわけ?」
「あー、それならもう決めたよ。椿さんと花音ちゃんが内定していることは知ってるよね?」
「えっ、椿さんと花音さんがうちのスタッフになるんですか?」
「うん。金華珈琲が潰れて居場所がなくなるから、それで慶さんがあたしに頼んできたわけ」
「ふーん、美羽さんって、ちゃんとあず君との相性を考えてるんだね」
「あったり前でしょ。あず君は身内以外の人が相手だと、働きにくいところがあるの。ただ、最後の1人はあず君の身内じゃない人になっちゃうの。でもその人、すっごく良い人で、バリスタとしての立ち振る舞いはプロのレベルに到達している人なの。だからすぐ仲良くできると思う。人当たりも良いし、それに……あず君好みのお淑やかな美人だよ」
「ということは、女性なんだね」
千尋がニヤリとした顔で僕を見た。
すると、今度は伊織が目を半開きにさせながら僕の顔を見つめた。
「せっかく男女同数になったと思ったら、またハーレムですか」
「人聞きの悪いこと言うなよ」
「あず君はこう見えてガード堅いから、ハーレムはちょっと無理があるかもねー」
水を差すように、冷めた声で優子が言った。
全ての事情を知る美羽は、優子に同情の視線を送っている。
「正月が明けたら紹介するね。椿さんと花音ちゃんは先に行かせるから」
「紹介に時間がかかるのか?」
「ちょっと遠い所から引っ越してきた人だから、引っ越しが完了して、落ち着いてから合流することになると思うけど、来年度の営業が始まるまでに間に合わせるって言ってたから安心して」
「それは良かった。そいつと知り合ったら、葉月商店街を紹介してやりたいな」
「お兄ちゃんはぁ~、すぐ浮気するからいけないんだぁ~」
真理愛が淹れたコーヒーカクテルですっかり酔っ払った璃子が話しかけてくる。
璃子は酒に酔うとすぐ本音が出る。酒が悪いのではない。酒が人の本性を暴くのだ。重力にでも従うかのように僕に抱きついてくると、その豊満な胸が僕に優しく当たった。
たった1年ほど離れていただけなのに、璃子もお兄ちゃん成分が足りなかったようだな。この真っ赤に染まりながらも困り果てた顔が寂しかったと言っている。1人で家に引きこもる生活が快適だったと思ってはいたが、いざ1人になると、寂しさを感じてしまうめんどくさい性分らしい。
「珍しく飲んでるな」
「だってぇ~、蓮が迫ってくるんだも~ん」
「蓮との間に何かあったのか?」
「ずっと前からぁ~、同棲してぇ~、仲良かったのにぃ~」
おいおい、1人暮らしかと思ったら同棲中かよ。あいつも隅に置けないな。ていうか蓮がいねえし。
璃子が飲みたくなるほど悩んでいるということは、きっと余程深刻な事態になっているに違いないとは思うが、まずは来年度のことを考えないとな。
夜を迎えると、身内が次々と帰宅していく。
柚子は瑞浪と共に実家へと帰った。今日からは改装した実家を根城にするとのこと。
最後に璃子が帰宅したところで、僕は唯と2人きりになる。
「波乱万丈の今年も、もう終わりなんですね」
「ああ、全くだ。僕の人生観が大きく変わった1年だ」
「あず君はいつも変わり続けてますよね」
「世の中は変わる。僕は逸早く変化を受け入れてるだけだ。どうせ受け入れることになるんだ。早い段階で受け入れた方がメンタルにも良いだろ」
「ふふっ、あず君らしいところは全然変わってませんけど」
「変わってないところなら他にもあるぞ」
「どんなところですか? ――!」
正面から唯の唇を奪った。
「唯のことを愛してるところは変わってないぞ」
「……はい」
こうして、令和恐慌に始まり、不況続きのまま年末を迎えた2020年が終わりを告げた。
来年は更なる変化が訪れる年になる。変化の激しい世を、僕は駆け抜けてみせる。
必ず子供たちを……飯の食える大人にしてみせるっ!
ここまで読んでいただきありがとうございます。
しばらくは新作のためお休みさせていただきます。
なろうの方でもしばらくは書き続けようと思います。
現在はノベプラに生息しておりますのでどうぞよしなに。




