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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第1章 学生編
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30杯目「バリスタの誕生」

 親に無理を言って起業の準備をさせ、引っ越しも済ませた。


 後は家の1階部分をカフェに改造するのみ。幸いにも1階部分は既に飲食店用のキッチンがあった。飲食店として運営することを想定したデザインで、思ったより作業は楽だった。


 おじいちゃんの家からエスプレッソマシンを持ってくると、念入りにメンテナンスをした。必要に迫られて習得した技能ということもあり、一般の人よりは精密機械に強かった。エスプレッソマシンがなかったところで、ペーパードリップ、サイフォン、ネルドリップ、フレンチプレスなどでコーヒーを淹れられるし、そこまで問題はないが、家でラテアートの練習ができないのは痛い。


 璃子とは仕事や家事を分担した。この頃から得意分野は自分がやって、苦手分野は他の人に任せるという手法を確立していった。学生の時は苦手なことでもやらないといけないと言われていたが、社会で活躍している人は、みんな得意分野に特化している人ばかりだ。


 人生というゲームにおいて、学校と社会の乖離にどれだけ早く気づけるかが、勝負の分かれ目と思っている。違和感を持った後は行動するだけだ。僕は幸いにも早い段階で気づくことができた。


 来年からの開店を目指していた10月頃、璃子から肝心なことを指摘された。


「お兄ちゃん、カフェを開くのはいいけど、店名は決まってるの?」


 璃子が当たり前のことを聞いてくる。僕は起業に夢中で屋号を決めていなかったのだ。


「――あっ、忘れてた」


 璃子の指摘でようやく気づく。


「はぁ……やっぱり忘れてたね」


 璃子が自分の額に手を当てながらため息を吐いた。


「うーん、そうだな……葉月珈琲」


 何かを思いついたように口にする。


 屋号はなるべく覚えやすく、尚且つシンプルなものにしたかった。


「葉月珈琲……いいねそれ」


 璃子は僕に同意する反応を見せた。


「あくまでも屋号だけどな」


 こうして、屋号は葉月珈琲に決まった。理由は僕がコーヒーを淹れる場所という単純なものだ。


 冬が近づいてくると、璃子と共に名古屋まで赴き、色んなコーヒー市場を覗き込み、どのコーヒーを仕入れるかを決め、外国人限定で宣伝もした。英語のチラシも配った。名古屋を宣伝先と仕入れ先に選んだ理由は最も身近な大都市だからだ。岐阜市から名古屋までは電車で30分もあれば行けるし、中部地方における経済の中心地だけあって何でも揃っている。


 うちの親戚も大きな買い物をする時は、定期的に名古屋まで行って買い物をしていた――。


 休憩時間になると、僕と璃子はランチタイムに入ることを決めた。店を探すべく辺りを見渡した。


 近くに黄色いランプのついたカフェを発見する――。


 喫煙者はいない。店内もガラガラだし、ここなら大丈夫そうだ。カウンターやテーブルには白い灰皿が置かれているが、今回は良しとするか。


 決める時は早く決めた方がいい――じゃないと僕の胃袋が持たない。


 カフェを外から確認し、喫煙者がいないかどうかを見た。大の煙草嫌いである僕にとっては重要なチェックポイントだ。名古屋ではカフェと言えば看板に黄色いランプがついているのが定番らしい。店を選ぶ時は、なるべく外から見える場所で喫煙率が低い場所を選ぶ。


 他の店はみんな当たり前のように煙草を吸っているが、それを理由に入店対象から外す客がいることを知らないのだろう。喫煙率こそ段々下がってはいるが、カフェ=喫煙所と思っている輩が多いのか、禁煙しないカフェには多くの愛煙家が集い、お気に入りの銘柄をスパスパと吸っている。


 こういう奴らのために色んなカフェに入れないのがもどかしい。そんなことを考えながら、古びた木製のドアを開ける。ドアを開けた瞬間、カランコロンとカフェ特有のドアベルの音が店内に響き渡る。


「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」


 白髭に丸い眼鏡をかけたマスターらしき人が音で僕らに気づき、挨拶をしながら頭を下げる。僕と璃子は奥にあるテーブル席に向かい合うように腰かけた。やっぱ座るなら隅っこに限る。どんなに混雑していても、店の角の位置なら気になりにくい。マスターが慣れた手つきでおしぼりを持ってくる。


 ――メニューを見ると、色んなコーヒーが揃っている。


 どうせなら1番美味そうなコーヒーを注文しようと思った。


「お兄ちゃんはどうするの?」

「じゃあこのカルボナーラと、数量限定のブルーマウンテンにしようかな」

「えっ? これ1杯3000円もするよ」


 璃子がコーヒーの値段を見て驚く。カルボナーラよりも遥かに高い値段だ。


「お兄ちゃんはもう少し節約した方がいいと思うよ」


 璃子が目を半開きにさせながら呆れたように言った。


「こういう時のために普段から節約してるんだ。今の内から高級なコーヒーの味を覚えていかないと間に合う気がしないからさ。心配すんな。お金は全部僕が払うから、璃子も欲しいメニューがあったら、どーんと注文していいぞ」

「そんなこと言って後でお金に困っても知らないからね! ていうか失敗した後のこと考えてるの?」


 メニューを手に持ちながら僕に優しく忠告する。


 璃子は僕以上に石橋を叩いて渡る性格だ。学校にいた時はいじめを受けたこともなければ赤点を取ったこともなく、大きな失敗をしてこなかったが故に、失敗を誰よりも恐れている。


 僕と璃子とでは失敗の定義が大きく違うのだ。


「うまくいかないのは当たり前だ。最初は確実にこけると思うけど、行動しなかったらいつまで経ってもカフェの経営なんてできない。そのためにこうやって色んなカフェに来て研究してるわけだ。先行投資を怠ってうまくいった奴はいない。僕にとって最も大きな失敗は行動しないことだ。何かうまくいかないことがあっても、それは失敗じゃない。成功へのステップと呼ぶんだ」

「なんか理屈っぽい」


 璃子は()()()()()を強く受けているためか、挑戦=無謀と本気で思っているようだった。奴隷を量産する工程において、挑戦する気持ちでは邪魔でしかない。


 主体性があれば主人に楯突き、人と違うやり方で仕事を始め、やがて組織から独立してしまう。奴隷を作る上で最初にすべきことは、挑戦する気持ちを削ぐことだ。これこそ、みんなが当たり前と思っている常識人の本質だ。璃子もまた、この悪魔の洗脳をスポンジのように吸収し、誰から見ても当たり障りのない常識人となっていたのだ。僕はそれがたまらないほど悲しかった。確かに理屈と言われればそれまでだが、動かなければ絶対うまくいかない。それだけは確かだ。


 注文は全部璃子に言わせた。しばらくすると、僕の席にはカルボナーラと数量限定の高級ブルーマウンテンが、璃子の席にはサンドウィッチとカフェオレが置かれた。


「ごゆっくりどうぞ」


 このカフェのマスターが言葉を残し、カウンター席の向かい側にあるキッチンに戻る。このコーヒーを注文したのが僕だけだったのか、どこか珍しがっている様子だった。


 1杯3000円のコーヒーを口に含む。


「んんっ!」


 ……美味い……すっきりとした苦味と柔らかな酸味……深く濃厚な甘味の後味……しっかりとしたボディで飲み甲斐がある。間違いない……ジャマイカのブルーマウンテン山脈の標高800メートルから1200メートルまでのエリアのみという、限られた地域で栽培された高級なコーヒー豆、まさしく本物のブルーマウンテンだ。焙煎も洗練されている。


 何というか……格が違う――今まで飲んできたものとは比べ物にならない。


 この極上の味っ! これこそっ! 僕が追い求めていたものだっ!


 このコーヒーを飲んでから少しの間、何も言えないままだった。本当に美味いと何も言葉が出てこないとは言うが、これは本当かもしれない。僕はまたしてもコーヒーの深みにハマっていたのだ。


「お兄ちゃん、ずっと顔が固まったままだけど、大丈夫?」

「うん……大丈夫だ。問題ない」


 璃子に指摘されて正気に戻った。ここまで純度の高いブルーマウンテンは初めてだった。僕はカルボナーラを、璃子はサンドウィッチを食べながら黙々と過ごし、またブルーマウンテンを口に含む。


「――決めたっ! 僕、高級なコーヒーを提供するカフェを目指す」

「えっ、そんなことして予算大丈夫なの?」

「何とかする」

「何とかするって……ちゃんと計画的にやらないと、すぐ予算オーバーするよ!」

「数を絞って高級なコーヒーだけにすればいい」

「まーたそんな面倒なことを」


 突拍子もない発想に璃子が呆れ返る。一通り食べ終えたところで璃子が口を開く。


「そんなに美味しかったの?」

「うん。このブルーマウンテンなら、3000円かかるのも納得だ」

「納得されてもこっちは心配なんだけど」

「大丈夫だ、問題ない」


 店の大まかな方針が決まったところでカフェを出た。


 方針が決まったのはいいが、高級なコーヒー豆のみを使ったカフェを経営するとなると、それなりに数を絞る必要がある。色んな種類の豆を揃えて安く売るよりも、種類を限定して高級な豆だけを揃えるべきであると感じた。種類が多い店よりも、種類が少ない店の方が注文がしやすい。


 まだ課題は残っている。ずっと迫害を受け続けた反動なのか、身内以外の日本人を見ただけで強いストレスを感じるため、これでは店の営業どころではないと考え、日本人恐怖症が治るまでの間、日本人の入店は身内のみに限定する。あえて名前をつけるなら日本人規制法だ。


 これが後で色々と問題になるのだが、僕は断固として譲る気はなかった。


 少し人と違うだけで、平気な顔をしながら迫害行為を行う。それがあいつらだと本気で思っていた。実際にそうだったのだから、これからもあんな連中と出会い続けるに違いないと信じて疑わなかった。僕自身があいつらとの交流を諦めていた部分も大きい。外国人とは普通に会話ができるのに、日本人とは何故かいつもギクシャクしてしまう。


 特に空気を読むことが求められる場面や、あいつら基準の普通に合わせるべき場面で、いつも適切な行動ができなくて怒られていた。何故こんな現象が起こるのか、僕はまだ知らなかった。


 いじめっ子が来るのも恐怖だったし、尚更住み分けが必要だ。差別ではない。正当防衛だ。どうせあいつらは僕みたいな変わり者は絶対に受け入れない。僕はあいつらに対して我慢することをやめた。


 あいつらがもう少し寛容な連中になったら、日本人恐怖症も少しは改善するかもしれないが、改善する気があるならとっくにやっているだろう。しばらくはあいつらとは距離を置くべきと考えた。


 日本人客にモンスタークレーマーが多いのも理由の1つだ。あいつらは客の方が偉いものと本気で思っている。そんな奴らの相手はしたくない。だったら最善策は住み分けだ。あいつらに恨みがないと言えば嘘になるけど、体が受けつけない以上は仕方がない。


 頭ではこんなことをしても意味がないし、売り上げが下がる行為でもあると分かってはいたが、本能があいつらを避けたがっているのなら、それは避けるべきということなんだろう。


 親に対しても、今度学校に行かせたら死人が出るという言葉を無意識の内に使っていたくらいだし、頭では許していても心が許していないんだ。正直に言えば、迫害を受けるのは真っ平御免だ。日本人に会う度に、迫害を受けた時のことを思い出す。


 場合によっては怒りの感情を抑えるので精一杯の状態になる。


 ――はぁ~、これ絶対病気だよな?


 そう思いつつも、この頃は忙しい時期だったし、家に引きこもっている時は症状が出ないため、病院には行かなかった。これ以上経費を使うのも気が引ける。出会った外国人の内の何人かは、来年になったら来ることを伝えてくれた。来年までに準備だけ済ませておかないと。


 葉月珈琲は1月が年度の始まりで、12月が年度の終わりと定めた。決算日は年末にしており、理由は切りが良いからというもの。もっとも、個人事業主は自動的に年末が決算日になるんだが……。


 サイドメニューを出す余裕はない。コーヒーの種類だけ厳選して揃えておいた。保存の利く食材があったら考えてもいいかな。まずは店を開く準備、それが今年中に達成するべき目的だ。そして何より大事なのが店のルールだ。僕は煙草が大嫌いだし、喫煙禁止はすぐに決まった。当然店から半径10メートル以内も喫煙禁止だ。もしかしたら、同じ煙草嫌いの人が注意書きを見て来てくれるかもしれない。メニューも注意書きも全部英語だが、唯一日本語にしている部分がある。


 外国人観光客限定という文字だ。これで入ってくるのは身内か外国人のみになる。有名にならない内は問題にならないだろう。長期休暇は年末年始のみにし、休日は日曜日に決定した。


 何故日曜日に休むのか、それは客がたくさん来る可能性が最も高いためである。客が全く来ないのも困るが、客が来すぎると、厨房が過労死する。しかし定休日だからといって何もしないわけじゃない。この日は材料の仕入れをする。高級な豆は希少価値が高いが、十分な量を仕入れることができた。あんまり売れないと思っていたし、他の店ほど多くはないが、必要最小限しか仕入れない戦略を用いた。


 12月を迎え、コーヒーの仕入れをしたところで、親が親戚から借りた300万円をすっかり使い切ってしまい、店には必要な道具が全て揃った。なくても済む物は極力買わなかったこともあり、無事に予算内に納めることができた。他の人が使わなくて、うちの店で使えそうな物資は璃子を通して商店街で安く仕入れたり、ただで手に入れたりすることができた。


 名目上は店に置くための道具ではなく、家に置くための道具としてだ。


 大手チェーンのカフェには見劣りするけど、僕はカフェのマスターになった時のために、コーヒーの抽出をおじいちゃんの家での修行でマスターしていた。マスターだけに。


「やっと開業の準備が完了したね」

「……そうだな」

「まさか本当に始めるとは思わなかったよ」

「これ以外に道がなかったからな」

「そういえば、バリスタの大会には出るの?」

「当分先になるかもな。まずは店を安定させないと」

「私も手伝うね」

「手伝ってくれるのは嬉しいけど、あくまで家事扱いだぞ」

「うん。キッチン担当でいいかな?」

「うちはコーヒーしか出さないから、コーヒーの淹れ方だけ覚えてくれ」


 すると、璃子が店の営業時間を聞いてくる。午後12時から午後6時までの6時間だ。誰もが短いと思うかもしれないが、僕の体力を考えればこれが限界だ。仕入れは習った通り行う。事実上の引き籠りだが、毎日の運動は欠かさず行っている。


 集団リンチで受けた打撲などはすっかり完治し、幸いどこの部位にも傷跡は残らなかった。


 ――心の傷を除いては。


 僕は虚弱体質で夜行性人間だ。朝早くから起こされるのは苦痛以外の何物でもない。どちらかと言えば昼よりも朝の方が弱い。外に出る仕事は熱いからする気がないけど、家でやる仕事なら昼からでも可能である。働くなら昼からの方がパフォーマンスが上がると考えた。


 休日にはお小遣いでカフェに行ったことが何度かある。僕はそこで驚きの光景を目の当たりにした。


 会社で働いているはずのサラリーマンが、みんな仕事をサボってカフェで飲んでいたのだ。


 営業の仕事をサボって会社のリソースを無駄遣いしている。休憩ならともかく、こいつらが居座っている時間は明らかに休憩時間を超えていた。僕の持論だが、日本の労働者の8割は無駄な労働をしていると思っている。2割の労働者が利益を生み、残りの8割がパイを奪い合っている。こんなアホらしい実態を知ったら、今就活を強いられている就活生たちは、就活自殺とかする気なくすんじゃないかな。


 1日に8時間も労働するなんて僕にはできない。そもそもこれは明治時代に作られた基準だ。


 それまでは1日中働くのが当たり前で、働きすぎを防ぐために1日8時間までと定めたのが1911年に定められた工場法であり、これを引き継いだのが、今の労働基準法である。労働するからには労働に関する知識を蓄えておく必要があると思い、労働基準法を中心に労働の歴史まで学んでいた。


 何で日本の労働者って、労働基準法を学ぼうとしないんだろうか。当事者なら知っていて然るべきだと思うし、1日8時間までだってことを知っていれば、定時帰宅だってするはずなんだけどな。


 24時間営業も全くもって理解不能だ。そんなことをすれば時間あたりの単価が下がるし、電気の消費も激しくなるし、夜勤の人も大変だろう。うちは絶対にマネできない。本部は儲かるんだろうけど、こういうことをしているから、長時間労働の問題が後を絶たないんじゃねえのか?


 労働基準法すらまともに守る気のない連中と一緒に働こうとは思わない。しかし、僕の場合は好きなことを仕事にしている。仕事と趣味の境界線が溶けているのも事実だ。あくまでも客の相手をするのに体力を使うのであって、好きなことに時間を忘れ、没頭することには何の抵抗もない。


 コーヒーを淹れて飲む作業なら、起きている間はずっと続けていられるし、睡眠が趣味であることを考えれば、1日中趣味=仕事=生活みたいなものだ。メニューは値段ではなく質で勝負しよう。値段で勝負するとなると、大手のスーパーやコンビニと競合することになる。経済力でも圧倒的に押されているし、客層を全部飲み込まれるだろうし、確実に負けるのが見えている。多少値は張っても高級なコーヒーを売ると決めた。他のカフェもそれなりの値段がする所もあったけど、うちはそれ以上に高級だ。


 スーパーやコンビニのコーヒーでは満足しない層が、どこかに必ずいるはずだ。


 外国人観光客なら、基本的に中流層以上の人が多いし、ウケればきっと常連になってくれるはずだ。リスクはあるがリターンは大きい。みんなと同じことをしている内は、みんなと違う結果は残せない。


 失敗したって、また這い上がればいいんだ。


「お兄ちゃん、勝算はあるの?」

「分からん。これから考える」

「何でもっと考えて行動しないわけ?」

「消去法で決めた。どうせ進学なんてしないし、無職の引き籠りになるのも許してくれそうにないし、かといってどこかに就職するわけでもない。僕に残された唯一の道がこれだ」

「本当に……起業しかないんだよね?」

「ああ。これで駄目だったら、その時考える。方法は見つける。なければ作る」

「――分かった。じゃあ私も手伝う。乗り掛かった舟だし」


 しょうがないなと言わんばかりに、璃子が僕に寄り添った。


 そんなこんなで、僕は年末までに起業の準備を済ませ、残る作業は店を開くだけになったが、税務署で開業届を書き、来年の元日から開業と書いてから提出する。


 税金の管理は親父に頼み、いつも親父が世話になっている税理士に委託することに。親には世話になりっぱなしだが、見返りを求めないパトロンと思っている。使えるものは親でも使う意気込みだ。璃子はまだ15歳に達していない。あくまでも家事労働としてつき合わせる。


 璃子の口から言ってくれたのは嬉しい誤算だった。


 こうして、僕はバリスタになったのであった。

学生時代編終了です。

次回からは自営業時代編になります。

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