281杯目「隷属的な貢献」
第12章の始まりです。
あず君の活躍をお楽しみください。
時は流れ、5月を迎えた。僕らはメルボルンに行く準備の真っ最中だ。
唯にだけ言ったあの宣言は、他の人にはまだ話していない。言えば必ず驚くだろう。それだけみんな僕に期待を寄せていることを肌で感じている。
ただ、他のバリスタたちに影響を与えたくはない。
これを発表するのは9月のコーヒーイベントが終わるまでだ。ましてやこれが原因で調子でも崩されたら困るし、他のバリスタの大会も今までに出たのとあんまり変わらない内容だ。全てをコンプリートしたい気持ちもなくはないが、大会は人が作るもの。無限に出てくるものをわざわざやり続けるより、今ある大会の中でメジャー競技会を制覇できるバリスタを育てた方がコーヒー業界のためだ。
そんなことを考えていると、千尋が客を相手に競技を披露し終わった。
周囲の客席からは拍手が飛び交い、千尋の実力を物語っていた。
「良しっ、これで練習終わり。後は向こうで調整するよ」
「千尋君の競技、とても素敵でした。千尋君のコーヒーワールドに完全に引き込まれました。私もあんな競技をしてみたいと思ったくらいです」
「そんなことあるよ。でも結構練習したから疲れちゃった」
「コーヒー淹れますね」
「うん。ありがと」
伊織は千尋とすっかり仲良しになっている。しかもWBrC前回チャンピオンとして、トロフィーを渡す役だ。早くもこんな身分になるとは、この成長の早さには驚かされる。
どこまで伸びるか楽しみだ。コーヒー業界が今までとは比べ物にならないほど発展してもなお、優勝ができるかどうかが見ものだ。僕を超えるくらいの活躍を望むところだ。
うまくいけば、バリスタ競技会の勢力図は大きく変わるだろう。
「ところで、大会って何日行われるんですか?」
「1日目がWBCとWBrCの予選前半とWCTC予選、2日目がWBCとWBrCの予選後半とWCTC決勝、3日目がWBC準決勝とWBrC決勝、4日目がWBC決勝とWCC。つまり僕は3日目までずっとお休みってわけだ。ホント退屈しちゃうよ」
「僕は1日目から4日目までずっと競技だよ」
「WBCとWLACは準決勝がある分、長丁場ですからね」
「そうなんだよねぇ~。1日で終わるWCCが羨ましい」
「この前WBCでジャッジを務めていた人に聞いたんですけど、国内予選を複数制覇している人がいる場合は競技時間が被らないように日程を調整するって言ってましたよ。必要があれば複数の国内予選を制した人のために大会の日数を増やすこともあり得るそうです」
「あず君の心配は杞憂だったわけだ」
「千尋だったら、WBCが終わる頃には体力が尽きてそうだけどな」
にっこりと悪そうな笑みを浮かべながら言ってやった。
1つの大会だけでもしんどいというのに、2つの大会にまで参加するなんてタフだ。
しかも両方で結果を残すのは厳しいものがある。バリスタオリンピックなら条件はみんな同じだが、他の人が1つの大会に専念する一方で、2つ以上の大会に出て結果を残すのは、あまりにもハードルが高すぎるのだ。僕でもやったことがないが、それを見て見たいと思う自分もいる。
伊織は1年の間に2つの世界大会を制覇したが、半年以上も時間を空けている。
もしかしたら僕は千尋のチャレンジ精神をふいにしてしまったのかもしれん。まあそれでも千尋は最終8位だったし、更なる経験を積み重ねれば、一度に複数の大会を制覇する者が現れるかも。
翌日、僕らはメルボルン行きの便に乗り現地に直行した。
僕、伊織、千尋の3人と共に長い長い飛行時間を過ごし、ようやくメルボルンの空港に降り立つ頃にはヘトヘトになっていた。座ってばかりなのも本当に疲れる。
「伊織、着いたぞ」
「――ん? ……あず君」
「メルボルンに着いたぞ」
「メルボルン――あっ、そうでした! 飛行機に乗っていたの忘れてました。えへへ」
「伊織ちゃんはいいよねー、大会ないから」
「そんなことないです。でもここに来るの久しぶりですね」
「僕と伊織にとっては2回目だもんな」
「えっ、2人共ここに来てたの?」
「ああ。前回は2年前のWACシドニー大会に出て、その後一緒にカフェ巡りで何店舗か行ったんだけどさ、どこの店も洗練されてたなー」
「それは興味深いねぇ~」
千尋が武者震いをするかのように笑みを浮かべた。
コーヒー三大聖地の1つ、メルボルンはシドニーと共にオセアニアを代表する世界都市だ。最も暮らしやすい都市の1つに数えられ、南半球初のオリンピックの舞台にもなった場所だ。
葉月商店街も、カフェ同士のせめぎ合いが行われるような激戦区にしたい。
空港の外に出ようとすると、後ろから声が聞こえた。
「あずく~ん、久しぶり~」
振り向いたばかりの僕に勢い良く抱きついてくる。
「あれっ、優子さん」
「伊織ちゃん、千尋君、久しぶり。あたしもWCTCに参加するから。ふふっ、ちゃんと約束守ってくれたんだー」
「……約束?」
「あず君とここで会うって約束したの。そのためには国内予選を制覇する必要があるでしょ」
「だから本気出してたんだ」
「まあな」
大会3日前、僕ら4人はこうして合流し、優子が手配してくれたホテルに一緒に泊まることに。
2部屋の内、僕、千尋の2人と、優子、伊織の2人に別れ、それぞれの部屋で荷物を確認してから一息吐くと、優子と伊織が僕らの部屋へと入ってくる。
「あず君、もう夜だし、一緒にバイキング行こうよ」
「うん、いいぞ。千尋はどうする?」
「じゃあ僕も行くよ。お腹空いちゃった。機内食全然美味しくなかったし」
「仕方ねえよ。味よりも栄養補給の方を重視してるみたいだし」
「あず君とあたしは味覚を使う大会に出るから、あんまり刺激の強いものは食べられないけど、伊織ちゃんの千尋君は好きなものを食べてね」
「はい。それってあず君から教わったんですか?」
「そうだよ。あず君がWCTCに出た時、誰も必勝法を使わなかった上に、みんな大会前でも味の濃いものを食べているのに驚いたんだって」
「必勝法って、2杯目まで飲んで味が一緒だったら3杯目をそのまま解答エリアに置く梓式ですよね。私もいつか試したいです」
「あれをやるには相当な訓練が必要だよ。あたしは流石にやらないけどね」
優子は僕と全く違うやり方で国内予選を制した。
時間勝負を捨て、あえて全てのコーヒーをカッピングして勝利を収めた。まるで梓式へのアンチテーゼのようだった。そんな話をしながらエレベーターで景色を眺め、ホテル内のレストランへと向かう。
「あず君が出てたら負けじゃん」
「そうだよ。でもあず君は一度制した大会には出ないから。あず君がいない前提で考えれば、無理に最速で勝負を決めに行く必要もないの。歴代ファイナリストの結果を調べたけど、全問正解で優勝を決めた人は本当に少ないの。しかも全問正解した人は凄く時間がかかってる。だからあたしは時間じゃなく正確さで勝負するの。早くしようと思うと焦っちゃうけど、これならプレッシャーにならないし、時間よりも正解数の方が優先されるから、全問正解なら、ほぼ確実に決勝までは行けるってわけ」
「優子さんは自分の考えをしっかり持ってるんですね。私はあず君を見習うので精一杯ですけど」
「伊織ちゃん、あず君だってずっとバリスタ競技会に出続けるとは限らないんだよ。いつかあず君が引退したら、今度は伊織ちゃんがバリスタ競技会を牽引していかないとね」
「えっ……」
急にピタリと足を止めたかと思えば、伊織の顔が絶望を感じているかのように青褪めた。
「ん? どうしたの?」
最初に気づいた千尋が伊織に声をかけた。様子がおかしいことを逸早く察知している様子。
「あず君の引退なんて――考えられないです」
頭を下に向け、僕に甘えるように抱きついてくる。
何故僕の中でタイムリーな話題を持ってくるかねぇ~。
そんな気持ちを感じながら、優子の悪びれもない顔を睨みつけた。だが本人には伊織の地雷を踏んだ自覚はない。伊織の思わぬ弱点が発覚してしまったな。これじゃもし僕が引退するって言ったら伊織も一緒に引退するのではなかろうか。優子の察しの良さは時々怖いものがある。最もつついてほしくないところを無自覚につついてくるこの怖さよ。このせいでストーカーをしているんじゃないかと勘繰ってしまうこともある。思わず体がビクッと震えたが、幸いにもここは誰にも見られなかった。本音を隠し続けるのは得意じゃない。伊織は僕に依存している。それはまるで……親に依存する子供のように。
「……伊織、心配すんなって。まだ引退なんてしないからさ」
「ずっとバリスタ競技会に参加してくれるんですか?」
「いつかは引退の時が来る。たとえ調子が良くても悪くてもな。それに僕みたいなのがずっと無双し続けていたら他のプロの立場がない。子供たちだってトップバリスタを目指そうとは思わなくなるだろ。それにトレードで他の店に行く可能性もある。今の内から僕がいなくても十分やっていけるように独り立ちの準備をしておけ」
この瞬間、しまったと思った。伊織の心理状態を考えていなかった。
不用意に突き放す言葉を放ってしまった。もう取り返しがつかない。
「そんな……私はあず君がそばにいてくれるのが嬉しくて、ずっとバリスタ競技会に参加し続けていたんですよ! なのにそんなの酷いです。用が済んだらポイ捨てですか? あず君が競技会に参加する楽しみがなくなって、一緒にいる楽しみもなくなったら、私はどうやって生きていけばいいんですか!?」
今までに見せたことのないくらいの物凄い剣幕で僕に詰め寄った。
これには思わず背中がのけ反り、威圧感で右足が一歩後ろに下がってしまった。
「自分の人生くらい自分で決めろ。それが大人になるということだ」
「それは分かってますけど、私は……あず君と一緒に仕事がしたいんです」
「……何で?」
「何でって……それは……」
「伊織ちゃんはあず君が大好きだもんねー」
「そっ、そんなんじゃないです!」
「ふーん」
優子はこの状況を楽しんでいる。
千尋はこの修羅場のような雰囲気に耐えかねて、先にホテル内のレストランに行ってしまった。
「優子さんはあず君と違うお店で働くことになった時、寂しくなかったんですか?」
「そりゃ寂しくないって言ったら嘘になるけど、本来仕事っていうのは流動的なものだよ。あず君の言葉を借りるなら、ずっと同じ職場に居座り続ける時代は終わったの。それに伊織ちゃんが離れなくてもあず君の方からマスター辞めちゃったらどうするわけ?」
「……」
ぐうの音も出ないか。そこまで考えていなかったのが見て取れる。
同じ状態を維持し続ける職場というのは、今の企業じゃとても珍しい。いつか必ず別れの時がやってくる。そうなった時に受け止められるのが大人というものだ。
「あたしはあず君と一緒に仕事をするのも好きだけどさー、それと同じくらいスイーツを作るのも好きなの。葉月珈琲はとことんカフェ寄りのお店になって、料理もスイーツも必要最低限で済ませるようになったでしょ。それはつまり、シェフもパティシエも無用になったってこと。あたしはそれが分かったから、スイーツ寄りのお店に自分から異動を申し出たの」
「夢を追うためですか?」
「そうだよ。あず君とはお店に行けばいつでも会えるけど、最高のスイーツを作るにはそれに適した環境が必要だもん。あたしは葉月珈琲のパティシエとして生きていきたい。だから当分は……葉月商店街に戻ってお店を開くこともないし、たまーに愛梨ちゃんの様子を見るために戻ることがあるくらいかな。あそこはもうカフェの激戦区だし、スイーツショップなんて開いても、すぐに飲み込まれるだろうし」
なるほど、優子は次世代トップパティシエを育成するだけじゃなく、修業の場として自らを放り込んだのか。今分かった。僕が優子を葉月商店街から追い出してしまっていたんだ。
優子は再び葉月商店街でヤナセスイーツを復活させる気はないらしい。
カフェの激戦区で、パティシエとしてやっていくには相当骨が折れるはずだ。葉月商店街にはもう1軒しかスイーツショップがない。あそこでうまくやっていくのは容易ではない。バリスタオリンピックで陰の立役者となった優子でも、経営ともなると難しいものがある。
「優子さんのスイーツならやっていけると思います。バリスタオリンピックであず君のマリアージュ部門のスイーツを担当した実績があるじゃないですか」
「伊織ちゃん、あたしは誰かの名前に縋らないといけないほど、落ちぶれてないよ」
優子が子供を叱りつける母親のようにムスッとした顔で伊織を睨みつけた。
優子にもプライドというものがある。うちの親戚のように安定した生活を送りたい者もいれば、彼女のように、自分の力で勝負したい者もいることを伊織は知ったのだ。
傘下であっても、そうでなくても、まずはうちの店から独立しないことには、子供のままでいることを意味する現実に伊織は直面している。青褪めながら慌てふためていていたその顔は静まり返り、自らの過去を顧みるように下を向き、再び優子の顔を見た。
「伊織ちゃん、あず君は伊織ちゃんにどんな人になってほしいって言ってた?」
「ご飯を食べられる大人です」
「それはどんな大人?」
「……」
伊織が押し黙ったまま口を開かない。
優子は見抜いていたのだ。伊織が漠然とした言葉を理解できないことを。
一言で言えば、生きる力のある大人だ。具体的に言えば、自分で自分の世話をして、学歴や就職に頼らなくても生きていける大人である。ほとんどの人には生きる力がない。企業などの組織に養ってもらっているだけだ。みんなに生きる力があるなら、某公共職業安定所なんていらないわけだし。
「あたしの知ってる伊織ちゃんは、もっと素直にぶっちゃける子なんだけどなー」
「……私はどう生きればいいのか、全然分かりません。ずっとあず君の言う通りにしていれば、それでいいと思ってました。でもまさか私の独立を考えていたなんて、そんなこと……思ってもみませんでした。ずっと一緒に仕事をするものだと思っていたので」
「伊織、気持ちは分かるけどさ、いつかは伊織も璃子たちのようにどいてくれないと、次世代トップバリスタ候補を育てられない。うちで働ける人数には限界があるし、僕が直接指導したいと思うバリスタは山のようにいる。でも全員は無理だ。だから1人でも多くのバリスタを指導していくために、今うちにいるバリスタにはいつか卒業してもらう必要がある。1人でもやっていけると思った人については、いつでも卒業させるのがうちの方針だ。真理愛みたいにうちの傘下で独立してもいいし、利益を総取りしたいなら完全独立して好きに生きてもいい。優子は今いる店からパティシエを輩出して、うちの店に継続的に戦力を供給してくれるんだろ?」
「バレちゃったかー。あたしにはこの方が1番合ってるからねー。それにお父さんが遺した味を次の世代にも伝えていきたいし……伊織ちゃん、あたしは一生あず君のために働くことを誓ったの。たとえ距離は離れていても、心はずっとそばにいるから」
「……」
優子は独立を目指していることを打ち明けてくれた。一生僕のために働くという約束は守り続けてくれるようで、彼女は生きる力のある人材をパティシエという全く違う角度から育て上げることで、うちに貢献しようとしている。バリスタだけではいつか限界がやってくる。
シェフ、パティシエ、バーテンダーといった異色の経歴を持つ人材をみんながうちに送り出してくれれば、様々なアイデアとスキルを葉月珈琲にもたらす。優子はうちの繁栄を願っているようだ。多種多様な人材がいれば新しいアイデアも生まれやすく、会社も競争を勝ち抜きやすくなる。
優子は1つの答えを伊織に示した。
伊織もまた、そんな優子にただならぬ想いを感じているようだった。
優子が伊織の小さな体を正面から優しく包み込むように抱擁する。
「大丈夫。伊織ちゃんなら、独立してもうまくやっていける。それまで悩みながら、自分なりの答えを探し続けていいの。悩めるってことは、若いってことなんだからさ」
「……はい」
見えなかった未来から一筋の光が差し込み、その顔からは笑みが零れた。
今は悩め。自分の人生の中に答えを見つけた僕らはもう老人みたいなもんだ。
「あず君、さっきは取り乱してしまってすみませんでした」
「いいんだよ。伊織、立派な淑女になるまでは一緒にいてやる」
「はいっ!」
水を得た魚のように、伊織が機嫌を取り戻した。
ようやく3人でホテル内のレストランに赴くと、千尋が既にバイキング料理を食べ始めていた。
いくつもの料理が揃っているのを見ると、千尋が僕らに気づいた。
「あっ、3人共遅いよー」
「ごめんごめん。ちょっと色々話してたら遅れちゃったー」
「色んな料理が揃ってるけど、どれも味は強くないから大丈夫だよ。でも加工肉は強い味つけをされてるから、食べない方が無難かもね」
「そりゃ良かった。千尋のお陰で安心して食べられる」
「それを言うなら、伊織ちゃんのお陰じゃないの?」
「何で私なんですか?」
「怪我の功名だよ」
「訳が分かりません」
伊織が千尋の言葉の意味にも気づかないまま料理を取りに行った。
僕らも伊織に続くように刺激の強い料理を避け、味覚を保ちながら夕食を終えた。部屋に戻ると千尋と2人きりになり、順番に入浴を済ませ、いつでも起きられるよう軽装に着替えた。
千尋にさっきのことを聞かれ、伊織が覚悟を決めた話をした。話の内容は千尋もおおよそ察していたようで、特に驚くような素振りは見せなかった。あまり食べなかったがとても美味しかった。タッパーがあったらいくつか持って帰っていたところだが、そんなことしたら怒られそうだし、やめておこう。
あのオージービーフ、大会が終わったら是非とも食べたい。
「伊織ちゃんもまだまだ子供だねぇ~」
「人のこと言えんだろ。千尋はまだ未成年であいつは成人だ。法律上はな」
「そうは言っても半年程度の差だよ。それに僕には妻も子供もいるんだから、僕の方がずっと大人なのは疑いもない事実だよ。それにしても、伊織ちゃんがあんなにあず君に依存していたとはねー」
「育て方間違えたかな」
「あず君は何も間違ってないよ。元から依存しやすい性格なだけっしょ。独立とか向いてないんじゃないかな。人に対して献身的で隷属的なところもあるし、今までずっと頑張ってきたのも、あず君のためって感じがするし、だったら思うようにさせてあげたらいいじゃん。全ての人間がサラリーマンに向いていないように、全ての人間が独立に向いているわけじゃないんだし」
「……考えとく」
拙い返事をしてベッドに横たわった。千尋の言うことはもっともだ。今更ではあるが、伊織はサラリーマンのような仕事の方が向いているような気がしてきた。
人のために一生懸命になれるのも才能だ。
――伊織が葉月珈琲の名を世界に轟かせるために、貢献してくれたのだとしたら。
さっきの伊織の笑顔を思い出したまま、時間だけが過ぎていく。
目を閉じる力が強まっていき、意識が遠くなっていく。
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