265杯目「焙煎と抽出の交響曲」
――大会3日目――
WCRCもいよいよ大詰めだ。
伊織はWSCに出場するべく、今日だけは大忙しだ。
僕、千尋、親父を総動員し、朝から競技に必要な荷物運びを手伝った。この日の僕はカッピング審査と結果発表を見届けるだけで、それ以外は特にすることがない。
焙煎レポートや焙煎によるコーヒーの質をどこまで上げられたかがスコアに反映され、最もスコアが高かった者が優勝となる。23人もいる参加者たちにとっては一発勝負の決勝戦だ。誰が優勝しても何らおかしくはない。そういう意味では決勝進出で人数を絞るのは結構大事な要素かもしれない。だがこれだけ一度の競技に時間のかかる競技を何度も繰り返すのは大変だ。
「伊織、僕はカッピング審査と結果発表を見守る必要があるから、用を済ませてから伊織の競技を見に行くことにする。伊織の競技は何番目だっけ?」
「最終競技者です。しかも10人もいるので、かなり後です」
「「「……」」」
伊織が冷めきった顔で言った。最終競技者ってことは、競技が行われるのは夕刻だ。
それまで待たされる時間が地味に疲れる。
今回のWSCにも10ヵ国から10人のナショナルチャンピオンが参加する。
参加国は全てアジアの国である。カッピング審査と結果発表が終わってからでも伊織の競技には十分間に合うが、それまでに彼女が疲れきっていないか心配である。伊織の弱点は体力のなさだ。こういうところは僕に似たな。伊織は虚弱体質でもないし、スポーツにでも誘ってみるか。
「でも良かったじゃん。最終競技者ってことは、あず君の結果発表を見れるってことだよ」
「あっ、確かにそうですね!」
「急に元気出てきたね」
「あず君、最終登録を済ませたら、観客席まで応援しに行きます」
「分かった。じゃあこっちが終わったら応援しに行く」
「はいっ!」
思い切りの良い返事を返すと、意気揚々と会場内に入っていった。
最終登録を済ませてから説明を受け、準備時間がやってくるまでは解放されるわけだが、伊織の前で負けることは許されない。彼女は勝利の女神だ。
なんか不安になってきた。いやいや、こんなところで不安になってどうする。未来の結果は神のみぞ知る領域だ。どう転ぼうとも、僕は僕のままでいてもいいはずだ。
「そういえばさー、昨日の焙煎レポートって、スコアとどう関係するの?」
「ロースターがどんな焙煎をして、最終的にどんなコーヒー豆になるのかを、グラフを使って説明するんだけど、説明した通りになっていればスコアが伸びる。つまり、焙煎レポートと実際に焙煎したコーヒーの経緯が一致しているかどうかが大事だ。ロースターとしての器量が問われてる。コーヒー豆のことをちゃんと分かっていれば、スコアは確実に伸びるってわけだ」
「カッピング審査は味の審査だよね?」
「味の審査もするけど、カッピング審査の後に、それぞれの競技者が書いた焙煎レポートと、実際に焙煎されたコーヒーの風味特性が一致しているかどうかを審査員に評価される。昨日提出した焙煎レポートに全てが懸かっていると言っても過言じゃない」
「レポートで評価が決まる大会なんて初めて聞いたよ」
「今までのバリスタ競技会とは全く違うタイプの競技会なのは確かだ。昨日はマジで疲れた」
「長い昼寝だったね」
「今までの焙煎で1番緊張したかも」
千尋と会話を繰り広げていると、しばらくして伊織が戻ってくる。
「準備時間を迎えるまでは、自由に過ごしていてもいいみたいです」
嬉しそうに頬を緩ませ、また僕のすぐ左に並んだ。
会場内でコーヒーを飲んだ。ここでは台湾原産のコーヒーも飲める。主にWCRCの開催により、世界中からコーヒーファンがそこそこ集まっており、ここのコーヒーをアピールする絶好のチャンスである。伊織も千尋も夜空の星のように目を輝かせながらコーヒーを飲んで回っていた。
カフェ巡りみたいなことをして、後でトイレラッシュに巻き込まれても知らねえぞ。
カッピング審査のためにスタッフに呼ばれると、伊織たちと別れ、呼ばれた場所にそれぞれのナショナルチャンピオンたちがぞろぞろと集まってくる。
長く大きいテーブルの上には大量のコーヒーカップが置かれており、参加者たちが焙煎したコーヒーが注がれているところだ。コーヒーが誰によって焙煎されたものであるかが分かるように、名前と国名まで明記されたカードが置かれている。そのカードの名前と国名と一致しているコーヒー豆が使用されるわけだが、この審査が終われば全てのスコアが決まる。
グラインダーで砕かれ、ドリップコーヒーがそれぞれのカップに注がれていく。審査員がカッピングをしていく中、参加者たちは固唾を飲んで様子を見守っている。これだけの人数が揃っていながらとても静かだ。カッピングをする時にコーヒーを吸い込む音がバッチリと聞こえるほどだ。この光景がモニターに映し出され、観客席だけでなく、会場内にあるモニターを通してみんなが見守っている状態だ。
これほど地味で長い審査はないだろう。こんなことを考えてしまうあたり、僕に審査員はまず向いていないことが分かる。参加者以外の立場で大会に関わるなら解説かコーチだな。高みの見物ができるポジションでいたい。戦い抜く苦しみを誰かと共有し続けたら神経衰弱になりそうだ。
カッピング審査が終わると、僕らは観客席が目の前にあるステージ上へと誘導された。ここにいる23人の中から、上位3人が順位の低い順に呼び出され、最後に呼ばれた者がチャンピオンだ。
天に祈りを捧げた。観客席に座っている伊織たちとシンパシーを感じながら。
そして――。
「ワールドコーヒーロースティングチャンピオンシップ優勝は……日本代表、アズサーハーヅーキー!」
歓声と拍手が僕の耳に襲いかかってくる。
思わず耳を塞いでしまいたくなるほどの音量で、キーンと来る痛みだが、毎度のことながら、嬉しい痛みだ。僕はロースターとしても、無事に世界の頂点に立つことができた。今後の焙煎や焙煎指導にも自信が持てる。とりあえず、これで今年の大会からは解放された。
優勝トロフィーは、大きな木造の土台の中に、黄金のテストスプーンが挟まっているものだった。
テストスプーンは焙煎機でコーヒー豆のチェックに使われる焙煎専用の道具だ。これをトロフィーにするとはなかなか洒落ている。ちょっと重いけど、これはかなり目立つな。
「あず君、優勝おめでとうございます。これでメジャー競技会を7つ制覇しましたね」
「全く大したもんだ。お前は本当に……先代に似てるよ」
「流石は僕が見込んだ男だねぇ~。帰ったら祝勝会やるぞーっ!」
「千尋君はどーしてそんなに偉そーなんですか?」
ジト目で千尋を睨みつけながら伊織が尋ねた。
「怖っ! 別に偉そーとかじゃないよ。僕が見込んでたのは確かだよ」
「まっ、気持ちは分かるけど、祝勝会は帰ってからだ」
「あぁ~、まだ伊織ちゃんも試合があったね。ところで、試合は何時からなの?」
「試合? ――あっ!」
顔が急に真っ青になる伊織。
おいおい、遅刻で失格とかマジでないからな。
「間に合うか?」
「あと30分ないです」
「千尋、手伝ってやれ。伊織、食材は持ってきてるよな?」
「はい。控え室に保存しています」
「次は伊織の番だ。今までの研究の成果を全てぶつけてこい。いつもと同じ調子でやれば、優勝できるはずだからさ。サイフォンでも1番を取ってこい」
「はい。頑張ります」
控え室へと駆け抜けていく伊織。千尋も後に続いた。
やれやれと言いながら両手の平を上にし、早歩きより少し早いくらいの駆け足で去っていく。
「伊織ちゃんは大丈夫なのか?」
「あいつなら大丈夫だ。自分の試合を忘れるほど、こっちの結果発表を気にしていたってことは集中力は健在ってことだ。むしろ安心できる」
「段々お前に似てきたな」
「……気のせいだろ」
「伊織ちゃんが世界を相手に戦えるようになったのは、お前が伊織ちゃんの世界を開いたお陰だ。これで飯を食えない大人を1人減らしたわけだ。お前は十分社会貢献してるぞ」
「あいつは氷山の一角だ。全国には僕に出会えなかった世界線の伊織が山のようにいる。才能に気づいて背中を押してくれる人が1人でもいれば、それだけでもかなり違うことは伊織が証明済みだ。ほとんどはずっと前、柚子のお見合い相手としてやってきた担任教師みたいな奴に、くだらないことをやっている暇があったら勉強しろみたいなことを、直接か遠回しに伝えられて、自ら道を閉ざしてしまう」
「お前、ホントに教師嫌いだよな」
「ああ、大嫌いだ。教師の多くは無自覚に子供たちの人生を潰してるんだからな。しかもその自覚すらない連中だ。保育士に預けるのも反対だ。あいつらも悪魔の洗脳を受けてるからな」
「そんなに意地張ってると、唯ちゃんの負担が重くなるぞ」
「唯はこうなるのを覚悟で僕と一緒になったんだから、そこは唯の責任だ。どうしても負担なら、柚子も瑞浪もいるし、どうにかなるだろ」
無責任なことを言った。だがそれは唯が選んだ道だ。
こうなることは分かっていたはずだ。だが唯はあからさまに不安を表すことはない。僕に大会や業務に集中してほしいからだ。僕はそんな彼女の優しさに甘えすぎている。
帰ったらしばらくは休暇を取るか。今の時代、男も育児に参加しないとな――。
「タイム。私はサイフォンという抽出器具がコーヒーにどのような影響を与えるのかを日々研究してきました。ドリップコーヒーの抽出パターンとして最もメジャーな手段であるペーパードリップ、他の抽出方法に比べると、入れた瞬間の温度が高いことから、香り立ちが良くなります。一般の人がコーヒーを淹れる場合でも、見かけより難しくないため、味の再現がしやすいのも特徴です」
最終競技者である伊織の競技が始まった。
一時はどうなるかと思ったけど、ちゃんと競技には間に合ったようで何より。
親父もサイフォンの淹れ方にはかなりうるさい方だ。その親父が一度も文句を言わなかった唯一の相手が伊織である。僕に対しては散々文句を言っていたことからも伊織の凄さがよく分かる。
でもそれだけ伊織の実力と実績を買っているのも事実だ。ポテンシャルだけで言えば、僕以上と言っても過言ではない。それだけにシグネチャードリンクを開発する能力が問われる大会に出場させたが、ここで全てが決まると言っても過言ではない。
「ブレンドとシグネチャーの両方を想定したコーヒーをご用意しました。ブレンドではパナマゲイシャとコロンビアシドラを3対7の割合でハイローストで焙煎したブレンドコーヒーを、シグネチャーではコスタリカゲイシャとエクアドルシドラのコーヒーを7対3の割合でミディアムで焙煎したブレンドコーヒーを使います。前者はそのまま、後者は他の食材と組み合わせることを前提としたコーヒーです」
涼しい顔で6つのサイフォンを使い、サイフォンコーヒーを次々と抽出する。一度に大量の抽出器具を使うことには慣れているようだ。彼女はあれだけたくさんのサイフォンを使っていながら、どれも味を均一にできるだけの技術を兼ね備えている。僕が参加した時は4つだったからなー。あの時は難なく扱えたけど、サイフォンの数がもっと多くなっていたらどうなっていたか。
まずは抽出したブレンドコーヒーを3杯カップに注いでから提供する。次にシグネチャー用に淹れた3杯のコーヒーが入った容器を氷水に浸けている。どうやらコールドドリンクにするらしい。6杯同時に抽出した時には既に冷やしていた。梨のシロップ、全く同じコーヒーと牛乳から作ったコーヒーのホエイ、アールグレイを少しずつ投入していき、最後にブレンダーで混ぜたものを3杯提供した。
「これらの食材を投入することでより複雑なフレーバーを引き出します。フレーバーは、林檎、糖蜜、アフターにはアメリカンチェリー、マスカットを感じます。プリーズエンジョイ」
もうすぐ終了というところで伊織はバニラビーンズを浸けた林檎ジュースから作った林檎スモークをドリンクの入ったコップに注ぎ提供した。1つ1つのコップを丁寧にセンサリージャッジの前に置き、彼らも笑顔で応えながら伊織の指示に従い、少しばかり口に含んだ。
「私はこれからもコーヒーが持つ可能性を信じ、常にコーヒーと向き合い、自分自身の新たな可能性に挑戦していくことを目標としています。タイム」
惜しみない拍手と歓声に包まれながら伊織が天井を向き安堵の表情を浮かべる。
ここまでの苦しい戦いをよくぞ乗り切った。やっぱ競技が終わった時は嬉しさよりも安堵が先に来るよなぁ~。これは参加したことがある者にしか分からないだろう。
すぐに結果発表が行われ、10人のナショナルチャンピオンが集まった。
これもいきなりの決勝であるため、誰が名前を呼ばれてもおかしくはない。
そして――。
「今年のワールドサイフォニストチャンピオンシップ優勝は、日本代表、イオリーモトスー!」
伊織が黄金のサイフォンが土台に乗っている優勝トロフィーを受け取り、頭上へと掲げた。
ちょっと重そうに見えるけど、こういう時の伊織も可愛い。
思わず顔がほっこりしてしまった。葉月珈琲勢がまたしても結果を残した。今年最後の大会は2人揃って優勝した。僕も伊織もアベックホームランを打った後のように喜んだ。
最後の記念撮影が終わり、夕刻を迎えた頃には、コーヒーイベントはお開きとなった――。
「「「「「カンパーイ!」」」」」
翌日、日本へと帰国した僕らは葉月珈琲で祝勝会を行った。
身内も何人か来てくれた。みんな僕と伊織の優勝をまるで自分のことのように喜んでいる。
この年最後の大会を終えた気分は爽快だった。長いテーブル同士を連結させ、それを囲みながら数人の身内と共に座った。璃子たちはタブレットから発信された客の注文をモニターを見て確認し、注文通りの品を作り提供していた。何を隠そう、葉月珈琲勢が結果を残したことで、朗報を聞きつけたコーヒーファンが挙ってうちにやってきてくれた。普段はあまり見ない北欧や南米の人までいた。
彼らはやっとの思いでうちにやって来れたと喜びながらコーヒーを口に含み、何の惜しみもなく高い料金を払って帰っていく。トレジャーハンターが宝物だらけの沈没船を見つけたような顔だ。帰った後も家族や友人に自慢げに語りかけ、次の客を呼び込むのだ。
彼らが勝手に宣伝してくれるお陰で、こっちは大助かりだ。
「あず君、伊織ちゃん、優勝おめでとう」
美羽が笑顔をこっちに向けながら言った。
吉樹、美羽、大輔、成美、優太、美月、静乃、隼人、愛梨、莉奈、千尋、明日香が来てくれている。こんなにも身内が増えていることには心底驚いた。
元々他人だった人も少なくないが、今ではみんな家族のような関係を築いている。
「ありがとうございます」
「うんうん、伊織ちゃんの成長っぷりは凄いねー。ていうか世界大会を1年で2つ制覇したのって伊織ちゃんが史上初じゃない?」
「えっ、そうなんですか?」
伊織が僕の顔を見つめながら尋ねた。
「そうだな。僕にもできなかったことを君はやってのけた。流石は伊織だ。よくやった」
「ありがとうございます。でもあず君にはそれ以上の偉業が目前に迫ってますよね?」
来年行われるJCCやWCCのことを思い出した。
「またあず君の競技が見られるんだね」
「確か来年の1月にJCCが開催されて、日本代表が決まってから、5月にWCCが行われるんだって」
「またバリスタ競技会か。よくやるよなぁ~」
隼人が僕と肩を組みながら同級生を茶化すように言った。まあ、元同級生なんだけど。
あれから投稿部の編集作業などをリモートワークで行いながら、静乃との間に生まれた子供の面倒を見ているようで、お陰で静乃がすぐに職場復帰を果たしている。
「そのコーヒーカップって、どんなルールなの?」
「バリスタオリンピックを簡略化したものだけど、ちょっとルールが違う。エスプレッソ、フリーポアラテアート、ドリップコーヒー、カッピング、ロースティング。全部で5つの部門を1組ずつ行って、1つの部門が終わる毎に決められた進出枠に入れなかったら、その時点で脱落。部門賞とかはなしで、それらの総合スコアが1番高かった人が優勝だ。結構シンプルだろ?」
「わりい、途中から何言ってるか分からなくなってきた」
「バリスタオリンピックが始まって25周年を迎えた記念に、ワールドコーヒーイベント主催で行われる最新のバリスタ競技会として、2016年から始まったわけだ」
「じゃあ僕も出るね」
千尋が横から手を上げながらしゃしゃり出てくる。
「駄目だ」
「何でっ!?」
この世の終わりのような顔で、両手を上げながら抗議の意思を示す千尋。
「千尋はWBCがあるだろ。開催時期も一緒だ。そっちに専念しろ」
「もしかしてぇ~、僕に負けるのが怖いのかなぁ~?」
「……やってやろうじゃねえかこの野郎! 後で吠え面かくなよ!」
「望むところだね。初めてあず君を負かしたバリスタになってみせるよ」
「すぐ挑発に乗るんだから」
真後ろのオープンキッチンにいる柚子が呆れ顔で僕を見つめている。また焙煎を行うことになるのは気が引けるが、こいつを放っておけば、うっかり優勝してダブルブッキング事故を起こしかねない。
それだけは何としてでも阻止してやる。
「あの、私も参加していいですか?」
「別にいいけど」
「確か参加者は200人くらい設けるそうだよ。ほとんどはすぐに脱落するわけだし、それくらいの人数でも問題ないってことじゃないかな」
「千尋って焙煎できたっけ?」
「できるよー。あず君の動画を何回見てきたと思ってんのー?」
「まさか、見ただけでできるようになってるとか?」
「うん、そうだよ」
またしても茶化すように隼人が千尋に尋ねたが、千尋は怯むことなく真顔で即答する。
「見ただけでこなすって、あず君じゃあるまいしー」
「何ならやってみせようか? ちょっと待ってて」
千尋がクローズキッチンの中へと入っていく。
練習用に置いてある緑色のコーヒーの生豆を選別すると、まるでベテランのような手つきで焙煎機の中へと投入し、テストスプーンを使いながら念入りに焙煎を進めていく。焙煎機からとても香しいコーヒーの香りが漂ってくる。香りに釣られて伊織がクローズキッチンへと入ってくる。
「良しっ、こんなもんかな」
「どれ、ちょっと味わってみるか」
グラインダーで乾いたばかりの豆を砕き、エスプレッソにして飲んでみる。
……! これ、僕が動画でやってみせた通りの味じゃねえかっ!
恐る恐る千尋がいる方へと顔を向けると、千尋は驚いている僕を見てドヤ顔で見つめ返した。
まさかとは思うが、動画だけで再現しちまったってのか?
本当に恐ろしい奴だ。見た目はめっちゃ可愛いのにっ!
流石に国内予選から本気を出さざるを得ないかもな。最初は暇潰しくらいにしか思ってなかったが、そんな気持ちじゃこいつに負けると確信した。
心に火がついたように大会ルールを入念に確認し、練習に没頭するのだった。
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