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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第10章 バリスタコーチ編
257/500

257杯目「今日を生きるということ」

 ――大会4日目――


 ようやくみんなが大会の雰囲気に慣れてきた頃だ。


 ここからは後半戦だが、予選を終えた者は、準決勝進出を果たした時のための準備をしなければならないし、まだ予選を終えていない者は、前日まで準決勝以降の準備に追われるわけだが、レパートリーポイントに頼りきらない人も多く、そこまで大変ではない。


 この日はマイケルが競技を行う日ではあるが、彼は再び王座奪還を狙っている。今回が彼の最後の競技であるため、有終の美を飾ろうとしているのは確かだろう。


 早々と鈴鹿の家から会場へと向かった。昨日はよく眠れた。注目しているバリスタは他にもいるが、特に見たいのはマイケルとアリスの競技くらいだ。予選を突破できる人は分からないが、予選落ちしそうな人はすぐに分かる。当たり障りのない競技で、見ていて面白くも何ともない。


 成功は偶然だが、失敗は必然である。


「真理愛さんも、ディアナさんも、アリスさんも、朝から見かけませんね」


 3人の不在を知った伊織が、隣にいる僕の方に顔を向けて言った。


「3人共穂岐山珈琲が借りた練習場所まで行ったぞ」

「穂岐山珈琲が貸してくれてるんですか?」

「穂岐山社長たちは根本が予選落ちすると踏んで、同じく日本代表の真理愛を勝たせるつもりで練習場所を貸してくれてる。それにディアナとアリスも、来年からはうちで働く予定だし」

「えっ、ディアナさんとアリスさんもですか?」

「しばらくはうちで修業も兼ねて、新しいコーヒーの追求をする方向で話がまとまりそうだ。日本の文化にも興味を示しているみたいだし」

「2人がうちで働いてくれるなんて、とても心強いですね」

「やあ、久しぶりだね。アズサハヅキ」


 突然、聞き慣れた声が僕の後頭部に刺さった。


 後ろを振り返ると、スイス代表のマチュー・コンスタンがいた。


 彼とは旧知の仲で、刈り上げの金髪に茶色の目をした中年男性。WBC(ダブリュービーシー)では何度もファイナリストになっている凄腕バリスタだ。


 しかも結婚相手がWBrC(ワブルク)チャンピオンに輝いた実績を持つトップバリスタ夫婦だ。


 ここには面白い人たちが世界中から集まってくる。


「マチュー、久しぶりー」


 彼に気づいた僕らは席から立ち上がり握手を交わす。


「元気そうだな。前回大会では負けたけど、今回は勝つつもりでいる」


 やけに自身に満ち溢れている顔のマチューが言った。


「前回何位だっけ?」

「42位だよ。俺はあれから色んなバリスタのデータを集めた。バリスタとしての基本をみっちり鍛え上げた。聞いたぞ。ポルタフィルターやドリッパーの使い過ぎで、手が動かなくなるまで練習してたそうじゃねえか。俺もそれくらいやったよ」

「そいつは楽しみだ。競技は終わったの?」

「いや、俺の競技は明日の午後からだ」

「競技前なのに余裕だな」

「プレゼンの内容はみっちり頭に叩き込んである。連覇は狙わないんだな」

「それ前にも言われた。僕は一度優勝した大会には出ない主義でね」

「だったらさ、来年行われるWCC(ダブリューシーシー)に出場してこいよ。決着をつけようぜ」

「代表になれたらな」

「約束だぞ。じゃあな」


 言いたいことだけ言い残すと、風のように去っていった。


 彼は前回大会以降頻繁にうちを訪れ、研究の末に動画を通して、うちの知識や技術を次々と習得していったらしい。シグネチャーの腕は申し分ない。


 しかもコーヒーのあらゆる部門に精通していた点も見逃せない。


「さっきの人、確かうちにも訪れてましたよね?」

「あの人はマチュー。この大会にもスイス代表として出場してる」

「3大会連続出場みたいですね。2011年は51位、2015年は42位。予選敗退が続いていますけど、優勝候補には選ばれてないですね」


 スマホをいじりながら伊織が言った。すっかり調べる癖がついている。調べる癖だけ身につけさせておけば、後は勝手に自分で伸びていく。シンプルだが、教育とはそういうものだ。


「マイケルも2003年大会は55位、2007年大会は36位だった。誰が決勝までくるかなんて分からねえよ。根本だってそうだ。あいつもまだ諦めちゃいない」

「さっきの話を聞く限りだと、穂岐山珈琲からは諦められてますけど」

「会社の都合よりも、個人の都合を優先したんだ。しょうがねえよ」

「あっ、始まりますよ」


 伊織が指差した先にはマイケルがいた。


 今回は前回大会での反省を活かして、ちゃんとスタッフを会場近くに泊めている。


 反省ができる人は強い。気をつけると言って気をつけられる人の方が少ないし、5大会連続で出場しているだけあって、会場にも慣れている様子。連続出場できる人の方が少ないこの大会で5大会連続出場なのがまず凄い。今大会も過半数を超える人数が、初出場のバリスタばかりだ。


 マイケルが準備を終えて定位置についた。


「タイム。世界のコーヒー栽培における最大の問題とも言えるのが『遺伝的多様性』の低さです。現在コーヒー豆には数多くの品種がありますが、それらは元を辿るとアラビカ種、ロブスタ種、そしてごく少量のみ生産されているリベリカ種の3つに集約されます。現存する品種は、ほぼ全てがこれらの系統から突然変異や交配によって生み出されたものです。その大部分はアラビカ種なので、遺伝子レベルで見ると、どの品種も非常に似通っていると言えます」


 マイケルが主に使っているコーヒーは『F1』のハイブリット種だ。


 確かにあのコーヒーに合ったテーマとも言えるな。マイケルはコーヒーが持つ遺伝的多様性の低さをテーマにしたプレゼンを行っているが、素人にとっても興味深いテーマを選ぶあたり、プレゼンというものを知り尽くしている。さっきまで欠伸をしながら聞いていた伊織でさえこの真剣な顔。


 如何に人を惹きつけるかが、プレゼンのポイントなのだ。


「大部分の品種の遺伝子が類似していることの何が問題かと言えば、どの品種にも共通した遺伝的弱点を持っているということです。もし地球規模の影響を与えるような気候変動や伝染病や害虫などが発生した場合、世界中で栽培されているコーヒーのほとんどが一気に消滅してしまう可能性があるのです。単なる想像上の脅威ではなく、実際のバナナにおいて、かつて大規模に栽培されていたグロスミッチェル種が1960年頃に大流行したパナマ病により、ほぼ絶滅の危機に瀕した実例があります」


 他のバリスタがつい耳を塞いでしまうようなことを平気で言ってのけるとは、流石はマイケルってとこだな。そこまで考えているってことは、あの品種だな。


 騒がしい会場の各ブースも、マイケルのブースに限ってはシーンと静かになっている。


 誰もが彼の言うことに耳を傾け頷いている。その場にいる全員を納得させるデータの提供までバッチリだし、パンフレットにはプレゼンの内容が説明文やグラフデータで示されている。


「今回主に使うコーヒーは、コスタリカ、『セントロアメリカーノ』と呼ばれるコーヒーで、このコーヒーのプロセスは『ナチュラル・アナエロビック・ファーメンテーション』です。F1とも呼ばれるこのコーヒー豆は病気耐性の強い品種として開発されたもので、特に標高約1000メートルという低い標高では、カッププロファイルは期待されていない品種です」


 ナチュラル・アナエロビック・ファーメンテーションを適用し、ホールチェリーのままタンクに投入している。コーヒースキンを加えることで活性細菌が発酵を促す。蓋を閉めることで圧力が高くなり、2つの新しい風味をもたらし、それがアップルとシナモンであると彼は言った。


 玉の緑色はアップルのフレーバー、オレンジ色はシナモンフレーバーを表している。


 道具を使って具体的な説明をすることで、より分かりやすいプレゼンとなっている。


 まるで昔のテレビの成分説明を受けているかのようだ。


「こうした現状を踏まえ、中南米地域で栽培されるコーヒーの遺伝的多様性を少しでも高めるために、F1ハイブリッド種の開発が進められてきました。セントロアメリカーノはそうした努力が実を結んだ成功例の一つと言えます。但し、遺伝的に安定していないF1ハイブリッド種は、種子から増やそうとしても子孫に同じ遺伝情報を伝えられません。病害虫への耐性、生産性、風味特性などが失われる可能性があるため、増やすにはクローンに頼らざるを得ず、生産者は信頼できる種苗業者から苗木を手に入れる必要があることが大きなネックになっています」


 マイケルの言いたいことはよく分かる。うちも早い段階から、各コーヒー農園の園長に病原菌に耐性を持ったコーヒーの開発を課題として注文しているくらいだ。


 僕にとっては耳の痛い話だが、他人事ではない以上、最後まで聞いていたくなった。


 本当に彼はプレゼンのプロだよ。間違いなくね。シグネチャーもかなり凝っていたが、あれどっかで見たことある気がする。林檎を数日間加熱させ、メイラード反応が引き起こされることで素晴らしい甘みを与え、コーヒーと合わさることで新しい風味であるブラッドオレンジをもたらす。


 林檎を数週間発酵させることでスパークリングな酸をもたらし、コーヒーと合わさることで新しい風味であるピンクグレープフルーツを感じる。今度は昆布茶と緑茶の発酵ドリンクを作る気らしい。緑茶と昆布茶を数週間発酵させたものをコーヒーと合わせることで、新しい風味であるミントをもたらす。


 これは確か――思い出した。


 この前のマチューの競技で見たやつと似ている。マイケルのことだ。完全なパクリではないにせよ、同じコーヒーを使っているなら、自ずと最適解も近いものになるということだろうか。まさに世界最高峰の戦いだ。頂上決戦と言ってもいい。僕はあんな化け物揃いの場に立っていたのか。


 あれほど消耗しかねない舞台にうちのスタッフを送り出している僕って、実はとんでもなく残酷なんじゃないかって気がしてきた。無理にやれとは言わない。才能がある人じゃなきゃ、優勝できないのは当然である。この舞台に立っている時点で相当な才能であると確信を持って言える。


「フレーバーは、シナモン、ミント、ブラッドオレンジ、ピンクグレープフルーツ、冷たくリッチな質感があり、カクテルを思わせるリフレッシュ感の後味でフィニッシュです。プリーズエンジョイ」


 様々なコーヒーを提供してから最後にラテアートを描いた。


 僕のバリスタオリンピックでの競技もマイケルの競技を参考にしたものだ。最も面倒なマリアージュ部門を最初に持ってくることで、時間に余裕を残し、ラテアート部門を最後に置くのはマイケルが発明した競技法だ。それが僕に影響を与え、僕の競技が別のバリスタに影響を与える。


 バリスタ精神はこうやって受け継がれていくものかもしれない。


「私はバリスタという職業を20年以上も常に悩み考えながら続けてきました。そこで得た私なりの結論を申し上げます。バリスタはコーヒーに最も近づける職業であると共に、生きる力を身につけられる修行でもあると確信しました。タイム」


 ――まさか僕の言葉を競技で使うとは思わなかった。


 僕だけじゃなかった。マイケルも僕に影響されている。


 じゃなきゃあんな台詞はまず言わない。僕の動画を見てくれてたのか。今分かった。彼は自らの限界に挑戦しようとしている。だからこんなにも長くこの大会に出続けていたのかも。彼がバリスタ競技会からの引退を決断したのは体力の限界が来たからじゃなく、他にやりたいことを見つけたからだ。


「マイケルさん、なんかあず君みたいなことを言ってましたね」

「僕もマイケルの影響を受けていたし、マイケルも僕の影響を受けていたってことだ」

「バリスタって似た者同士が多いかもしれませんね」

「共通の仕事を選んだ時点で、ある種の似た者同士かもな」

「社会不適合者に合った職業かもしれませんね」

「コーヒーが好きな人の中にたまたま社会不適合者がいただけっていう見方もできるけど、ここまでのコーヒー好きだと、その時点で一般の人とは言えないかもしれんな。多分、没頭できるだけで希少価値なんだ。僕がそうだったように」

「ふふっ、なんか分かる気がします」

「一度マイケルと話してみる」

「あっ、私も同席させてください」


 伊織が好奇心のままに席を立った僕についてくる。マイケルに全ての真相を聞きたい。


 彼は一体何を目指しているのか、それが彼の競技の中に表れていた気がする。バリスタにとって耳の痛い話がしたのも、恐らくこれが最後という覚悟の表れだ。


 インタビュー中のマイケルを待った。彼がこっちに気づくと、早々にインタビューを切り上げ、優先的に僕に近づいてくる。僕に話を聞いてもらう方が面白いと思ったのだろうか。


「アズサ、私は君に代わって出場している日本代表と頂上決戦をするつもりだ」

「僕に代わっては解せないなぁ」

「君が出ていれば、君が代表に選ばれていたはずだ」

「僕が出しゃばり続けていたら、次世代トップバリスタが育たない。僕がコーチをやっているのは日本代表を成長させる手段でもある」

「次世代のトップバリスタを育てるねぇ~」

「あんたはさ、バリスタ競技会から引退した後はどうするの?」

「世界中にバリスタ教室を開こうと思っている。奇しくも君が経営している葉月珈琲塾に近い発想だ。引退したら起業して社長になる。社長に就任したら、もうバリスタ競技会に出場する暇はないからな」


 マイケルが清々しいまでの笑顔で語る。考えることは一緒か。


 一度はバリスタの頂点に立ったマイケルだが、ちゃんと引退後のことも考えていたようだ。


 塾に学校に教室か。何だかんだ言っても、みんな教育の影響を受けてんだな。名前は違ってもやっていることはほぼ変わらない。僕は最終的に授業のオンライン化を目指している。


 そこはマイケルも同じなようで、どうしてこうも被るのだろうか。


「君はいつも私たちの一歩先を行くね」

「今をしっかり見つめているからこそだ。課題もアイデアも飽和してる。後は解決に向かって行動するだけだ。これほどやるべきことがハッキリしていて、分かりやすい時代はないと思うぞ」

「君がアメリカで育っていたら、どれほどの存在になっていただろうね」

「想像がつかない。今だから言えることだけど、多少の不便やハンデがあったから、ここまでやってこられたと思ってる。便利すぎても、ハンデがなさ過ぎても、人は成長を望まないのかなって」

「君の言いたいことはよく分かる。アズサが経験してきた困難は並大抵のものじゃない。虚弱体質でなければ年に何度も世界大会に出て、とっくにグランドスラムを達成していたと言う者もいるが、君にとってはナンセンスなんだろう?」

「もちろん。でもそれができそうな人が、これから出てくるかもしれない」

「そいつは楽しみだ」


 僕らにしては珍しく笑いながらの会話だ。


 もはやライバル関係を通り越し、今や戦友という位置にいる。


 マイケルがバリスタ教室を経営する会社の社長に就任した後、時々コラボしようという話になった。まさかマイケルが最も仲の良い外国人になるとは思ってもいなかった。


 センスがあって体も頑丈で、最初っからバリスタに特化した子なら既にいるし、葉月珈琲塾の運営次第では、もっと数多く現れるかもしれない。無理にグランドスラムを目指さなくてもいいが、死ぬまでの暇潰しと考えれば、それもまた一興。どの国にも僕や伊織みたいなバリスタが1人でも出てくれば、それだけでも大きな刺激になるし、世界大会のレベルも大きく上がる。大会のレベルが上がればその分優勝の価値も上がる。マイケルもそこは気にしていたようだ。


 結局、この日の競技も終わり、僕らは鈴鹿の家に戻った。


 残るはアリスだけだが、彼女が最も心配のいらない子だ。もう既にうちの一員みたいなもんだ。来年からは一緒に働くわけだし、うちのバリスタの層が厚くなることは間違いない。


「ねえあず君、久しぶりに曲を弾いてくれない?」


 鈴鹿が色気のある声で僕に歩み寄り、誘惑するかのような口ぶりで言った。


 ライブハウスとなっているこの場所にはバンドが演奏できる場所がある。趣味とはいえソロでピアノを弾いてきた僕にとっては、些か広すぎる場所とも言える。


「分かった。ここに来て1曲も弾かないわけにはいかんな」


 笑いながらグランドピアノがある店の奥まで移動する。そのグランドピアノは、鈴鹿の弟を思い起こさせるほど綺麗で真っ黒なピアノだった。鍵盤は白と黒が入り混じっており、見慣れてはいるが、どこか懐かしさを思い出す。鈴鹿が何か思いに耽った様子で歩み寄ってくる。


「あず君のピアノにそっくりでしょ」

「そっくりも何も、同じタイプのピアノだよな?」

「たとえ量産型の商品であったとしても、全く同じものなんて、この世に1つもないと思うの。誰かが手に取った瞬間から、世界で唯一の宝物になることもあるの。弟が弾いていたピアノで、今も残っているのはあず君のピアノしかない。これには私とオットーの思い出が詰まってる。こうしてみると、同じものなんてないって思わない?」

「言いたいことは分かる。アーティストなだけあって、詩的な考え方だ。でも僕はアーティストじゃなくてアルチザンだからさ、思い出よりも実用性重視なんだよなー」

「優勝トロフィーに思い入れとかないの?」

「ないこともないけど、優勝トロフィーってのは、その時確かに結果を残したっていう証明書みたいなものだし、トロフィーなんかよりも、優勝するまでの過程に価値がある。トロフィーは盗めても、優勝した思い出までは盗めないだろ」

「ふふっ、あず君だって詩的じゃん」


 鈴鹿が可愛らしく笑ってみせた。そんな僕らの様子を伊織が不思議そうに見つめている。


 久しぶりにケセラセラを弾いた。常連たちも心地良く聞いている。有名曲なだけあって、口遊む者までいた。困難は数多くあれど、結局何とかなった。人生はもっと気楽に考えてもいいのだと、早い内に教わったことが大きかった。悩んでいる暇があったら楽しめ。同じ日なんて二度と来ないのだから。


 曲を弾き終わると、身内や常連客を問わず拍手が喝采し、口笛まで聞こえてくる。


「あず君の腕だったら、凄腕のピアニストになれたのになー」

「それは言わない約束な。それはアーティストの仕事だ」

「芸術家じゃなく、あくまでも職人でいたいんだ……時代遅れになることを誰よりも嫌っているはずだったのに、昔ながらの職人技には拘るんだ」

「職人は時代遅れじゃねえぞ。量産品を作るのはロボットに任せておけばいい。職人は誰もが今までに思いついたことがない作品を創るのが仕事だ」

「あず君らしい。人生どうにでもなる……か」


 悟ったように天井を見つめている鈴鹿が言った。彼女は確実にある今を精一杯生きていくしかないと言いたげだった。誰だってそれくらい、心底では分かっているはずだ。


 この日も無事に終わり、予選最後の日が一刻一刻と迫ってくる。


 僕らは早めに風呂に入り、就寝するのだった。

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