253杯目「歴戦の覇者たち」
バリスタオリンピック、それは自分自身に打ち克つための戦いである。
目的が果たされてもなお参加しようとする執念よ。マイケルにはバリスタ以外の目的がない。彼は家は大富豪の一族であり、お金の心配をする必要がないほど稼いでいる。
だが僕は違う。バリスタ以外にもやりたいことが山のようにある。
チャンピオンになった後も人生は続いていく。大会に出て優勝するのも、結局は暇潰しの一環にすぎないのだ。ただ、あれほどの意欲を持ち続けられるのは本当に凄いと思う。
バリスタオリンピック前日、僕らは明日に向けた調整を済ませた。
せっかくだからと、会場を視察することを思いつき、伊織たちと共にバリスタオリンピックの会場へと赴いた。大会はコーヒーイベントの一環で行われるため、前日から会場内では、多くの運営スタッフが大忙しだ。大会前日は参加者やその関係者のみが出入りでき、どの抽出器具を使うかを事前に決めて登録を行うのだが、当日必要なものを予め持ってきておいて、ここに保管しておくことも可能である。不測の事態に備えているのか、予備のエスプレッソマシンがズラリと並んでいる。
――欲しい。これ全部持って帰りたいというのが素直な感想だが、大会で使える人たちが羨ましい。
「ちゃんとプレゼンできるか、心配になってきました」
真理愛がこの圧倒的な会場の雰囲気に飲まれ弱音を吐いた。
「プレゼン自体はパンフレットを見ながらでも大丈夫だし、それに真理愛には、世界一のコーヒーカクテラーという実績があるだろ」
「うぅ~、それはそうですけど、緊張してきました」
「今の内に緊張しておけ。明日には慣れてるから」
「――周りにいる人って、みんなバリスタかな?」
「そうだよ」
千尋が周囲をキョロキョロと眺めている。今は私服姿の者ばかりだが、明日にはみんなバリスタらしい黒や茶色や白を基調とした店内スタッフのような正装を着こなしていることだろう。
ステージの設計も、この大会の見どころの1つだ。
本格的なカフェの雰囲気で、観客は競技を忘れて楽しむことができる――。
「あの、あず君、昨日はご迷惑をかけてしまったみたいで」
「別に迷惑なんてかけてねえよ。抱きつき魔の伊織、めっちゃ可愛かったぞ」
「わっ、忘れてください!」
「えぇー、やだなー。あんなに可愛い姿、忘れられない」
「もうテイスティングできないかもです」
「アルコールに強い人にテイスティングしてもらえばいいだろ」
「それはそうですけど、やっぱり自分が美味しいと思えるものじゃないと」
「酒に強くて良かった」
千尋が伊織をドヤ顔で見つめながら言った。
しばらくは伊織と張り合いになっていたが、この光景も僕にとっては微笑ましいものだ。
千尋は自分よりもレベルの低い相手とは絡もうとしない。伊織のことをからかうくらいには彼女の実力を認めていると言える。伊織が先に世界大会を制覇したこともあり、千尋は嫉妬心すら抱いていた。
「あれっ、アズサじゃないか」
横から低い声で呼びかけられた。振り返ってみれば、かつて僕がWBCで死闘を繰り広げた元アイルランド代表スティーブン・ムーアが佇んでいる。
見た目こそ黒い髭を生やした太り気味のおじさんにしか見えないが、彼こそが2007年パリ大会のバリスタオリンピックチャンピオンだ。今は健康のためにダイエット中らしい。
「スティーブンおじさん、久しぶりー」
「アリスも一緒か。本当に大きくなったな」
「スティーブンおじさんと知り合ってから、結構長いよね?」
「ああ。あの時の戦いは忘れもしない。11年ぶりかな。全然変わらないね」
「アズサは昔と変わったな。初めて会った時の君は縮こまって何かに怯えている様子だったけど、今はとても勇敢で凛々しい姿だ」
「ありがとう」
スティーブンとは何度か会っている。2010年のバリスタオリンピック選考会に向けてコーヒーカクテルを学ぶため、僕ははるばる遠くからダブリンにまで訪れ、コーヒーカクテルの基礎を学んだ。
僕が数多くのコーヒーカクテルの中で最も得意としているのがアイリッシュコーヒーなのは間違いなく彼の影響と言える。当時のことを思い出すように話した。
「あぁ~、あれか。実を言うと、俺はアイリッシュコーヒーは全然得意じゃなかったんだよ」
「えっ、そうなの?」
「アズサが今後色んな世界大会に出るだろうと思って、バリスタオリンピックでもWCIGSCでも必須課題になるであろうアイリッシュコーヒーを徹底して習得させたんだ。最初に君が淹れてくれたドリップコーヒーを飲んだ時、君なら間違いなく、コーヒー業界に革命を起こしてくれると思った。だから君に希望を託した」
「……そうだったんだ」
「スティーブンおじさんに認められるなんて、あず君ってやっぱり凄い」
アリスが僕に抱きつく。僕の周囲の女って、本当に人を抱くのが好きだな。
関係を誤解される前にやんわりと振り解くと、スティーブンとしばらく話した。
彼はバリスタコーチとして、多くのバリスタの応援をしてきたんだとか。
頂点を究めた後で考えることはみんなおんなじってわけか。今回は前回大会最終6位に終わったヴォルフのコーチを務め、本気で世界一を取りにいかせようと必死なんだとか。
「おっ、マイケル。久しぶりだなー」
「あんたこそ、相変わらずだな」
マイケルとスティーブンがハグで挨拶をする。
僕の姿が2人の目に映ると、歴戦の覇者たち3人がここに揃った。
僕だけじゃない。伊織たちも緊張感で肌がピリピリしている。スタンド使いが惹かれ合うが如く会場がトップバリスタを寄せつける磁石のように感じている。
「アズサ、君の代わりに出場する日本代表と戦わせてもらうことにしよう」
「言っとくけど、うちの連中は一筋縄ではいかないぞ」
「君が育てたんなら、きっとそうなんだろうな」
「やっぱり葉月も来てたんだな」
後ろから松野の声も聞こえた。彼の隣には根本や穂岐山社長までいる。すっかり忘れていた。今回は根本が日本代表のエースだったな。彼は穂岐山珈琲の全力バックアップを受けている。
「まあな。明日はいよいよ対決か」
「おいおい、俺たちは日本代表同士なんだからさ、決勝までは一緒に仲良くやろうぜ」
「あんたは会社の連中と仲良くした結果、準決勝にいけなかったよな?」
「うっ……それを言うなよ」
「葉月社長、少し言い過ぎでは?」
「むしろ言い足りないくらいだ。根本、君のコーヒーに自分の熱意はあるか?」
「ありますよ……大丈夫です」
根本はどこか不安げなまま目線を逸らしている。
まだ迷っているのか……それとも――。
しばらくの間、ここにいる連中と交流した後で根本を呼び出した。マイケルたちは穂岐山珈琲の連中とも仲良しそうに話している。僕以外とは普通に話せるんだな。穂岐山珈琲が借りている練習部屋にまで根本に案内してもらうと、根本は今日に至るまでの事情を全て話してくれた。
練習部屋には抽出器具からコーヒーの数々の品種に他の食材までもが揃っていた。
彼自身が自らコーヒー農園まで赴き、そこで得た気づきを元に、自ら考えたコーヒーを競技で使いたいと思っている。だがそれを邪魔しようとしているのが他でもない穂岐山珈琲だ。開発こそ好き勝手にできるようにはなったが、競技の時は社員たちの作った試作品の中で最も優れていると見なされたものをプレゼンしなければならないという理不尽なルールがある。
穂岐山珈琲の名義で出場する以上、全部自分で考えることはタブーなのだ。
上層部は無難にやり過ごす社員を求めている。
僕は穂岐山珈琲の競技に対する価値観とぶつかるのが嫌で入社しなかった。
何故自分のアイデアで勝負しないのか。穂岐山社長は最適解に拘るあまり1人1人の意思を度々無視するところがある。故に穂岐山珈琲社員のコーヒーには自分というものがない。
根本は以前この方法で予選落ちした松野のことを気にしつつも、自分を押し殺していた。
「というわけなんです」
「相変わらずおんなじ過ちを繰り返してるな。会社変えたら?」
「無理ですよ。穂岐山珈琲ほど設備からサポートまで充実しているコーヒー会社はないんです。それに僕のアイデアだって、穂岐山珈琲の設備なしじゃ到底無理です」
「もしかして、日本産の牛乳とか使ってる?」
「はい。穂岐山珈琲じゃなかったら、ここまで日本産の牛乳を持ってくるのは難しいんですよ。だから逆らえないんです。自分のアイデアで勝負させてほしいと言っても、穂岐山珈琲には1人のアイデアだけで勝負するのがリスキーだっていう風潮があるんです」
「それなら1つ方法がある」
悪人面で根本に『突発的なアイデア』を吹き込んだ。彼が自らの殻を破るにはこれしかない。自分なりのプレゼンとかも密かに考えてるみたいだし、穂岐山珈琲指定のパンフレットとは別に自身のアイデアが詰まったパンフレットを持ち込んだが、ここに来るまでに松野にはバレてしまったらしい。
ただ、穂岐山社長は何も知らないようだった。密告はされていない。松野は今の根本を4年前の自分と重ねていた。松野の場合はより優れたアイデアを持つ者よりも自分のアイデアが優先されると同時に自分のアイデアの方が優れていると信じていた部門には他の人のアイデアが採用されてしまい、結果的に総合スコアを下げる致命的な要因となってしまった。
この硬直しきった固定観念こそ、穂岐山珈琲が世界大会で優勝できない最大要因だった。
会社の看板を背負っているが故に、自分の思い通りのアイデアで勝負ができないことを歯痒いと思いながら去っていったバリスタは多い。昔の穂岐山珈琲にはそれなりに優秀なバリスタもいたが、他の人のアイデアが採用された時は心底がっかりしただろう。
今回も同じことが起こると松野は確信しているはずだ。去年の選考会の時、僕は根本に自分用のアイデアも考えておけと話をつけていた。誰にもバレないようにと念を押して。
「えっ、それ不味くないですか?」
「ここで動けないようなら、君も穂岐山珈琲を去っていった連中の二の舞だぞ」
「……」
「育成部の人全員にそれぞれの部門の課題を与えて、集まった数多くのアイデアの中から最も優れていると思われたコーヒーを5つの部門に採用するのは、一見優れた競技の組み方のように思える。でも他の人のアイデアの中には、何の裏打ちもなければ熱意もない。それに社員のみんなが賛成したアイデアであったとしても、ジャッジの人にとってはそうでもなかったりする。結局は自分のアイデアで勝負するしかないんだ。それが最も悔いのない競技の組み方だと思うぞ」
「……」
「まっ、予選で消えてくれれば、こっちとしてはライバルが少なくて済む。僕としても楽だけど――」
「分かりましたよ! やればいいんでしょやれば!」
若干キレ気味の根本が吐き捨てると、ずかずかと部屋から出て行ってしまった。
後姿が怒り心頭だった彼と入れ替わるように、松野が部屋までのっそりと入ってくる。さっきまでの話は全部聞かれていたな。だがあの話を誰かにバラす様子はなく、松野はジッと僕の目を見つめた。
「やってくれたな」
「あんたもそうしてほしかったんだろ。だから見逃した」
「俺はもう穂岐山珈琲の人間じゃねえからな。4年前、自分のアイデアだけで勝負していたらワイルドカードには引っ掛かっていたかもな。でもあの時の俺にそんな度胸はなかったし、お前も俺にあんなことを言えるだけの余裕はなかったくせに、何でこんなマネをする?」
「張り合いがないとつまらないって思っただけだ」
「……感謝してる」
「感謝って?」
「根本の背中を押してくれた」
「言っとくけど、あいつがどうなっても責任は取れねえぞ」
「分かってる。同じ戦法で二度も予選落ちするところなんて見ちゃいられねえ。責任は俺が取る。あの時動けなかった自分への……せめてもの贖罪だ」
どうせ辞めるんだったら、最後に裏切れば良かったのに。だが松野は栄光よりも、その後の穂岐山珈琲との関係を優先した。自分よりも世間を優先して後悔しなかった人間を見たことがない。
だから僕は……世間が嫌いだ。
松野は根本の競技の全責任を取るつもりだ。それこそ、自分の会社を潰すくらいのつもりで。あんな中途半端な連中が国内予選を突破できなくなってきた時が、コーヒー業界が進歩した時なんだろうな。
穂岐山社長は自らのやり方で成功した経験がある。だからそれを忘れられずにいるのだが、あの頃は自分のアイデアだけで勝負できるバリスタがほとんどいなかった時代だ。だが今はインターネットでいくらでもヒントを探すことができる。ただアイデアを寄せ集めただけではうまくいかなくなっている。
自らの信念と経験、コーヒーの研究に裏打ちされた熱意がなければ、世界相手には通用しない。国内予選を攻略する方法ではあっても、世界大会を攻略する方法ではないのだ。
時代が変われば最適解も変わる。物事は柔軟に考えるべきだ。
あいつらは一度大きな敗北を知る必要があるな。
穂岐山社長の戦略は、後世のバリスタたちにとって、大きな教訓となるに違いない。穂岐山珈琲からのバックアップを物資の支援のみにしていたのは正解だった。
「あっ、あず君、どこ行ってたんですか?」
夕刻、鈴鹿のライブハウスに戻り、カランコロンとドアベルが鳴ると共に、カウンター席に座っていた伊織がこっちを向き、真っ先に声をかけた。
「根本の所に行ってた。ちょっとしたアイデア提供だ」
「どうしてライバルの応援をするんですか?」
「ライバルは1人でも多い方が、業界が活性化するからな」
「ふふっ、あず君らしい発想ですね」
「ライバルは1人でも少ない方がいいんじゃないの?」
「自分以外全員雑魚の状況で競争なんかしたって、虚しいだけだ。それに競争力の低い業界は、遅かれ早かれ衰退していく。ずっと心配だった。僕が国内予選の第1回大会に出た時なんか、決勝の時でさえ優勝を確信できたくらいだし、ライバルがいないとマジでつまんないぞ」
「あず君が言うと、説得力がありますね」
「音楽業界だったら、いくらでも天才と呼ばれている人がいて、張り合いがあるけど」
「そっちの業界は努力が反映されにくいからやめとく」
矛盾した一言で突き放してしまった。努力を続けられる時点で才能なのに。
音楽はあくまでも穏やかな趣味に留めたい。競争と無縁の趣味があったっていいじゃねえか。というかどう頑張っても1番になれないと分かりきっている分野で競争したいとは思わない。僕が受験や就職を拒否したのも、学業や営業の成績で1番になれないのが分かっていたからだ。
意図せず某世界一ばかりを集めた本に載ってしまった。
大人から子供まで読むこの有名書籍に『最も成功したバリスタ』として掲載されている。
優勝実績ばかりが取り上げられ、まるで無傷のように書かれているが、その成功の裏には数多くの失敗があったことを人々は知らない。僕のことを何も知らない連中から、当たり前のように天才と呼ばれるのは、実に不愉快極まりないものである。
「バリスタ競技会に参加しない人たちも、あず君を見て同じことを考えてるかも」
「一度制覇した大会には出ないから大丈夫だ」
「そういう問題じゃないんだけどなー」
「鈴鹿さんの言ってること、なんか分かる気がする」
「千尋君は賢いもんねー」
鈴鹿が千尋を背中から包み込むように抱きついて言った。
千尋はその抱擁を甘んじて受け止め、嬉しそうな顔で彼女の温度を感じている。
「えへへ、あず君は発想こそ柔軟だけど、思考はガッチガチなんだよねー」
「そうそう。競技の時は面白いけど、いつものあず君はつまんない」
「つまんなくて結構。いつも面白いのは芸人の仕事だ」
現実主義者って、傍から見ると面白くないんだよな。
神様信じてるくらいの人間が、1番面白いのかもしれん。
「いよいよ明日ですね」
「真理愛さん、私応援に行くから、いつ競技するのか教えてくれない?」
「私は2日目です。明日は開会式に出るので一応行きますけど」
「ディアナは3日目でアリスは5日目だな」
「根本さんは1日目ですから、明日は私も行きます」
「マイケルは4日目だから、見事に分かれたな」
「結局全部見に行くことになりますね」
「あず君の競技見たかったなー」
鈴鹿が残念そうに呟いた。4年前の東京に来るべきだったな。
結局、この日は明日に備えて早めに就寝することに。
真夜中になり、どこの家も静かに電気を消していく光景が見えた頃、千尋は可愛らしいパジャマに身を包み、いつでも出発できるよう薄着姿でいる僕とは対照的だ。
ここにも生き方の差が出ていることを直に感じている。
「あず君、根本さんの所まで何しに行ってたの?」
「背中を押しに行ってた」
「一度根本さんと会って話したんだけど、競技の内容について教えてもらったんだよねー」
「どんな内容だった?」
「正直に言うと、なんか色んな人のアイデアを寄せ集めたって感じ。あれだとジャッジに響かないんじゃないかな。バリスタがあの舞台でプレゼンすべきなのは自分のアイデアや熱意であって、他人の作った作品じゃないのに。それを指摘したら、この前も別の人に同じことを言われたって言ってたよ。もしかしてさ……あず君のことじゃないの?」
さっきまでの高い声とは打って変わり、少し低めの声で僕に近づき尋ねた。
僕は千尋に背を向けたまま驚きながらも、すぐに笑みを浮かべた。
鈍感なふりをして、肝心なところにはすぐに気づくこの洞察力よ。
こいつ……やっぱりうちに引き入れておいて正解だった。
「やっぱりあず君か」
「後はあいつ次第ってとこだな。会社の方針だから、みんなで一緒に考えたアイデアでやるしかないって言ってたな。あれはもう予選敗退決定だ。穂岐山珈琲の商品は好きだけど、大会に出るんだったら、極力干渉しないでほしいもんだ」
「それでも真理愛さんを超えるだけの実力は持ってたよ」
「結構ギリギリだったけどねー」
「真理愛があいつに勝てた部門は、いずれも他の人のアイデアで作られたコーヒーだった」
「根本さんが本気を出したら、誰も勝てないってこと?」
「それは誰にも分からん」
這い上がってこい。今度はいつ僕と勝負することになるか分からんけど、それくらいのハードルを越えられないようじゃ、到底僕には太刀打ちできんぞ。
眠くなるまでの間、伊織、千尋、鈴鹿を呼んでトランプで遊んだ。
山札が尽きるまで、何度でも順番に手札の入れ替えができるインフィニティポーカーは、僕らの間でちょっとしたブームとなっており、伊織たちにも大好評だった。
「あっ、もうこんな時間か」
「激闘の日までもう少しですね」
「もう寝るか。明日は早いし」
「ふふっ、じゃあ戻るね。おやすみ」
鈴鹿が真っ先に部屋から出ていった。久しぶりに僕と遊んで楽しかったらしい。
伊織も部屋を出てすぐ隣の寝室へと戻った。僕は部屋の隅にあるボタンを指で押すと明かりが消え、目覚まし時計を確認し、千尋と同じベッドに入った。
束の間の休息は、静かに終わりを告げた。
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