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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第10章 バリスタコーチ編
231/500

231杯目「羽ばたく鳥」

第10章の始まりです。

徐々に競技者からコーチへと移行していくあず君をお楽しみいただけます。

あず君の仲間たちの活躍にも注目です。

 年が明け、2019年がやってくる。


 真理愛のバリスタオリンピック、伊織のWBrC(ワブルク)での真価が問われる年であり、葉月珈琲勢にとっては正念場とも言える時期だ。僕自身、メジャー競技会のグランドスラムが懸かっている。


 バリスタの世界大会は無数にあるが、その中でも特に優勝が困難とされるメジャー競技会はワールドコーヒーイベント主催で定期的に開催されている。


 ワールドバリスタオリンピック、ワールドバリスタチャンピオンシップ、ワールドラテアートチャンピオンシップ、ワールドブリュワーズカップ、ワールドカップテイスターズチャンピオンシップ、ワールドコーヒーイングッドスピリッツチャンピオンシップ、ワールドコーヒーロースティングチャンピオンシップ、ワールドコーヒーカップの8つである。


 どれか1つを制覇するだけでも大変名誉であるとのこと。


 僕が目指すのはグランドスラムだ。公式用語ではなく、大のテニスファンでもある真理愛が咄嗟につけた名前である。妙な言葉に背中を押される形となったが、いつもと変わらず、全力疾走するだけだ。やるべきことが山のようにある。まずは璃子が参加するJLAC(ジェイラック)予選が目前に迫っている。バリスタ競技会は早いもので1月から始まり、のんびりと正月休みを過ごしている暇はない。


 元日を迎えると、璃子は親戚の集会に集まってくれた親戚たちを相手にラテアートが描かれたカプチーノを提供する。これなら練習にもなる上にコーヒーが無駄になりにくい。


「へぇ~、めっちゃ細かく描かれてるねー」

「今までの璃子ちゃんのラテアートと全然違うねー」


 吉樹と美羽が璃子の風変わりなラテアートを称賛する。


 今年の璃子は一味違う。今までのような植物でも動物でもない、自分らしいラテアートだ。


 予選用のラテアートはフリーポアで達磨、デザインカプチーノで歌舞伎の役者絵を描くことになったわけだが、どれも日本らしさを強調したラテアートになっている。達磨は松野が描いていたのを見て描くようになったらしいが、もはや比べ物にならないほど、絵の上手さで差がついている。


「ふーん、どれも素敵だねー」

「成美さん、お久しぶりです」


 午後を迎えてから成美が少し遅れてやってきた。


 大輔は成美と結婚し、現在妊娠中でコーヒーを飲めない。成美の妹である美咲は実家に帰っているところらしい。てっきり姉に乗じて一緒に来るもんだと思っていたが、家の人に反対されたらしい。


「あず君の影響で、うちの近所の人たち、みんなバリスタ始めたんだよー」

「バリスタの世界に革命を起こしましたね」

「唯ちゃん、うちは子育て初めてなんだけど、唯ちゃんのとこはどうしてるの?」

「私は見守ってるだけですよ。あず君の受け売りですけど、子供はみんな収まりきらないくらいの好奇心を持って生まれてくるんです。なので好奇心を摘み取らないように見守る勇気が必要なんです。読み書きとか暗記力とかよりも、人間力を育てることが大事だと思います」

「確かにあず君がそれを言うと説得力あるかも。でも子供を学校に行かせないって本当なの?」

「はい。私もあず君も学校に人生を壊されかけた経験があるので、法律的にはグレーゾーンではありますけど、無理に集団生活に慣れる必要はないと判断したので、うちはホームスクーリングです」


 唯と成美が仲良しそうに話している。


 僕は唯と結婚してはいないものの、親戚から仲間外れのように扱われたことは一度もない。


 しっかりと一体感もあるし、やっぱ結婚の必要性は皆無だな。同居届=婚姻届にして、同居した時点で結婚と同等の権利を認めるようにしてしまえば、選択的夫婦別性の問題も、同性婚の問題も、事実婚の問題も一気に解決するのに。認められるまでは、人権後進国として認識されても文句は言えない。


「ふふっ、あず君って、ホントにみんながやらないことをやるよね」

「あず君は自分に合った生き方をしているだけですよ」

「でも学校は行った方がいいと思うぞ」

「学校なんか行ったところで、従順性と協調性の高い社畜にしかならねえよ。今の社会には従順性も協調性もいらないし、勉強を評価する必要すらない。子供にとって重要なのは、社会に通用する人間になれるかどうかであって、学校に行くことじゃねえからな。今の時代に学校行かせたら高確率で不才になるぞ。現に氷河期世代とか、飯を食えない大人めっちゃ多いじゃん」

「確かに大ちゃんはあず君がいなかったら、引きこもりになってたかもねー」

「あのなー、一般常識も分からないまま大人になったらどうすんだよ?」

「学校で覚えた一般常識ほど役に立たないものはないぞ。むしろその一般常識に縛られてるせいで生きる力がなくなってるわけだし、それが貧困の原因にもなってるんだぞ。みんなが同級生以外に友達を作れないのも、みんなが就職以外の生き方を知らないのも、全部学校の一般常識が頭に染みついてるせいだぞ。そんな邪魔にしかならない常識なんて、覚えない方がずっとマシだ」

「ふふふふふっ!」


 僕がそう言うと、大輔はタジタジになり、成美はコントを楽しむ観客のように大笑いした。


 言葉が話せなくても、対人関係が苦痛でも、今だったら自分以外誰もいない部屋に引き籠って商品や価値を提供し、家の中だけで完結する人生を送ることだってできる。


 それさえできていれば、社会性に難があったとしても大きな邪魔にはならない。


 今まさにその生き方を実践しているのが璃子だ。オープンキッチンでラテアートを描き続け、ほとんど誰とも喋っていない。むしろその状態の方が生き生きしているまである。


 もしかしたら、璃子にはそういう生き方が合ってるのかも。璃子は普通に人と話せるから、ずっと誤解してたけど、その普通を演じる度に、人知れず神経を擦り減らしているのだとしたら――。


「璃子、ちょっといい?」

「どうしたの?」

「人と関わらずに商売したいか?」

「……うん」


 少しばかり笑みを浮かべながら答えた。やっと察してくれたと思ったのがすぐに分かった。僕よりも璃子の方がずっと引き籠りに適している。今や引きこもりにもスキルが求められる時代だ。誰にも邪魔されない代わりに、1人で仕事をやり抜く力が求められる。国が助けてくれない以上、自力で生きていくためには引き籠りだろうと稼いで生きていく必要があるのだ。無理に外に出る必要はない。


 璃子はショコラティエとしてチョコレートを作り、販売は他の人や通信販売に全部任せっきりにすることで、人と会わず仕事に没頭できる。だがうちでそれをこなすのは困難だ。僕や伊織が大会に出ている間はクローズキッチンから出て、オープンキッチンを手伝わなければならない。


「実はさ、近くに空き地ができたから、そこを借りてから家を建てて、ショコラトリーを開いたらいいんじゃないかって思ってるんだけど、どうかな?」

「――そろそろ独立する時がきたってこと?」

「璃子はショコラティエの世界大会で優勝してるんだし、ショコラトリーを開けば必ず成功する。通信販売があるとは言っても、うちの店のショーケースにだけ出すのは勿体ない気がする。璃子はここに収まる器じゃなくなったってことだ」

「もうお兄ちゃんの面倒を見なくてもいいの?」

「もちろん。優子が言っていただろ。もう教えられることは何もないって。璃子は優子の職人技を完全に継承したんだから、今度は璃子が自分の職人技を誰かに継承する番だ。ここで引き籠ってたら、誰にも教えられないままだぞ」

「一応、私のチャンネルで優子さんから教わったことを全部公開してるから、職人技だったら、誰かが習得してるんじゃないかな」


 璃子は自分のチャンネルで色んなショコラティエ動画を投稿していた。


 初心者にも分かりやすいように、ケーキ、チョコレート、キャンディ、アイスクリームといったスイーツの作り方を世界中に公開し、職人技を誰かが継承することをずっと心待ちにしているという。璃子はいつの間にか、僕の想像を遥かに超える存在になっていた。教えるだけなら動画で十分だ。璃子は今の時代に見事なまでの追従を見せていた。もう立派に飯を食える大人になったな。


「動画投稿してしまえば、わざわざ教室を開いたりしなくても、職人技の継承は、誰かが勝手にしてくれると思うよ。これで安心して独立できるね」

「……璃子、独立おめでとう」

「言っとくけど、会社は辞めないからね」

「えっ、何で?」

「私が独立するのはお兄ちゃんからであって、会社から独立するわけじゃないよ。あくまでも葉月珈琲傘下でショコラトリーを開く。私も葉月珈琲の役員なんだから、それくらい決める権利はあるでしょ」

「……分かった。じゃあ璃子が独立する前に最後の共同作業として、戦いが終わるまでは璃子のコーチを務めさせてもらう」

「うん、よろしく」


 自信に満ちた笑顔で璃子が言った。こうして、いつも僕の近くで支え続けてくれていた璃子は遂に僕の家から独立し、来年からは1人暮らしをすることが決まったのであった。昔は僕の方が璃子に依存していると思っていた。だがそれ以上に、璃子が僕から離れたくない気持ちの方がずっと強かった。僕が遠征から帰ってくる度に泣きついてきたのが、昨日のことのように思えてしまう。


 今は僕が遠征から帰ってきても泣きついてくることはなくなった。しかもクローズキッチンから出ることが苦痛であることを伝えられるようにすらなっている。今まで璃子が仕事上で僕に意見することはなかった。それができるようになったということは、精神的に僕から独立できた証だ。


 僕は璃子が意見する時を待っていたのかもしれない。


「あず君、ちょっと相談があるんだけど」


 美羽が子供を吉樹に預け、何食わぬ顔で僕に近寄ってくる。


「どしたの?」

「穂岐山バリスタスクールだけど、生徒の数が絶望的に少なくなっちゃってー、このままじゃ倒産の危機なの。どうしよう~」

「遂にその時が来たかー」

「えっ……何その分かってました的な返答」

「前にも言ったけど、教育は動画で十分だ。わざわざ高い金払って通学するなんて情弱もいいとこだ。世界中に発信できる動画システムを知った時点で通学するタイプの教育はオワコンって確信してたし、通学通勤する価値があるのは、クラブチームと現場仕事くらいだ。ましてやバリスタの場合は抽出器具が家にあれば好きな時に好きなだけ練習し放題だし、バリスタスクールでやる意味がない」

「確かに抽出器具が家にない人ばっかり……うちに入学してた気がする」

「僕としては入学費用を出す金があるんだったら、パソコンとか抽出器具を買って、独学をやってる方がトップバリスタに近づけると思うけどな。大学とかもそうだけど、学校っていうのは、情弱から時間と金を搾取するビジネスだからな」


 思ったことをそのまま言うと、美羽は僕に援助を求める気が失せたようだ。


 こんなことを言っている時点で断られることを確信したんだろう。今や大半の情報はインターネットにアクセスするだけで得られるし、学校で学べることは全部インターネットだけで完結する。もはや専門学校すらオワコンと言える。葉月珈琲塾だってほとんど保育園みたいなもんだし、積極的に不登校を推進するための媒体でしかないのだ。トップバリスタを輩出するのであれば、小さい内から覚えた方が大人になってから目指すよりもハンデが少なくて済む。他の道を目指す場合にも言える話だ。


 葉月珈琲塾にいれば間接的に抽出器具の貸し出しもできるし、優秀な生徒には使い方を教えた上で、パソコンや抽出器具を無償提供する方針だ。エドガールのおっちゃんや京子おばちゃんにはコーヒーの抽出を何度繰り返しても飽きない子供が見つかれば、すぐ報告するように言っている。


 保護した不登校児1000人に対して、1人いればラッキーな方だ。


 ふと、1人の生徒の顔が頭の中に浮かんだ――凜は今頃どうしてるだろうか。


 そんなこんなで、騒がしいくらい賑やかな親戚の集会が終わり、僕と璃子の2人だけ1階のオープンキッチンに残った。食器を片づける音だけが聞こえる。


 1月上旬、JLAC(ジェイラック)の予選が行われた。


 親戚たちから応援のエールを貰ったのか、璃子は張り切っていた。


 今回のJLAC(ジェイラック)に参加した葉月珈琲の人間は璃子だけだった。


 例年通りなら美月も参加しているはずだが、この時彼女は妊娠中だった。


 美月は今月中に優太と結婚する予定なのだ。つまり、5月の親戚の集会からは美月も参加することになるというわけだが、これで更に親戚の層が厚くなった気がする。大輔と優太が無事に結婚できたことに安心している自分がいる。僕がいなかったら、一生底辺組の独り身であったことを考えれば、僕の選択は正解だった。璃子のサポーターには蓮を行かせた。璃子が戦っている間、美月がうちの店へとやってくる。妊娠中のため、美月はランチメニューと水だけを注文する。


「璃子さん、決勝までいけるといいですね」

「あいつなら大丈夫だ。ところで、優太とはどうやって出会ったの?」

「岐阜コンです。最後の岐阜コンの時に出会ってから、何度か一緒に食事をするようになって、そこから定期的にデートとかするようになって、去年から同棲してたんです。優太さんもあず君の導きで葉月珈琲の社員になったって聞いた時は、運命だと思いました」


 美月が運命と言ったのには訳がある。僕が何もしなければ、優太は非正規社員として職を転々としながら貧乏生活を強いられ、美月は引き籠りのまま過ごしていたことが予測できる。


 雇用で人の生活を支えるのは限界と思っていた僕が、皮肉にも雇用によって2人を救う形となってしまった。広告部のみんなも宣伝の傍ら、現場を知る目的で、バリスタとしての活動をするようになって久しいが、大会に出てもいいくらいには成長したようだ。


 身近な人たちの人生を守ることができたのは誇りだ。ズルズルと大学まで行かされていた世界線の僕にはまずできなかっただろう。今までの道のりが間違っていなかったという事実をより一層裏付ける証拠となった。社会に出た後、人を雇ったり養ったりできるかはどうかは本当に大切であると実感した。


 本当に頭が良い奴ってのは有名大学を出ている奴のことじゃねえ。身近な人たちを幸せにできる奴のことを言うんだ。大卒組だろうが何だろうが、身近な人を1人も幸せにできていない時点でアウトだ。


「僕が進学とか就職とかしなくて良かっただろ」

「はい。あず君は本当に凄いです。バリスタとしてもそうですけど、不景気で潰れかけていた葉月家と楠木家を立て直して地元の経済復興に貢献したばかりか、ここをバリスタの聖地として蘇らせることでみんなを貧困から救った。あず君は岐阜の英雄です」

「持ち上げすぎな。僕はここのグループをぶっ壊して、大勢を失業に追いやった破壊者でもある」

「それなんですけど、虎沢グループに勤めていた人たちは、みんなコーヒー業界に転職していったみたいなんです。今の岐阜はあず君のお陰でコーヒー関係の仕事が拡大して、人手不足って言われるくらいに需要が高まっていることもあって、あの失業騒動が収まったみたいなんです」


 美月の言葉には思わず舌を巻いた。


 嘘だろ……僕はずっと秩序の破壊者だと思われていたはずなのに。


 彼女の言うことが正しいとすれば、僕は自ら生み出したマイナスを余りあるほどのプラスによって全て補填したことになる。かつて自分をいじめた奴をグループ企業ごと破壊して、大勢の失業者を出してしまった。そいつらに生きる力があればと思ったのも、僕が葉月珈琲塾を始めた理由だ。最初こそ地元の失業問題が深刻だったが、まさかコーヒー業界の拡大によって難を逃れていたとは思わなかった。


 僕はまたしてもコーヒーに救われた。


「ですので、今はもうあず君を恨んでいる人なんて全然いませんよ」

「……知らなかった。大出血していたと思ってたら、意外なところから輸血されていたか」

「ふふっ、そうですね。あず君は利益を内部留保することなく、色んな所に利益を還元して、経済を回していたからこそ、失業問題が早く解決したんですよ」

「そればかりか、バリスタの人口も増やしましたもんね。やっぱりあず君は凄いです」


 さっきまで作業を続けていた伊織が言った。2人の言葉は僕の重苦しかった心の重圧を取り除くには十分だった。破壊した部分よりも創造した部分の貢献が遥かに大きかったのだ。僕の事業は会社という枠を超え、多くの雇用と需要を生み出していた。地元に限って言えば、以前よりも経済状態が改善し、コーヒー会社への就職、コーヒーの需要拡大により、結果的に多くの人々の生活に恵みをもたらした。


 今の岐阜市はカフェの数とコーヒーの消費量で全国トップに立った。


 理由は僕のようなバリスタを目指す人が増えたからであるという。


 もう外の連中に対して、負い目を感じる必要はないんだな。


「あず君がグランドスラムを達成すれば、コーヒー業界は更に拡大するでしょうね」

「そうなれば岐阜は全国どころか、世界有数のコーヒーの聖地になりますよ。あず君のお陰で外国人観光客も順調に増えています。最近は世界的なガイドブックにも岐阜が掲載されるようになったんです。これなんですけど、日本の主要都市以外から葉月珈琲が唯一選出されているんです」


 伊織が某ガイドブックの該当ページを見せてくれた。


 そこには数多くの五つ星認定された飲食店の中に、葉月珈琲が掲載されていた。


 ――これ、夢じゃないよな。どうりで客足が衰えないわけだ。


 連日満員御礼が続いていた理由はこれか。最近は客の話が耳に入ってこないほど、みんなをサポートしたり、焙煎に集中したりしていたから、何も情報が入ってこなかったけど、いつの間にかとんでもないところにまで店の地位が上がっていたようだ。こんなに嬉しいことはない。


 今までの努力がようやく実った気がした。


 ますます負けられなくなった――グランドスラム、目指してみるか。


「ただいまー」

「あっ、璃子さん、おかえりなさい」

「美月さん……結婚と妊娠おめでとうございます。子供の状態はどうなんですか?」

「順調です。早く赤ちゃんを産みたいと思っていたので。璃子さんは予選どうだったんですか?」

「こっちも何とか無事に終わりました。明日からはアートバーの練習なので大変ですよ。優勝を目指すなら通過する前提の練習をしろってお兄ちゃんが言うので」

「ふふっ、あず君らしいです」

「アートバーって何ですか?」


 伊織が素朴な疑問を璃子にぶつけると、璃子はそれを淡々と説明する。


 アートバーはJLAC(ジェイラック)WLAC(ワラック)特有の競技だ。


 ステージ競技とは別に行われ、競技者は5分間の時間内にオリジナルのデザインを作り上げ提出するのだが、カメラマンによって撮影され、ジャッジには競技者名が分からない状態で審査が行われる。


 3人の認定ジャッジと、1人の芸術的専門性を理由に選ばれたジャッジによって審査が行われる。


 ジャッジは総合的な魅力的印象と素材のコントラストについてドリンクの写真を評価する。合計4種類のラテアートを考える必要がある。アートバーはデザインカプチーノであるため、ペンスティックが使える上に、5分間与えられるため、より創意工夫が求められるのだ。


「僕が出た時はなかったから、昔よりレベル上がってるかもな」

「大会は進化するもの……ですもんね」

「美月さんもアートバーやったんですよね?」

「はい。とても大変でしたけど、条件はみんな一緒ですから」


 璃子のJLAC(ジェイラック)優勝に向けての戦いは、まだまだ続くのであった。

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