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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第9章 次世代バリスタ育成編
223/500

223杯目「薔薇の蕾」

 大人の事情で人間不信に陥った子供をまた見つけてしまった。


 無能な医者は一度に1人を殺すが、無能な教師は一度に多くの人生を殺してしまう。医者は免許が必要だが、何かを教えること自体に免許は必要ない。つまり誰もが無能な教師になりえるというわけだ。


 ていうか飯ぐらい食わせてやれよ。みんなが食べている中、たった1人だけが食べられない絶望を与えるのが教育なのかね? そんなことしかできない教師なら必要ない。辞めてしまえ! 生きる力を奪うばかりか、絶望を与え、見せしめにするなどもっての外だ。


 しかもこれを行う本人は至って真面目で、正義感が強い奴だろうから厄介だ。


 ああいうのを真面目系クズって言うんだよなぁー。


 このまま放っておけば、一生飯を食えない大人だ。いや、大人にすらなれない。


「凜ちゃん、何かやりたいこととかある?」

「……家に引き籠りたい」

「家に引き籠って何がしたいの?」

「……」


 その先が言えないようじゃ、確実に飯を食えない大人になるだろうな。


 僕くらいになると、大雑把に相手の未来を予測できてしまう。無論、今のままだったらの話だが。


 こりゃまいったなー。学習性無力感を植えつけられている。従順な社畜の第一段階だ。誤解を恐れずに言うなら、何の疑問も持たずに通学している子供たちよりも、今の教育に疑問を持ち、不登校を突きつけ、自らの足で歩き、自らの目で見て学ぼうとする不登校児の方がずっと学問的な態度だ。


 この国がやっていることは何だ。これじゃ学問の破壊じゃねえか。


「どうしても引き籠りたいならそうしてもいい。でもこれだけ言わせてくれ。今の君は人生をやり直すチャンスを握ってる。このままずっと引き籠りになって一生を棒に振るか、今ここで知識や技術を学びながら人生をやり直して、君に屈辱的な思いをさせた連中を見返すかどうかは君の自由だ」

「でもバリスタなんてやりたくない」

「一度やってみたら? 結構楽しいよ」

「嫌だ。やりたくない」


 伊織が説得するも凜が拒絶する。決してやりたいことがないわけじゃない。どう生きればいいか分からないだけだ。何もやりたくないと思わせてしまった時点で教育失敗だ。


「無理強いは良くないぞ。僕もバリスタになるつもりなんてなかった。最初はニートになりたかった」

「……本当に?」

「ああ、本当だ。のんびり暮らせればそれでいいって思ったけど、社会は許してくれなかった。それで1番自信のあるコーヒーで生きていこうってことになって、結果的にのんびり暮らす夢が叶った」

「つまりこの人が言いたいのは、何かを全力でやり続けて、自分で稼げるようになれば、本当にやりたいことができるようになるってことだよ」

「本当にやりたいこと?」

「今はなかったとしても、大人になった後、やりたいことが見つかった時点で、飯を食える大人になっていれば、そこまでで稼いだお金でやりたいことができるってわけだ。それにさ、どうせやりたいことないんだったら、一度騙されたと思って、やりたいことが見つかるまでの間、別の何かをやってみるっていう考え方もありだと思うぞ」

「……」


 子供にはちょっと難しすぎたかな?


 いずれは稼ぐ側になるのだから、今の内から稼ぐ側になることを意識させておくことは何の問題もないはずだ。ここで拒否するようなら、多分この子は一生貧困に苦しむことになるだろう。


 厳しいようだが、これだけ言っても動こうとしないようなら、これからやってくる貧困生活はおおよそ自己責任と言っていい。生きる力を奪おうとする社会も悪いが、何かをやってみたいという気持ちがなくなったまま、現状に甘んじている個人にも問題はある。


 施設やFラン大学の現場を知った僕による貧困に対する結論である。伊織はバリスタになりたいと心が叫んでいたのが分かっていたからこそ、何度も救いの手を差し伸べたが、こいつの場合は別だ。


 特別何かをやってみたい気持ちがないなら……もうそれまでとしか言いようがない。


 チャンスは人を待ってはくれないのだから。


「梓、ラテアートやってみせてよ」

「あー、ラテアートね。分かった。僕のことはあず君でいいぞ」

「ラテアートに興味あるの?」

「みんないつもあず君のラテアート動画を見ながら練習してる。ほら」


 ふと、後ろを向いていると、一部の生徒が僕のラテアート動画を見ながらハートのチューリップを練習している最中だった。見ていた他の生徒たちも挙って見よう見まねでラテアートを描いている。僕が人生で最初に描いてみせたハートのチューリップを描いた時、ミルクピッチャーを指先のように使いこなし、おじいちゃんを驚かせたのは良い思い出だ。


 ここには練習用のインスタントコーヒーと牛乳が大量に溜まっている。廃棄処分するはずだった賞味期限切れのコーヒーや牛乳を集めているため、飲まずに捨ててしまっても問題ないのだ。ここに在籍しているだけあり、スチームノズルも使いこなしている。


 ここにいる子供たちは大人が何も言わなくてもちゃんとルールを守っている。エスプレッソマシンを使う時も、列を作って順番に練習用のコーヒーを淹れ、牛乳を温める作業をしている。


 大体30人くらいだが、もっと増えてもいいはずだ。


「複雑なラテアートを描くのに必要なのは集中力だ。牛乳と感覚を一体化させて、うまくコーヒーに溶け込ませる。コーヒーと牛乳が混ざったのを確認したら、その上から手早く正確に描く。こうやって手を小刻みにしてハートを作って最後に一本線を描く。ほらっ」

「「「「「おお~っ!」」」」」


 子供たちが一斉に口を開けながら声を張り上げた。


 みんなにラテアートを見せた後で凜にも見せた。今まで動画でしか見れなかったハートのチューリップを目の前で見た彼女の目は、夜空に浮かぶ星のように輝いていた。


「凄い。生で見たの初めて」

「ラテアートには人を夢中にさせて笑顔にする力がある。まるで魔法みたいだろ?」

「魔法なんてあるわけないじゃん」

「子供のくせに夢がないなぁー」

「夢ばっか見ててもしょうがないじゃん。非科学的だし、魔法なんてないよ」

「目に見えてないだけであるかもしれないぞ。世の中には科学だけでは説明がつかないことなんていくらでもある。魔法を使ってでも叶えたい夢を別の方法で叶えたらさ、ある意味魔法を使って叶えたのと一緒じゃん。ラテアート自体は物理化学だけどさ、結果的にコーヒーがみんなを笑顔にすることに貢献してるわけだし、これを科学だけで説明するのは難しいと思うぞ」

「ふふっ、あず君ってなんか変わってる」

「よく言われる。変わってるとか、普通じゃないとか」

「あず君は嫌じゃないの?」

「むしろ普通の人として扱われる方が苦痛かもな。だって普通ってつまんないじゃん。平凡な生き方も悪くはないし気楽だけどさ、それでも僕は……世の中を動かす側の変人でいたい。たとえ石を投げられることになったとしても、自分の生き方で死ねるなら本望だ」


 まるでロウソクに火を灯されたかのように凜の表情が変わった。


 自分でもカッコつけてるのが分かるくらいだ。でも今は僕が子供たちに夢を与える側だ。カッコつけさせてくれてもいいと思うし、それが変人に課せられた責務という自負もある。


 夢を潰す普通の人がいるなら、夢を与える変人がいてもいいはず。世界はそうやってバランスを取っている。もし全員が普通の人だったら、人類は環境の変化に耐えることなく、絶滅していたのだから。


 もっとも、今は普通の生き方すら困難な時代だがな――。


「何でそこまで自信が持てるの?」

「行動すればするほど最適解に近づけるという発見をしたから……かな。方向さえ間違えなければ、努力は必ず報われる。僕みたいな底辺で中卒の人間でも、ここまでやってこれた。自信を持つのに根拠なんかいらねえぞ。今こうして生きてるだけでも、十分凄いんだからさ。平和に生きて好きなことができるって本当に宝だよ。まっ、難しく考えないで、まずは興味を持ったことを片っ端からやってみろ」

「うん……やってみる」


 枯れる寸前だった薔薇の蕾が持ち直した。凜は他の子に混ざってラテアートを練習し始めた。うまくいかないかと思いきや、毎日僕の動画を見ていた影響か、あっさりハートを描いてしまった。


「うわっ! 凜ちゃんすげえ!」

「えっ、どれ!? 見せてよ!」

「うわー! 初めてなのにうまーい!」


 あっという間に他の子供から注目されるも、顔色1つ変えないところが気に入った。


 見様見真似でここまで再現するか。諦めなければ道は開けると思いながら帰宅する。やっぱ人に何かを教えるのは向いていない。伊織の方が的確で分かりやすい説明だったし、教師とは相性が悪い。


「結局、様子を見ることになったんですね」

「しばらくはラテアートに没頭するってさ。これで当分は時間稼ぎができる」

「でも酷いですね。給食費を払ってないからって、1人だけ給食を配らないなんて」

「凜が通わされていた学校を教えてもらった。僕がいたとこだ」

「じゃあ、あず君と伊織ちゃんの後輩にあたるわけですね。まさか同じ学校なんて」

「あそこはもう学校じゃない。子供強制収容所だ。あの中で平然と行われている数々の所業はナチスの迫害に匹敵する。僕がいた時と何も変わっちゃいない。いつか社会的に抹殺してやる」

「それじゃその人たちと同じですよ」

「だったらどうしろと?」

「私に考えがあります」


 唯は妙案をくれた。僕は世界中に1億人を超えるファンがいる。その気になれば気に入らない奴をSNSに晒し、総叩きにした上で退職させ、家の外に出にくくするくらい造作もないことだ。


 こうなるのが分かっているのか、アンチもそう易々と手を出せない。


 これほどの影響力を持ってからは、理不尽に非難を浴びることはなくなった。


 唯の妙案とは、葉月珈琲塾の生徒がどんな目に遭ったかを学校名を伏せた上で公表し、もし嫌な目に遭ったら不登校になることを推奨する宣伝動画を出すことだった。


 動画はあっという間に話題となり、岐阜ばかりか県外から不登校になって葉月珈琲塾に通いたいというコメントが殺到し、うちへの願書が増えてしまった。早々に整備しないと、えらいことになるな。


「どうでした?」

「うまくいった。今頃塾は応募の受付で大変だろうな」

「あず君はその気になれば人を簡単に殺せるくらいの影響力を持ってるんですから、ちゃんと正しく使わないと駄目ですよ。これから3人目が生まれてくるんですから、良いお手本になってもらわないと」

「へいへい、誰も傷つけずに全部宣伝に利用しろってことだろ」


 こいつ、なかなかの策士だ。時代が違っていたら、女帝にでもなっていたかもな。唯は僕に人を自殺に追いやるような人間になってほしくなかった。たとえ僕が罪に問われなかったとしてもだ。


 2018年7月14日、次女の葉月巻(はづきまき)が生まれた。


 金髪で素直そうな可愛い女の子だ。見た目は唯に近いけど、目元が僕によく似ている。これで3人の子持ちになっちまった。子育てがますます課題になりそうだ。


 唯、瑞浪、柚子だけで足りるだろうか。子供は好き勝手に遊ばせ、遊びの中でルールを学んでいくのが理想的だ。誰かにあれしろこれしろと言われるような生き方で主体性など持てるはずがない。


 自由に放っておかれた子供の方が伸び伸び育つ。天井のない空間の方が植物が育つように。


 8月上旬、JBrC(ジェイブルク)東京予選がやってくる。


 僕が参加した時より参加者の枠が広がっており、予選に参加した60人の内、決勝進出は7人。準決勝が廃止されたことで幾分か楽になっている。予選はオープンサービスのみ。抽出するだけであれば伊織にとってはイージーゲームだが、今回はプレゼンを伴うサービスだ。僕が出場していた頃、ゲイシャを使っているのは僕だけだったが、今はほぼ全員がゲイシャの豆を持って来ている。ご丁寧に参加者のみんなが正直に打ち明けてくれた。伊織のサポーターには勉強も兼ねて千尋を連れてきた。


 伊織が持ってきたのはエクアドルシドラ、XO(エックスオー)プロセスのコーヒーだ。


 まだうちで発売されていない未知のコーヒーだ。


 どんな味になるかはコーヒーだけが知っている。普通に淹れるだけでも大変なのに、伊織はそれを使って最適な淹れ方を試行錯誤してきた。いつもうちに残って店のバックヤードで睡眠を取っているくらいだ。ここまでコーヒーの抽出に執念を燃やしているあたり、彼女もコーヒーに選ばれし者だ。抽出器具はペーパードリップ、最もスタンダードな抽出器具である。


 最も得意な抽出器具は僕と被った。でも参加者のほとんどがペーパードリップを使っているあたり、慣れている人からすれば、これが1番使いやすいんだろうな。


 会場には参加者たちが集まり、しばらく穂岐山珈琲の連中と話した後で伊織と合流する。


「いよいよですね。何だか緊張します」

「伊織なら大丈夫だ。今回は優勝だけじゃない、世界に行けるかどうかが懸かってる」

「あず君は毎年コンスタントに国内予選を制覇してますけど、何かコツとかあるんですか?」

「練習だ。この中で寝食を忘れてコーヒーの抽出とカッピングに没頭してたのは伊織くらいだ。むしろこれで無理だったら、才能を疑った方がいいぞ」

「ですね。じゃあ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」


 伊織がキリッとした顔で敬礼をする。この顔も可愛いなぁ~。


 優子にすっかり調教されちゃってるけど、ノリの良さも彼女の武器だ。何かに興味を持ったらすぐに没頭する能力が何だかんだで1番大事かもしれない。ここさえ鍛えておけば、時代の変化に対応しやすいことを彼女が証明しつつある。明るくハキハキとコーヒーの紹介をしながらプレゼンを進めていく。シドラの豆はまだ出てきたばかりなのに、分析に没頭しているお陰か、本来の持ち味を見せている。


「葉月さんの塾は育てるのに時間がかかるんじゃないですか?」


 後ろから根本が話しかけてくる。伊織は既に競技を終えた後だった。


「人は育てるもんじゃない、育つもんだ」

「千尋君もうちの塾に来ていれば出場できたのに」

「いや、松野珈琲塾には行かなくて正解だ。バリスタを育てるのには向いてるけど、世界チャンピオンを育てるのには向かない。今まで何人のバリスタが穂岐山珈琲からうちに来たか知ってるか?」

「知りません。移籍した理由は、葉月珈琲に世界チャンピオンがいるからじゃないですか?」

「違う。今まで通りのやり方じゃ駄目だと気づいたからだ。根本は寝ないで練習したことあるか?」

「ありませんよ。お店の営業に支障をきたしてしまいますから」

「そんなんだから駄目なんだ。君はごく普通のバリスタになりたいのか、バリスタ競技会の世界チャンピオンになりたいのかどっちだ?」

「世界チャンピオンですけど」

「だったらやり方が違うんじゃねえか?」


 バリスタになるだけなら、店の営業をこなすだけでいい、だが世界チャンピオンとなれば話は別だ。少なくとも営業しながら準備をする余裕はない。優勝候補はそんなこと考えちゃいない。


 バリスタオリンピックファイナリストは、いずれも営業時間中の接客を必要最小限に抑え、常に競技用のコーヒーを開発し続けていた。そんな話を聞いたら……営業なんて考えられなくなった。


 同僚の数を増やしたのもそのためだ。


 僕が競技の準備に没頭している間、僕のようにコーヒーを淹れられるバリスタが欲しかった。遅かれ早かれ、僕には後継者がどの道必要だった。伊織がいなかったら店の営業を休んでいたかもしれない。


「どういうことですか?」

「世界に行きたいなら、相応の覚悟をしろって言ってんの。君たちからは覚悟が感じられない。今まで通りの生活で世界を取れると思ったら大間違いだ。伊織は生活も切り捨てて、少しでも長く練習や開発の準備をする時間を長くするために、1ヵ月以上も前からうちに泊まってる」


 至って単純な話だ。少なくとも、大会前は練習が嫌になるくらい練習する。


 だが彼らは大会をイベントくらいにしか思っていない。かつての僕は大会で結果を残せるかどうかで今後の人生が決まってしまうくらいに追い詰められていた。そんな極限の状況で、ひたすら練習と開発を積み重ねていった日々が昨日のことのように思える。


 お陰で何をやるにも、極限まで本気で取り組む癖が身についた。


「伊織の顔を見てみろ。全く動じてないだろ」

「……確かにインタビューを受けている方が、ずっとリラックスしてますね。普通は本番とインタビューの時に1番緊張するはずなのに」

「大会の本番よりも、ずっとキツイ準備に追われていたからな。僕とて本番の方がずっと楽だ。本番で緊張するってことは、準備がぬるいってことだ」

「……」


 せっかく才能があるんだから、こんなところで腐らせるなんて勿体ねえよ。内心では根本の才能を認めている。松野が用意したメニューをいとも簡単にこなしているし、あれは元気が余っているか、メニューが物足りないかのどちらかだ。いずれにせよ、彼が伸び残しの状態であることに変わりはない。


 根本は既に競技を終えている。だがもし決勝でも今までと同じ態度なら、彼はもう伊織のライバルではなく、その他大勢の1人だ。練習してない奴が練習してる奴に負けるのは当然だ。


 大会とは、言ってしまえば受験みたいなものである。受験勉強をしないで別のことに取り組んでいれば当然合格率は下がる。ましてや優勝ともなれば、合格の枠はたったの1人分だ。


 そのたった1人分の枠に入るのが如何に難しいかを分かっていない。


 極限まで努力ができるほど没頭し、努力を努力と思わないことが才能である。


「あず君、終わりましたよ」

「お疲れさん。千尋も良い勉強になっただろ?」

「うん、とてもね。バリスタオリンピック選考会の参考にはなったかな」

「千尋もバリスタオリンピック目指してるのか?」

「もちろん。バリスタオリンピックチャンピオンはバリスタなら誰もが羨む最高の称号だよ。僕だって勝ち取りたいよ。アジア人初の称号は奪われちゃったけどね」

「それはいいけど、まずは酒が飲めるようになってからだな」

「そこでなんだけどー、僕をヨーロッパに留学させてくれないかな?」

「留学!?」


 伊織がビックリした顔で言った。


 あちゃー、何だか先手を打たれた気分だ。


「コーヒーカクテルでも習得するつもりか?」

「うん。向こうだったら、うちのお酒飲めるからねー」

「うちのお酒?」

「実家が酒造だからね」

「……」


 実家が酒造……まさかとは思うが、あのグループなのか?


「もしかして……千尋君の実家って……」

「お察しの通り、名古屋に本社がある日本酒グループ企業の『村瀬グループ』だよ」


 千尋は涼しい顔ながら、可愛げのある生意気な笑みを浮かべた。


 マジかよ……超有名グループじゃねえか。

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