221杯目「最も身近なライバル」
――東京予選1日目――
7月上旬、JAC東京予選の日がやってくる。
東京、仙台、大阪、福岡に参加予定の予選参加者は全員合わせて162人、予選抜けした上位18人が決勝進出となる。内訳は東京から6人、仙台から3人、大阪から5人、福岡から4人である。東京は1日目と2日目で、それぞれ3人ずつ決勝進出者を決定する。
ジャパンスペシャルティコーヒー協会主催でないため、同じ会社から何人でも参加できる。
僕、伊織、真理愛、美月、俊樹、千尋、桃花、陽向、そして何故かお袋までもが参加している。
伊織たちはまだ分かるとして、何故お袋がここにいるっ!?
今、僕は東京の会場にいる。みんなエアロプレスを片手に抽出の練習中だ。さながら武器を持った剣闘士のようだった。お袋らしき姿が見えた時はそっくりさんかと思ったけど……そういや、うちのお袋も大のコーヒー好きだった。東京予選1日目に僕、お袋、桃花の3人、東京予選2日目に伊織、美月が葉月珈琲勢として参加する予定だが、果たしてどうなるやら。
「あず君、今日はライバルだね」
「まさかお袋が参加してるとは思わなかった」
「だって美月ちゃんも俊樹君もエアロプレスに夢中だったんだもん。それを見ていたら、私も興味が湧いてきて、参加したくなっちゃったの」
「葉月ローストからは親父以外全員参加か」
「参加する日が違うから、お店は休んでないよ。こうやってみんなが共通の大会に参加して、切磋琢磨し合うことを望んでたんじゃないの?」
「そうかもな」
何だ、割と理解あるじゃん。確かに葉月珈琲のメンバーで大会上位を埋め尽くすのは、数ある目標の内の1つではある。親父もお袋も参加してくれるのは嬉しい。ただ、2人共バリスタ競技会に参加するのはこれが最初で最後と宣言している。理由を聞けば、自分たちは大会より育成の方が向いてるだの、次世代を担うバリスタたちの席を奪うのが申し訳ないだの、普通の人なら何自惚れてんだと言いたくなるような台詞だが、うちの親に限って言えばそうではない。
興味があるから出てみただけと言う割に本気だ。全身から戦いのオーラが滲み出ている。
多分、僕の負けず嫌いなところはお袋に似たのかもしれない。
「あっ、いけない。ちょっと買い物してくるね。みんなも頑張ってね」
「はい、あず君のお母さんも頑張ってください」
「ふふっ、任せて」
そうこうしている内にお袋は試合会場に呼ばれて去っていく。陽気なんだか本気なんだか分からん。いつものお袋は制服姿だけど、お袋の私服姿なんて、ここ数年全く見てなかったな。
僕の後ろにいた伊織、桃花、美月の3人が僕に歩み寄ってくる。3人共オシャレな服だ。もういっそのこと、今着ている服を制服にしてもいいくらいだと思ってる。伊織も肩が出た夏服に短めのスカートがよく似合ってる。夏の暑さは女を軽装にしてくれるから大好きだ。僕の皮膚には悪いけど。
僕もかなりの軽装だ。暑い時は短パンにTシャツがお決まりとなっている。
ただでさえ子供っぽい服装なのか、ボーイッシュな女子中学生のように見える。
「あず君の両親も凄腕のバリスタですもんね」
「親父は元々ロースターを目指してて、お袋はそんな親父の焙煎したコーヒーを淹れたくなって結婚を決めたらしい。コーヒーがなかったら、僕は生まれてなかったわけだ」
「それであず君のお母さんはバリスタを始めたんですね」
「凄く素敵な話じゃないですか」
「あたしもそんなロマンチックな結婚がしたいです」
「昔から素敵な人だったんでしょうねー」
かなり想像を膨らませているようだが、うちの親の感性は凡人そのものだ。バリスタとしてのセンスはあるが、同調圧力に屈しやすく、途中までは普通と呼ばれる道を歩んでいた。それが当たり前だと教え込まれてきたため、最初は僕と璃子にも普通という生き方を押しつけてきた最難関の敵でもあった。
今となっては以前よりも症状が和らいできた。僕には何も言わなくなったが、相変わらず璃子には結婚を勧めている。親世代の若い頃の女が結婚することは、仕事を通して実現できたはずの夢を諦めることを意味していた。その結果、能力があるにもかかわらず、うちのお袋は長年パートの仕事ばかりだ。
僕みたいに大会で有名になって、そこから色んな企画に参加したり、起業して自分で稼ぐ発想にはならなかった。結婚によって夢を諦めるという幻想をぶち壊したかった。
唯も子育てが終わったら、早くバリスタに復帰したいと言っていたくらいだし、親父もお袋も時代が違っていれば活躍できていたかもしれない。次世代トップバリスタを輩出しようと奮闘しているのは、バリスタの才能がありながら、普通の道に引き摺り込まれ、貧乏になることを防ぐためでもある。
うちの親は才能あるバリスタであると同時に反面教師でもある。葉月家も楠木家も普通という名の幻想を信じすぎたあまり、危うく全員貧乏になるところだった。
居ても居なくても困る存在になっていたし、本当に悩ましいものがある。
「朝食は食べたか?」
「いえ、まだです」
「じゃあ全員分奢るよ」
「えっ! いいんですか? ご馳走になります」
「ありがとうございます。まだ朝食を食べていなかったので、助かります」
僕と伊織はホテルで泊まっていたため、とっくにホテルの朝食を食べた後だ。
でも他の3人は東京にある美月の実家に泊まっている。朝早くから東京に着いても体力が消耗した状態で大会に挑むことになるし、下手をすれば参加登録が間に合わなくなる恐れもある。お袋は大丈夫みたいだけど、桃花は今日参加するわけだし、シャキッとしてから挑んでもらいたい。
「はぁ~、朝のカフェは落ち着きますね~」
「やっぱりこのためですか」
「ここ一度来てみたかったんだよ」
僕らがのんびり休んでいた場所は会場内にあるカフェだった。
こういう時でもカフェ巡りを忘れないバリスタの鏡だ。僕の番までまだ時間もあるし、お袋はうちが稼ぐようになってからはブランド品を気軽に買えるようになった。一応の親孝行はできている気がするけど、行動パターンがバブル崩壊前と全然変わらねえな。
消費ばかりで投資はせず、自分のスキル向上のためには使わないか。
こういう人、結構多いんだろうな。
朝食が終わると、遂に予選が始まった。
3人1組のトーナメントであるため、1回戦につき参加者が3で割られていくため、物凄いスピードで参加者が減っていく。事前に公開されていた大会用のコーヒーのフレーバーを確認すると、コーヒーに合ったレシピ通りに何度か確認抽出を行った。これだけの人数がいるが、10分も経てばすぐに次の試合が始まる。気が遠くなるくらいに抽出とカッピングを繰り返した経験が活きていると感じている。
この日は27人が参加しているため、2回勝てば決勝進出枠である3人の中に入ることができる。
試合が始まると同時に、3人のバリスタが一斉にエアロプレスを使い始める。
僕はいつも通り、脳内レシピを元に時間や抽出速度を間違えることなく作成していく。カップが誰のものであるかは裏面のマークを見るまで分からないため、贔屓はまずできないようになっているのもこの大会の良いところだ。注ぐところがかなりゆっくりであるため、ここは練習が必要だけど、慣れれば全く問題ない。優しく混ぜて優しくプレス。少ない粉でいかに成分を出し雑味を出さないかの工夫が行き届いており、流行りである粉量多めを避けたレシピになっているが、とても理に適っていると思う。
8分以内にエアロプレスコーヒーを完成させ、後ろを向いた状態で立っている3人のセンサリージャッジがいるテーブルに提出する。振り向いたセンサリージャッジがスプーンでカッピングを始め、どのコーヒーを選ぶかを脳内でひたすら思考と直感を交差させていく。
あのにっこりした表情を見る限り、どうやら整ったようだ。
「「「せーのっ!」」」
最後にセンサリージャッジが合図で1番美味しかったと思うコーヒーを指差す。
一斉に3つのコーヒーの中から1つのコーヒーが指差され、裏面のマークを確認する。裏面のマークは僕が淹れたことを示すマークだ。葉月梓の名前が発表されると同時に天地鳴動の歓喜が訪れた。だが伊織だけは拍手をするも全く驚いてない。知ってたと言わんばかりの真顔だし、身内としては複雑だ。
「まるで未来が分かってたような顔だな」
「全部門を独占したバリスタオリンピックチャンピオンがそう簡単に負けるとは思わないです。決勝進出は当たり前って、自分で言ってましたよね?」
「手厳しいなぁ~。まっ、確かにそうだけど」
伊織はここ数年でかなり図太くなった。ちょっとやそっとの失敗でめげそうになっていたのが嘘のように改善し、今じゃうちで1番多くコーヒーを淹れているくらいだ。
その後、僕は2回戦でも満票で勝利し、早々と決勝進出を決めた。
エアロプレスの使い方もレシピも味も1人1人異なっていた。全く同じコーヒーを扱っているはずなのにここまで違う。コーヒーは人の性格や熱意を映す鏡そのものと言っていい。ここまでの深みへと導いてくれるからこそ、僕はコーヒーを好きになれたのかもしれない。
人数が減った後の大会進行は物凄く速い。別のブロックの2回戦ではお袋と桃花が大激突。決勝進出できるのはたった1人、ここで必ずどちらかが敗退する。
「「「せーのっ!」」」
ここで3人のセンサリージャッジがそれぞれ全く違うカップを指差した。
3つある全てのカップが1票ずつ獲得している。ここからはヘッドジャッジの出番だ。この人の投票で全てが決まると言っても過言ではない。話し合いはせず、あくまで独断で決める。ヘッドジャッジ自身が最高のセンサリージャッジの1人でもあるからだ。
「ヘッドジャッジの判断の結果、葉月陽子バリスタの勝利となります」
会場が拍手に包まれながらもどよめいた。僕と同じ苗字の人が勝利を収めたからだ。お袋が僕の母親であることが周囲に知れ渡るのは光のように早かった。誰もが葉月家の強さを思い知ったことは言うまでもない。お袋の場合はギリギリだったが、対戦相手が桃花と根本だったのだから仕方ない。
「まさか……葉月社長のお母さんに敗れるなんて」
「相手はあのレジェンドバリスタの母親だ。あんな隠し玉を持っていたとは、お前も隅に置けないな」
「お袋が参加するのは僕も予測してなかった。でも心配すんな。仇は必ず取ってやる。親とは言っても今は立派な敵同士だからな」
「はぁ~、情けない」
根本は予選敗退に落ち込み、僕とさえ当たらなかったことを悔いた。
相手が悪かったな。親父もお袋も、あの偉大なおじいちゃんにしっかり訓練された身だ。そう簡単に負ける要素がない。お袋が専業主婦になってからバリスタの仕事に復帰するまで長かったけど、実力は落ちていないようだ。そういえば、お袋は専業主婦の時もずっとコーヒーを淹れて飲んでいたな。
それも毎日のようにずっとだ。今回はその経験の差でもぎ取った勝利だ。
桃花には申し訳ないけど、世代交代の波を起こすにはまだ早いようだ。
「決勝進出おめでとうございます」
「ふふっ、ありがとう。伊織ちゃんは明日だっけ。頑張ってね」
「はい。エアロプレスはあず君にみっちり教えてもらいました。あず君と当たることのない予選ならきっと大丈夫です。必ず追いついてみせます」
「そう簡単にうまくいくかな?」
「えっ!?」
思わぬ返答に伊織の呼吸が一瞬止まった。
さっきまで暖かい包容を思わせる接し方から一転、冷たく突き放すような口調に変わったからだ。
初出場とは思えない緊張感が漂う背中が伊織に不安を植えつけていく。この後ろ姿はまるで璃子のような凛々しさだった。いや、どちらかと言えば、璃子がお袋に似たんだろうな。
「じゃっ、私はもう帰るから。じゃあね」
お袋は東京駅の方角へと去っていった。決勝は9月下旬、それまでは時間に余裕があるし、お袋としては店を優先させたいのだろう。それに僕らとは異なり、大会にはそこまで興味がない。それもすぐに帰宅した理由である。東京で買いたいものは全部買ったみたいだし、もう用済みか。
「伊織、2日目は誰が出るか知ってるか?」
「美月さんですよね。できれば同じブロックにならないことを祈りたいですね」
「何言ってんの。ここで強敵を潰しておけば決勝が楽になる。伊織を超える強敵もいるし、松野の教え子も数多く参加してるし、最初から本気を出さないと、流石の伊織でもやばいかもよ」
「そ、そんな、分かりました。明日は目の前の戦いに集中します」
伊織は自分自身の背中を押すように言ってみせた。それでいい。たとえ相手が鼠1匹だろうと全力で叩き潰すのが勝負事の作法だ。でなければどこかで不意打ちを食らい、まさかの敗北を喫する。あの時全力を出しておけばと後悔するような生き方では、飯を食える大人にはなれん。
今全力を出せない者が、明日全力を出せるわけがない。
人間年を取れば取るほど全力を出すのが難しくなる。誤解を恐れずに言うなら、中年や老人で底辺に甘んじている人ほど、若い時に全力を出せなかった人である確率が高いのだ。いつか全力を出すと思っている人に限っていつも中途半端だ。というかやる気にすらならない。
全力を出したことがない人ほど、全力の出し方を知らないのだ。
僕は興味がないことも最初だけは全力で取り組んでいた。
ルールやセオリーなどを覚えて一通りプレイし、これなら1番を目指せると思ったものを全力で続けてきた。全力を出す価値があるかどうかは、全力でやってみて初めて分かることだ。全力を出す前から惰性の無力感を盾に取り組もうとしないから、結果的に全てが中途半端になる。
「帰ったら練習するか」
「そうですね。あず君に続いて決勝進出を決めたいですね」
伊織は目の色は変わっていた。油断なんて微塵もない。最初は宣伝のために出場していたが、優勝したいがために全力を出すようになっていた。いや、最初から全力だった。何でも最初から全力で取り組んでいた経験のお陰か、常に全力を出す癖がついていたのだ。
それが結果的に勝ち癖になっていたのだと、僕はこの時になってやっと気づいた。
自分のことだってのに、案外分からないものだと、つい笑ってしまった。
「あず君、どうしたんですか?」
「いや、何でもない」
「そう言われると気になります」
「……僕はまだまだ……自分のことをよく分かってないって思っただけ」
「それはきっと、誰もが思ってることですよ。私だって未だに自分のことさえ全く理解できてないんですから、あず君くらいの人でもそうなんだって分かったら、何だか安心しました」
「安心するのは決勝進出を決めてからだろ」
「ふふっ、そうでしたね」
伊織をホテルに返した後、カフェ巡りのため東京の町へと繰り出した。扉の形からドアベルに窓の透明度に至ってまで見渡した。カフェは外観が重要だ。外にいる客の目を惹くものでなければならない。
ふと、周囲をキョロキョロと見渡していると、桃花がため息を吐きながらトボトボ歩いている。
あれっ、誰かと思えば桃花じゃん。会場にいないなと思ってたけど、こんな所にいたのか。
そう思っていると、桃花と目が合ってしまった。
小さくてコンパクトな目にポニーテールが彼女をより一層若く活発に見せている。
「あっ、あず君。伊織ちゃんと一緒じゃなかったんですか?」
声に力が入っていなかった。これは明らかに落ち込んでるな。
「伊織だったらホテルに戻ったよ。明日の予選に向けて練習してるよ」
「まさか決勝進出のかかった試合であず君のお母さんと根本君と当たるとは思わなかったです」
「次の大会で勝てばいい。負けた経験は無駄にならないんだからさ」
「そうですよね。次はもっと上の順位を目指します。そのために葉月珈琲に来たんですから」
「うちに来てから練習時間が伸びたのはいいけど、体調管理はしっかりな」
「やっぱり……分かっちゃいます?」
「分かるよ。僕もそうだったから」
「……」
桃花を始めとした穂岐山珈琲からの移籍組はうちに来てから練習時間が大幅に伸びた。
僕らと彼らの決定的な違い、それはバリスタ競技会に向けての練習量の差だ。穂岐山珈琲は大会前であっても決められた時間内に仕事をしながら練習という非効率的なものだった。
うちは大会前のバリスタに限り、仕事そっちのけで練習に没頭することが許されている。それこそうちに何日も泊まって練習することもあった。決められた時間内しか練習しない者が寝食を忘れ、手が動かなくなるまで没頭した者に勝てる確率は非常に低い。僕は穂岐山社長にどうやったら勝てるようになるかを問われた際、育成部を常時開放状態にして、好きなだけ没頭させるように言ったのだが、労働基準監督署に目をつけられたらやばいとかで、なかなかできないんだとか。
某ブラック居酒屋の過労自殺事件から10年が経過し、過労死が段々と問題視されるようになったために残業すらさせにくくなったのはいいが、本人たちが自分で練習を希望した場合も労働時間に数えられてしまうという。残業を強制したのに社員が勝手にやったという言い訳を防ぐためだ。
それこそ、労働時間の全てを練習に費やして休みながら夜通しフィーバーするくらいに没頭すれば、順位は確実に上がる。当たり前の話だが、敗者は勝者以上に頭を使い、量を積まなければ勝てない。
うちは穂岐山珈琲ほど大きい会社じゃないし、特に派閥争いをしているわけでもない。だからこうして自由に改革が行えるわけだが、たとえ失敗しても、すぐ元に戻せばいいだけだし、挑戦し続けることを良しとしているのも、伊織が立派なバリスタに成長した要因だ。
守りに入った時点で衰退の始まりである。僕は肝に銘じている。満足してもいいが、その日だけだ。次の日には忘れる。僕にとっては今日の勝利さえ過去の栄光だ。
さっきから桃花の体調と気分が優れない。
疲れの影響もあるだろうが、それ以上に負けたことへの無念が大きいように見えた。
「あたし、才能ないのかなって思う時があるんです。周りが結果を残していく中、あたしは全然結果を残せないでいるし、バリスタを続けられるか心配で、引退を考えたこともあります」
「桃花、引退を考えるのはまだ早いぞ。桃花は今日負けてどう思った?」
「凄く……悔しいです」
桃花は残酷な現実を受け入れられなかった。
両目からは大粒の涙を流し、今日の結果を嘆いた。過酷な練習していたのが僕には伝わった。グラマラスなボディをそっと抱きしめ、悔しさを吸着するように彼女の温度を感じた。
一瞬ビクッと体が震えたが、すぐに抱擁を受け入れた。
「その気持ちを忘れるな。負けた時に悔しさを感じるのは情熱を燃やしながら懸命に生きてる証拠だ。引退を考えるのは、悔しさを感じなくなってからでも遅くはない。コーヒーを好きでいる限り、競技者ではなくなっても、バリスタを続けることはできる。桃花ならできる」
「……はい」
桃花の涙が頬を伝うと、彼女はハンカチを持ち、涙を拭き取った。
気に入っていただければ下から評価ボタンを押していただけると嬉しいです。
読んでいただきありがとうございます。




