表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第9章 次世代バリスタ育成編
212/500

212杯目「筆頭の教え子」

 2月上旬、節分の季節がやってくる。


 親父との対決が迫っているし、おじいちゃんを超えたかどうかを確かめるチャンスでもある。のんびり過ごすのは控えめにした方がいいと思い、焙煎に没頭する。


 豆は豆でも、節分の豆ではなく、コーヒー豆を焙煎する日である。


「あず君、この前松野さんからメールが来たんですけど、JHDC(ジェイハドック)東京予選に松野さんの教え子が出るみたいなので、もしかしたら対戦できるかもしれません」

「そうか。もしどこかで当たった時は、一思いにへし折ってやれ」

「言い方はどうかと思いますけど、負ける気はありません」


 伊織がジト目になりながらも、すぐに意気込みのある顔に戻った。


 JHDC(ジェイハドック)予選はトーナメント戦。1つの会場につき3つのグループがあり、決勝に進むには各グループの上位1位となる必要があるため、当たれば必ず倒す必要が出てくるが、今の伊織なら勝てるはずだ。ていうかあいつ、いつの間に伊織とメアド交換してたんだ?


 確か松野はバリスタトレーナーとして働いていて、バリスタ競技会で勝ち抜けるバリスタを育てる前提の教育を行う会社を立ち上げたらしい。『株式会社松野珈琲塾』の社長兼本店塾長となったが、カフェの営業は行っておらず、あくまでも世界に通用するバリスタ競技会の競技者を育てることに特化しており、最近注目を集めているんだとか。葉月珈琲にも葉月珈琲塾がある。


 違いは葉月珈琲塾が子供の内からバリスタとしての立ち振る舞いを教えているのに対し、松野珈琲塾は就職済みの現役バリスタを育てている違いだ。松野珈琲塾のバリスタたちは松野を中心としたバリスタ競技会の経験者たちによる指導の下、各コーヒー会社から応募してきたバリスタを育成し、大会の時には各コーヒー会社からのエントリーになるため、参加者全員を教え子にすることも理論上は可能だ。


 調べたところ、既に松野珈琲塾のバリスタは100人を超えており、バリスタ競技会で結果を出す人も現れている。それだけいれば数撃ちゃ当たるわな。目標は全てのバリスタ競技会の国内予選を教え子だけで埋め尽くすことであるとか。かつての穂岐山珈琲の真似事かと思いきや、そうでもなさそうだ。


 コーヒー会社の枠を超え、様々なバリスタを直接指導で育てるのは今までにない発想だ。育成部で直接指導をする場合、自社に属しているバリスタの面倒を見るのが限界だ。


 璃子は1月のJLAC(ジェイラック)予選を突破し、2月下旬に行われる決勝に4年連続で進出している。そろそろ優勝を決めてほしいところだけど、まだ強いライバルがいるし、ワールドチョコレートマスターズで発揮されていた天性の勘をラテアートの発想に応用できれば勝機はある。ずっと練習し続けてきただけあって、ラテアートの腕は世界トップクラスだ。


 後は発想と再現さえできれば、世界でも十分通用するラテアーティストになれる。


「皆さん、集まってもらっていいですか?」


 唯が僕らを呼び、注目を集めた。開店前のオープンキッチンには僕、璃子、柚子、優子、伊織、真理愛の6人が集まっており、僕らの正面には唯が満面の笑みを浮かべながら佇んでいる。


「唯、一体どうしたの?」

「実は私、また妊娠したんです」

「おめでとうございます」

「おめでとう。3人目ってことは、結構仲良いんだね」

「おめでとうございます。復帰はまた延期ですね」

「はい……また延期みたいです」


 唯が喜びながらもシュンとした顔だ。


 彼女が3人目の子供を妊娠したことは既に知っていた。2人目の子育てが一段落したら復帰する予定だった。唯はバリスタの仕事でみんなに貢献したいが、それができないために複雑そうな心境だ。


「まっ、そういうわけだから、当分は簡単な仕事だけを任せる」

「これから忙しい時期がやってくるのに、申し訳ないです」

「何言ってんの。唯は唯の役割をこなせばいい」

「……はい」


 唯は納得したような顔で子供たちの面倒を見るため、2階へと上がっていく。とりあえず妊娠と出産が途切れるまでは育児に徹してもらった方が良さそうだ。子育てに慣れてからは瑞浪と一緒に子供の面倒を見てもらっているが、このまま何人も子供が増えていったらどうなることやら。


「はぁ~」


 柚子が崩れ落ちるように、カウンター席のテーブルに突っ伏してしまった。


「柚子さん、どうしたんですか?」

「私はもう30なのに、子供どころか相手もいない。ねえあず君、どうやったら恋人ってできるの?」

「知らねえよ。相手の方から勝手に寄ってきたから何とも言えん」

「色んな女子の中から選び放題だったもんねー」

「結果的に唯ちゃん以外はみんな通い妻みたいになってるし、ホント羨ましいなー」

「モテるのは辛いぞー。対人関係を強要されるからな」

「でも、あず君がモテるのは必然だと思いますよ。結果出してますからね」

「結果というか、これをやったら駄目っていうのを避けて、これをやれば改善するっていうのを実行してきただけだよ。みんな取捨選択さえできれば結果を出せるのに、やらないから結果出ないんだよ」


 これは至って単純な話だ。良いものを取り入れ、悪いものを排除するだけで、誰でも結果を出すくらいはできるようになる。だが世の中には良いものを排除し、悪いものを強制するような人たちが一定数いるせいか、なかなかみんな結果を出せずにいる。その最たる例が世間だ。自分に合わないものを押し売り、そのくせうまくいかなかった時に責任を取ろうともしない。だから僕は世間が嫌いなのだ。


 僕の周りの連中はただ世間に従うばかりで、どうすればより良い暮らしができるようになるのかを考えることすらしなかった。この時点で方向を間違えている。僕もかつては世間に合わせようと努力したことはあるが、どう頑張ってもうまくいかなかった。結果、世間に従わない方向へと素早く転換した。


 僕が大成するようになったのはそれからだ。


 報われない努力はない。方向さえ間違えなければだが……。


「取捨選択って難しくないですか?」

「簡単だ。自分の体が受け付けるものだけを選べばいいんだ。人生に正解なんてないんだから、もっとシンプルに考えろっての」

「はい。私、自分に合う生き方を探してみせます」


 伊織が自信ありげな顔で言った。僕に従っているだけじゃ駄目だ。


 最終的に自分の足で歩けるようにならないとな。


「今すぐには無理でも、いつか必ず見つかるよ」


 急かしちゃ駄目だ。生きていくだけならどうにもなるんだし。


 2月下旬、JHDC(ジェイハドック)の東京予選が始まった。


 この日のために、伊織は業務時間以外の時間や休日までをもコーヒーの抽出に費やした。


 コーヒーの淹れすぎで手が動かない日もあった。こういう時の伊織を見ていると、何だか昔の自分を思い出す。ほとんどのバリスタは本巣伊織の半分も努力していないと後世で語り継がれるくらいやってみろと言ったのだが、これを本当にやってしまうあたり、流石は伊織だ。血の滲むような努力の結果、彼女はミリ単位どころかミクロ単位でコーヒーのフレーバーをコントロールできるようになっている。


 間違いなく僕以上の大物になると確信した。


 前年までの悔しさと、ひたむきな姿勢が彼女を強くした。


「おっ、まさか同じ日に当たるとはな」


 後ろから声をかけてきたのは松野だった。隣には何人かの知り合いを引き連れている。


 こいつらが松野の教え子であると確信した。みんな伊織よりも一回り年上でバリスタらしい格好をしているが、1人だけ競技者とは思えない私服で佇んでいる。


「教え子だけで100人超えてるんだったら、みんなどこかしらの日になるだろ」

「早速ネタバレすんのやめてくんない?」

「へぇ~、あなたが葉月社長ですか。やっぱり貫禄がありますね」


 話しかけてきたのは、おかっぱの黒髪でグレーを基調とした私服の青年だった。男とは思えない可愛い声にキザな表情が特徴の少年のような見た目であり、痩せ型で低身長だが僕よりは高い。


「紹介するよ。俺の教え子の1人、根本拓海(ねもとたくみ)だ」

「根本です。まさか世界的バリスタの葉月社長に会えるなんて光栄です」

「じゃあこっちも紹介しよう。うちのスタッフ、本巣伊織だ」

「よろしくお願いします」

「彼女なら知ってますよ。前に一度話したことがあるので」

「そうなの?」

「はい。彼はJHDC(ジェイハドック)の前回チャンピオンなんです」

「へぇ~」


 そういやこの顔、どっかで見たとは思ってたけど、まさか前回チャンピオンとはな。どうりで私服姿なわけだ。さしずめ、他の教え子の見物にでも来たんだろうな。


 このすかした顔がいかにもライバルって感じだけど、これが絶望の顔に変わるのは時間の問題だ。


 前回大会で伊織に勝っておいて良かったと思える日が来るだろう。


 根本は僕より7歳年下で、まだ21歳になったばかりの若手エースだ。松野の勧めで穂岐山珈琲の育成部に所属し、去年のJHDC(ジェイハドック)で優勝し、穂岐山珈琲の将来を期待されている。


「わざわざ僕に紹介するってことは、こいつが1番なんだろ?」

「ああ、この若さで頭角を現してるからな。俺の1番の教え子だ。大会の時は穂岐山社長から惜しみなく支援してもらえる約束までしている」


 なるほど、穂岐山珈琲のウィークポイント、投票を制しなければ自分で決めたコーヒーを使えないルールを外からの指導で埋める作戦できたか。ライバルは1人でも多い方が伊織の成長に繋がる。


 切磋琢磨してくれるくらいの実力を持つことを期待したい。


「葉月社長、昔言ってましたよね。何かを究めるなら、なるべく若い内から始めた方がいいって。なので早い内からコーヒーを究めるために修行してたんです」

「何かを究めるっていうのは、言ってしまえば、プロ野球選手を目指すようなもんだ。君にそれをやり遂げるだけの意志はあるか?」

「もちろんです」


 伊織が参加者として出場するため、僕はしばらく根本と2人で話すことに。


 松野はこの東京予選に参加している教え子たちを指導するために僕らから離れた。


 話を聞いてみると、根本は小学生の頃、集団生活に馴染めず不登校になり、親からは将来を不安視されていた。引き籠り生活が続く中、テレビで僕の活躍を見てバリスタを志したという。ひたすらコーヒーに没頭し、高校に通うことを条件に、穂岐山珈琲の育成部に入れるよう親と交渉したとのこと。


 今、僕に憧れてバリスタを始める者が増え始め、小学生がなりたい職業第5位になってるんだとか。だがほとんどは親と教師から、やったこともないバリスタの大変さを説かれ、より安定した職業に誘導されることは目に見えている。彼らはその圧力に屈しなかった生き残りだ。


「将来は葉月さんのような世界一のバリスタになるって決めたんです」

「世界一を目指すのは結構。でも僕にはなれないぞ。僕を目指すんじゃなくて、次世代からこいつを目指そうって思われるバリスタになってほしいな。自分の人生の主役は自分なんだからさ」

「やっぱりトップの人は言うことが違いますね」

「当たり前のことを言ってるだけだ」

「でも葉月さんの言葉がみんなに響くってことは、それだけ当たり前のこともできない人たちが山のようにいるってことですよね?」

「分かってるじゃん」


 何だ、話してみれば割と可愛い奴じゃん。


 真っ直ぐだし、捻くれてもいる。昔の僕に通じるところがある。集団生活は不向きだけど、社会性はそれなりにあるし、有名になってから自分の店を持てば、十分やっていけそうなタイプだ。


「本巣さんのこと、気に入ってるんですね」

「まあな。ポテンシャルだけで言えば、僕よりもずっと上だ」

「でも僕の方がより大きな実績を出してみせますよ。今年のJBrC(ジェイブルク)にも出場する予定なんです。そこで優勝して、世界に僕の名前を轟かせてみせますよ」

「だったら今の内に見ておけ。これから君に立ちはだかる強敵をな」


 伊織の競技時間がやってくると、すぐにトーナメントが始まった。


 一切喋らずに違うカップにコーヒーを淹れるものだが、ずっと練習を積み重ねてきた伊織にはあまりにも簡単すぎた。彼女は最後まで勝ち残り、夕方になる頃には決勝進出を決めた。


 流石に3回目なのか、予選で勝ち抜く術を覚えたようだ。奇しくも伊織と同じグループになった松野の教え子たち全員を粉砕し、松野の顔は諦めの表情となっていた。


「やるねー。流石は葉月社長の愛弟子だ」

「ありがとうございます」

「でも天才の葉月社長には遠く及ばないね。僕はいずれ葉月社長を超えてみせる。次に本巣さんに当たった時も勝たせてもらうよ」

「それ、本気で言ってますか?」

「もちろん」


 伊織は僕を超えてみせるという言葉に反応し、心に火がついたようだった。


「バリスタオリンピックの頃のあず君は本当に凄かったんです。競技用のコーヒーを完成させるために営業も寝食も忘れて、手が動かなくなるまでコーヒーの抽出やカッピングに没頭していたんです」

「てっ、手が動かなくなるまで!?」

「はい。私はあの練習を見た時点で優勝を確信しました。言っちゃ悪いですけど、ほとんどのバリスタはあず君の半分も努力してません。あず君の成功は正しい場所で正しい方向に努力してきた結果です。この世に天才なんて1人もいません。普段のあず君を見たら、もう天才なんて言えなくなりますよ」


 伊織が気になったのは、僕に対して天才と言った部分だった。


 彼女は僕が天才と呼ばれることを心底嫌っていた。僕が常に没頭し続けたところを直に見るようになってからは、僕の人知れぬ苦労を知っている。故に天才の一言で片づけられたくなかった。僕はみんなが努力だと思っている行動を努力だとは思っていない。僕に言わせりゃ、ただ好きなことに没頭しているだけなのだから。天才とは……相手を理解していない第三者が使う言葉なのだ。


「――ふーん、じゃあ一度葉月珈琲に行ってみようかな」


 根本が松野の教え子たちの元へと去っていく。落ち込んでいるあの連中を慰めていた根本はさっきまでと別人のように見えた。根本は伊織の意図を理解したようであった。


 根本は伊織だけをライバルとして意識しているような気がした。


「ちょっと言い過ぎたんじゃねえの?」

「いいんです。あず君のことをよく分かってない人に、あず君を語ってほしくないです」

「伊織は現場主義だもんな」

「あず君がそうしたんじゃないですか。あず君言ってましたよね。勝利の秘訣は没頭して現場を知ることだって。だから私、ひたすら没頭するようにしたんですよ。大会の現場にも顔を出して、他のバリスタのアイデアをメモしたり、色々開発実験もやってみましたけど、いつも答えが見つからないんです」

「僕だってさ、今も答えなんか見つかってねえよ」

「……そうなんですか?」

「簡単に答えが見つかるような人間ほど浅いものはない。根本はこれさえやっていれば勝てるって顔してたけど、方程式を崩された時にこそ、人の真価が問われる」

「それだったら、教えてあげた方がいいんじゃないですか?」

「根本は松野の管轄下だ。下手に教えて潰れても責任取れないし、人は根拠のない自信を潰しちゃうと主体性を失っちゃうからさ、教えすぎるのも良くないんだよなー。指導者たるもの、基本的には本人の主体性を尊重する姿勢でなきゃ駄目だ」

「難しいものなんですね、指導者って」


 松野と話している根本を見ながら伊織が言った。


 日本人に主体性のない人が多いのは、義務教育時代に大人たちから根拠のない自信を潰されてしまったからだ。伊織に不登校を推奨したのも、主体性を失わせたくなかったからである。


 明らかに社会との噛み合わせが悪すぎる……。


 伊織があんなにも意欲的にコーヒーの抽出に没頭していたのは誰かに強制されたからではなく、彼女自身がずっとやりたかったことを今実行しているというだけで、他の人なら苦痛でやめてしまうほどの量を平気な顔でこなしていたのは没頭していた証拠だ。休日は家でもコーヒーの抽出とカッピングができるようにエスプレッソマシンを提供したが、ここまで続くのは僕の予想以上だ。


 音を上げるかと思いきや、練習量を増やそうとする始末だし。


 タクシーで家に帰るまでの間、伊織と雑談を楽しんだ。


 この風景を見るのは、もう何度目だろうと言わんばかりの目で、窓越しに色んな都道府県の街並みを眺めている。タクシーで今までと同じ道の移動だ。何度も見ているが全然飽きない。これだけ移動する機会が多いのだから、いっそ東京に住もうかと考えた時期もあった。だがそんなことをすれば都心化を助長してしまう。あの多すぎる人口に溶け込める気がしない。何故名古屋には国内予選がないのか。


 タクシーに揺られ、段々と意識が遠のいていく――。


 伊織はもう18歳、今の内からヨーロッパに連れて行けば、合法的に酒が飲める。つまり、将来的に僕よりも早い段階から、コーヒーカクテルを究める機会を得られるわけだ。


 本当に……伊織が羨ましい。


 バリスタとして成長する機会も環境も……全部揃ったところからスタートできるんだから。


「あず君! 起きてください!」


 突然の可愛い叫び声に目を覚ました。


 目の前には可愛らしくも呆れた顔で僕を見つめている伊織の姿がある。


「――ん? どうした?」

「どうしたじゃないですよ。もう着きましたよ」

「あー、そっかー。タクシー乗ったんだっけ……」


 つい欠伸をしてしまった。今日はもう家に帰ってゆっくり寝よう。辺りは既に暗くなっており、店の営業もとっくに終わっている。料金を支払い、葉月珈琲に戻り、伊織は1人で帰宅する。


「確かにあず君からすれば、羨ましいでしょうね」


 唯と一緒に風呂に入った後、唯の膝枕の上で耳掃除をしてもらっている。


 やっぱ寝る前はこれだよなぁ~。


「僕の時は店の営業をしながら、手探りでやったこともない競技会に挑まないといけなかったし、あの時に比べたら、今参加してる人は本当にやりやすいと思う」

「ですね。でもみんなが大会に参加しやすくなっているのは、あず君が大変な思いをして我武者羅に挑んてきたからですし、参加者が増えてくれたのも、今までの啓蒙活動がようやく功を奏したからだと思いますし、大会を勝ち抜くための動画を投稿しているのも、あず君くらいですから」

「コーヒー動画のお陰で他の動画投稿者と差別化を図れたのは良かったけど、大会のレベルが上がっちまったから、初心者が参加しにくくなった。大会に参加するための心得を動画にしたけど、あれだけじゃ駄目だ。基本は教えられても、応用は自分でやるしかない」

「課題に次ぐ課題ですね。松野さんの1番の教え子はどんな人だったんですか?」

「ポテンシャルは十分、練習もそれなりに積んできているみたいだし、松野珈琲塾もなるべく若い人を教え子にするようにしてるんだとさ」


 成人してからバリスタを始めた人が、小さい頃からバリスタをやっていた人に勝つのは困難だ。


 大人になってからプロ野球選手を目指しても、小さい頃から筋が良く、何毎回もバットを振り回してきた人にはまず勝てないと言えば分かりやすいだろうか。


 同じく小学生時代からコーヒーに携わってきた彼はきっと良いライバルになるはずだ。


 未来のトップバリスタたちに期待を寄せ、僕は唯と共に就寝するのだった。

気に入っていただければ下から評価ボタンを押していただけると嬉しいです。

読んでいただきありがとうございます。

根本拓海(CV:伊藤舞子)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ