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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第9章 次世代バリスタ育成編
211/500

211杯目「世渡り上手の本音」

 2018年の正月がやってくる。この日のうちは大忙しだ。


 親戚の集会でうちの店は人でいっぱいだし、店では出さないような料理や酒がテーブルの上を埋め尽くすくらいに並んでいる。うちのいとこは全員が成人し、みんな酒を嗜むのが当たり前になっていた。


 僕は相変わらず端っこのカウンター席に座り、おせち料理を食べる。特に気に入っているのはチーズとハムが挟まっている蒲鉾だ。柚子は先月のショックからか、しばらくは婚活をお休みするらしい。


 自らの結婚を賭けた20代最後のお見合いであんなことがあったんじゃ、お休みしたくもなるわな。最近は『婚活外来』という婚活疲れを専門としたクリニックがあるくらいだし、そんなものが出てくるあたり、おかしな時代になったもんだと心底思った。


 特に社会を経験していない教師は地雷と思っていい。僕の知る限り、あの空間でまともだったのは保健の先生くらいである。何故一般企業が社会経験のないニートを雇いたがらないのかがよく分かった気がする。社会経験がないという意味では、教師もニートとあまり変わらないのかもしれない。そんな連中が悪魔の洗脳を施すのだから、そこらのホラー映画よりずっと恐ろしい。


「はぁ~、もう婚活なんてこりごり」

「柚子、結婚は義務じゃないんだからさ、もっと気楽に生きようよ」

「璃子、私今年で30なんだよ。20代のフィルタリングで多くの人の検索候補から外される。それだけでマッチング確率がガクッと下がるのに……璃子は相手とかいるの?」

「いるにはいるけど、名字を変えたくないから、一緒になっても事実婚かな」

「あず君とおんなじ末路か。そういうところ、お兄ちゃんに似たね」

「何でお兄ちゃんに似てるわけ?」


 おせち料理を食べながら、呆れ顔で璃子が言った。


 同じ髪型にすれば見分けがつかないくらいに顔はそっくりだ。僕がいつも姫カットで、璃子がポニテなのはそういった事情もある。相違点なら山ほど知っているけど、共通点は数えるほどしか知らない。


「璃子ってさー、周りに合わせるのがうまい割に、やんわり断る術に長けているよね。人と関わるのが苦痛じゃない割に、空気と一体化して目立たずにいるのが得意だし、今やってる仕事だって、ほとんど人と関わらない仕事だし、本当は誰よりも協調性がないことくらいお見通しだよ」

「……だって人づき合いとか疲れるんだもん」


 璃子が今まで言えなかったことを吐き出すように言った。昔の璃子だったらまず言わなかったであろう台詞に僕は静かな驚嘆を覚えた。柚子は人を見る目に長けている。でも璃子が僕以上に協調性に欠ける人間なのは初めて知った。柚子だけは気づいていた。


 学生時代の璃子には数多くの伝説がある。クラスの誰よりも体が小さいことや、女子であることを理由に誰からもやっかみを買わず、やる気を見せながら面倒事を全部かわしたり、クラスではカースト最上位のグループにさりげなく属した上で空気と化すことで、いじめの対象から外れたり、1人の時は自分からは絶対に話しかけず、読書をすることで話しかけにくい空気を作ったりしていた。


 テストも本気を出せばオール満点を取れたにもかかわらず、わざと全部50点台から60点台になるよう各問題の配点を確認しながら点数を調整し、優等生には羨ましいと言って承認欲求を満たしてあげていたばかりか、劣等生には何で高得点が取れないんだろうと適度に共感して安心を提供したりすることでやっかみを買うことを防いでいた。この迷彩戦略は学校を出てからも役立っている。


 璃子はいじめのきっかけが生まれる隙さえ与えなかった。いじめを誰よりも恐れ、常に周囲の他人を警戒し、いじめっ子を倒すための戦術ではなく、集団に溶け込む戦略を用いていたのだ。


 つまるところ、璃子は他人が心底嫌いなのだ。


 本質的には僕以上の協調性のなさと言っていい。


「そんなに苦痛だったの?」

「うん。だってみんな量産型の製品みたいで面白くないんだもん」

「ふふふふふっ、まるであず君みたい」

「お兄ちゃんは頭の悪い人たちと正面から戦おうとするから駄目だったの。話し合いのできない人たちに論理なんて通用しないんだから、テキトーに流しとけばいいの。いくら説明しても分からないような人たちは、なるべく関わらないようにするか、力を示して服従させるしかないよ。言い方は悪いけど、論理が通じない時点で動物みたいなものだし」


 璃子の言葉が人間社会の真理なら、学校や会社にいる連中の大半は人の姿をした動物なんだろう。


 どうりで話が通じないわけだ。璃子のように、飼育員のような感覚で接するのが適切かもしれない。人を見下すのは良くないって言うけど、それは相手の感覚が人間の水準に到達している場合に限った話である。動物扱いされたくないなら、相応の立ち振る舞いをしろよって話だ。


 璃子にとって、学校とは多数派でないと殴られるゲームである。


 頭の悪い連中にとって、少数派要素は格好の獲物でしかない。噛みつかれないよう誤魔化し、如何に集団生活をやり過ごすかを学ぶためのゲームなんだとか。もはや学校というより動物園だ。


 こんな視点から集団を見つめられるとは、我が妹恐るべし。


 全てにおいて平均化された量産型人間を演じ続けるのは、さぞ辛かっただろう。


「なんか分かりたくないけど、分かる気がする」

「お兄ちゃんは戦って突き抜けた結果、社会から認められた。私は徹底して戦わなかった結果、社会とほとんど関わらない仕事に落ち着いた。生き方に正解はないと思うよ」


 確かにショコラティエの仕事を始めてからは、いつもクローズキッチンに引き籠り、ほとんど人と接しないまま、ひたすらチョコを作る作業に没頭してるし、戦わずして勝ったって感じだな。


「徹底して戦わないのも1つの戦法だよね。私はそれで婚活が死んだけど」

「柚子はまだこれからだろ。仮に柚子がこれから先も全然相手ができないなら、それは周囲の連中に人を見る目がないか、高嶺の花だと思われてるだけだ」

「そうそう。ある意味最高に独り身を楽しめる環境にいるんだから、もっと楽しんで生きたら?」

「璃子は出かける度にいつも声かけられるもんな」

「羨ましい……」


 柚子が羨望の眼差しで璃子を見つめている。だが璃子はモテることを良しとしていない。


 声をかけられれば当たり前のように愛想よく振る舞えるが、それがかえって相手の気を良くしてしまうためか、余計に声をかけられるのが璃子を苦しめている要因だ。


 断ることが悪いことだと義務教育で教わっている影響だろう。それに今でも嫌われることを恐れている過剰な恐怖心が璃子を僕以上の引き籠りへと至らしめた。


「私は人に声をかけられるのが億劫だから今の仕事を選んだの」

「その割に毎年グラビア写真集とか出してるじゃん」

「チョコを通信販売するための宣伝だってお兄ちゃんが言うから」

「良い宣伝になっただろ。売るためにはまず存在を知ってもらわないと」

「やり方が邪道すぎない?」


 ジト目で僕を見つめながら柚子が言った。ここに柚子の敗因が見て取れる。


「邪道だろうが何だろうが売れたら勝ちだ。柚子は何でもかんでも正々堂々とやろうとするから倒産したわけだし、もっと狡猾に図太く生きないと」

「毎日ボコボコにされて帰宅してた人に言われたくないんだけど」

「相手が悪すぎただけだ」


 僕は璃子とは対照的に、毎日のように暴行を受けて帰宅していた。


 璃子はそんな僕から話を聞き、どうすればいじめを回避できるのかを研究していたんだとか。


 ショコラティエになったのも、人と関わらずに好きなものを作る作業に没頭できるのが最終的な決め手になったあたり、人づき合いが心底嫌いであることが見て取れる。璃子が学生生活で一度もいじめを受けなかったのは、人知れず見えない努力をしていたからだ。璃子だけじゃない。この国にはそうやって自分に蓋をしながら生きてきた人たちが山のようにいるんだろう。


「あず君はロースターの大会には出ないのか?」


 酔っ払い気味の親父から意外な言葉が飛び出した。


 ジャパンコーヒーロースティングチャンピオンシップ、略してJCRC(ジェイクロック)と呼ばれるバリスタ競技会のことだろう。コーヒー焙煎機の焙煎技術を競う大会で、バリスタの大会というよりはロースターの大会という意味合いが強く、他のバリスタ競技会に集中したかったこともあり、今までは出場を見送ってきた。優勝すればワールドコーヒーロースティングチャンピオンシップ、略してWCRC(ワックロック)の日本代表として出場する権利を得る。


 今年に関して言えば、まだどの大会に出場するかも決めていない。


「予定なんて決めてねえよ」

「じゃあ俺と一緒に出るか?」

「親父と?」

「焙煎技術なら、あず君にも負けない自信があるぞ。先代から直に教わったからな」

「……別にいいけど」


 二つ返事で引き受けた。真理愛が教えてくれたコーヒーカクテルが美味かったせいかな。


 他にやることないし、しばらくは親父の幻想につき合ってやるか。酔いが醒めた後でも本気ならな。


 それにしても、親父が大会に出るなんて珍しいな。今までは出場すること自体なかったのに。一体どういう風の吹き回しなんだか。それに大会に出たことのない親父に洗礼を浴びせたかったのも二つ返事をした理由だ。他に出場するバリスタがいないことを確認したら登録するか。


 登録は4月から始まり、予選は6月からだ。予選を勝ち抜いた6人が8月の決勝へと駒を進める。


 いつもと同じようで全然違う。何故なら今回はどれだけ美味いコーヒーを淹れるかじゃなく、どれだけうまくコーヒー豆を焙煎できるかの勝負だからだ。


 焙煎度は全部で8段階に分かれ、一般的に浅く炒ったものほど酸味が強く、深く炒るほど苦みを強く感じる。生豆に含まれている様々な成分が焙煎時に化学変化を起こし、酸味や苦味が生成されていることを示している。この変化がコーヒーの色、味、香りに大きな影響を与え、独特の風味をもたらす。


『ライトロースト』はうっすらと焦げ目がついている状態で、黄色がかった小麦色。文字通り軽く浅炒りしただけで、香りやコクはまだ不十分だ。


『シナモンロースト』は文字通りシナモン色であることからこの名がついた。ごく浅い炒り方で、まだ青臭くて、飲用には適さない状態である。


『ミディアムロースト』は茶褐色。アメリカンタイプの軽い味わい。ゲイシャの豆にも多く採用されている焙煎度で、苦味よりも酸味が強いのだ。


『ハイロースト』はミディアムよりやや深い炒り方。喫茶店や家庭で飲まれるレギュラーコーヒーに限って言えば、この段階のものが多いとされている。


『シティロースト』は最も標準的な炒り方。鮮やかなコーヒーブラウン。これも喫茶店や家庭で味わうことが多い深さ。エスプレッソ用としても用いられる。


『フルシティロースト』はダークブラウンの色だ。アイスコーヒー用の豆を炒る時はこの段階まで熱を加える。炭焼コーヒーもこのタイプが多い。シティと同様、エスプレッソにも用いられる。


『フレンチロースト』は強い苦味と独特の香りが楽しめる癖の強さがある。カフェオレやウィンナーコーヒーなどのヨーロピアンスタイルのアレンジメニュー向きである。


『イタリアンロースト』は黒に近い状態の色。強い苦味と濃厚な味わいだ。最も深い炒り方で、かつてはエスプレッソ、カプチーノなどに使用されることが多かった。


 一応全部作れるけど、基本的にはミディアムからフルシティまでしか作らない。


 楽しみではあるけど、一体どんな大会になることやら。


「それで親子で出ることになったんですね」


 今年最初の営業が始まり、休憩中に声をかけてきた伊織と話していた。


 どうやら初めての親子対決に興味を持ったらしい。


「まあな。もしどっちかが優勝して日本代表になったら、負けた方が勝った方のサポーターになるっていう約束で、JCRC(ジェイクロック)に参加するってわけだ」

「あず君がサポーターとして参加するところが想像できないんですけど」

「親父を甘く見ない方がいいぞ。おじいちゃんの教えを直に受けてるからな」

「あず君のおじいちゃんって、そんなに凄い人なんですか?」

「凄いも何も、世界で初めて発売された缶コーヒーの開発に関わったり、うちの地元にコーヒーを広めるきっかけを作ったりしてる。しかも実家の真向かいにある金華珈琲の創業者で、コーヒーに対する類稀な知識や技術を持っていて、もしバリスタ競技会があと30年早く開催されていたら、間違いなく伝説になっていただろうな。それくらいの大物だ」

「何だかあず君みたいです」


 あず君みたい……か。最近よく聞く言葉だ。昔だったら、むしろ僕の方がおじいちゃんに似ていると言われる側だった。今となっては僕の方が最たる比較対象か。


 でも未だにおじいちゃんを超えた気がしないんだよなー。


 どこかにおじいちゃんを超えたかどうかを確認する方法があればいいけど。


 ――ん? そういえば、親父はおじいちゃんの知識や技術を受け継いでいたんだよな?


 そうだ……親父だ。親父を超えればいいんだ。親父はコーヒーの知識や技術のコピーにおいては誰よりも優れている。だが親父はサラリーマン思考なのか、僕のように新しい発想でコーヒーを創造することもないし、おじいちゃんのように知見を広げることもなかった。


 優れた能力を持ちながら、あまり活躍せずにいたのはそのためだ。


 能力のコピーだけで稼げる時代は終わっている。親父の焙煎技術はおじいちゃん譲りだ。もし親父がおじいちゃんの焙煎技術を完璧にコピーしているとしたら、ある意味では歴代最強の敵になる。


 これはおじいちゃんが僕に与えた試練かもしれん。


「伊織は今年どうすんの?」

「私はJHDC(ジェイハドック)JBrC(ジェイブルク)に出ます」

「その2つの大会って、どう違うんですか?」


 今度は真理愛が尋ねた。彼女は今年のバリスタオリンピック選考会に出場する予定だ。


 しかも国内にライバルがいないという最適な状況下での参戦だ。穂岐山珈琲には有力なバリスタがいない状況だし、順当にいけば代表になれるだろう。


JHDC(ジェイハドック)はペーパードリップ限定で、コーヒーも大会指定でみんなと同じ豆を使うのに対して、JBrC(ジェイブルク)は抽出器具も豆も全部自分で決められるんです」

「つまり、JHDC(ジェイハドック)は基礎が問われて、JBrC(ジェイブルク)は基礎に加えて自由な発想が問われるわけですね」

「はい。発想が求められる分、こっちの方が難度が高いんですけど、頑張ります」

「応援してますね。伊織ちゃんなら、本当に偉業を達成しそうですね」


 真理愛が言う偉業とは、女性初のパリスタオリンピックチャンピオンのことである。かれこれ30年の間に7回も開催してきた歴史を持っているわけだが、女性チャンピオンはまだ1人も現れていない。


 女性初のチャンピオンか……誰になるんだろうな。


「次のバリスタオリンピックって、ウィーンでの開催なんですよね?」

「そうですね。結構遠い場所になっちゃいましたけど」


 落ち込み気味の顔で真理愛が言うのも無理はない。あれだけの体力の消耗が要求される大会だ。僕はもう出たいとは思わないというか、東京大会だけで腹いっぱいだ。たった1週間の出来事だったのに、何だかあの期間だけで1年分くらいの時期を過ごしたような疲労を感じた。


 色んな人から連覇しないのかと何度も聞かれたが、大会連覇はアスリートの発想だ。


 彼らは何度も大会に出続けなければ飯を食えないし、アスリートは生涯現役でやっていけるような仕事ではないため、若い内に一生分稼ぐ必要がある。しかも1つのスポーツに対応する世界大会の種類が少ないため、必然的に同じ大会に出続けることになるわけだ。


 バリスタやショコラティエはアスリートではなくアルチザンである。


 彼らは自分の店があるため、売れてさえいれば、そもそも大会に出ずとも飯を食っていけるし、体さえ動けば生涯現役も可能である。世界大会に関して言えば、一度でも優勝して注目を浴びれば、店を閉めない限り、観光客を確保できるため、連覇という発想自体が薄いのだ。つまりアスリートにとっての大会出場は生活のためであり、アルチザンの大会出場は店舗宣伝のためである。


「だからあず君は連覇を目指さないんですね」

「元々は店を宣伝するために出続けていたわけだし、既に知名度が飽和している状態で同じ大会に出続ける意味が薄いってわけだ」

「パリスタ競技会が何種類もあるから出続けるっていうのは分かりますけど、今のあず君なら、出なくても食べていけますよね?」

「バリスタオリンピック以降に出ている大会は暇潰しってとこだ。やっぱ新しいことに挑戦し続けたいっていうのがあるから、バリスタ競技会の種類の多さは僕と相性が良いのかもな」


 まっ、僕の場合は暇潰しにも命懸けだから、結局一緒なんだけどな。


 ゲームくらいで本気を出すなんてあほらしいと思う人もいるだろう。


 だが暇潰しに本気を出せない人が、人生の分岐点となる大事なところで本気を出せるとは思えないんだよなー。暇潰しに本気を出せる人は本気の出し方を知っているし、本気の出し惜しみをしない。だからこそ必然的に人生の分岐点でも踏ん張ることができる。


 力こそが人生を成功させる秘訣であり、没頭こそが力を蓄える行動なのだ。


 早くもこの年の目標が決まった。うちには大型の焙煎機があり、焙煎をする時はいつも熱風式焙煎機を使っている。伊織も焙煎は習得済みだ。焙煎されていくコーヒーの香りを苦痛なく継続的に楽しむことができるためか、ビデオゲームのやり方をすぐに習得する子供のようにできるようになった。


 僕が習得するよりも速いスピードだった。やはり伊織はコーヒーに愛されている。


「そっか、やっと本音が言えたんだね」

「何だかテストの後みたいに安心しました」


 クローズキッチンから璃子と優子の会話が聞こえてくる。


 優子は璃子の本音を知っていたらしい。璃子がショコラティエ修業を辛抱強く続けることができたのはショコラティエになれば人づき合いからおさらばできるという、ある種の希望を持っていたからだ。


「修業期間中とか、いっつも声かけられてたもんね」

「あれは苦痛でした。常連さんが年の近い男子を紹介した時はどうなるかと思いました」

「一昔前は誰かに嫁ぐのが正解だったもんね。人づき合いに苦痛を感じる璃子ちゃんにとってみれば、結婚なんて地獄そのものだし」

「そうですね。親戚づき合いとか、ホント勘弁してほしいですよ」


 璃子って……優子と2人の時はこんな会話をしていたのか。


 優子は対照的に接客好きだけど、妙に気が合うんだよなー。


「そんな璃子にも彼氏ができたなんて意外だなー。好きな人と巡り会って一緒に居続けるって、本当に素敵だと思う。離婚が増え続けている今の時代を思えば尚更ね」

「優子さんだって、お兄ちゃんと実質結婚しているようなものじゃないですか」

「……でも最近のあず君は伊織ちゃんに夢中みたい」

「ふふっ、昔の自分と重ねてるんでしょうね」


 いつもはクローズキッチンにいるのに、ちゃんと表の事情もお見通しなんだな。

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