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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第8章 バリスタ社長編
199/500

199杯目「身内の披露宴」

 大輔の敗因は明らかだった。理由は至って簡単だ。


 1番うまくいかないタイミングで労働者デビューして、動かないと死ぬのに動くことをリスクと思って動かないという最悪の行動を選択してきた。


 何なら大輔とは真逆の生き方をした方がうまくいくまである。


「大輔、これからは自分から変わっていかないと生きていけない。大輔が子供の頃はインターネットがなかったから、営業できる奴が1番強かったけど、今はインターネットを使いこなせる奴が1番強い。今更だけど、この施設を借りたのは間違いだった気がする」

「そうでもないぞ。広告部宛に物が届くこともあるからな」

「それならいいけど、ここは他の部署と違って、ほとんどパソコンだけで完結する部署だから、面倒な時は自宅で作業してもいいからな」

「そりゃ助かるな」


 在宅勤務はサボりが問題視されることがあるものの、期限までに仕事を完了させてくれれば残りの時間はどう使ってくれようと構わない。通勤にかかるコストの方がずっと重いのが分からないんだろう。満員電車に乗るだけで、体力も気力も時間もごっそり持っていかれるってのに。


 蓮と隼人はすぐ理解してくれた。むしろ僕ぐらいの世代でこれが分からないのはやばい。


「蓮、ちょっといいか?」

「お、おう」


 蓮を連れて1階まで移動する。璃子がつき合ってもいいと思える相手だ。璃子のためにもここはどんな男かを見極める必要がある。今のところは好青年という印象だ。長身で整った顔に額が見えないくらいのショートヘアーで仕事もできるようだ。仕事をしながらプロゲーマーを目指していると聞いたが、個人的にはどっちも続けてもらいたいと思っている。今は1つの仕事だけで完結する時代ではない。


 1つでも多くの技能を持つことで、差別化を図ることを要求される社会だ。


 1階へと下りると、蓮は休憩室に置かれている自販機で缶コーヒーを購入する。


 ボタンを押してからガコンと音が鳴ると、落ちて来た缶コーヒーを拾い上げた。すぐに開け口をプシュッと鳴らし、中身の液体を口に含み、一息吐いた。


「そういえばさ、璃子とはうまくいってるのか?」

「ああ。俺としてはすぐにでも結婚したいと思ってるけど、1つ気掛かりなことがあるんだよ」

「名字の問題だろ?」

「よく知ってるな!」


 蓮が呆気に取られた顔でこっちを向いた。だから時代に合わない制度は嫌いなんだ。


 過去の遺産を全員に押しつけるのが当たり前な風潮も全部クソくらえだ。


「璃子のことは何でもお見通しだ。僕は結婚制度自体反対だけど、他の人が結婚する分には問題ない。でも璃子が名字を変えたくない気持ちは凄く分かる」

「今の日本は名字を変えないと結婚できないからな」

「この国は個性ばかりか、時代の変化すら認めようとしない。でもあいつが名字を変えたくないって最初に言った時は意外だと思った」

「璃子は無類のお兄ちゃん好きだからな。影響された部分もあると思うぞ」

「同棲はしないの?」

「今はあず君から離れたくないらしい」

「璃子らしいな」


 僕だけが璃子に依存してるかと思いきや、璃子もしっかり僕に依存していたようだ。


 独立させたいと思う一方で、僕と一緒に住み続けるように誘導していた部分もある。経済的にはもう自立しているし、自分のショコラトリーでも開こうものなら確実に売れるはずだ。


 なのにそれをしないのは、僕に依存しているだけじゃない。


 璃子の師匠でもある優子に対しても強い依存を持っている。出て行ってほしいわけじゃないが、蓮と一緒に生きていくなら、いずれにせよ僕から独立してもらわないとな。


「俺は事実婚でもいいけど、うちの親が反対するんだよ。相手に名字を変えてもらいなさいの一点張りだから困る。璃子は璃子で女の名字が軽んじられてるみたいだって言うし」

「君は親の許可がないと動けないのか?」

「今後のこともあるからな。事実婚でも親戚とのつき合いがあるだろ」

「別に親戚の集会なんて参加しなくていいじゃん。ああいうのは身内限定の飲み会みたいなもんだし」

「あず君は凄いけど、時々残酷に見えるんだよな」

「――璃子とつき合っていくなら、幸せにしてやってくれ」

「分かってる。今思うと、小1の時に出会ってから、ずっと璃子が好きだ。滅茶苦茶可愛くて、男女問わず人気もあった。だから俺には勿体ないくらいだと思ってたけど、この機会を逃したら、もう璃子みたいな人とは二度と出会えないと思ってる」

「……そうか。なら良かった」


 璃子が良心的なパートナーを持ったことを確認し、広告部の施設を後にする。


 まあ、璃子は身内補正を抜きにしてもめっちゃ可愛いからな。ルックスも良いし、スレンダー巨乳で子供のような体形、大人しくて心優しい性格、そりゃ守ってあげたくなるよなぁ。あれでも僕よりずっと力が強くて頭も良いんだけどな。ショコラティエは力仕事も多いし、仕事をするようになってからはその力強さに拍車が掛かってるくらいだし、コーヒー豆の入った麻袋を軽々と持ち上げた時は驚いた。だが同時に自分が条件の良い女であることを最大限に利用してきた策略家でもある。


 学生時代に一度もいじめを受けなかったくらいだし、僕が盛大にやらかした直後に学校から撤退するあたり、世渡りをする能力は相当なものだ。むしろ条件が良すぎて、釣り合う相手を探すのが困難だとすら思ってたけど、蓮ならきっと大丈夫だろう。あの2人はどこか似ている。


「キャッシュレスには慣れたか?」

「お陰様でな」


 葉月ローストにも赴いていた。休み時間に親父と2人きりで積もる話をした。


 これで回るべき場所は全部回った。問題はないようだが、いきなり現金禁止になった時はパニックになったらしい。葉月ローストの常連は親父やお袋と仲の良い人が多く、現金払いが当たり前の世代だ。だが以外にも、葉月珈琲に通い続けるためにカードを使う人が増えてきたらしい。


 結果的に現金禁止が大きな変化をもたらした。


「でも現金を使ってた時よりもずっと楽になったなー。いちいち計算するの面倒だったし」


 お袋が座っている僕の後ろから笑顔で話しかけてくる。


 どうやらお袋は現金禁止に賛成だったようだ。こういうところはちゃっかりしてんなー。


 うちは僕が社長ということもあって変化の激しい会社だ。来年にはどんな方針を採用しているか分からない。カードすら必要のない時代になったら、真っ先に次世代ツールを導入したい。


 親父にもそろそろ慣れてほしいものだ。


「これくらいは当然だ。在宅勤務なんだし、もっと楽することを考えりゃいいのに」

「お父さんは人と接してる方が元気が出るの。だからあんまり人を介さないような機械の仕事はやりたがらないの。親子なのに何でこうも真反対になっちゃったのかなー」

「知るか。とにかく、今時昭和みたいな生き方したら詰むぞ」


 ここだけは譲っちゃいけない。爆撃機や戦車で戦う時代に素手で戦うようなものだ。


 ――この様子だと、脱近代への道はまだ遠いな。


 これで全部回ったはいいけど、定期的に回らないと、また昭和に戻りそうで怖い。身内で固めるのはいいが、肝心の身内が時代遅れだと先が思いやられる。


 ヘトヘトになり、ようやく帰宅する。平日に外に出ることはなかなかないけど、たまにはこういう日もありかもしれない。運動にもなるし。帰ってすぐに夕食にありついた。僕が帰宅する時間を読んでいたようだ。いつも6時くらいに帰宅するのだが、6時以降に開く店にはなかなか行けない。


 唯は大会に出る一方で育児にも力を入れている。そんな忙しい姿を見ると、子供の遊び相手をしたくなってくる。どちらかと言えば、僕の遊びに子供を巻き込むと言った方が正確な表現だが。


「そりゃ仕方ないですよ。当時は人と直接会って、現金でやり取りするのが当たり前でしたし、ずっと同じ環境にいると、他のやり方を受け付けにくくなりますからねー」

「良くも悪くも適応力が働いた結果だな」

「お兄ちゃんだって今日からバリスタ以外の仕事をやれ言われたらできないでしょ。それと同じ。変化の時代に適応したいのは分かるけど、急に変わるなんて無理だと思った方がいいよ」

「そうそう。急がば回れって言うでしょ。新しいことを受け入れるのって難しいんだよ」

「……」


 男1人に女3人で反論されると、何故か切り返しにくい。


 間違ったことを言ってるわけでもないし、ここは引き下がるか。


 やはり必要に迫られなければ人は変われないのか。うちだけでも先進的な会社でありたい。どうしてかと言われれば、時代遅れはダサいという価値観が僕を支配しているからだ。唯たちは無理に変わらなくてもいい姿勢だが、僕が急ぎすぎているだけなんだろうか。


「ゆっくり確実に進歩していけばいいんですよ」


 唯が笑顔を浮かべながら擦り寄ってくる。天の川のように綺麗でサラサラとしていて、良い香りがする明るい茶髪のロングヘアー、スベスベした美白の肌が僕の性欲を掻き立てる。いかん、この頃ずっと唯に興奮しっぱなしだ。元気があるんだかないんだかよく分からん。


「――しばらくは様子を見るか」


 3人共安心したような微笑みを見せた。僕らの隣では2人の子供がスヤスヤと眠っている。自分の子供ってこんなに可愛いんだな。一緒にいるだけで安心を感じられる。性別とか関係なく、両方共白を基調としたベビー服を着せているし、テレビも見せないようにしている。というかテレビ自体ない。


 テレビは普通という概念を押しつける箱だ。これでもかというほど固定観念を植えつけようとしてくるから厄介だ。テレビがきっかけで差別主義者になった人も少なくない。あんなものを見せるくらいなら僕のチャンネルを見せている方がずっと健全とさえ思っている。


 そんなことを考えながら、僕らは充実した日々を過ごしていくのだった――。


 11月上旬、親戚内に変化が現れた。吉樹と美羽が結婚したのだ。


 結婚式は岐阜市内のホテル内で盛大に行われた。なし婚を勧めたが、聞く耳は持たなかった。結婚式を省くだけでかなりの経費が浮くというのに。こんなことを考えてしまうあたり、やはり僕に結婚は向いてないのかもしれん。2人はみんなからお祝いの言葉を貰い、美羽は晴れて楠木家の一員となった。


 僕にとって美羽は義理のいとことなった。何度か一緒に寝たこともあるし、10年も前からのつき合いだし、全く違和感はない。それぞれ26歳と29歳でゴールインか。結婚を目的としているなら正しい判断だ。30歳を過ぎれば一気にハードルが上がる。でも美羽には関係ないだろう。


 披露宴は日曜日の正午から数時間程度行われ、2次会は葉月珈琲で行われることが決定している。


 葉月家や楠木家の親戚はもちろんのこと、穂岐山家や穂岐山珈琲の面々まで出席している。


 穂岐山珈琲を辞めた松野までもが顔を連ねていた。


「美羽も遂に結婚か。年を取るのはあっという間だな」

「……若い時は短いからな」

「しばらく見ない内に事業規模がでかくなったな」

「地方にうちの変わった店を出していくのが当面の目標だ。松野は何してるの?」

「俺は穂岐山珈琲を辞めてから独立してバリスタトレーナーをやってる。コーヒー会社から依頼を受けてバリスタの育成をしたり、カフェの監修を担当したりしてる」

「大手の看板がなくなっても仕事にありつけたんだな」

「穂岐山珈琲の看板がなくても、俺にはバリスタオリンピック元日本代表という看板があるからな」

「チャンピオンだったら、もっと依頼が殺到してたかもな」

「それを言うなよ」


 松野が呆れ笑いをしながら言った。いつからこんな冗談を言える仲になったんだっけ?


 彼はバリスタトレーナーとして、今年からずっとバリスタ競技会に出場するバリスタたちのコーチを務めている。自分にはバリスタとしての才能はないと悟ったらしい。


 自分よりも才能に溢れたバリスタの卵たちに自分が成し得なかった希望を託しているのだ。僕が伊織に次世代トップバリスタとしての希望を託しているように。


「聞いたぞ。伊織ちゃんが僅か16歳でJHDC(ジェイハドック)ファイナリストになったってな」

「次は優勝させてみせる。国内予選規模の大会で負けているようじゃ、僕には程遠いからな」

「言ってくれる。来年はうちからもJHDC(ジェイハドック)に教え子が出る。ライバルになるな」

「まさか君との代理戦争になるとは思わなかったな」


 つまり、来年からはバリスタとして鎬を削り合った松野とコーチという立場を通して、また対決することになるってわけだ。特に16歳での史上最年少出場には関心を寄せていた。


 ほとんどは20代を過ぎてからデビューする人が多い中、伊織は15歳でのデビューだ。20代を迎える頃には5年のキャリアが積まれているわけだ。どの業界においても、20代を迎えた時点での経験の差が勝負を決めることが多いため、若い内の経験は本当に宝である。


 少なくとも、16年もの歳月を溝に捨ててきたような連中には負ける気がしない。


「俺にも自慢の弟子がいるんだ。対決する日が楽しみだな」

「伊織に勝つなら今の内と伝えておけ。今の伊織は蛹だけど、羽化して成熟しきったら、もう僕でも勝てるか怪しい。リミットはあと3年ってとこだな」

「リミットを過ぎたら、お前みたいに無双するようになるってか」

「伊織は10年前の僕によく似てる。僕みたいに口に出すことはなくても、心底では今持っているエネルギーをコーヒーに全部ぶつけたがってる。それこそ、好きなことに没頭するオタクみたいにな」

「それはこっちも同じだ。今度紹介するよ」


 松野が言うと、スタスタと去っていった。入れ替わるように、吉樹と美羽の2人が歩み寄ってくる。


 いつにもなくラブラブだ。日に日に仲良し度が上がっている感じがする。今じゃすっかり同級生のように話してるし、なかなかお似合いの夫婦だ。


「あず君、今日は来てくれてありがとっ!」


 美羽がいきなり僕に抱きついてくる。


 ――うわっ! いきなり浮気は良くないぞ!


 だが吉樹は当たり前の光景としてそれを見守っている。おいおい、勘弁してくれよ。公衆の面前でこれは恥ずかしい。結構色んな女からもふもふと触られることが多いけど、僕はマスコット人形じゃないんだぞ。そんなに抱きつきたくなる外見なのか?


「美羽さん、あず君が困ってるので、やめてもらえますか?」


 唯が呆れ顔で僕と美羽を引き離すと、いつものように僕の左腕に両手で抱きついた。


 同時にダブルメロンの柔らかい感触まで伝わってくる。


「えぇ~、ケチ」

「抱きつく相手間違ってませんか?」

「吉樹にはいつも抱かせてもらってるよ。でもあず君のもふり具合と良い香りは、そこらの抱き枕とは比べ物にならないんだからねー」

「何ですか……もふり具合って……あず君は抱き枕じゃないです。というかそうであっても私専用です」

「ズルい~」


 僕に拒否権はないのね……と心の中で呟いてみる。


 もちろん、みんな茶番なのは分かっている。そこにもう1人、水を差すように近づいてくる。


 久しぶりに見る柚子の姿は、洗練されたお姉さんのような感じだ。披露宴用に着用した皺1つない高そうなスーツが柚子の礼儀正しさや育ちの良さを表しているようだった。


 スーツが嫌だから着物でやってきた。これを着るのは久しぶりだ。


 今僕が着ているピンクを基調とした着物は中津川珈琲から提供されたものだ。中津川珈琲との業務提携が終わった後も正装を着る必要がある時はこれを着ている。


 無論、これは女性用に作られた着物だ。背中まで伸びている自慢のサラサラなロングヘアーもあって何度も女と間違われた。美羽が僕に抱きついた時も、誰も違和感を持たなかったし。女同士がいちゃついているようにしか見えない。果たして、僕は何歳まで女と間違われ続けるのだろうか。


「一瞬璃子ちゃんだと思ったけど、あず君だったんだー」

「あー、今日はどっちもポニテだからか」


 璃子がいつもポニテなのは訳がある。僕と違う髪型にしないと見分けがつかないのだ。


 声や性格で見分けることもできるが、何もしないとそっくりな姉妹に見えてしまう。よくお袋が僕ら2人を連れて買い物に行った時、姉妹と勘違いされてはお袋が訂正し、そのたんびに髪を切れとよく言われたものだ。そこで屈するような人間になっていたら、どんな人生になっていたんだろうか。


「どうしたの?」

「僕がもし髪を切ってたらさ、飯を食えない大人になって、自分が活躍できないのを親とか学校のせいにしながらニートやってたのかなって」

「ふふっ、その時はあたしが養ってあげる」

「養ってくれるの?」

「別にいいけど、女に養われることに抵抗ないの?」

「むしろ養ってほしい」


 思ったことがそのまま口から出た。稼ぐ力がなかったらヒモになってたかも。でもそうなったらそうなったで楽しそうだ。生放送してるだけで、投げ銭をポイポイ投げられることはなかっただろうけど、僕に投げ銭するくらいなら、いっそ飯を食えなさそうな連中に投げてほしいと心底思う。


 フォーカスされている人にばかりお金が集まるから格差が広がるのだ。


 格差はあってもいいけど、1番稼げてない人が食えないのは社会の怠慢だ。働かないと生きていけないことに疑問を持っていた僕だからこそ、こんな風に思えるんだろうか。


「結婚を申し込まれても養ってもらう?」

「それは嫌だ。結婚なんて、人生が重たくなるだけだ」

「披露宴でそんな空気を無視した言葉を吐くのは、世界広しと言えど、あず君だけだよ」

「したい奴だけすればいい。多分してもしなくても後悔するんだろうけど」

「ねえあず君、1つ相談があるんだけど」


 目の前に立っている柚子が少しばかり不安げな表情だ。


 披露宴会場の鮮やかで派手な色彩の絨毯を見ながら呟いた。まるで悲劇のヒロインのように。


 もしかして……また何かあったのか? 柚子はよく人生の迷子になる。吉樹との共通点である。皮肉なことに、自分より将来を心配されていた吉樹が先に結婚し、美羽にぶら下がる形で職を確保している。


 柚子はしっかり者で人気もあるのに、男が寄ってくる気配すらなかったのだ。


 高嶺の花と言ってしまえばそれまでだが、原因はそれだけではない気がする。柚子には背景には多くの謎が隠れている。僕でさえ知らない何かが……。


「どうかしたの?」

「一緒に来て……」

「……? どうしたの?」


 柚子は返事をしないまま、僕の手を握り、披露宴会場の扉から廊下に出た。


 ここには僕と柚子だけだ。少し遠くには披露宴会場のスタッフが何人か待機している。ここなら話せそうだけど、会場内でもめっちゃ話しかけられたんだよなー。もうバリスタやコーヒーファンですらない人まで僕を知っている。ほとんどはプロフィールだけしか知らないが……。


 みんな目をキラキラと輝かせながら質問の嵐だ。もう慣れたけど、今は柚子が心配だ。

気に入っていただければブクマや評価をお願いします。

読んでいただきありがとうございます。

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