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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第8章 バリスタ社長編
195/500

195杯目「遠征の真意」

 CGM(シージーエム)が始まり、多くの人々が集まってくる。


 予選から数多くの対戦が行われ、次々と勝敗がついていく。


 流石に1対1の勝負なだけあって白熱している。ゲーム大会に出ているかのような感覚だ。僕は今、バリスタという名のスポーツを真剣に戦っている。


「これが終わったら、Dブロックの試合ですね」

「そうだな。まあ、何とかなるだろ」

「どの課題が出ても対応できるように、練習して良かったですね」

「ああ、じゃあ行ってくる」


 控え室に赴き、自分の名前が呼ばれるまで待つことに。控え室には多くの参加者がリラックスしながら席に腰かけており、モニターで会場内の試合の様子を見守っている。


 空いている席に着き、Dブロックの試合が始まるのを待った。


「よう、アズサハヅキ、お前と同じグループか。よろしくな」


 席に座っていると、隣に短髪のラフな格好をした男が座ってくる。


「ああ、よろしく」

「俺はヘンリー・ライト。この大会は今年で3回目なんだ。今度こそ優勝を狙うぜ」

「優勝したら何かあるの?」

「あそこにトロフィーがあるだろ。あれを手に入れた者は人生を幸福に過ごすとされている。実力あるバリスタであることの証明にもなるし、やっぱ手に入れるしかないっしょ」


 説明されるままモニターに目をやると、地球儀をモチーフとした金銀銅のトロフィーが燦々と輝きを放ちながら置かれている。どうやら3位から表彰されるらしい。準決勝で負けた者同士は3位決定戦を行う。ここもCFL(シーエフエル)と一緒か。みんなあれを取ろうと必死になっているみたいだな。


 今にも奪おうとするくらいの勢いで、試合開始と共にコーヒーを淹れていく。


「アズサ、初めまして。あたしはケリー・ロビンソン。よろしくね」


 今度は上品そうな長髪の女性が僕の隣に座る。僕と同様に髪は後ろにまとめている。


「ああ、よろしく」

「凄く可愛い格好だね。その服どこで買ったの?」

「手作りだ。どこにも売っていない、世界でただ1着の制服だ」

「素敵。制服まで自分で作ってるなんて、アズサって結構多才だね」

「全部自分でやらないと気が済まない性分でね。気がついたら全部自分で作ってた」

「じゃあバリスタオリンピックの時のステージ設計もアズサが全部やったの?」

「もちろん。大変だったけど、結構楽しめたよ」


 ケリーは呆気に取られたまま固まってしまった。


 今思うと、誰かにやってもらおうなんていう気持ちが全然なかったな。


 苦手なことは全部放棄するか他人任せだが、できることは全部自分でやってきた。というか自分でやるしかなかった。あの極限とも言える環境が自分を強くしたのだと思うと、苦労なしでは大人になれないことが分かる。だが苦労ばかりでは萎んでしまうのも事実だ。


 どれくらいが丁度良い塩梅なんだろうか。それが気になって仕方がない。


「それでは次の参加者に来ていただきましょう。恐らく皆さんが最も楽しみにしているであろうバリスタです。Dブロックからエントリーのアズサハヅキだー!」


 司会者が意気揚々と僕を紹介すると、会場が一気に盛り上がった。


 さっきのタクシー運転手の件もそうだが、有名になりすぎて自己紹介をせずに済んでいる。最後に自己紹介をしたのっていつ頃だったかな。もうすっかり忘れてしまった。


 自己紹介の手間が省けるのは有名人の専売特許だ。居座るだけで人が集まり、集客効果も高い。それが結果的に売れる店という形で表れている。飯を食える大人を目指すなら、有名になって影響力を持つのも1つの手だ。いよいよ試合が始まる。僕の前でコーヒーの種類が書かれた大会専用のルーレットが回され、ボールが転がされていく。種類が確定した瞬間、司会者が笛を吹いて試合開始となる。


 ルーレットがようやく止まると、ボールが落ちた位置にアイリッシュコーヒーと書かれていた。司会者が笛を吹くと同時に僕の予選が始まった。会場のキッチンには、課題となるコーヒーに必要な全ての食材が揃っている。コーヒーと牛乳は1種類に統一されているが、酒類や砂糖類は種類が豊富だ。なるほど、差別化を図るポイントはここにあるわけか。どんな食材を使ったかはお互いに分かるようだ。


 コーヒーは全てブラジル産のインスタントコーヒー、牛乳はイギリス産のものが使われている。


 これらは味見をしたことですぐに分かった。


 最適解を見つけるのは簡単だ。量産型のコーヒーにも相性というものがある。僕はすぐに最良の食材を探し当てた。対戦相手はグラニュー糖を使ったが、僕はきび砂糖で勝負に出た。苦みの強いコーヒーであるため、砂糖類はより濃厚でクセの強い甘さのあるものがお勧めと感じた。


「さあ、両者共にアイリッシュコーヒーを仕上げていく。アズサは分量を正確に測りながらも、まるで精密機械のようにコーヒーを淹れています」


 分量を勘で投入する人が多いけど、個人的にはお勧めしない。


 せっかくコーヒーが合わせる食材の最適な分量を教えてくれているのに、それを無視して大体こんなもんだろと思って投入したら、彼女の機嫌を損ねてしまう。分量は正確に。多すぎても少なすぎても、彼女の個性を殺してしまう。僕にとってさっきの味見は彼女からのヒントだ。


「ジャッジの皆さんの判定が終わったので、結果発表といきましょう。ではジャッジの皆さん、優勢と思った方のフラッグを上げてください」


 3人のセンサリージャッジが同時にフラッグを上げた。


 左側の参加者が赤色のフラッグ、右側の参加者が青色のフラッグだ。さながらプロレスの赤コーナーと青コーナーを彷彿とさせる。これはコーヒーを用いた殴り合いだ。この鎬を削る感じがたまらねえ。


 3人共赤色のフラッグを上げている。僕の勝ちだ。


 センサリージャッジは参加者の名前を伏せた状態でジャッジを行う。つまり彼らにはどちらが作ったコーヒーであるかを判別できないのだ。判別できるのはただ1つ、コーヒーの美味さだけだ。どれほどコーヒーの個性を活かしているかが明暗を分ける。


 ここまで公正さを重視しているなら、負けても文句は言えないな。


 とりあえずこれで1勝0敗か。負けられない。いや、負けたくない。彼女を射止められるのは僕しかいないと思っている。コーヒーは僕に微笑むためにある。それほどにまで相思相愛の存在なのだ。


 その後、僕は次々と対戦を繰り返していく。


 気づいてみれば、9勝0敗で決勝トーナメント進出が確定していた。80人いた参加者も決勝トーナメントが始まればたったの16人だ。午後5時までは自由行動だが、気を引き締めて臨みたい。


 当日知った話だが、この大会はダブルエリミネーションルールであり、2回負けた時点で強制ドロップとなるため、対戦回数はそれほど多くはなかった。既に強制ドロップが決まっている人と当たる場合は不戦勝となる。ずっと拘束し続ける意味がない確定敗者をすぐに開放できる点、大会の進行をスムーズに行える点、この2点の理由により、大会創成期から導入されているのだ。


 会場内の飲食ブースでのんびりしていると、コーヒーを持った伊織が現れた。僕は参加者として会場のステージ上にいたため、伊織とはここまでずっと離れ離れだ。3時間くらいまともに顔を合わせていなかったが、伊織は他のブースを回り、僕が試合中の時だけモニターと睨めっこをしていたらしい。


 予選が終わり、みんなホッと一息吐いている様子だ。


 どうりでさっきよりも会場内の緊張が緩和されているわけだ。


 残念ながら予選敗退となった者たちは観客席から生き残った者たちを応援することとなる。自分が負けたら生き残った身内や同僚を応援する。ここではみんなバリスタという共通の仕事を持った仲間だ。バリスタオリンピックのように自分以外は全員ライバルという雰囲気ではない。


 真剣に1番を目指す気持ちと、大会を楽しむ気持ちがここまで一体化しているのは珍しい。


 バリスタ競技会はその数だけ色があり、人の口からはなかなか聞くことのできない数多くのドラマがあることを僕は知っている。知っているつもりなのに何度出ても新たな発見があるからやめられない。


「圧倒的でしたね」

「伊織が練習メニューを作ってくれたお陰だ」


 伊織の小さな体を抱き寄せた。夏らしいふんわりとした服装の伊織から花のような香りがする。まるでコーヒーを擬人化したかのような可愛らしさだ。


「役に立てて良かったです」

「伊織ってさ、この1年でだいぶ変わったよな」

「そうですか?」

「昔の伊織だったら、ここまでしようとは思わなかっただろ」

「――みんな自主的に行動する人ばかりで、今までずっと誰かに言われたことを忠実にこなすだけの人間になってしまっていた自分に気づいたんです」


 周囲の言動は人間のおおよそのマインドを決定してしまう。伊織はその最たる例だ。あれだけ飯を食えない大人が多いのは、周囲の環境に溶け込もうとした結果であることを思い知らされる。結局、人生の半分以上を決めてしまうのは周囲なのだから、人のせいにするなという言葉は無責任だ。


 人生がうまくいっていない人は、同調圧力に負けた人だ。


 しかも負けやすいマインドを学校や家庭が作っているのだから厄介極まりない。まだ16歳の彼女をそんな気持ちにさせてしまう社会は、控えめに言って失格だと思う。


「このままじゃ駄目だってことに気づいたか」

「はい。なので私、誰かに言われてから動くのをやめて……自分から動くことにしたんです。それともう1つ報告があります」

「……報告?」

「私、今友達1人もいないんです」

「奇遇だな、僕もだ」


 伊織はこの年の4月に早くも同窓会へと呼ばれた。


 しかし、そこで彼女を待ち受けていたのは残酷な現実だった。ずっと友達だと思っていた元同級生たちと全く話が噛み合わないのだ。最近流行の服や芸能人の話題ばかりで話についていけない。あまりにも常識が違いすぎたのか、戸惑う伊織を前に、あいつら特有の悪い癖が発動してしまう。


 伊織はズレた人扱いされて誰からも話しかけられず、遂にいつも話していた友達からも陰口を叩かれる破目に。葉月珈琲に就職し、僕と一緒に働いていることは元同級生の誰もが知っていた。全くもって恐ろしいほど情報拡散が早い。既に稼いでいる身分であることから嫉妬を買ってしまい、伊織に対する包囲網を作られると、彼女はたまらず退散してしまった。これであいつらが世間の常識から大きくズレている連中と知った。伊織が同窓会に出ることは二度とないだろう。


 伊織はようやく気づいたのだ。友達なんて最初からいなかったことに。学生の異常さは外から見ることでしか知ることができない。そのことを身をもって思い知った。かつて自分が当たり前のように馴染んでいたあの異常な環境に恐怖したのだ。ぼっちとは自立した立派な人間である。だが学生はぼっちを認めようとはしない。あいつらにとってぼっちとは自立ではなく孤立だからだ。同調圧力に屈して不幸な人生を歩むくらいなら、いっそ友達なんて作らない方がいいのかもしれない。


 伊織に怖いものはなくなった。友達がいないことを知った伊織は世間の目を無視するようになった。友達というある種の呪いは一生あいつらを蝕み続けるだろう。ぼっちは決められた生き方や言動に従わなければ友達に嫌われるデメリットがないため、世のぼっちに主体性をもたらす結果に至った。


 友達という概念に対して嫌悪があるわけではない。無理なく友達ができるなら、それはそれで良いことだが、僕にはそれが世界征服よりも遥かに難しい作業に感じてしまうというだけである。


 きっと……伊織にとってもそうかもしれない。


「友達って、一体何だったんでしょうね」

「世間は友達を作らせることで相互監視がしたいんだ。僕にはそれがなかったから、やりたい放題やってこれたってわけだ。嫌いになるならどうぞって感じ」

「友達は目に見えない足枷なんですね」

「こういうことがあるから進学も就職もしたくなかったんだ。つき合う相手を選べないから問題が起きるのであって、今は嫌な奴とつるむ必要がないから本当に楽だ」

「あず君が日本人規制法を導入した理由が、ちょっと分かった気がします」

「病気でもないなら導入する必要はないけど、つき合う相手はちゃんと選べよ。僕みたいになるぞ」

「はい。私、必ずトップバリスタになって、世間を見返してやります」


 伊織は僕を宝石のような目で見つめると、強大な敵への宣戦布告を決意する。


 世間を見返すか……壮大なプロジェクトだな。一夜にして世間を見返すには10年かかるぞ。


 午後5時、決勝トーナメントが始まった。


 ここからは先に2勝した方が勝ちだ。できればストレート勝ちしてしまいたいところ。


 試合前にルーレットを3回ほど回し、出た順に課題を行っていく。3回目に出た課題はストレート勝ちが決まった場合は行われず、課題が被った場合はルーレットを回し直す。事前に課題が分かるため、どこを捨ててどこで勝負するかの駆け引きが発生する。当然だが、どのバリスタにも多少の得手不得手の差がある。カプチーノが得意な人もいれば、アイリッシュコーヒーが得意な人もいる。


 僕はどうかって? 全部得意に決まってんだろ。


 バリスタオリンピックチャンピオンとしての意地ってやつを見せてやらねえとな。


 ベスト16からあっという間に準決勝まで勝ち進んだ。


 準決勝の相手は僕と同様に9勝0敗で予選を突破し、決勝トーナメントでもストレート勝ちを決めてきた歴戦の猛者、ベネディクトだった。CFL(シーエフエル)の時も準決勝で当たったが、まさかこの大会でも準決勝で当たるとは、何かの運命を感じるな。


 考えはベネディクトも同じだった。この因縁の対決には思い入れがある。相手の方から喧嘩を売られる形となったが、今ではそれも良い思い出だ。僕が参加者控え室から出ようとすると、僕が鉄製の丸いドアノブに手をかけたところで、背後からベネディクトの声が僕の耳に届いた。


 後ろを見てみると、そこには見下すように僕を見つめているベネディクトが佇んでいる。


 長身で痩せこけたような体形に整った顔、相手を軽んじているかのような細い目が、かつての嫌みな連中を彷彿とさせる。僕と同じクラスだったら、確実にいじめられていただろうな。そんなことが想像できるくらいには相性が悪い。とてもバリスタとは思えないほど、対人関係もさっぱりだ。


 これはある種の自己嫌悪かもしれない。


「アズサ、CFL(シーエフエル)の時は負けたが、ここは俺のホームグラウンドだ」

「なあ知ってるか? アウェーゲームよりもホームゲームの方が、負けた時応えるんだぜ」

「言ってくれる。会場を見てみろ。みんなイギリス勢である俺の優勝を望んでいる。いくらバリスタオリンピックチャンピオンでも、このプレッシャーに耐え切れるかな。チャンピオンの身分だと、応援してくれる人の方が少ない。挑戦される側だからな」

「上等だ。僕はとっくの昔に覚悟した。全世界から嫌われてもいい覚悟をな」

「その虚勢がどこまで持つか見ものだな」


 ベネディクトはこれ以上何も言わず、僕と共にステージ上へと繋がる通路を歩いていく。途中の分かれ道で赤コーナーと青コーナーの方向へと誘導された。


 僕は赤コーナー、ベネディクトは青コーナーとなった。


「それでは準決勝第2試合を始めたいと思います。アズサとベネディクトの対決だぁ!」


 司会者が僕らを雑に紹介すると共に拍手喝采が会場の天井にまで響き渡った。下手をすれば外にまで聞こえているんじゃないかと思うほどだ。運命のルーレットが回り始め、3戦分の課題が決まる。


 1戦目がフリーポアラテアート、2戦目がドリップコーヒー、3戦目がカフェオレだ。


「それでは1戦目、よーい、スタートッ!」


 司会者によるスタートの合図と共に僕らは動き出した。フリーポアラテアートを作るべく、ミルクをスチームノズルで温めてエスプレッソマシンの作業に着手する。ただ作業に夢中になるだけだ。さっきまでの嫌味に対する嫌悪感はどこかへと消えてしまっていた。コーヒーを淹れている時は嫌なこともすぐに忘れられる。だから僕は……ここまでずっと頑張ってこれたんだ。


 精密機械のような細かい手捌きでトイプードルを描いた。


 対するベネディクトは今にも飛び出してきそうなペガサスを描いた。


 ほぼ同時にジャッジテーブルに置くと、しばらくの間、ジャッジがどちらのラテアートの方が優勢であるかを判断している。どちらが作ったかは伏せられている。完全に絵だけを見て決めるが……。


「それではフラッグを上げてください」


 赤のフラッグが1本、青のフラッグが2本上がっている。


 これがアウェーゲームの洗礼か。僕はベネディクトに1戦目を取られてしまい、もう後がなくなってしまった。これには流石に焦りを覚えた。ベネディクトは涼しい顔で歓声に応えている。


「それでは2戦目、よーい、スタートッ!」


 今度はドリップコーヒー対決だ。ここで踏ん張らないと。


 ドリップコーヒーなら何度も伊織と鎬を削るように競い合った。あの時の思い出が込み上がる。もはや無心の想いでドリッパーからコーヒーが抽出されていく。機械動力を伴わない抽出器具であれば何でもいい。だがどちらもペーパードリップを選んでいた。あえて経験の差が露骨に出るものを選んだか。


 底が見えるくらいの赤茶色のコーヒーが抽出され、精度では圧倒的に僕が上回っている。


 色の差からして、どっちが淹れたものかがハッキリしていた。3人のジャッジは相も変わらず僕らに背を向けたまま椅子に座り、余裕を持って楽しむが如くカッピングを行っている。スプーンに小匙1杯分のコーヒーをすくい、素早く吸い取るように口に含み、フレーバーを詳細にメモしている。


「それではフラッグを上げてください」


 赤のフラッグが2本、青のフラッグが1本上がった。


 これで1勝1敗。お互いの今大会連続勝利記録が途絶え、勝敗の行方は3戦目に持ち越された。


 ベネディクトが僕を鋭い眼光で睨みつけている。嫌悪からではない。闘争心を露わにしているからこそだ。何としてでも勝ちたいという気持ちが嫌悪感を上回っている。もうここまで来たら知識でも技術でもない。体力の限界への挑戦だ。既に時刻は夕方を過ぎ、空はオレンジ色の夕焼けに染まっている。


 太陽は僕らの対決を見届けるまでは決して沈まないぞと言わんばかりに、粘り強く空で輝きを放っているように思えた。会場はどちらが勝ってもおかしくない空気だった。何を隠そう、僕らもそう思っているからだ。これぞ全力で戦うファイターの姿。バリスタとはコーヒーファイターなのだ。


 カフェインでもキメているのかと思うほど会場は熱狂の渦に包まれ、その温度が直に伝わってくる。何だか音楽ライブを開催しているかのようだ。たとえ目の前にベッドがあったとしても、しばらくは眠れそうにないな……ここが正念場だ。目がギラギラするほどに夢中である。


 コーヒーは我と共にある。バリスタとしての信仰かもしれない。

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読んでいただきありがとうございます。

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