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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第8章 バリスタ社長編
193/500

193杯目「忘れかけていたもの」

 8月中旬、CGM(シージーエム)に出場するべく、僕らはロンドンへと赴いた。


 世界大会ではあるが、地元のお祭りも兼ねた大会だ。何度か回数を重ねているため、レベルは相当なものである。対戦が楽しみだ。既に唯が実家に連絡してくれたお陰か、ロンドン郊外の家に着いた。


 僕と伊織はスーツケースを引きずりながらタクシー代を支払うと、空港から僕らを運んでいたタクシーが去っていく。昔は歩きだったけど、今は余裕があるため、平気でタクシーを呼べる。


 お金で時間を買っていると言ってもいい。


「――ここが唯さんの実家なんですか?」

「ああ。庭に生えてるラベンダーが目印だ。この店も『レストランラベンダー』という名前で、ここのラベンダーも売り物用がある」

「凄くゆったりしていて、自然に溢れてますね」

「外国に別荘を買わなくても、ここでのんびり暮らせるってわけだ」

「あず君はジェフさんと咲さんを連れ戻そうとしてたんじゃないですか?」

「……連れ戻したら、ここを売らないといけなくなるな。なんか迷ってきた」


 赤茶色の煉瓦に敷き詰められた広めの家、扉と窓の周辺は白に染まっている。小さめの窓からは広めのフラワーガーデンや住宅街を一望できる。ホントに良いとこ住んでんだな。


 周辺に生えているラベンダー、この家のシンボルらしい。


「煉瓦の家が多い上に、結構窓が小さいんですね」

「イギリスは元々木造建築ばっかりだったけど、ロンドン大火で木造の脆さを思い知ってからは木造建築が禁止になって、それで煉瓦の家を作るようになった」

「そうなんですね」

「どの家も窓が小さいのは、窓が大きい家から税金を多く取るようになったからで、税金を安く済ませるために窓が小さくなっていった。最初は窓自体をなくす動きがあったけど、通気性が悪すぎて、感染症に罹る人が続出したわけだ」

「あず君は何でも知ってるんですね」

「豆知識だ」


 雑学はインターネット上の辞書や本で習ったものばかりだ。何故こんな仕組みなのかを知ると、更に知ろうと知識欲が沸いてくる。お陰でどこに行っても簡単なガイドくらいはできるようになった。


 インターホンを押すと、聞き覚えのある声が聞こえた。


 ようやく来たかと言わんばかりに、ジェフと咲さんの2人が迎えてくれた。


「いらっしゃい。また来てくれるとは思わなかったよ」

「しばらく世話になる。えっと、彼女は本巣伊織、うちの店のトップバリスタ候補生で、僕が大会に出ている様子を間近で見たいって言うから連れてきた」

「ふーん、この子があず君のお気に入りってわけね」


 咲さんが伊織を見つめながら腕を組んでいる。


 彼女の実力を測ろうとしているかのようだ。横に長い家の右半分はレストランになっており、そこには何人かの客が料理を楽しもうと来店し、席に座りながら仲良しそうに会話中だ。


 フィッシュ&チップスやバンガーズ&マッシュといったイギリスを代表する料理が机に並んでいる。


 あれを毎日食べたら確実に太るな。それにしても、ギトギトの油、潰しきれていないマッシュポテトが気になる。あれで人気が出るとはとても思えないが。


「美味しそうですね」

「うちの店を手伝ってくれたら、2人にもご馳走するよ」

「やります。やらせてください」


 伊織が目をキラキラと輝かせながら懇願する。接客慣れしている伊織にはお安い御用だ。しかも普段から外国人観光客と会話し続けていることもあって英語にも堪能だ。うちにいるだけで海外での生活にも適応できるようになる。うちの修業はバリスタ修行だけではない。外国人観光客との接客を通して人と話す訓練もできるのだ。伊織も接客スキルと英語を取得した。


 早速エプロンを貸してもらい、僕はコーヒーの抽出、伊織は接客へと回った。


 まだ午前11時、ここは昼営業と夜営業があり、昼営業は午前10時から午後3時、夜営業は午後5時から午後9時までだ。水曜日が定休だが、生憎大会は日曜日だ。


「あの子、以前はもっと大人しかったよね?」


 咲さんが僕に興味本位で尋ねた。ジェフも咲さんも一度伊織と店で会っている。あの時も仲良しそうに話してはいたけど、伊織の方が終始受け身な状態だった。質問は全部相手からだったし。


「ああ。あいつの中にあったブレーキを全部外したからな」

「ブレーキを全部外した?」

「飯を食えない大人は自分にブレーキをかける癖がある。やりたいことを言えなかったり、嫌なことにも従順になっちゃうのはそのためだ」

「義務教育でせっかくつけてもらったブレーキを外しちゃったんだ」

「ブレーキなんて無用の長物だ」


 多分、最も多く実行されてきた二度手間だ。


 伊織はまだ軽傷だったため、治るのが早かった。


「なんか猫被ってるように見えるけど」

「営業中くらい猫を被ってもいいだろ。そりゃ自分に正直に生きるのは大事だけどさ、個性があるって言うなら、それが活きる場面で発揮すればいい」


 咲さんは伊織が行動的な反面、去年とは明らかに異なる姿に対して疑問を持っている様子だ。仮に今の伊織が明るい自分を演じている時の伊織だったとして、猫を被っていると言われればそれまでだが、猫も被れない不器用さは、それをカバーできるほどの才能がなければ厳しい。


 才能が開花していて猫を被れないなら許せるが、才能も開花してないくせに猫も被れない人なんて、どうしようもない奴としか言いようがない。凹凸がある人間だというなら、凹がある分凸も見せろよって話だ。へこんでいる部分しかないのは、凹凸がない人よりも一回り小さい状態だ。一回り小さい内は才能が開花するまで引き籠るか、苦手の1つでも克服する努力をするべきだ。


 まっ、それができないからこそ、ほとんどはずっと引き籠るんだろうけど。


「あず君は他人に対して求める水準が高い気がするなー」

「僕は無能な働き者が嫌いなんだよ。働くなら有能な人限定にするべきだ」

「どうしてそう思うの?」


 咲さんが首を傾げながら聞いてくる。


 この仕草……唯にそっくりだ。


「ずっと前同窓会に行ったらさ、昔僕をいじめてた連中がみんな社会的に終わってたというか、とんでもないものを目の当たりにして、価値観が変わった」

「あず君がざっくりした説明しかできないってことは、相当悍ましい光景だったんだね」


 咲さんが言いながら僕の後ろに回り抱きついてくる。


 さっきまで苛立っていた気持ちが見る見るうちに収まっていく。


 この優しく包み込むような温もり、何だか唯と一緒に寝ている時のような感覚だ。つい眠ってしまいそうになる。これは国とか関係なくモテるわな。


「……」

「忘れないで。人は生きてるだけで十分偉いんだから」

「そんなの頭じゃ分かってるよ。でも――」

「認められなければ価値を感じられないような人間になっちゃ駄目だよ」


 咲さんは僕を後ろから抱いたまま僕の耳元で呟いた。


 目を落として咲さんの抱いてくる手に自分の手を置いた。


 何で僕……こんな風に考えるようになっちゃったんだろ。目からは涙が出ていた。相手が何者でも寛容に受け入れていた頃の僕はどこに行ってしまったのだろうか。何故こうなったのかは分からない。


 ただ、あいつらを見ていると世の中のレベルが物凄く低く見えてしまい、やるせない気持ちになる。


 きっとそれが、僕の深層心理にとっては面白くないものなんだろう。


「誰にも認められない日々が辛かった。だから必死に見返してやろうと思ってたら、見返した相手が思ったより呆気ない連中ばっかで、あんな連中に見下されていたのかと思うと情けなくなってきて」


 ああいう連中こそ、実は限界が来ていたのかもな。


 誰かを下に見ないと安心できない。この心理に気づいていれば気楽に過ごせていたかもしれないが、他人に対してそんなつまらない関心を持つくらいなら、もっと伸び伸び生きてほしいと思った。


「それで社会的にうまくいってない人を目の敵にするわけだ。でもそんなことしなくったって、あず君はもう十分認められてるよ」

「そういう問題じゃねえよ」

「じゃあどういう問題なの?」


 上り詰めたはいいが、その代償として、周囲が下に見えるようになってしまった。


 これはある種の呪いかもしれない。僕と肩を並べられるだけの実績や思考を持っている人がほぼいないし、それがただひたすらに虚しいのだ。大半のことは大したことないと思えるようになった。いや、大したことないと気づいてしまった。今まで色んなことに驚いてきたのは、自分という人間が小さすぎたからだ。僕ぐらいになると、東大を卒業したりするのも、大企業の社長になったりするのも、みんなからモテることも、全然大したことないように思えるのだ。


 多分、ああいうのが凄いと思える人は、きっと刷り込みでそう思っているに違いない。


「この面白くない世の中を面白くしたい」

「ふふっ、あず君がそれを言うと、本当にできそうな気がする」


 咲さんはようやく僕から離れてくれた。


 うちの親くらいの歳なのに若々しく見える。見知らぬ環境によって裏打ちされた強さだ。静かだが、彼女から湧き出てくる嫌味のない自信、唯があんな風に育ったのも分かる気がする。


 彼女たちは物事を柔軟に受け流せる術を持っているんだ。


「無能を見てもイラつかない方法ってないかな?」

「そもそも人間自体大した生き物じゃないんだから、あず君みたいに立派な人は少数派だよ。できない人が駄目なんじゃなくて、できる人が凄いってだけ。だから著名人たちはテレビに出たり、物凄く稼いだりしてるわけ。人生なんてうまくいかない方が当たり前なの。その方が普通なんだからイラつく必要はないと思うよ。その人たちもその人たちで、とても苦しいはずだから」

「社会的にうまくいってないと価値がないっていうメッセージを世間から受信し続けていた気がする」

「そりゃできる人は目立つからねー。みんながみんな人生うまくいっている人ばかりだったら、あず君はそこまで有名になってなかったと思うよ」

「何であいつはできるのにお前はできないんだって言われ続けたのが響いてる」


 そうか、唯は優しいからここまで言えない。


 きっと唯も咲さんと同じことを考えていたんだろう。流石は親子だ。


 できない方が当たり前……か。


 腹が減っていることに気づくと、僕と伊織は昼営業が終わってから昼食をご馳走になった。この前来た時はめっちゃ美味かったけど、今回はどうかな。


 レストランの中はイギリスらしいパブによく似ている。


 パブはイギリスを代表する酒場で、レストランより小さく、居酒屋よりも大きいくらいか。


 勧められて食べたのはバンガーズ&マッシュ。ナイフとフォークを使い、切ったソーセージにマッシュポテトを乗せ、風味を楽しみながら口に頬張った。


「うーん、やっぱりちょっと脂っこいのかなー」

「ここの人は脂っこい味が好みだからね」

「いつも4人で経営してるの?」

「ああ、私と咲と料理人が2人だ。うちの料理人のイアン・マクドナルドとリチャード・クロックだ」

「よろしく。君の噂は聞いているよ」

「まさか雇い先のお婿さんが超有名人とはね」

「知ってくれているのは光栄だけど、僕は結婚してないんだ」

「えっ、そうなの?」


 丸坊主でダンディーな中年おじさんの顔立ちをしたイアンが慌ててジェフに聞いた。


 ジェフは頭をコクリと下げた。咲さんは残念そうな顔ではなかったが内心複雑そうだ。子供はいるけど結婚していないことに抵抗があるようだった。イアンとは対照的にロングヘアーで後ろに髪をまとめているリチャードはやけに冷静だ。イギリスだと婚外子が当たり前のようにいる。人権も保障されているし、家族の多様性が認められているのだ。


 日本で婚外子を育てる場合は不便を強いられるが、いつまでも昔の生き方に囚われたくはない。


「また子供が生まれたそうだね。おめでとう」

「ありがとう。お陰で面倒事が増えたけどな」


 彼らと談笑しながら、口に合わないメニューを食していく――。


 ただ大会に出るだけじゃなく、ジェフと咲さんを日本に連れ戻そうかと思ったが、ここへ来た途端、そんな目的を持っていた自分が恥ずかしくなってきた。


 2人がここを離れる気がないことくらい、彼らの楽しそうな顔を見れば分かる。


「ジェフ、最近売り上げが落ちてるって、僕にメールで愚痴ってたけど、本当なの?」

「ああ、本当だよ。親父もお袋もいなくなってからは客足が滞るようになって、何が駄目なのか全然分からないまま今日に至るわけで、そこであず君にコーヒーの監修を頼もうと思ってね」

「いくら監修したところで、肝心の料理を改善しないと、客足は戻らないと思うぞ」


 この際だからハッキリ言ってやった。昼営業にしたって空席が目立つし、客も料理を食べにきたというよりは、会話のついでに料理を注文している感じだった。不味いわけではないが、決定打に欠ける。


 客の話題が料理に向かないのは不味いと言われているに等しい。口には出さないが、客はちゃんと見ているもんだ。うちだったら話題の中心がコーヒーになっていない方が良くない。厳密に言えば、不味いというよりは、出した商品の話題性が他の話題を上回っていないのだ。


 出された商品が話題になっているくらいじゃないと、飲食店は生き残れない。


「今月もピンチなんだろ。1人目が生まれた時はうちに集まってくれたのに、2人目が生まれた時は全く音沙汰なし。つまりここを離れられない事情がある。結論、今この店は赤字だ」

「ご名答……と言いたいところだけど、うちはそのせいで孫にも会えないの」


 そうか、最近唯が浮かない顔をしていたけど、このためだったか。


「あの、このまま赤字だったらどうなるんですか?」


 伊織が手を上げて恐る恐る質問をする。この仕草も可愛いな。


「今年中には倒産するかも。そうなったら……ここを売らないといけなくなるかな」

「こんなに良い場所を売るんですか?」

「ロンドン郊外だし、経費はそこまで高くないけど、収入源も入らないなら、ここを売って安いアパートに引っ越すって決めてるの。せっかくお義父さんとお義母さんが遺してくれた……立派な家なのにね」

「……」


 大体の事情は分かった。ジェフも咲さんも、先祖代々続いてきたこの家とレストランを守りたい。


 立地条件は悪くない。周囲には住宅街、客はいつも近くに住む友人や常連らしいが、飲食店なだけあって値段は高いし、毎日来れるような店でもない。つまり彼らは近隣住民に生かされている状態だ。


 近くにレストランもなければパブもなく、ライバル店がないのは幸いだが、それでも売れないのは店側の問題だ。外観も内装も悪くないけど、のんびりした感じの優雅さを伝えきれていない。


「あず君、このお店は大丈夫なんですか?」


 今、僕と伊織は僕らが宿泊する部屋で2人きりだ。同じ部屋で泊まることになっているが、ベッドは丁度良いくらいに距離が離れている。部屋の中は中世ヨーロッパをイメージしたオシャレな内装だ。


 これだけたくさんの部屋があるのに、使っているのは僕らだけだ。


 2階と3階だけで10個も寝室があるのに、普段誰も使わないのは勿体ないな。


「さっき食事中に聞いたんですけど、元々ここは小さなホテルだったみたいです」

「ホテルか。この店を外国人観光客をたくさん呼び込める店にすれば、またホテルとして使えるかも」

「掃除が大変そうですけどね」

「掃除は予約が入った部屋だけやればいい。後料理だけど、注文してから来るのに時間がかかるものが多いからさ、メニューを絞った上で、ここでしか食えない名物を用意する。昔よりはマシだけど、イギリスは食文化のレベルが低いし、うちと同じくらい美味いものを作るだけで差別化を図れる。後はオリジナルを再現できれば勝ちだ。それを食うにはここに来るしかないわけだし」

「それならどうにかなりそうですね」

「伊織はここを救いたいのかな?」

「できれば救われてほしいと思います。凄く気に入ったので」


 僕もこの場所を気に入っている。唯の感性が豊かなのは、ここで育った影響だろう。僕にとっても第二の故郷と言えるくらいには居心地が良い。もうすっかりここを守る気でいる。一体どうしたものか。


「あの、何か大事なことを忘れていませんか?」

「大事なこと?」

「大会ですよ。あず君は大会のためにここまで来たんじゃないんですか?」

「あっ、忘れてた」

「はぁ~」


 伊織が呆れたように息を吐いた。そういや僕、CGM(シージーエム)のために来たんだった。


 大会のルールは熟知している。どのメニューも作れるし、制限時間3分以内にルーレットで決まったメニューを作るのだが、判断力と速さが大きな鍵を握っている。持ってきたパソコンを使って過去の大会を調べてみた。おおよそ僕が想像していたものと同じだった。みんな熟練のバリスタばかりで、決勝も例年通りイギリス勢同士の対決だった。動きに一切の無駄がない。WBC(ダブリュービーシー)に出るには十分な実力だが、この顔触れは全く見たことがない。


「練習はしないんですか?」

「一応どれも作れるから問題ない。それにうちだと、ドリップコーヒーは作れても、エスプレッソマシンがないし、カプチーノ類は全部アウトだ。本番の中で勘を掴んでいくしかない」

「……」


 伊織は不満気な表情のまま下を向いている。一体何が気に入らないのやら。


 翌日、寝る時間を変えたことで、早くもこっちの時間に慣れてきた。大会3日前だが緊張感はない。流石に何回も出ているだけあって、この雰囲気にも慣れている。


 午前10時、昼営業の時間がやってくる。


 僕も伊織も当たり前のように店の準備を手伝うが、いつもとキッチンの様子が明らかに違う。ドリップコーヒーの担当をするものばかりと思っていたのに、キッチンを見てみれば、エスプレッソマシンが置いてあるのだ。昨日まではなかったはずなのにどういうことだ? しかも近所の人が開店前から当たり前のように店内へと入ってきているし、そんなにここのメニューが食べたいのか?


「何でエスプレッソマシンがあるの?」


 キッチンにいたイアンに早速尋ねた。


「何でって、昨日お嬢ちゃんからエスプレッソマシンとCGM(シージーエム)に必要な酒類を揃えてほしいって言われたんだよ。急ピッチでここまで用意させられた。経費は全部自分が負担するからと頭を下げてお願いしてきた。全く大したお嬢ちゃんだ」

「伊織……何でそこまで」

「あず君はうちのエースなんですから、ここで負けてもらっては困ります。CGM(シージーエム)で出る課題を全部用意してもらいました。それから近所の人にあず君が来ていることを伝えて、お店の宣伝も手伝ってもらいました。なので今日からは当分お客さんがいつもより大勢来るはずですよ」

「……ありがとう」

「サポーターですから」


 伊織はドヤ顔を決めている。彼女は僕の無敗伝説に終止符を打ちたくないらしい。


 そうか、僕が緊張感を持たなかったのは、勝利への執念がまるでなかったからだ。バリスタオリンピック以来、僕はずっとこの気持ちを忘れかけていた。


 まさか伊織から大切なことを教えられるとはな。

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読んでいただきありがとうございます。

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