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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第8章 バリスタ社長編
185/500

185杯目「滅びと転身」

 2月下旬、葉月ローストの人員募集が始まった。


 募集する相手は全世界……と言いたいところだが、それだと時間がかかりすぎる。


 まずは信頼できる人に紹介してもらうか。


 僕は唯の助言通り美羽に連絡し、うちで働けるトップバリスタを紹介してもらうことに。この方が効率が良いし、トップバリスタは知り合いもトップバリスタが多いのだ。


「美羽が葉月ローストで働く人を紹介してくれた。3月の春休みまでに2人来るから面倒を見てくれ」


 葉月ローストまで赴き、追加で助っ人が2人来ることを告げる。


 みんな一斉に胸を撫で下ろしている。やはり4人で50席分の繁盛店を支えるのはきついらしい。


 うちも璃子と優子がいない時はマジできつかったからなー。これ以上席は増やせそうにないが、テイクアウトが主流である分、こっちの方が店回りが良い。


「やっと6人体制で働けますね」

「済まんな。人員の問題はこれで決着がついた。親父、次から人を雇う時は美羽に頼ってくれ。少なくとも外れは寄こさないだろうから」

「へいへい、どうせ俺に人を見る目はねえよ」

「そうへこまないの。あず君、助っ人って、トップバリスタなの?」

「分からん。でも美羽なら大丈夫だ」

「確か穂岐山バリスタスクールの人だっけ?」

「ああ。今年開校したばっかりだけど、学長の美羽がバリスタ競技会でファイナリストになったこともある実力者だ。美羽だったらトップバリスタの知り合いがいるんじゃないかって思ったわけ」

「なるほどねぇ~、類は友を呼ぶか」


 島塚がペーパードリップでコーヒーを淹れながらのんびり美月と話している。


 美月の過去も彼女の口から聞いたらしい。彼女も虎沢グループの暴挙によって生み出された間接的な被害者だ。奇しくもその数奇な運命によってうちで働くことになったのは不幸中の幸いかもしれない。


 それにしても、人を採用するって大変だな。とりあえずうちを蹴った奴は全員ブラックリストに載せておこう。企業側も求職者や転職者に見られているとはいえ、滑り止めくらいにしか思っていないようなら最初から受けるなと通告もするべきだ。ただの即戦力じゃ、すぐに使い物にならなくなる。


 長期的にトップバリスタに育てていくことも視野に入れるべきだろうな。


「親父」

「何だよ?」

「これから入ってくる連中に、昭和流の育て方は絶対にしないでくれ。少なくとも今の時代じゃまず通用しないし、我慢していれば給料が上がる時代は終わった。いいな?」

「分かってるよ……昔とは変わった」


 親父が外を見ながら世の変化を感じている。


 もう昭和の時代は終わったのだと思っているかのような表情だった。バリスタ競技会がなかった頃なんかは、バリスタじゃ一生食っていけないと思っている人も多かっただろう。でもそんなことはない。おじいちゃんは一生にわたって現役のバリスタであり続けた。店があろうがなかろうが関係ない。


 そんなことを考えていると、親父がまた僕に顔を向けた。


「先代が亡くなる3日前の話なんだけどな、先代はお前のことをこう言っていた。あず君は冷静な目で状況を分析してから決断することには長けているが、木を見て森を見ずなところがあるってな。まっ、だからこそすぐに決断ができるんだろうけど」

「他にはなんか言ってた?」

「ずっとあず君を心配してた。先代がずっと陰からお前を支え続けていたのは、お前が無茶をすることを恐れていたからでもある。人間なんて、みんな多少なりとも偏見を持っているもんだ。でもそれは自分の価値観をしっかり持っている証でもある」

「で? 何が言いたいわけ?」

「あず君は身内だけじゃなくて、もっと色んな人の中身を見た方がいいってことだ」

「中身ねぇ~」


 もっと早く言ってくれよ。あれから何年経ったと思ってんだよ。


 流石に8年も経てば、アップデートされてるっつーの。確かに当時の僕は木を見て森を見ずだった。良心的な人もちゃんといたのに、僕はそいつらのことまで恐れていた。


 僕の無能嫌いは今に始まったことじゃない。けどそのせいで人の悪いところばかりを見るようになってしまって、身近にあったはずの人の優しさに気づけなかった。ここは反省点だ。


 ある日のこと、久しぶりに小夜子たちが遊びに来てくれた。


 今の僕がどんなものかを確かめに来たらしい。4人はやっと空いたカウンター席に座り、それぞれが自分の好きなコーヒーを注文していった。服装からして、それなりの生活ができているようだった。


 僕は今の自分が思うことを素直に話した。やりたいことに囚われすぎていたり、特にやりたいことがなくても、平和に生きていければそれでいいと思うようになっていった経緯を伝えた。


「ふふっ、すっかり学生の時の落ち着きを取り戻してるねー」

「うんうん、こういうのって、原点回帰って言うんだっけ?」

「1週回って戻ってきたみたいな」

「まあそんな感じだ。暇潰しで生きててもいいって思ってた自分を思い出した」

「昔のあず君は、毎日コーヒーさえ飲んでいれば幸せだって言ってたもんね」

「私はあの時のあず君が1番好きだったから、なんか安心した」


 小夜子は明日香と一緒に美容師としての活動を続け、遂に人を雇う立場になっていた。


 結局は美容師の仕事が1番であることを再確認してからはそこに落ち着いたらしい。ただ、両親からは結婚を心配されるようになってきたんだとか。みんなもう20代後半だしな。適齢期は自分で決めるもんだけど、みんなは結婚してもしなくても、どの道後悔しそうに思えた。


 美咲は成美と一緒に和菓子屋を続けている。僕もたまにではあるが通っている。


 カフェとしての色を出そうとしているのか、最近はコーヒーブームに乗っかろうと、この春から穂岐山バリスタスクールに4人で通うことにしたんだとか。世の中で何が流行っているかはこの4人を見ていれば分かる。紗綾は父親の会社のOLをしながらコスプレイヤーとして活動中だ。


 大きく出たな。今やコスプレイヤーも職業だ。この話を聞いた時、もう何でもビジネスになるんだと悟った。昔はただの趣味とされていたけど、今じゃ公式の事務所まであるくらいだし、紗綾はアニメ好きであることを社内では隠しているようだ。この時点で保守的な会社であることが見て取れる。


 香織は新聞記者として地元の報道に勤しんでいる。


 僕を贔屓にした記事も書いてくれている。それ自体は嬉しいけど、ちゃんと本当のことを書いてほしいものだ。でも何だか、こいつに関しては収まるところに収まった感じがしないでもない。噂好きなだけあって情報源や人脈も豊富だ。コーヒーブームをより広める足掛かりになってくれるかもな。


「あたしこの前ねー、柚子さんの会社の特集記事を組んだんだけど、この頃売り上げが厳しいみたいなんだよねー。去年改革したばかりなのに、あんまり振るってないんだってー」


 おいおいおい、あれだけ人員整理を済ませたってのに……。


 今度柚子に聞いてみるか。楠木マリッジは僕の改革案によって年末を乗り切ったはずだ。


 なのにどうして……未だに赤字を脱しきれないんだ?


「そりゃみんな不景気で婚活どころじゃないからだと思うよ」

「私ももっと稼いでさえいれば、婚活イベントに参加してもいいけど、参加費がねー」

「男女平等を掲げてるのはいいけど、どうしても女性の方が安い別の婚活イベントに出ちゃうよね」


 なるほど、男女で全く同じ参加費用を貫いているわけか。結果的に男女で参加費が異なる婚活イベント会社の方が人気になってしまうわけだ。楠木マリッジは男性参加者こそ多いものの、女性参加者が少ないのがネックだったからなー。僕も柚子も男女平等であるべきだとは思ってはいるが、フェミニストではない。性別、人種、信条などに関係なく、人を分け隔てなく扱うのは当たり前のことだ。フェミニストのしていることは立派な女性優遇主義である。女性だけ料金が安いイベントには誰も怒らないのが証拠だ。都合の良い時だけ男女平等を語る輩の多いこと多いこと。


 皮肉な話だが、結果的に男女差別を容認している婚活イベント会社の方が儲かっている時点で、ある意味フェミニストの勝利と言うべきだろう。特に酷い企業は男にだけ年収を書かせ、女には年齢すら書かせないという徹底ぶりだ。ああいったイベントに性差別が隠れているというのに。


 逆説的ではあるが、性別によって値段を変えない企業の方が損をしているのはフェミニストが多いからである。あいつらは平等主義者のふりをした差別主義者だ。


「そうですか。柚子さん、まだトンネルから抜け出せてないんですね」


 この日の夜、唯と一緒に湯船に浸かっていた。


 唯が段々と大きくなる腹を擦りながら、僕の話を聞いてくれていた。


「香織が原因を喋ってくれたお陰で聞く手間が省けた。正直者が馬鹿を見るの典型だな。ただでさえ無駄な人件費が多かったんだ。早く改善しないと潰れるかもな」

「柚子さんの会社が潰れたらどうするんですか?」

「その時は柚子をうちで雇う。柚子もバリスタとしてのセンスがある。あの時辞めずにバリスタとしての実力を伸ばしてたら、今頃はトップバリスタになれていたのにな」

「結果論ですけど、有名バリスタになってから起業していれば、あず君みたいに、自分自身のブランド化で収益が安定していたかもしれませんね」

「あいつはそんな計算高い女じゃない。元々は就職を目指してたわけだし、どっちかって言うと、無難な人生を歩みたがってた」


 でもこれで、柚子に経営者が向いていないことがよく分かった。


 お情けで就職に適性のない連中を雇ったり、他人頼みのイベントでしか稼げなかったり、改革のスピードがあまりにも遅かったりしたのが証拠だ。経営者どころか個人事業主も務まらないまである。


 この道を選んだ柚子の責任ではある。


「今度会った時に聞いておきましょうか」

「そうしてくれると助かる。女同士じゃないと話せないこともあるだろうし」

「何でこんなに差がついてしまったんでしょうね」

「柚子は自分が経営者に向いていると思っていた。でも違った。それだけだ」


 3月上旬、正午に柚子がうちを訪れた。


 噂をすれば何とやら。いつものスーツ姿じゃなく、休日によく着ている可愛い私服姿だ。こっちの方が似合っている。いつもこういう服を着て仕事をすればいいのに。何やら深刻そうな顔だ。柚子はカウンター席に腰かけてアイスコーヒーを注文する。いつもはホットコーヒーなのに珍しいな。


「私、今月限りで会社を畳むことにしたの」

「それまた何で?」

「……分かってるくせに」


 柚子は涙声で言った。経営者にとって会社を畳むことは、敗北を認めるのと同じだ。僕も危うく何度か会社を潰すところだったし、分からんでもない。潰れる寸前の時は、本当にどうしようかと思った。


「みんなには一刻も早く転職先を探してもらってるの。はぁ~、今までで1番忙しい」

「でも昼休みは返上しないんだな」

「私も転職活動中だし、人のことにばかり構ってられないの。ちゃんと改革しながら進歩してこなかったツケが回ってきたと思ってる」


 柚子の言葉に、僕も唯もシュンと落ち込んだ。


 何だか自分のことのように思えた。経営失敗はうちだって他人事じゃない。子供たちが成人するまでの養育費くらいは稼いでおかないといけないと思うと、背負うものの重さを思い知らされる。


 倒産の原因は明らかだった。1つは経営陣の機能不全だ。柚子が安請け合いでズルズルと一緒にやってきた元同級生を始めとした役員のほとんどが仕事のできない人ばかりで、どちらかと言えばサラリーマンの方が向いていた。歯車を作る教育を受けていた影響だろう。ルーチンワークはできるけど、新しい価値を作ることにおいては不得手だった。経営者はこの能力が高くないとやっていけない。


 まさに、勉強はできるけど仕事はできない人たちのコミュニティだったわけだ。


 楠木マリッジが勢いだけで創業した企業であることが分かった。勢いで行動するのは大事だが、彼女たちはそこから先の道筋を築く努力を怠った。僕を岐阜コンに誘ったのは、戦略というよりは延命治療でしかなかったことも明らかになった。柚子はずっとその秘密を隠すのに必死だったという。


 当然だが、そんな企業は銀行からも融資をしてもらえない。だから彼女たちは新しい事業に挑戦することもままならずに赤字を重ね続け、誰もその責任を負わなかった。


 もう1つは理念がなかったことだ。要は食べていくためだけの会社でしかなかった。大まかな目標はあっても、何のために目標を定めているのかがハッキリしなかった。衰退しかけていた岐阜を柚子が盛り立てようと努力していた姿を知っているが、そのための具体案がなかった。


 その結果、外部の人間にばかり委託する破目になってしまった。


 もっと早く気づくべきだった。柚子は僕が岐阜コンから卒業すると決めた時点で会社を畳むことを決めていた。柚子自身、サラリーマン向けと言える特徴をいくつも持っていた。


「柚子、うちで働くか?」

「……いいの?」

「柚子にはバリスタとしての才能がある。自営業時代のうちでバイトしたことがあるんだから、うちでの働き方は当然分かるよな?」

「ふふっ、当たり前でしょ。葉月珈琲は曲がったことが嫌いで、コーヒーを通してみんなを笑顔にすることを目的とした会社。創業者にそっくり」


 柚子が久しぶりに笑顔を見せた。いつもの柚子に戻ったようだ。


「でも確か、美羽さんにバリスタの紹介を頼んでるんじゃないんでしたっけ?」


 作業中の伊織が先約を指摘する。


 葉月ローストには2人分の空きがある。けど流石に7人体制は人手過多だ。


「そうなの。だから私、別の会社に行こうかな」


 しまった。普段の柚子は誰かの邪魔をして割り込むようなタイプじゃない。


 見す見す柚子を雇うチャンスを失ってしまった。


「じゃあさ、穂岐山バリスタスクールに行ってみたらどう?」

「吉樹と美羽さんと同じ職場かー。でも弟の後輩ってなんか複雑」

「別に序列なんて気にする必要ねえだろ」

「それはそうだけど、2人の仲を邪魔したくもないし」

「広告部はどうですか?」

「既に2人増員してる」

「……そうですか」


 広告部は元からいる大輔と優太に加え、僕の元同級生である熊崎、璃子の元同級生である蓮の2人を加入させることにした。2人共日本の企業特有の理不尽さに耐え切れず、退職してしまったのだ。


 それからは就活中の2人を噂で聞き、僕が雇うことに。2人共仕事はできるみたいだが、ストレス耐性がない弱点があった。うちはストレスフリーの環境だから関係ない。人の才能を生かすも殺すも環境次第だ。環境のせいにすることが悪いとは思わない。だが環境を変える努力はするべきだ。


 やりたい時にやりたいことをやるのが最も幸せな生き方だ。2人の得意を活かさない手はなかった。しばらくは大輔と優太のアシスタントをしながら広告動画を作ってもらう。広告動画は投稿部との連携で投稿され、新たな宣伝手段ができるというわけだ。広告は出すが、紙のポスターは作らない。一刻も早いペーパーレス社会を葉月珈琲が作っていく。紙の書類を要求する相手とは一切取引しない。これだけ電子化が進んでいるのだから、もはや電子ツールを使えない奴が悪いまである。


 こんなことを言うと、適応できない人はどうすればいいのかを指摘する者がいるが、適応できない人は習得するなり、できる人にお金を払ってやってもらうようにするなりするべきだ。何故できない人に合わせようとするのか意味が分からない。仕事ができない奴や電子ツールを使えない奴は見捨てていく社会構造になれば、必然的に1人あたりの質が向上するはずだ。


 底辺に合わせる奴らのせいで、社会の進歩が停滞するのは不愉快だ。


 蓮は仕事をしながらプロゲーマーを目指し、熊崎は仕事をしながら作家を目指すとのこと。仕事が安定すると、やりたいことができなくなるかと思いきや、そうでもなかったようだ。


 蓮をうちで雇ったことを璃子が知った時は喜んでいた。俗に言う社内恋愛だろうか。


「あず君、一度飲んでみてくれませんか?」


 楽しそうにJHDC(ジェイハドック)の課題をこなしている伊織が僕に聞いてくる。


 言われるがまま、伊織の淹れたドリップコーヒーを口にした。


 ……この味、何だか落ち着きを取り戻させてくれるような味だ。


 伊織も腕を上げたな。大きさの違うカップでドリップコーヒーを淹れる場合、どのあたりで苦味や渋味がより多く抽出されるのかを見越して淹れる必要がある。当然、ドリップコーヒーを淹れるタイミングも止めるタイミングも変わってくる。この絶妙な違いに気づき、それぞれのカップに最適なコーヒーを淹れるのはプロでも難しい。だが伊織はこの作業をこの歳でできるのだから本当に凄い。僕はそんな伊織の将来に心底ワクワクしている。この胸の高鳴りが止まらない。


 味は申し分ない。後はこれを本番で再現できるかどうかだが、伊織はこれを何杯目かでようやく成功させていた。いつ何度やっても均一にできるかが心配だ。


 時間をかければできるが、競技中は時間制限がある。そこが1番の課題になるかもしれないな。


「伊織、大会の時はこの味を一発で出せないといけないぞ」

「ですね。トーナメントなので対戦相手より良い味を出さないといけませんけど、大丈夫か心配です」

「いきなり優勝候補と当たる可能性もあるからなー。でもそこで倒しておけば、後の戦いがかなり楽になるっていう考え方もできる」

「あず君くらいになると、考えることが違いますね」

「理不尽ばっかの世の中だし、ポジティブシンキングにでもならないとやってらんねえよ」


 伊織が僕の言葉にクスッと笑った。いつものように、またドリップコーヒーの抽出に没頭する。集中している時の伊織に声は届かない。言わばゾーンの状態にいるのだ。この時こそが最もコーヒーの抽出を楽しんでいる状態、まるでふわふわの髪の毛を丁寧に撫でるかのようにケトルから熱湯を注ぎ、赤茶色に輝く液体がドリッパーからポタポタとコップに落ちていく。


 何だかWBrC(ワブルク)に出ていた時の僕を彷彿とさせる。


 コーヒーを抽出する行為、すなわちバリスタ自身もコーヒーによって才能を抽出されている状態だ。それが溜れば溜まるほどコーヒーは美味くなり、バリスタの抽出技術は上手くなっていく。


 伊織は3回注ぎをしながら楽しそうな顔でコーヒーを見つめている。


 コーヒーと感覚を一体化させ、最も美味く仕上がったタイミングでドリッパーをどけた。全く同じコーヒー豆を使っていても、タイミング次第で味が決まると言っても過言ではない。多様なフレーバーの中からどれが抽出されているかを確かめる方法、それはカッピングかテイスティングである。普段の抽出が伊織には練習にもなっている。客を喜ばせることができれば彼女の自信にも繋がっていく。


 伊織はきっと葉月珈琲のエースになる。今から将来が楽しみだ。

気に入っていただければブクマや評価をお願いします。

読んでいただきありがとうございます。

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