183杯目「バリスタの本場」
璃子は僕のラテアートに惹かれる以前から興味を持っていたらしい。
コーヒーとチョコレートの共通点、それは茶色くて濃厚でアートを描けるところだ。
璃子はチョコを使ったアートを数多く作り上げてきた。そして今はラテアートに挑んでいる。食べ物で3Dアートを究めた次は飲み物で2Dアートを究めようというのか。璃子は予てからJLACに参加しているが、どうやら璃子にもコーヒーの魅力が伝わったようだ。
「前々から思ってたんだけどさ、璃子はコーヒー好きなの?」
「コーヒー自体は昔から好きだよ。お兄ちゃんほどのめり込んでるわけじゃないけど」
ラテアートを練習中の璃子が遠慮気味に言った。僕と目を合わせないようにしながら。
普段は黙々とチョコを作り、暇さえあればラテアートの練習をしていた。
僕よりもずっと練習量が少ないはずだが、それでも僕に勝るとも劣らない細かい手捌きでラテアートを完成させていく。ショコラティエとしての経験が活きている。
「璃子だったらチャンピオン目指せると思うぞ」
「暇潰しでやってるだけだよ」
「もしかして、目標を見失ったとか?」
「……うん。ワールドチョコレートマスターになったはいいけど、その後何をしたらいいのか全然考えてなくて、去年は目標のために我武者羅に頑張ってたけど、目標を達成した後から、なんか言語化できない虚無感に襲われるようになって、それで――」
「余生をどう生きるか模索してる……だろ?」
「うん。お兄ちゃんには分かるんだね」
そりゃ分かるよ。だって僕は……何度も目標を達成してきた人間だもの。
「何度チャンピオンになっても人生は続く。人生は暇潰しと思って生きていけばいい。僕も璃子も一生飯を食える人間になった。貧乏から脱した先は全てが自由だ。一生遊んで暮らしてもいいし、トップの立場として次世代を育てる生き方をしてもいい」
「ショコラティエは続けるよ。今までは教えてもらう立場だったけど……これからは教える立場として、ショコラティエを目指す人たちを支援していこうと思ってる」
何だ、ちゃんとやりたいこと言えるじゃねえか。昔の璃子はやりたいことが分からず、ただ僕についてくるしかなかった。でもショコラティエになりたいという気持ちだけはずっと持ち続けていた。
璃子は僕の背中を見てきた。何かを我慢して生きるのがあほらしいと思えるくらいには。璃子の高校進学がいよいよ絶望的になった時、どうしようかと悩んだこともあった。結局、昔で言うところの丁稚奉公という形でヤナセスイーツで修業するが、これが人生の分岐点だった。チョコだけじゃなく、洋菓子作りの基礎から学び今に至るが、世界一のショコラティエにまで成長するとは思わなかった。
「ふーん、璃子も言うようになったねぇ~」
僕らの後ろでやり取りを聞いていた優子が璃子に後ろから抱きついた。
「優子さん、お客さんの前ですよ」
「だいじょーぶ、誰も見てないから」
「お兄ちゃんはガン見ですけど」
璃子がジト目で僕を見ながら恥ずかしそうに顔を赤らめる。
あぁ……尊い。もう少し後ろから抱いていてくれないかなぁ~と思っていたら、璃子がすぐさま優子の手を解いて離れていく。こういう時の仕草がマジでたまんねぇ。優子グッジョブ。
「まさかあたしの教え子が……ワールドチョコレートマスターになるなんて思ってなかったからさぁ~、あたしもすっごく鼻が高いよぉ~」
「優子さんって、確かヤナセスイーツの経営をしていたんですよね?」
真理愛が優子に過去を尋ねた。彼女もスイーツには目がない。
「うん、そうだけど、それがどうかした?」
「優子さんは世界一のショコラティエを輩出するほどの腕前ですし、またヤナセスイーツを始めたら、お客さんがたくさん来そうだなと思って」
「ヤナセスイーツは元々お父さんが始めたお店だし、あたしには経営者としての才能はないっていうのがよく分かったから、もう起業することはないかな」
「確か葉月珈琲って、社員に独立させることを目標にしていたはずじゃないんですか?」
「それはあくまでも起業したい人だけ支援するって話だ。全員が全員起業家に向いてるわけじゃないってことはよく分かったし、指示する立場って思ったよりずっと大変だから、無理には勧めない」
「そうなんですねー」
真理愛が納得した顔で頷いた。彼女にもマスターとしての経験がある。けど1人で営業していたこともあり、指示する相手がいなかった。それに今の時代は手段を選ばなければ無理に働かなくても生きていけるわけだし、食っていけるかどうかなんて、考えるだけ無駄なのかもしれない。
――この数年で考え方が大きく変わった。
飯を食える人間を育てるのは基本手段だ。最悪やりたいことはちゃんと言える人間にしなきゃいけないけど、目標を一通り達成できれば結果的に飯も食えるし、やりたいことを言える人間になれることはよく分かった。何かに没頭することを邪魔しなければそれでいいんだ。
親と学校が無理に子供を規定しようとするから潰れるわけで、無意味な干渉をなくしてやるだけでも違うことが分かった。璃子だって特別な訓練をしていたわけじゃない。ただやりたいことに没頭していただけだ。つまり僕らとあいつらの違いは、親と学校に邪魔されずに燃焼できたかどうかの違いだ。
早い内に親元から離れて学校からも早期にドロップアウトしたのが大きかった。でも全員にそれができるかと言われれば答えはノーだ。あいつらにとっての課題は、如何に早く不登校になるかだ。それを考えれば10代前半の内から、才能とやる気に満ちた子供を後継者に選んだ方が良さそうだ。20代を迎える頃には、あいつらの多くは手遅れになっているだろう。
いや、何も日本人から選ぶ必要はない。うちで働きたい外国人もいるかもしれないし。
今年度のJLACとJCIGSCの予選が早くも行われた。璃子と真理愛がそれぞれの大会の東京予選に出場した。後は結果発表を待つのみ。
2人は一緒に東京へと赴き、それぞれの健闘を称え合った。2月中旬には決勝が行われる。
僕が予選に出た時より過密スケジュールだ。璃子の予選が終わった翌日に真理愛の予選が終わった。お互いに相手のサポーターを請け負っての出場だった。その方が効率が良い。
「ただいまー」
「ただいま戻りましたー」
璃子と真理愛の2人が昼頃に東京から戻ってくる。いつもより少し遅れての参上だ。
2人は急いで着替えると、いつものように業務を始めた。
「予選はどうだったんですか?」
伊織が恐る恐る璃子に遠征の話を伺っている。彼女も3月にはJHDCに出場することになる。大阪へと向かい、予選を突破すれば、5月に東京で行われる決勝へと進む。
「予選は観客とか全然いないから大丈夫だよ。伊織ちゃんも今年から大会デビューだもんね」
「何度かあず君が出た大会に行ったことがありますから、雰囲気は何となく分かりますけど、自分が参加しているところが想像できなくて」
「私も初めて大会に出た時は緊張したかな。でもすぐに慣れるから大丈夫だよ」
「そうなんですか?」
「うん。審査の場とは言っても、大半は暇潰しで参加してる人ばかりだし、真剣にやっているだけで、決勝進出はできると思う。お兄ちゃんも言ってたけど、国内予選に限って言えば、競技レベルはそこまで高くないのが現実なの。でも決勝ともなると、流石に強豪揃いだから、舐めてかかると火傷するよ」
璃子がからかうように言った。こういうところも可愛いから困る。
伊織は委縮するどころか笑みを浮かべて安心している様子だ。初めて出場する伊織を気遣っての行動だろう。バリスタ競技会の国内予選レベルがそこまで高くないのは本当の話だが、皮肉にもそのお陰で初心者が参加しやすくなっている。それでも参加人数がそこまで多くないのが残念なところ。
JHDCには200人もの人数が全国から参加する。世界大会がない分、参加のハードルが低いというのもあるが、決勝進出枠が最大で18人分もあるのも大きい。一般の人からすれば決勝まで進出したというだけでもかなりの自慢になる。
だが葉月珈琲の場合は別だ。決勝進出は当たり前、入賞くらいじゃ、うちで成功したとは言えない。
参加するからには優勝するつもりでやってもらう。
「そういえば、私が璃子さんと一緒に東京の会場まで行った時に美月さんと会ったんですよ」
「美月も葉月珈琲からのエントリーだからな。あともう1人いたはずだけど」
「JLACとJCIGSCに2人ずつ参加してたんですね」
「でもその人とは会えなかったんですよ。別の日に来ていたんでしょうね」
「そのもう1人が気になりますね」
「気になるんだったら一度会いに行ってみるか?」
「いいんですか?」
「ああ、今度ゲイシャの生豆を持って行く時に一緒に行くか?」
「はいっ!」
伊織は期待に満ちるほどの天真爛漫な笑顔だった。この時までは。
1月下旬、璃子と真理愛の決勝進出が決定する。2人は安堵の表情を浮かべていた。
伊織とは約束通り葉月ローストまで赴いた。だがそこには4人しかバリスタがいない。あれっ、確か3人雇って6人になったはずなんだけど、もしかして休みなのか?
親父に雇用状態を聞いてみるか。
「はぁ!? 2人退職したぁ!?」
親父が言うには、雇った3人の内、トップバリスタを目指そうとする者が1人だけで残り2人はここまで仕事がハードだとは思っていなかったらしく、雇ってから3ヵ月も経たずに自主退職したらしい。
親父は僕がピックアップした5人から3人を選んで内定させたが、この話には絡繰りがあった。内定した3人は他の企業も受けていたらしく、2人が大企業からも内定を貰っていたために内定を辞退してしまい、残り2人は親父が直々に募集をかけた。親父は藁にも縋る思いで近くの就労支援施設に頼り、2人をバイトとして雇うことを勧められるも、3ヵ月も耐えられずに退職してしまったんだとか。
「何でそんな勝手なことしたんだよっ!?」
親父に向かって獲物を狙う獣のような目で怒鳴った。親父に人事権を渡した覚えはない。
あまりにも身勝手すぎる。しかも寄りによって施設の連中かよ。
「仕方なかったんだ。あず君はバリスタオリンピックがあっただろ。だから下手にお前の邪魔をしたくなかったし、夏場は無事に乗り越えたんだからいいだろ」
「楽したいだけだろっ!」
「あず君、そういう言い方は良くないよ!」
「施設には一度行ったことがあるから分かる。あそこは就職という生き方自体が向いてない連中を就職させることで、失業率の上昇を誤魔化しながら補助金を貰うことしか考えてないポンコツ派遣会社だ。あんな連中がうちの業務に耐えられるわけねえだろうがっ!」
「何でそういうこと言うかなー」
「本当のことだ。3ヵ月持たなかったのが証拠だ」
しかも人件費という観点で見ても、うちが大幅に損をしている。
あいつらにも短期職歴がついてしまった。日本は短期職歴を持つ人には厳しい国だ。これでますます次の内定を貰い辛くなっちまった。ちょっと考えれば、お互いが損をするだけなのが分かるだろうに。
やっぱ親父は人事とか向いてねえわ。
「頑張りますって元気良く言ってたから雇ったんだよ」
「いつの時代の雇い方だよ?」
もう怒る気すら失せてきた。平成の世で昭和に生きるのやめろよ。
「まあまあ、マスターも頑張ったんだからいいじゃねえか」
1人の長身で茶髪ショートヘアーの男が気さくに話しかけてくる。
黒と白を基調としたバリスタの格好で僕に近づいてくる。
島塚俊樹、僕より4歳年上の男で、募集時にピックアップした男の1人だ。お調子者の大卒で、元々はごく普通のコーヒー会社の社員だった。リストラされた後で就活をしていたが、20代最後の歳になって焦っているところを見て採用した。
他2人も似たような特徴だが、他は運良く大企業の内定を獲得した。うちは起業したい人を支援するだけじゃなく、トップバリスタの育成にも心血を注いでいる。美月がうちに居座っているのはトップバリスタの才能があるからだ。生半可な人材では務まらない分給料も高くなってる。
「良くない。人事権もないのに、何の断りもなしに人を雇ったんだぞ。筋を全く通していない。うちが雇ってもいいのはやる気も才能もあるプロだけだ。成人するまで何にもしてこなかったようなポンコツ連中がうちに入る余地なんてどこにもねえんだよ!」
「あのなー、マスターは岐阜市の失業率が上がったことを気にかけて人材募集したんだぞ。いちいちあんたの許可取ってたら効率悪いし、少しは現場に任せたらどうだ?」
「そこまで言うからには、ちゃんと数字を出せるんだろうな?」
「お、おう。心配すんなって」
島塚が思わずのけ反った。確かに虎沢グループがなくなったことで、失業率が上がったのは確かだ。今伸びてきている中津川グループでさえ、全盛期の虎沢グループほどの規模ではない。
今、求人募集が人でいっぱいなんだとか。でもあれが必要悪だったとは思えない。明らかに人件費安すぎるし、労働者がいらなくなってきているのに、労働者を量産する教育のせいで、まんまと経営者に足を見られやすい構造になっている。雇用で生活を安定させるというシステム自体に限界が来ている。それを何の改革もしないで誰も責任を取らなかった皺寄せがあいつらに来ているとしか思えない。
この状況には、思わず南無阿弥陀仏を唱えたくなってしまう。
「ちなみに、お前がさっきからタメ口を利いているこいつは、葉月珈琲の社長で、俺たちの上司だ」
「えっ、確かマスターの息子さんじゃなかったんですか?」
「息子ではあるけど、俺の方が部下なんだよ」
「タメ口利くのはいいけどさ、うちの一員になったからには、ちゃんと結果を出せよ」
「分かってるって。まっ、見ていてくれよ、あず君」
島塚が僕の横に回り肩をポンポンと軽く叩きながら余裕の笑みを浮かべた。こいつ、見かけによらず人懐っこいな。でもここまでうちでの勤務に耐えているあたり、仕事はできるみたいだな。
美月と2人になると、彼女から葉月ローストの様子を伺うことに。
「みんなの仕事ぶりはどう?」
「はい。マスターも陽子さんも絵に描いたような仕事っぷりで、接客も特に問題はありませんでした。マスターの焙煎技術には惚れ惚れします」
「島塚はどうなの?」
美月がこの店のアイドル的存在なのは客たちの反応を見れば分かる。問題はこいつだ。実力はまだ未知数だが、親父が言うには、筋は良かったとのこと。
「島塚さんは去年のJBrCでファイナリストになっていて、2年前のJHDCチャンピオンです」
「……なるほど、履歴書に書かれていたことは嘘じゃなかったようだ」
「あんなに優秀なのに、どうしてリストラされちゃったんでしょうねー」
「虎沢グループが崩壊したからだ」
「! 島塚さん! いたなら言ってくださいよぉ~」
美月はビックリして冷や汗をかいているが、島塚はお構いなしに僕らが使っているテーブル席にのっそりと座った。マイナー競技会とはいえ、バリスタ競技会を制覇するだけあって肝が据わっているな。
「わりいわりい、ちょいと噂話が聞こえたもんでね。俺がリストラされたのは、俺がいたコーヒー会社が虎沢グループの世話になっていたこともあって、あのどら息子が、当時俺のいたコーヒー会社に天下りでやってきたのが悪夢の始まりだった」
「生け贄に選ばれたんだろ?」
「ああ。俺は虎沢に目をつけられて、あいつから度々理不尽な命令をされたり、酷い時は暴力を振るわれることもあった。俺がJHDCで優勝したあたりから急に俺を執拗に攻めるようになってさ、お前は葉月梓によく似てるから気に入らねえとか、言いがかりをつけてきて、もう耐えられなくなって抵抗したら、この有り様だ」
「なるほど、自分からリストラされるように仕向けたわけか」
「ああ。俺はあんたのことを知ってはいたけど、あんたに似てるって言われてから気になってな。それで調べてみたら、葉月珈琲が求人募集をしていたから応募したってわけだ」
こいつもナチ野郎の被害者だったか。
仕返しもできずに迫害を受けるのはさぞ辛かっただろう。あいつのせいで島塚がいたコーヒー会社は優秀な人材を失うこととなり、しかも虎沢が逮捕されたことで一気に評判を落とし、倒産となった。
コーヒー会社にしてみれば、疫病神以外の何物でもないな。
美月といい、島塚といい、あいつの被害を受けた奴多すぎじゃね?
「あん時の地獄みてえな経験に比べりゃ、ここの勤務の厳しさなんて、どうってことねえよ」
「それは同感だ。でもコーヒーカクテルの練習だけど、ここじゃできなくないか?」
「練習だったら、真理愛ちゃんの家でやらせてもらってた。確かあんたの同僚だろ?」
「あー、なるほどねー」
真理愛の手解きを受けていたのか。
それにしたって習得が早いな。真理愛にコーチングを受けていたのは幸運だった。
「島塚さんがJCIGSCに出たいと言うので、私から真理愛さんにお願いして練習場所を提供してもらうことになったんです。つい最近までドリップコーヒーばかりだったのに、いきなり決勝進出なんて凄いです。私ももっと精進しないといけませんね」
「筋は良いみたいだな」
「今日も真理愛ちゃんの家で課題のアイリッシュコーヒーの練習をするんだ。JCIGSCに優勝したら、今度はJBrCに出場する予定だ」
「別にいいけどさ、確かJBrCは1社から1人までしか出場できないから、他にも参加希望者がいる場合は出場権を賭けて勝負してもらうことになるけど、それでもいいか?」
「ああ、別にいいぜ」
やけに強気だな。まあでも、自信がないよりずっとマシか。美月は美羽に誘われ、穂岐山バリスタスクールに度々臨時講師として招かれていた。その影響からか、全国から多くのバリスタが転職してきており、カフェや焙煎屋が続々と生まれ、岐阜市は段々とバリスタの街として生まれ変わりつつあった。
葉月ローストも焙煎したコーヒーだけじゃなく生豆も売っている。
ここに来る客のほとんどはテイクアウトが目的だ。
「あず君の目に狂いはなかったね」
一休みしながら注文したコーヒーを飲んでいる僕に、お袋が話しかけてくる。
「だから親父に人事権を渡したくないんだよ」
「島塚君ね、今年で30歳なんだけど、まだ独身なんだって。璃子の結婚相手にどうかなって思ってるんだけど。結構良い男だし、背も高くて男前だし、私は気に入ってるの」
「まさかとは思うけど、璃子にお見合いをさせるつもりじゃねえだろうな?」
「璃子はもう23歳だよ。ワールドチョコレートマスターにもなって無事に夢を叶えたんだから、そろそろ結婚を考えてもいいかなって思うの」
「孫の顔ならもう見ただろ」
「それはそうだけど、結婚って良いものだよ」
「――璃子だったら余計なお世話って言うと思うけどな」
璃子には蓮がいるわけだし、島塚と距離が近いのは美月や真理愛だ。
このスレンダー巨乳、妹補正を抜きにしても美形の顔、しかも世界一のショコラティエ。
璃子は蓮とつき合ってはいるが、最近はよく他の男から声をかけられている模様。交際を秘密にしている弊害が表れたようだ。得意分野の第一人者になれば好きな相手を選び放題だが、そういう人は必然的にモテるため、他の異性が放っておかない。璃子は言い寄ってくる男たちを丁寧に断る作業に追われてしまい、最近は引き籠り気味だ。璃子が言うには、結婚してもいいが、名字を変えるのが嫌らしい。僕みたいに制度を気にしない人間ならともかく、璃子は常識人としての顔も持ち合わせている。皮肉にもそのことが、璃子を結婚から遠ざけてしまった。
やっぱり人生って……トレードオフだな。
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島塚俊樹(CV:山下大輝)