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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第7章 バリスタオリンピック編
168/500

168杯目「競技の後」

 ――大会4日目――


 バリスタオリンピックもいよいよ後半に突入する。


 既に参加者の半数を超えるバリスタが予選の競技を終えた。誰もが準決勝進出を願っているところではあるが、この日も優勝候補が何人か参加している。後で見に行ってみるか。


 午前12時、朝のリハーサルを終えてホテルに戻り、バイキング料理を食べている時だった。


 いつもの6人で雑談をしながら食べているが、伊織はどこか浮かない様子だ。


「伊織、どうした?」

「明日結果発表なんですよね……」

「何、結果を気にしてるわけ?」

「あず君は平気なんですか?」

「蓋が開くまでは箱の中身を気にしない主義だ。気にならないと言えば嘘になるけど、今の時点でおおよそのセミファイナリストが決まってるかもな」

「あず君の他に、誰か準決勝に進出しそうな人っていますか?」

「アメリカ代表のマイケル、オランダ代表のディアナ、スウェーデン代表のヴォルフあたりは準決勝まで上がってくると思うぞ」

「ヴォルフ?」


 伊織が首を傾げた。この仕草もすっげぇ可愛い。


 それにしても……かなり好みが分かれているな。


 僕は蜂蜜がたっぷりかかったクワトロフォルマッジ、璃子はブイヨンとバゲット、唯は鯖の味噌煮と白米、優子はエビチリとチャーハン、伊織はオムライスとグラタン、真理愛はチーズフォンデュとラクレットを食べている。ホテルのバイキングなだけあって何でも揃っている。


「ヴォルフ・ラーゲルクランツ。トップバリスタの1人だ。名前くらい覚えとけ」

「は、はい。あず君は他のバリスタにも詳しいんですね」

「調べなくても客が勝手に教えてくれるからな」


 この日の目玉はスウェーデン代表のヴォルフだ。


 ヴォルフは今大会優勝候補の1人であり、少し長めの金髪に厳つい顔と長身が特徴の男だ。だが競技の時は物凄く丁寧な口調とスムーズな動きで観客を魅了する。


 WBC(ダブリュービーシー)WCIGSC(ワシグス)WLAC(ワラック)、バリスタオリンピック前回大会のファイナリストであり、マイケルに次ぐトップバリスタの1人だ。


 ワールドコーヒーイベントが主催する、8種類のメジャー競技会の内、その半分にあたる4大会で活躍しており、今大会も優勝候補に挙げられている。今回は前回大会ファイナリストが勢揃いしている。だが全員が次も決勝までいけるわけではないのが、この大会の面白いところだ。


「ちょっと失礼。アズサハヅキだよね?」


 噂をすれば何とやら。スウェーデン語交じりの英語で話しかけてきたのはヴォルフだった。


「そうだけど、なんか用?」

「挨拶しておこうと思ってね。今日は俺の競技の日だからさ。昨日の競技は見事だった」

「ありがとう。あんたも頑張れよ」

「ああ。アジア勢初のセミファイナリストになれることを期待してるよ。じゃあな」


 ヴォルフが言葉を残すと、食器が乗ったトレイを持り、仲間の元へと去っていった。


 ヴォルフのそばにはニュージーランド代表のジョン・アーロン、南アフリカ代表のロバート・マクレガー、アイルランド代表のアリス・リプトンがいる。薄々気づいてはいたけど、このホテルにも何人か代表がいた。普段見かけないのは、別の場所でリハーサルをしているからだろう。


 日本代表以外は全員が遠征組。体力のない僕には丁度良いハンデだ。


 このホームゲームがもたらすアドバンテージは非常に大きい。


「あの人って、今日の競技者ですよね?」

「ああ。随分と余裕だな」

「確か6時から競技を行う最終競技者だ」

「最終競技者なら、まだゆっくりしていられますね」

「とは言っても、最初と最後はプレッシャー半端ないぞ。そんな中であの余裕の表情だ。あれはかなりの場数を踏んでいると見て間違いない」

「あず君くらいになると、見ただけで分かるんですね」

「選ばれし者にしか分からない感覚なんだろうね」


 みんな大袈裟だな。それを言うなら、伊織だって選ばれし者の1人だってのに。


「優子さんはあず君と璃子さんの両方をサポートしてるんですよね?」

「うん。バリスタオリンピックが終わったら今度はワールドチョコレートマスターズのお手伝い。多分今まで生きてきた中で1番忙しい年になるかも」


 優子と真理愛が隣同士で世間話を始めた。他の団体客と違うところは、全員で1つの話題じゃなく、それぞれが勝手に話し始め、話の内容を気に入れば勝手に混ざるのが特徴だ。


 今にして思えば、本当に自由すぎる人ばっか集まったな。親が絡んだ途端に不自由になるけど、普段はどこまでも制限なく、自由な発想で駆け抜けていくタイプの人間ばかりであることが分かる。みんながこれだけ奔放なのって、周囲の環境によって抑圧され続けた反動だろうか。そう思えてならない。


「私たちって、結構手伝う立場になることが多いですよね」

「縁の下の力持ちって感じ。でもあたしにはそれが丁度良いかも。特別目立ってないけど、実はずっとスターを支え続けてる存在って、なんかカッコ良くない?」

「それ分かります。私は大会に出ている立場でもありますけど、私の場合はちょっとだけあず君とは目的が違うんです。宣伝や精進のために優勝を目指すのではなくて、自分が一生懸命考え抜いて創造した作品をみんなに見てもらいたいと思って参加してるんです」

「純粋にコーヒーを楽しんでるんだ」


 コーヒーを楽しむ気持ち……真理愛の言い分にはかつての僕と同じものがあった。


 大会に出るようになる前までは、ずっとのんびり過ごせればそれで良かった。


 多分、あの時の僕が1番コーヒーを楽しんでいたのかもしれない。次々と出てくるコーヒーの味を覚えるのに夢中になっていたあの時……今でもその気持ちは変わらない。


「あず君、昨日の件なんですけど……あず君?」

「あっ、悪い。ボーッとしてた」

「お兄ちゃんでもボーッとすることあるんだ」


 璃子が意地悪そうな顔で僕をおちょくっている。僕にも悩みはあるんだよぁ~。


「葉月珈琲を背負ってるからな」

「そこは国を背負ってるじゃないの?」

「この国は僕が貧困に陥っても全く助けてくれなかったし、そればかりか生きる力さえ奪おうとした。こんな……教育も社会保障も満足にできない国を背負った覚えはない」


 沈みかけの船みたいな国を背負うなんて、冗談じゃねえよ。国の代表になったのは、世界大会に出るための手段に過ぎない。国を背負っている感覚など、全く持ち合わせていない。


 この国は貧困に陥ったうちの親に生活保護を支給しなかった。要件は十分満たしてたのに断られた。国に見捨てられたのだ。なのに都合の良い時だけ国を背負うなんて……ふざけんじゃねえよ!


 こちとらそのお陰でおじいちゃんの家にコーヒーを飲みに行くぐらいしか楽しみがなかった。他の家の子供であれば享受できたはずの恩恵をほとんど受けられなかったあの日々を……忘れたことはない。


 そんなに日の丸を背負ってほしけりゃ、あの時の対応のまずさを認めてから出直してきやがれ!


「あず君くらいだよー。自分の国を嫌ってる代表は」

「僕にとっての本国は葉月珈琲だ。自分を見捨てた国を見捨てて何が悪い?」

「……お兄ちゃんは一度、ちゃんと過去の清算をした方がいいかもね」

「分かってる」


 璃子までもが過去の清算を支持するようになった。でも一体どうすればいいのやら。


「あのー、そろそろ本題に入ってもよろしいでしょうか?」


 真理愛が恐る恐る低めの高さに手を上げながら注意を向けさせようとする。


「どうかした?」

「昨日のアイリッシュコーヒーの件です。メールでお母さんに伝えたところ、別に構わないと言ってましたけど、昨日出したレシピを破棄させても良かったんですか?」

「昨日のワインコーヒーとキール・ロワイヤル・コーヒーをメニュー化しても、コーヒーブームが去ったら飲まれない可能性があった。不動の人気を誇るレギュラーメニューを作らないと意味がない」


 自ら退路を断った。敗退した瞬間、真理愛を手放す破目になるかもしれない。


 中途半端な決断だけはしたくなかった。結果的にワインをベースとしたコーヒーカクテルはなしになったが、真理愛の両親の目的はワインコーヒーじゃない。レストラン・フランソワ東京支店を守り続けることだ。一時のブームに乗っかっただけの作品では駄目だ。


 コーヒーカクテルの王道、アイリッシュコーヒーなら大丈夫だ。


 しかし、これを披露するのはもっと後だ。


「ただそうなると、かなりのリスクを背負うことになりますよ」

「リスクってどういうことですか?」

「あず君がアイリッシュコーヒーを淹れるのは決勝なんです。もし予選か準決勝で敗れれば、アイリッシュコーヒーを披露する機会がなくなりますし、決勝までいけなければ、あず君が完全監修したアイリッシュコーヒーを発売しても、恐らく売れないかと」

「だな。一般の人は1番にしか興味がねえからな」

「それなら心配ないですよ。あず君があず君すれば勝てます」


 唯が太鼓判を押すように僕を動詞にする。


 毎度思うんだが、僕はいつから動詞になったんだ?


「ふふっ、そうですね」


 これは前代未聞の賭けだ。だが僕は真理愛を手放す気はない。


 真理愛が僕を応援してくれているように、僕も真理愛の夢を応援したい。そのためには彼女が安心してバリスタ競技会に出られる基盤を維持しなければ。もはや僕の競技は僕だけのものじゃなくなっていたのだ。1人で競技をしていた時よりもプレッシャーが重いけど、何故だか1人の時よりも安心している自分がいるのだ。この気持ちは大事に持っておくべきなんだろう。


 午後6時、準決勝と決勝のリハーサルを済ませると、今度はヴォルフの競技を見るために彼のブースへと向かった。ヴォルフの競技はかなり洗練されていた。流石は前回大会ファイナリストなだけあって手慣れた動きだ。カリスマ性やホスピタリティはマイケル以上のものを感じた。


 エスプレッソ部門ではうちの農園とは別のパナマゲイシャを使用した。どうやらこのコーヒー豆を中心に競技をしていくらしい。極力1つの豆を使っていくとは相当な自信だ。エスプレッソにかなり高級な卵の卵黄とメープルシロップを投入し、それをブレンダーで混ぜて提供していたが、まさかバリスタオリンピックの舞台でエッグコーヒーを見られるとは思わなかった。


 通常はロブスタ種のコーヒーに卵黄と砂糖を加えるものだ。ヴォルフはそれらの食材の上位とも呼べる食材を使用し、かなりとろみのあるドリンクに仕上げていた。マウスフィールは良さそうだが、卵の味がコーヒーの味を潰してしまわないか、それだけが心配だ。


 だがこれを使うということは、課題は解決しているんだろう。


 ラテアートは白馬と白鳥を描いていた。


 シンプルではあるが、リアルな描き方になっていた。牛乳の使い方に無駄がないし、コントラストもハッキリしている。ありきたりの動物や植物であっても、絵がうまければハイスコアを記録できるし、味に自信があるなら簡単なラテアートを選ぶのも1つの手である。


 ドリップコーヒーはエアロプレスを使用していた。


 エアロプレスはフレンチプレスとは対照的に、コーヒーオイルが少なくなる分、クリーンな味わいになり、雑味を極限まで減らすことができる比較的新しい抽出器具だ。うちにもいくつかあるけど、いつかは究めてみたい。そのままでも十分美味そうだ。彼はドリップコーヒーを提供した後、同じ種類のドリップコーヒーにアップルシロップを混ぜ、小さなフライパンに入れて温めていた同じ種類の豆から作ったエスプレッソを投入してよく混ぜていた。煮詰めたコーヒーを投入することで、フレーバーを更に濃厚なものに仕上げ、ボディやバランスを整えるのだとか。


「フライパンで煮るんですね」

「さっき4杯のドリップコーヒーを同時に淹れていただろ。通常は温度を保つために2杯ずつ淹れるものだけど、あれで時間短縮ができるし、フライパンで煮たコーヒーを入れることで温度を保つことができる上に、煮詰めることであのコーヒーが持つフレーバーを開かせることができる」

「時間短縮とフレーバーの解放を同時にやってるんですね。エスプレッソ投入は大丈夫なんですか?」

「問題ない。シグネチャーはアルコール以外何でも使っていいことになってる。でもエスプレッソ部門であればエスプレッソの味、ブリュワーズ部門であればドリップコーヒーの味が支配的にならないと減点されるし、混ぜる場合は片方の量を控えめにする必要がある。あれはエスプレッソを入れることで、味に奥行きを出してる。僕も実験でやってた」

「見てるだけでそこまで分かるんですね」

「まあな」


 ドヤ顔を決めると、伊織は僕を一瞬見た後クスクスと笑っている。伊織の笑いのツボが分からない。


 今度はブルーチーズに甘さ控えめの蜂蜜をかけたものを酸味の効いたドリップコーヒーと共に提供した後、ナッツ入りのベイクドチーズケーキとパナマゲイシャのエスプレッソを提供する。どうやらヴォルフが使っているゲイシャのメインフレーバーは林檎のようだ。林檎類の食材が多いのは林檎のフレーバーを更に引き上げるためだろう。ナッツ入りのベイクドチーズケーキと一緒に食べることでアップルタルトのフレーバーになり、アフターに蜂蜜を感じるのだとか。


 何だか森の家で料理を食べているような味わいを容易にイメージできる。


 1つ目のコーヒーカクテルはエスプレッソベースのアイリッシュコーヒーだった。


 アイリッシュウイスキーは数ある種類の中から辛さが特徴のものを選び、シュガーシロップの代わりにオリジナルコーヒーシロップを投入し、パナマゲイシャのコーヒーを混ぜ、最後に生クリームをシェイカーからフロートさせる。ここでようやく、このゲイシャがウォッシュドプロセスであることが判明する。なるほど、このプロセスだと酸味より甘味が優先されて林檎のようなフレーバーになるわけか。


 2つ目のコーヒーカクテルはドリップコーヒーベースのスカンディナヴィアンコーヒーである。


 アイリッシュコーヒーと見た目は似てはいるが、アクアビットというジャガイモを主原料としたスピリッツであるために名称が変わる。名前通り北欧を代表するコーヒーカクテルだ。これも通常のものとは食材が少しばかり異なっている。アクアビット、ウォッカ、ブラウンシュガー、エチオピアゲイシャを混ぜ、急冷してからコップに注ぎ、最後に生クリームを注いで完成だ。ホットの次はコールドか。


「コーヒーは俺に新たなインスピレーションをもたらしてくれた。その機会を与えてくれたバリスタオリンピックに関わる全ての人に感謝する。タイム」


 ヴォルフの競技が終わり、歓声が辺りに響くと、彼は両手を上げて歓声に応えた。


 これで大会4日目の競技が全て終了した。予選もあと1日か。


「これが世界なんですね」

「ああ。1回出てるから、時間短縮の方法まで知り尽くしてる」

「参考になりましたか?」

「かなりな。明日はマイケルか。化け物のオンパレードだ」

「リハーサルしますか?」

「そうだな。準決勝に進出したらリハーサルの時間もなくなる。リハーサルは明日まできっちりやる。ずっとつき合ってくれるか?」

「はい。夕食は控えめにしておきます」


 ホテルに戻り、夕食を食べた。パンフレットにも手順が書かれている。


 最悪これを見ながら競技を進めることもできる。


 問題はこの()()を試せるかどうかだけど、世界で初めてのプロセスだ。


 驚かせるくらいはできると思う。


「あず君、明日結果発表だね」


 莉奈が栗鼠のように近づいてくると、僕の隣に腰かけた。そばには静乃と愛梨もいる。


「結構色んな人に言われたなー」

「あず君よりもみんなの方が結果を気にしてるみたいだね」

「参加者でもなければ、僕の身内ですらないのにな」

「そりゃファンなんだから気にするよー。あのさ、あの時の約束覚えてる?」

「約束?」

「やりたいことが見つからなかったら、僕に言えって言ってたよね?」

「それはそうだけど、本当にないの?」

「……うん」


 莉奈は頷きながら困った顔を隠せない。


 やりたいことを見つけるのってそんなに難しいか?


「あず君、私もあず君の店で働いていいかな?」

「駄目だ。うちはもう十分人手がいるし、親父の店も今年補充したばっかりだ」

「お兄ちゃん、1つ気になってたんだけど、どういう人を選考で通したの?」

「基本的には飲食店で働いた経験のある人とか、文法をちゃんと理解してる人かな」

「経験者はまだ分かるけど、何で文法を気にするの?」

「文法の基礎も分からない奴なんて話にならねえよ。学歴は問わないけど、キーボードで文章の1つも書けない奴がまともなリテラシーがあるとは思えないし、読解力のない奴は何を言っても右から左だ」


 採用活動をしている時、ずっと色んな人のエントリーシートを見ていたから分かる。文章もまともに書けない奴がかなり多かった印象だ。仮にも成人した連中の約3割程度が小学生レベルの文章だった。


 教育って大事なんだな。教え方次第で薬にも毒にもなる。


「莉奈、やりたいことが見つかるまでの間、うちでバリスタ修業するか?」

「できればレジ係とかがいいんだけど」

「レジ係なんてうちにはないぞ。世の中のIT化が進んでいけば、そう遠くない将来、レジ係なんて必要なくなる。うちは来年から現金廃止にするし、これで時代遅れな客はうちに来れなくなる」

「どこか良い就職先ってないの?」

「君は、自分の働く場所さえ、自分で決められないのか?」

「……」

「今まで何してた?」

「……」


 答えられないか。なら推測に頼るしかない。片手の指を頭に当て、考えを巡らせた。


 莉奈は高校3年生、今は受験シーズンだ。にもかかわらず今ここにいるということは、受験勉強を避けているということだ。つまり高卒で就職する気があるってことか。だがどこに就職すればいいのかが分からない。莉奈の家は母子家庭で貧困状態、伊織から聞いた話だと、母親が今働けない状態らしい。


 これ……このまま莉奈が稼げなかったら、ゲームオーバーじゃねえか?


 うちもかつては相対的貧困だったが、莉奈はその比じゃない。


 手段を選んで生きていれば、絶対的貧困に陥る危険性すらある。生活保護を受けようにも、親戚が金持ちだと受給し辛いだろうし、不本意ではあるが、柚子に相談してみるか。


「莉奈、うちの親戚に会社を経営してる人がいるんだけどさ、今度紹介してやろうか?」

「うん。難しい仕事じゃなければできると思うから、是非お願いするね」


 莉奈が僕に甘えてくる。一度彼女の家庭の様子を隅々まで見た方が良さそうだ。


 僕らはリハーサルを済ませてから風呂に入り、日が変わらない内に眠りに就いた。今は余計なことを気にしている場合じゃない。バリスタオリンピックはまだまだこれからだ。


 問題こそ山積みだが、いつか必ず解決してみせる。

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読んでいただきありがとうございます。

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