163杯目「世界が日本にやってきた」
――大会1日目――
バリスタオリンピック2015東京大会が遂に開催された。
既に10月を迎えていた。この大舞台だけではない。他のバリスタ競技会の予選を突破したバリスタたちが、コーヒーイベントの一環で行われる準決勝や決勝の舞台に参加する日でもある。優勝した者は来年行われる世界大会に出場することになる。
午前6時、いつでも出かけられるよう日程を調整した。開会式には無事に出席できそうだが、やはり慣れない時間に起きるといかんせん眠い。唯が起こしてくれなかったら、多分遅刻していた。目覚まし時計だけでは限界がある。日本代表が旗を持ってステージに登場するのは最後であるため、僕らは出番が来るまでは穂岐山珈琲のオフィスビルへと集まった。
僕、璃子、唯、優子、伊織、真理愛の6人が合流する。
「あっ、あず君来た」
美羽が僕に気づくと、穂岐山珈琲の面々が一斉に僕らを見た。
「葉月珈琲のスタッフが勢揃いだね」
穂岐山社長が僕らを見ながら言った。伊織は何だか自分のことを言われているかのような表情になってるのが可愛い。穂岐山珈琲の育成部も全員が揃ったようだ。
この面々で日本の国旗を振りながらステージに出るわけだが、代表の旗は持ちたくない。
「大旗は松野が持ってくれよ」
「えっ、何で俺?」
「何言ってんの。大旗はあず君が持たないと」
「旗なら小さい方にしてくれ。力仕事は苦手なんでね」
「じゃあ一緒に持とう」
「えっ、一緒に?」
おいおい、大観衆の前でこいつと一緒に持つとか、マジありえないんだが。
「あず君は日本のエースなんだから当然でしょ」
「エースになった覚えはないんだけど」
「あの、あず君が大旗持ってるところ見たいです」
伊織が顎の下にある両腕をグーにし、目をキラキラと輝かせながら僕に強請る。
そんな可愛い顔でお強請りしないでよぉ~。
「――しょうがねえなー。小5以来だ。重い物を持つのは」
「言ってもそんなに重くないぞ。両腕で持ち上げて1周回るだけだ」
「競技の日だったらどうなってたか」
「大袈裟ですよ。それにあず君、毎日体鍛えてるじゃないですか」
「そりゃそうだけど……」
みんな僕に先頭を歩いてほしいみたいだ。僕は端っこの方で目立たないようにしたいけど、そうは問屋が卸さないのが、1位通過の悩めるポイントだ。正直に言えば、開会式も閉会式もすっ飛ばして競技と結果発表だけやってほしいものだが、観客はそれを望んではいないのだろう。
午前8時、開会式の時間がやってくる――。
全員正装を着用しており、僕と松野は競技用の服装に着替えた後だ。店にいる時と変わらない服装とはいえ、この時ばかりは重圧から身を守ってくれる鎧のような気がした。僕は大旗を持たされ、案内役が手を会場の向こう側へと翳すと、唯が僕の背中を押してくれた。
日本語で日本とコールされてから英語でジャパンとコールされると、会場の盛り上がりがクライマックスとなった。会場にはあず君頑張れという横断幕が張られていた。
――そうか、これがホームゲームというやつか。
どちらかと言えば、味方の方がずっと多い。今まではあいつらを敵だと思っていたけど、いつの間にかあいつらを味方だと思える自分がいた。大旗は最初こそズシッときたけど、意外と長く持ち続けることができた。今までは力仕事なんて全然できなかったのに、何故だか不思議と持ち続けられた。
凱旋式のような1周が終わると、今度は各国のバリスタやその関係者たちが退場していき、しばらくは凝った演出が続いた後、開会式は無事に終了となった。
午前9時、会場の各ブースでバリスタ競技が行われた。
大会の予選は1日20人のバリスタが競技を行う。参加者は100人いるため、5日かけて行われるというわけだ。準備時間が30分、本番が1時間、片づけが30分だから合計2時間かかる。もちろんサポーターの補助が必要不可欠になるわけだ。
唯はJBC準決勝に出場するべく、別の会場へと歩いて行ったが、ディアナの競技時間がまだであるため、一緒についていくことに。
途中から僕と伊織が一緒に行動し、唯は真理愛とJBC参加者の控え室に、璃子と優子は会場の調査へと出かけた。唯が競技をするところを見るのは久しぶりだ。別の会場はコーヒーイベントに特化した会場だった。バリスタオリンピックの影響でコーヒーブームであるため、ここぞとばかりに新しいコーヒーや抽出器具を売ろうとしていたのだ。
売り物に目をやると、タイマーつきドリッパーが売られている。しかも静乃たちが様々な抽出器具を売っていたのだ。興味を持ったため行ってみることに。
「あっ、あず君、伊織、いらっしゃい」
「もしかして、これって君の会社の発明品なの?」
「うん、そうだよ。あず君言ってたよね。抽出が始まると同時にタイマーが動き出せばいいのにって。それをお父さんに伝えたら開発してくれたの。抽出をしている時だけタイマーが作動するようにして、水洗いしても大丈夫なように防水性にしたりとか」
「――静乃に助けられてたんだな」
「私はできることをしただけだよ」
静乃の助けがなかったら、WBrCで勝てていたか怪しいものだ。僕にとって抽出しながらプレゼンをするのは至難の業だ。それを可能にしたのが、タイマーつきドリッパーと言っていい。伊織のスランプ脱出のきっかけにもなっている。
いつか静乃にお礼がしたい。彼女のためにできることはないだろうか。
「静乃、何か悩み事とかある?」
「悩み事?」
静乃が斜め上を向きながら手の甲を顎の下に乗せて悩み出した。
悩みがないのが悩みなのか?
「うん。静乃にお礼がしたいというか、何かお返しをしないと気が済まないというか」
「うーん、お礼ねぇ……あっ、そうだ。ジェズヴェの宣伝をしてくれないな?」
「ジェズヴェかー。別にいいけど、何でまたジェズヴェなの?」
「うちのお母さんがジェズヴェを色んなコーヒーファンに広めたいって言ってたんだけど、ジェズヴェを知らない人だらけで広まらなくて」
「ジェズヴェを知ってる時点で立派なコーヒーオタクだ。ジェズヴェの大会でもあればいいんだけど」
――ん? 待てよ。確か以前のワールドコーヒーイベントでそんな大会があった気が。
ふと、思い立った僕は、スマホでジェズヴェの大会がないか調べてみることに。
「どうかしたの?」
「――静乃、その願い、叶えられるかもしれないぞ」
「本当に?」
「うん。そのジェズヴェ、10個ほどくれないか?」
「分かった。お父さん、ジェズヴェ10個だって」
「ええっ!? 10個も!?」
中津川社長はこっちを見ると、ニコニコと微笑んだ。
ジェズヴェは中東や東ヨーロッパでは人気がある。だが日本だと、ジェズヴェでコーヒーを淹れている人自体が少ないのだ。好んで使う人が少ないため、当然売れる量も少ないのだ。
「配送でいいかな?」
「うん。うちの家まで送っておいてくれ。請求は葉月珈琲に頼む」
「ああ、分かった」
中津川珈琲から最初にした買い物がジェズヴェになるとはな。
さて、そろそろ唯の応援にでも行くか。
「ねえねえ、あれってあず君じゃない?」
「えっ、マジで? サイン貰いに行こーよ」
「それいいねー、握手もしてもらう?」
「してもらおうよ。すぐ行列できるかもよー」
僕の位置がバレた途端、周囲に人が集まってきた。
人混みは苦手なんだけどな。体力を奪われるのは競技の時だけにしてほしい。
「あのー、サイン頂いてもいいですか?」
ファンの1人が声をかけてきた。伊織も静乃も僕の性格を知っている。それ故早く助けてあげないといけないと言わんばかりの表情だ。だがもう心配はいらない。顔を見なければ大丈夫だ。
「悪いけど、ファンサービスはしないって決めてるから」
「あっ、そうですか。すみません」
ファンが頭を下げてそそくさに去っていく。他のファンも見ていたのか、僕に話しかけることはなかったが、ずっと僕の近くで噂話をし続けていた。
「ちゃんと自分の口で言えたじゃん」
「これくらいできる。ていうかできないといけなかった」
「もう治りかけですか?」
「そうだな。僕を縛っているのは負の歴史だけだ。これを清算すれば、日本人恐怖症は克服できると思ってる。みんなが僕の言い分に耳を傾けてくれるようになるためにも、この大会で優勝して、もっと影響力を高めていこうと思ってる」
「影響力を高めたら、負の歴史を清算できるの?」
「後で分かる」
僕には確信があった……世間との戦いに終止符を打てば、この病気が治るという確信が。
だが今は大会中だ。まずは予選突破に全神経を注がないとな。
「あず君、いよいよだね」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえてくる。
振り返ってみれば、真由と拓也が佇んでいた。真由は白と黒のストライプを基調とした可愛くてオシャレな格好をしていたけど、拓也は短パンにTシャツという手軽でお粗末な格好だった。ニートになると見境がなくなるのだろうか。明らかに場違い感があるけど、他にも拓也と似たような格好の人がちらほらいた。あまり目立ってはいない。バリスタにも軽装で出かける人は割と多い。
「真由、それに拓也、どしたの?」
「どしたのちゃうやろ。応援行くゆうたやん」
「すっかり忘れてた」
真由と拓也も応援に来てくれていた。
2人の家の人たちもパソコンから僕の応援をしてくれている。伊織とも挨拶を済ませると、しばらくは伊織との会話になる。人見知りは以前よりも緩和されていたようだ。
「なるほどなー、学校は生きる力を育ててくれへんから、伊織ちゃんを育てるっちゅーわけか」
「はい。今ではお客さんに出しても恥ずかしくないコーヒーを淹れられるようになりました」
「伊織が人生で成功して、学校教育にどぼ漬けになっている他の連中の多くが、満足な人生を送ることに失敗すれば、教育制度の不備を証明できる」
「でもそれって、なんか実験みたいやな」
拓也がケロッと笑いながら言った。
こいつ、余計なことを……でも、ちゃんと話しておいた方がいいよな。
「実験って、どういうことですか?」
「伊織、今までずっと黙ってたけど、これは君の人生を使った臨床実験みたいなもんだ」
「臨床実験?」
「ああ。レールから外れた後で手に職つけたパターンと学校教育を真に受けたパターンの内、どっちの方が幸せに生きられるかっていう実験だ。言おうと思ってたけど、言い出せなくて済まなかった」
伊織に向かって頭を下げた。だが彼女はきょとんとしていた。
裏切られたとも利用されたとも思っていないようだ。
「実験は承知の上です。何だかんだ言っても、最終的に自分で選んだ道ですから、あず君が罪悪感を持つ必要なんて、どこにもないと思いますよ」
何て良い子なんだ。ずっと彼女を使って教育制度の不備を証明しようと思っていた自分が恥ずかしくなってきた。ていうか思った以上に伊織が大人であることに驚かされる。
「これは責任取ってあげないとね」
「心配すんな。要は飯を食える大人になればそれでいいわけだ。だから伊織のことは僕が責任を持って育てていく。何と言っても天性の才能があるんだからな」
「あず君がそこまで言うってことは、結構凄い子なんだね」
「別に大したことじゃないですよ。たまたまコーヒーを淹れるのが得意だっただけですから」
「習得も速いし、並大抵のセンスじゃない。伊織はコーヒーに愛されてる。もっと自信を持て」
「……はい」
伊織は微笑みながら返事をする。まるで天使のような微笑みだ。見ているこっちまでうっとりしてしまう究極のホスピタリティだ。段々と才能を開花させているが、どこかでそれを確かめる必要がある。
「あの、そろそろ唯さんの競技が始まるんじゃないですか?」
「もうそんな時間か。あのさ、これからうちの彼女の競技が始まるんだけど、見に行くか?」
「ああ、ええで。あず君の競技が終わるまで、真由の家に泊まらせてもらってんねん。もっと遊びたいからさ、なるべく生き残ってな」
「あず君にそんな心配をする必要はないと思いますけど」
伊織が少しばかり腹を立てた口調で拓也を責めた。彼女も葉月珈琲の一員である以上、僕と一心同体である。必ず勝ち上がることを確信したように信じてくれている。
「お、おう、そうやな。まああず君やったら大丈夫やろ」
「そうに決まってます。あず君は私たちのヒーローですから」
ヒーローか。いつの間にそんな領域に達したのやら。
自分の限界を知りたい。他人が突きつけてきた限界なんてたかが知れている。挑戦すればするほど、自分はまだいけるという自信が確信へと近づいていくばかりだ。僕は気づいた。限界とは超えるものであると。どこまで登りつめられるかを考えただけでワクワクする。
しばらくすると唯のプレゼンが始まった。
どうやら真理愛のサポートがうまくいったようだ。サポーターがしっかりしているだけでバリスタは安心を感じることができる。1時間の競技を想定したリハーサルを繰り返していた僕にとって、この15分はあっという間だった。シグネチャーの味わいが複雑な気もするが、決勝までいけるだろうか。
16人中、決勝進出できるのは6人だ。
「あず君、そろそろディアナさんの競技が始まりますよ」
「あー、そっか。ディアナの競技は12時からだな。急ぐぞ」
「はいっ!」
伊織と共にバリスタオリンピックの会場まで足を運ぶ。
ディアナは美貌と実力から人気が高く、彼女がいるブースには多くの観客が駆けつけていた。マイク越しの声を聞き取りながら、新たなコーヒーの可能性を目の当たりにした。
伊織が分からなかった部分は僕が日本語訳で話していた。
コスタリカゲイシャにオレンジの皮を裏漉ししたものを更に濾して熟成させ、液体を投入したシグネチャーはかなり洗練されていた。トリュフ入りヤギのチーズをコロンビアゲイシャから作ったドリンクと共に提供し、ワインのような風味のコーヒーがチーズととても相性が良いのだとか。ドリップコーヒーの抽出も底が見えるくらいに純度が高く、傍から見ていても香しさが目で分かるくらいだ。
コーヒー、アルコール、シュガーシロップのバランスが良く、容器もワイングラスという徹底ぶり。葡萄のフレーバーで攻めるつもりらしい。最後に某不思議の国のキャラクターのラテアートを描くと、ラテアートが完成する度に会場を沸かせていた。
「コーヒーが持つ様々なフレーバーの可能性を感じていただけたでしょうか。皆さんがコーヒーを最後までお楽しみいただけたなら幸いです。タイム」
彼女の予選はこれで終わった。あの時からここまで成長していたとは。
「やあ、アズサハヅキだね?」
「もしかして……マイケルか?」
「ああ。ディアナにも注目しているからね。是非見ておこうと思ったんだ」
話しかけてきたのはマイケルだった。坊主刈りの頭に長身でスラッとしている中年男性だ。
何を隠そう、彼こそバリスタオリンピック前回大会優勝のディフェンディングチャンピオンだ。
自信に満ちた彫りの深い顔と碧眼、茶色を基調としたバリスタらしい格好だ。
歴戦のバリスタの代表格のように思えた。
――この人が……今のナンバーワンバリスタ。
バリスタオリンピックにはまだ連覇を果たした人がいない。マイケルは史上初の連覇を虎視眈々と狙っている優勝候補筆頭格だ。この大会のファイナリストに一度なれただけでも名誉なことだが、連覇ともなると、余程の修行を重ねてきたに違いない。
かつて連覇を狙う者は他にもいたが、いずれも連覇はできなかった。
「君は色んなコーヒー農園を買収しているそうだな」
「買収とは言っても、いずれも相手の方から申し込んできたパターンだけどな」
「噂で耳にしたんだが、新しいプロセスのコーヒーを手に入れたんだって?」
「情報が早いな。後で見せてやるよ。僕は4年前から歴戦の猛者と戦うことを楽しみにしていた」
「4年前? あー、あの時か。確か君が実力不足を書類選考のせいにしていたやつだろ?」
「権力者に嫌われたという意味では、実力不足だったかもな」
「あの……」
伊織がマイケルに恐る恐る声をかけると、マイケルの視線が彼女に向いた。
「何だい? お嬢ちゃん」
「あず君は実力不足なんかじゃありません。彼は誰よりもコーヒーを愛し、誰よりもコーヒーに向き合ってきた人です。もし彼が決勝までいけたら、さっきの発言を撤回してください」
「……ふふふふっ。いいぞ。可愛いお嬢ちゃんのお願いだ。約束しよう」
マイケルが告げると、鼻で笑った顔のまま、ブースから離れていく。
どうやらあの騒動を僕の実力不足によるものと思っているらしい。あの騒動はジャパンスペシャルティコーヒー協会に関わった虎沢グループの名を伏せた状態で報道されたため、僕の実力不足と受け取る人も少なくなかった。真実と報道の乖離ってやつだ。メディアは利益のためなら平気で嘘を吐く。
虎沢グループはメディアに対しても影響力があり、揉み消すように言っていた部分もある。だが僕がここで実力を証明すれば、あれが嘘だったとみんな分かるはずだ。
それでもあの時の僕だったら、本選の予選突破さえ厳しかっただろうが……。
「伊織」
「はい」
「ありがとな」
「あず君が書類選考を突破できないなんて……余程相手が人を見る目がなかったとしか思えませんから」
「あー、そっか。伊織は事実を知らないんだったな」
身内くらいには教えておこうと思い、伊織には事実を話した。
「全部虎沢グループの仕業だったんですね」
「そゆこと。だからさ、悪い奴とは徹底して関わらないようにしてる。あの出来事がなかったら、日本人恐怖症はもっと早く治ってたかもしれないけど、僕はコーヒーから、お前にあの舞台はまだ早いって言われてる気がした。たとえ出場できたとしても、予選落ちだったと思ってる」
「でも今は違う。そうですよね?」
「ああ、当たり前だろ。あの時とは……違う」
伊織は何だか安心したような笑顔になっていた。僕が負けるところなんて想像もできないんだろう。僕だって負けたくはないし、彼女の夢を壊す気にはなれない。
ディアナの片づけの時間が終わると、彼女が僕の元へと歩み寄ってくる。
僕が来ていることには気づいていたらしい。ミディアムヘアーの金髪と碧眼にモデルのようなルックスとボディ、この舞台に相応しいバリスタ仕様の衣装、ハリウッドにいても全くおかしくない。
「あず君、来てくれたんだな」
「優勝候補だからな」
「さっきマイケルいたよね?」
「うん。彼も君をマークしてたみたいだよ」
「マイケルの競技は大会5日目だ。一緒に見に行くか」
「そうだな。以前と全く同じではないだろうし、今のナンバーワンバリスタの競技は、見ているだけでワクワクする。今回は他の強豪バリスタもいる」
笑顔でディアナと会話をする。やっぱコーヒー関連の会話が1番盛り上がる。
「それは私もだ。こんなにもたくさんのバリスタが集合する機会なんてそうそうないからな」
「バリスタオリンピックは本当に楽しいな……優勝候補が2人もいるんだから」
「……3人の間違いじゃないのか?」
「ならそいつとも戦ってみたいな」
ディアナは伊織とも話している。彼女は伊織が淹れたコーヒーを一度飲んでいることもあり、伊織の内に秘めたる実力にも一目置いている様子だった。人を見る目はあるようだ。
分かる人には分かるのだと、僕は密かに悟った。
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