161杯目「開拓したコーヒー」
大会2日前、早速育成部のオフィスへと向かった。
オフィスビル1階に設置されたものだが、ここは本当に準備がしやすい。抽出器具からコーヒー豆、シグネチャーの食材まで揃っている。しばらく身を休みにしてまでここに来ている。
余計なことは考えるな。ただひたすらコーヒーを淹れることにのみ集中しろと自分に言い聞かせた。
「どう? リハーサルは進んでる?」
正午過ぎになると、美羽が僕に話しかけた。みんな昼食を食べに行っているが、僕はたった1人残って課題となる作品を作っていた。全部で10種類20杯のコーヒーを淹れた時だった。
「うん。どうにか決勝までの食材は全部揃った」
「決勝までの食材って……まさかとは思うけど……全部門でレパートリーポイントを狙ってたりする?」
「そうだけど、何か問題でも?」
「レパートリーポイントを狙うのはいいけど、テクニカルポイントがなくなる代わりに、フレーバーバランスポイントとか、ホスピタリティポイントとかのボリュームも増えるよ」
美羽は一瞬顔が固まりつつも、冷や汗をかきながら僕に忠告する。
確かに歴代のチャンピオンも全ての部門でレパートリーポイントを狙っていたわけじゃないし、特に自信のある部門は、あえて予選以降でも同じ内容のままだった。
自信がないわけじゃない。本気の勝負がしたいだけだ。
「無理でもしなきゃ、まず勝てねえよ」
「えっ、どうして?」
「アメリカ代表のバリスタは毎回予選を突破してる。何でか分かるか?」
「強いからじゃないの?」
「その強い理由を聞いてるんだけどなー」
「あはは……ごめん、分かんない」
「前回のバリスタオリンピックを見に行った時、毎回アメリカ代表を輩出しているコーヒー会社がシアトルにあると聞いて見に行った。そこのカフェではバリスタ競技会のために参加するバリスタをずっと休ませて、1ヵ月以上もみっちり練習させていた」
「1ヵ月もっ!? そんな相手に勝てるの?」
「だから僕は……1年前から練習してきた」
「1年っ!」
あの時は来年からでいいと思ったけど、あのカフェで大会に向けた猛特訓を積み重ねていたバリスタたちを思い出すと、ボーッとしているのが怖くなってきた。
彼らは僕がボーッとしている間にも、優勝確率を着実に上げ続けているのだから。
「……本当に優勝を目指してるんだね」
「当たり前だろ。1番しか狙ってない。今回は他のバリスタ競技会の歴代チャンピオンだけじゃない。前回チャンピオンとも戦えるまたとない機会だ」
「松野君にも言っておかないとね」
「何であいつが出てくるんだよ?」
「松野君は今年の春まで自分のことをそっちのけにして、ずっと他のバリスタたちの指導ばっかりやってたの。それがちょっと心配でね」
なるほど、仕事尽くめか。育成部は大会のための準備をする他、トップバリスタを目指す若手に指導する役割もあるのだが、松野は次世代のバリスタ育成に熱心なんだとか。
美羽が言うには、最初は飯を食うためだけにトップバリスタを目指していたのが、僕の活躍を見ている内に、仕事にのめり込むようになったんだとか。結果的に僕が、コーヒー好きを1人生んだわけだ。
なら今回だって、このバリスタオリンピックという大舞台を通して、時代と教育の犠牲者たちに今の時代を生き抜く力ってやつを見せてやるっ!
「僕は新しいコーヒーの開発をするために、接客と配膳の大半を同僚に任せてる。負けた時に準備ができなかったって言い訳をしたくないからな」
「だから伊織ちゃんに目をつけて、バリスタ修行をさせてたんだ」
「それもあるけどさ、もし伊織がレールに乗っている連中よりも成功すれば、今の量産型ばかりを生み出す教育方針が間違っていることを証明できる」
「じゃあ、伊織ちゃんを利用してたってことなの?」
「利用したつもりはないけど、結果的にはそうなるかな」
「伊織ちゃんはそのことを知ってるの?」
「いや、まだ知らないけど……僕の口から話そうと思ってる」
「そう。育てるのに失敗しないといいけど」
「心配すんな。僕、失敗しないから」
ニカッと笑ってみせた。ただの強がりではない。僕自身を鼓舞する言葉である。
大会は本番まで常に練習あるのみだ。人生はいつだって本番だ。最終的にうまくいけばそれで良し。伊織を半ば人生の実験台にする形になってしまったが、責任はちゃんと取るつもりだ。
「それ、味見してもいいかな?」
「別にいいけど」
美羽が僕の淹れたエスプレッソを飲んだ。
「! ――何この味? 今まで飲んだことない? あず君、これどこのコーヒー?」
「秘密だ。後で教えてやる」
まだ僕以外は誰も味見をしていなかった。
僕の自信作とはいえ、伊織たちにも味見させてみるか。
エスプレッソ部門は僕の1番の得意分野だ。僕のバリスタ人生はエスプレッソから作ったカフェオレから始まった。僕はあの時の味を再現するべく研究に次ぐ研究を重ねた。
そして遂に飲み覚えのある味に辿り着いたのだ。
僕が知っている中では、あれこそが最高のコーヒーだった。
しばらくすると、伊織が静乃たちと一緒に戻ってくる。
「うわぁ~! 何これー! すごーい!」
「これ全部本戦で使う予定のコーヒーなんだって!」
「もう最終調整終わったんですか?」
「一応な。大会5日目までは練習。大会3日目の競技が終わったら準決勝と決勝のリハーサル。伊織、真理愛、ちゃんと味見してくれよ」
「分かりました」
「ふふっ、楽しみにしておきますね」
「何で伊織と真理愛さんだけなの?」
「じゃあこれのフレーバーを言ってみろ」
ドリップコーヒーが入ったカップを莉奈の前に置いた。
莉奈はそのカップを手に持つと、恐る恐る口に含んだ。隣から見ている伊織は涎のダムが決壊しそうになっている。これだけでも伊織が無類のコーヒー好きであることが窺える。
「これ――ちょっと酸味がするけど、コーヒーの味がするっ!」
全員が某新喜劇のように一瞬だけ倒れそうになる。そりゃそうだろう。コーヒーなんだから。やっぱ味音痴には分からんか。スペシャルティコーヒーの深みが分からないなんて、かーわいそーに。
「次は私が味見しますね」
早く飲みたがっていた伊織がたまらずコーヒーを顔に近づけた。
少し口に含み、癒されたような顔で余韻に浸っている。
「これ、この前食べたパッションフルーツの風味に似ています。でもその後に仄かな酸味も感じます。これはオレンジですか?」
「スターフルーツのフレーバーだ」
「スターフルーツ?」
「南国に生えてるトロピカルフルーツの一種だ。パッションフルーツは当たりだし、スターフルーツのフレーバーの内容も言い当てたから、正解ってことにしておく」
「ちぇっ、どうせ私には分からないですよーだ」
「まあまあ、私も最初は分からなかったんだし、無理ないよ」
静乃が拗ねている莉奈を抱きしめながら宥めている。
莉奈はすぐに落ち着きを取り戻した。あぁ……尊い。
「でもこんなフレーバーのコーヒーは初めてですよ」
「このケニアゲイシャはトロピカルフルーツのようなフレーバーを持っている。これは抽出器具の違いで絶妙な違いを出すけど、どれも美味い味だ」
「ケニアゲイシャなんて聞いたことないよ」
「そりゃ無理もねえよ。僕が2年くらい前に出資して作ったばかりの農園だからな」
「出資して作ったぁ!?」
葉月珈琲はここ数年でエチオピアゲイシャのあるコーヒー農園を傘下に置き、僕が出資してケニアに開拓したばかりのコーヒー農園にゲイシャ種の苗を植えた。
ゲイシャ種の苗はデリケートであるため、最初こそうまくいかなかったが、徐々に立派なコーヒーノキが育ってきたのだ。そうしてできたのが、このケニアゲイシャのコーヒー農園である。だがゲイシャの豆を育てるために資金がかさんでしまったこともあり、この農園もうちの傘下として置くことに。
こうして、葉月珈琲は中南米とアフリカに4種類のコーヒー農園を持つに至った。
傘下とまではいかないが、世界中に契約農家を持つ結果となった。
内緒にするつもりはなかったが、いかんせん話す時間がなかったのだ。
これを知っていたのは、僕と璃子の2人だけだった――。
「まあ、そんなとこだ」
「凄いです。何だかカッコ良いです」
「ふふっ、そんなことあるぞ」
「まさに珈琲帝国ってわけだ」
戻ってきたばかりの優子が、僕の後ろから囁くように言った。
珈琲帝国か。優子が冗談で言っていたのが現実化しつつある。店はまだ2店舗しかないけど、これだけ多くの種類を誇るコーヒー豆が集まってくるコーヒー会社も珍しいだろう。
「優子か、脅かすなよ」
「あず君が勝手に驚いてるだけでしょ」
「食材はもう届いたの?」
「うん。いつでも会場に届けられるようになってる」
「これでマリアージュ部門の問題は解決か」
外から見えるドーム状の会場を見つめた。まだ大会2日前だというのに、胸の鼓動が高鳴る。早くあの舞台に立ちたい。本当の世界一は誰なのかを突きつけたい。
これほど1番になりたいと思ったことがあっただろうか。
これが……心から勝ちたいって気持ちなんだ。今までは店の宣伝のために戦っていた。でも今回は自分がどこまで行けるのかを知るため……ここにいるみんなを喜ばせるため。
ふと、机を見てみると、みんなあっという間に僕が淹れたメニューを飲み干していた。
こいつら……まるでピラニア軍団だな。でもみんな、凄く良い顔をしている。何だかこっちまでほっこりするような……心からゆったりする光景のように思えた。
「流石はあず君のコーヒーっすね」
愛梨が声をかけてきた。
「コーヒーに興味を持ったか?」
「バリスタになる気はないんすけど、あず君のコーヒーが気に入ったっす。コーヒーって苦いイメージしかなかったんすけど、甘さや酸味のあるコーヒーは葉月珈琲が初めてっすよ」
「厳密に言うと、コーヒーそのものは酸っぱいか苦いかだ。浅炒りだと酸味が目立つけど、深炒りだと苦味が目立つ。これはコーヒー通なら、誰もが認める事実だ」
「じゃあ甘味の正体は何なんすか?」
「コーヒーに含まれる糖分だ。過酷な環境で育ってきたコーヒー豆ほど甘くなる。一般的なブラックコーヒーは苦味が強いから甘味を感じにくいけど、ゲイシャは酸味の方が強い。甘さ控えめだとレモン、甘さが強いとオレンジのような風味になるわけだ」
「奥が深いんすね」
愛梨は僕の話に終始夢中だった。
細かいことはよく分かんないけど、聞いているのが楽しいって感じだ。話が終わってからも、愛梨は僕に質問をし続けた。璃子たちはバリスタオリンピックについて楽しく話している様子だ。
愛梨は僕から離れるが、なかなか輪の中に入ろうとしなかった。そればかりか部屋を出ていったきり戻ってこない。その気持ちは言わずとも分かる。
今度は優子が僕の隣に腰かけた。
「愛梨ちゃんを手懐けるなんて凄いね」
「そんなんじゃねえよ」
「あたしでも愛梨ちゃんと仲良くするのに時間がかかったのになー。あず君はああいう子と仲良くする才能があるのかもね。愛梨ちゃんはあず君に似てるかも」
「似てねえよ。愛梨とは決定的に違うところがある。彼女は諦めてるんだよ。人と関わって生きていくことをな。だからあの歳で引き籠り志望なんだ」
「あず君はどうなの?」
「外の世界も悪くないと思った。引き籠りではあるけど、これでもかっていうくらいには人と関わってるし、同じ趣味の人とだけつるむんだったら、全然ありかもって思えてきた」
「……あず君は昔より進歩したね」
優子が僕を見ながら笑顔で言った。そりゃあ年を重ねた分成長してなきゃ恥ずかしいだろ。リアルピーターパンのような連中が山のようにいるこの国の連中とは違うんだよ。
「まあな。バリスタとしての知識や技術ならあの時とは比べ物に――」
「違う違う、それもあるけど、もっと成長したもの、あるでしょ」
「生きる力?」
「ここだよ」
優子が自らの胸の谷間を親指で差した。意外とでかいな。
「何ていうか……人間力って言った方がいいかな?」
「人間力ねぇ~。そんな漠然としたものに成長なんて感じねえよ」
「あず君はやりたいことがない人たちにバリスタを勧めてたよね?」
「バリスタやってると、色んな能力が伸びる。知識、技術、接客、芸術、創造、これらが全部培われる職業はそうそうない。やりたいことがない人にはお勧めしてる。他にやりたいことが見つかったらやめてもいいし、やめた後もそれまでに培った経験が無駄になりにくいのもポイントだし、僕がバリスタをやっているからというバイアス補正を抜きにしても、一生に一度くらいはやる価値あると思うぞ」
この前吉樹が同僚たちをうちに連れて来た時も、やりたいことがないんですと、口を揃えて言う人が本当に多かった。彼らは学校を卒業した後、就労支援施設に流れ込んできた者たちであり、いずれも柚子の厚意で雇ってもらっている状態だ。彼らにバリスタの仕事を勧めてみたが、接客業は嫌だと言ってそもそもやりたがらない。理由を聞けばクレーマー処理が困るとか言ってたけど、クレーマーなんて毅然とした態度で応じればそれで済むだけの話だ。得意かどうかも分からない段階で、物怖じしてやろうとすらしないところに彼らの敗因がある。やらない言い訳をすることにおいては超一流の腕前であり、行動しないために得手不得手が分からず、経験値を得られないことにさえ気づけないこのやばさよ。
流石は人生という戦いで負け続けてきただけのことはある。
「それ、愛梨ちゃんの前で言える?」
「一度やってみるのもいいと思うけど、彼女は今の社会では引き籠った方がいいと思うぞ。だってさ、髪色ごときでギャーギャー騒ぐような連中と一緒にいたって、両方共不幸だし、そんな不寛容な社会にわざわざ適合する意味あるか?」
「……」
優子は黙った。彼女自身は社会適合者だ。
周囲に合わせることに苦痛を感じない多数派ではあるが、僕のような社会不適合者と話した経験も豊富である。ここまで割り切れるのは、もはや才能だと思う。
だからだろうか。彼女には社会不適合者の気持ちが分からない。
適合するしないで考えている時点で負けなんだろうか。
「普通に適合してる人と同じ権利が欲しいだけなんだけどなー」
「あず君はもう持ってるでしょ」
「持ってるように見えるか?」
「見えるよー。だってどこにいてもちやほやされるし、正直に言えば羨ましい。でもあず君みたいになるのって、ハイリスクハイリターンだと思うよ」
「僕とあいつらの違いは行動してるかしてないかだ。もしかしたら、あいつらも何らかの恩恵は受けてきたんだろうけど、それは正しい方向に努力した人たちの残り物だ」
優子は愛梨に就職してほしいようだ。ただ、僕としてはこのまま就職させるのはよろしくない。ここまでくると今更外に出そうとするのが正しいとは思わない。人から指摘されやすい特徴を持ちながら、指摘をすれば反撃がくるのだから恐怖でしかない。この時点で集団生活とかまず向いてないし、集団生活をさせる意味がない。昔だったら生きていくためには外に出て人と顔を合わせる必要があったけど、今はその必要すらない。江戸時代までは自営業が多く、みんなマイペースに仕事ができた。
工業化社会になってからは引き籠りにとって辛い社会になった。労働者を1箇所に集めて同じ作業をさせる必要が出てきたのだ。学制もそのためにできた制度である。今まではマイペースに仕事ができた人たちが集団に合わせる必要に迫られ、昭和時代までは適性がなくても頑張りますと言えば、仕事ができなくても働けたし、雑な性格でも居座っているだけで出世することができた。
しかし、今は仕事ができない人も、雑な性格も許されなくなった。
サラリーマン社会でありながら、サラリーマンに適性が求められるようになったのだ。
それによって適性がない者は切り捨てる前提の仕組みとなった。これは働くハードルが上がったということであり、基準に満たない者は働く必要がなくなったということでもある。丁度ニートが増え始めた時期と見事に一致している。彼らは社会から見捨てられたスケープゴートなのだ。
スケープゴートの立場で考えれば、もはや社会の方が間違っているのだから、合わせる必要がない。彼らは彼らのやり方で生きていくべきだ。社会に合わせれば、社会からの恩恵を受けられる。だが彼らは社会にいくら合わせようとしても、その恩恵を受けられなかった。恩恵や権利がないなら、苦役も義務もなくていい。度々出てくる凶悪犯は彼らの成れの果てとも言えるだろう。
「愛梨ちゃんは働かなくてもいいと?」
「別に働かなくてもいいだろ。優子の家に住んでるんだったら、優子が面倒を見ればいいし、引き籠りって全然お金かからないじゃん」
「生きる力は身につけなくてもいいの?」
「最悪引き籠りでも、稼げるようになればそれでいい。愛梨もそれについては肯定的だったし、最終的に飯を食えるようになれば、それでいいんじゃねえの?」
「あたし、今ならあず君の気持ち分かるかも」
「どういう気持ち?」
「親も学校も、あの子の生きる力を養うことができなかった。その尻拭いをあたしがやってる。あず君が親と学校の代わりに、伊織ちゃんの生きる力を養っていた時の気持ちがよく分かるの」
優子も再教育の辛さがようやく分かったらしい。彼女は愛梨をかつての伊織と重ねていた。歳も近いし伸びる時期だからなー。そんな時期にあんな無意味な教育をされたら、そりゃニートも増えるって。
「やっぱり私は邪魔なんすね」
「「!」」
後ろから愛梨の声がする。嫌な予感がした。
僕と優子が後ろを振り返ると、そこには下を向きながら憤りを感じている様子の愛梨が佇んでいた。
「どうせ私はどこにいても邪魔者っすよ」
「ち、違うのっ! 愛梨ちゃんは全然邪魔じゃないよ」
「言い訳なんて聞きたくないっすよ。私なんて……生まれなければ良かったんすから!」
「「「「「!」」」」」
自棄になった愛梨が部屋から逃げるように走って出た。
「愛梨ちゃん、待ってっ!」
優子が後を追いかけるが、愛梨の心は折れかけていた。これは彼女たちの問題だ。心配したけど口出しをするべきではないと思った。午後10時過ぎまでリハーサルをした。
英語の分かる伊織、美羽、璃子、静乃の4人にセンサリージャッジをしてもらい、タイムオーバーすることはなかったが、プレゼンの時間がマジで長い。
用意するコーヒーも多かったが、大人数であったために処理することができた。
ホテルに戻って風呂に入ると、電池が切れたかのようにベッドに横たわった。
隣には唯が僕にくっつきながら横たわってくる。璃子は隣のベッドでスヤスヤと眠っている。璃子にも別の大会があるのに、ここまで僕につき合ってくれた。バリスタオリンピックが終わったら、優子と一緒に璃子のサポートに徹しようと考えた。それくらいはさせてほしい。
「璃子さん、寝ちゃいましたね」
「僕のためにずっと課題につき合ってくれただけじゃなく、自分の課題までこなしてたんだ。疲れがドッと押し寄せてきたんだろうな」
「私はJBCがあるので、開会式には行けませんけど、大会3日前ならいけます」
「無理すんな。大会が終わった直後にサポーターの仕事なんてやったら体壊すぞ。全部自分でやろうとするな。真理愛にサポーター頼んでるんだからさ」
「はい……分かりました」
ベッドに寝そべっている唯はとても可愛くて綺麗だった。
髪は下ろしている状態で腰まで届いている。すぐ着替えるための薄着姿なのか、スタイルの良さが明確に分かる。風呂に入った直後で、肌には光沢があった。
日付が変わり、バリスタオリンピックがまた一歩近づくのだった。
気に入っていただければブクマや評価をお願いします。
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