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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第7章 バリスタオリンピック編
157/500

157杯目「一筋の光」

 6月上旬、伊織がデビューしてから2ヵ月が過ぎた。


 この2ヵ月間、暇さえあればずっと伊織を観察していた。


 この日も朝早くからスマホの録画機能を使い、伊織の抽出作業を確認する。


 一刻も早く伊織をスランプから解放したかった。たまたまスマホで修業していた頃の伊織がコーヒーを抽出している時の記録が残っていた。それを参照にし、デビューしてからの伊織と比べてみた。


 これで何か分かるはずだ……ん?


「――伊織、これを見てみろ」

「はい」


 伊織に見せたのはデビュー前とデビュー後の比較映像だ。


 この比較映像を見たことで、僕は抽出の弱点を見抜いた。


 伊織が信じられないと言わんばかりに口を開いた。流石に伊織も気づいたようだ。


 デビュー前の伊織は完全にコーヒーの抽出のみに集中していた。だがデビュー後は抽出をしている最中に客の目を気にしたり、入ってきた客に挨拶をしたりしていたことで、コーヒーから注意が逸れてしまっていたのだ。結果的に抽出時間がいつもより少しばかり長くなってしまい、3投目の抽出で最後の方に出てくる渋味や苦味までを抽出してしまっていたのだ。


 客は渋味や苦味を伴うアフターテイストに違和感を持った。


 おかわりを注文する客もいたため、結果的には売り上げに貢献しているが、別の観点で見れば屈辱でしかない。やり直せと言われているようなものだ。


 伊織のドリップコーヒー不調の原因は間違いなくこれだ。


「お客さんを気にしすぎてましたね」

「だな。最後の抽出がいつもより平均して5秒くらい遅くなってる」

「この間に雑味が抽出されたんですね。気づかなかったです」

「今まではただ抽出するだけだったのが、今度は客に提供する者として淹れるようになったんだ。気にするのも無理ねえよ。僕は作業中に客が来ても挨拶とかしないし、他の人は抽出しながら客の動きを見れるくらいのマルチタスクをこなせるから、ミスをせずに済んだ」

「あず君のは理由としてどうかと思いますけど、確かに私もマルチタスクは苦手です。はぁ~、何でもっと早く気づかなかったんだろ……」


 伊織は思わず息を吐いた。原因も分かったことだし、これでようやくスランプから抜け出せそうだ。


 今後は大会で使っているタイマーつきのドリッパーを使うこと、抽出をしている最中は他に目を向けないことなど多くのアドバイスを送った。これでより正確な抽出ができるようになるはず。元々はプレゼンをしながら正確な抽出をするために買ったタイマーつきのドリッパーだったが、まさかこんなところで役に立つとは思わなかった。ドリッパーは予備のものを含めて10個ほど買っていた。


 正午を迎えると、次々と客が入ってくる。


「エチオピアゲイシャを1つ」


 外国人観光客の1人がドリップコーヒーを注文する。今度こそ伊織の出番だ。


「OK。伊織、頼んだ」

「はい!」


 いつもより強くたくましい返事だった。


 僕のアドバイスは……伊織にピッタリとハマった。


 伊織が安心しきった笑顔でドリッパーにペーパーフィルターを敷き、サーバーに乗せてエチオピアゲイシャが入った瓶詰からコーヒー豆を取り出すと、グラインダーで粉にしてからドリッパーに投入し、ケトルからドリッパーの中央に向かって渦巻き状に熱湯を3回注ぎしていく。


 1投目の熱湯が注がれた瞬間からタイマーが動き出し、ペーパーフィルターからポタポタ落ちるコーヒーが抽出に必要な時間を計っている。昔のドリッパーは熱湯を注いだ瞬間から最後まで抽出を続けるタイプが主流だったが、最新式のドリッパーはサーバーから離した途端に抽出を停止する代物だ。


 伊織が無事に抽出し終えたドリップコーヒーを客が飲んだ。


「――これ美味しいよ。ピーチのようなストーンフルーツの酸味と甘味が優しく舌を唸らせてくれる。ずっと余韻に浸れそうな後味も素晴らしい」

「本当ですかっ!?」


 伊織が思わず満面の笑みで目をキラキラと輝かせながら英語で真意を問う。


 客は若干困惑していたが、嬉しそうな伊織の笑顔を見るとすぐに安心する。


「これを淹れたのは彼女だよ」

「へぇ~。まだこんなに小さいのに凄いねー。でも小学生が働いてもいいの?」

「小学生じゃないです。一応15歳です」

「あっはっはっは、ごめんごめん。これだけ純度の高いコーヒーの抽出ができるのに、まだ15歳か。君はきっと大物になると思うよー」

「ありがとうございます」

「礼には及ばんよ。気に入った。今度はグアテマラゲイシャをくれよ」

「はい。任せてください」


 おやおや、あっという間に他の客まですっかり笑顔になってるな。


 こんな美少女に透き通った声でお礼を言われた日には、さぞ嬉しくなるだろう。


 この日の伊織は絶好調だった。伊織の淹れたドリップコーヒーを飲んだ客全てが一目惚れしたかのような顔になり、心の底からうっとりしていた。1杯3000円取るだけの価値はあったようだ。この些細なきっかけが、伊織が持つ本来の抽出技術を呼び起こさせた。


 ラストオーダーの時間になり、この日来た全ての客へのコーヒー提供が終了した。


「伊織ちゃん、スランプ脱出おめでとうございます」

「うんうん。お客さんの反応がホントに凄かったー。みんな顔がほっこりしてたし」

「ありがとうございます」


 オープンキッチンで食器の後片付けをしていた真理愛と唯が伊織のそばに集まってくる。唯は伊織の頭を撫でながら可愛がっている。あぁ……尊い。


 ――何だかんだで愛されてるんだな。


 伊織が僕に気づくと、可愛い笑みを浮かべながらハムスターのように近寄ってくる。


「あの、ありがとうございます。あず君のアドバイスのお陰です」


 伊織は子供っぽく丁寧に頭を下げた。


「日本式か。それも素晴らしいけど、ここは葉月珈琲だ。ここでは気軽に……これでいい」


 親指を上に向け、伊織の前に突き出した。


「はいっ!」


 伊織も親指を上に向けた。彼女はようやく長いトンネルを抜け、外の光を一身に浴びた。ずっと我慢の時期が続いていたが、投げやりになったり、気持ちが折れたりすることは一切なかった。


「ふーん、伊織ちゃんスランプから抜け出したんだー」

「お兄ちゃんが見込んだだけあって粘り強いね」


 クローズキッチンから璃子と優子が表に顔を出した。


 今日の作業を終えたようだ。この店で最も忙しいのは優子である。


 僕の課題のサポート、璃子のサポート、新メニューの開発といった仕事を一手に引き受けていた。


 パティシエ担当は朝から働きづめだ。倒れないように早く家に返してやらないとな。


「でもお客さんを気にして抽出が疎かになっていたなんて、伊織ちゃんらしいですね」

「あの時は責任がありませんでしたけど、今はもうお客さんに提供するプロバリスタですからね」

「プロバリスタ……ですか」


 伊織は自分がプロの仕事をしていることをようやく自覚したようだ。


 遊びと思っていなかったようだが、璃子と真理愛が伊織の淹れたコーヒーの余りを飲んでいる。もう冷めきっているはずだが、2人共顔がほっこりしている。


 本当に美味いコーヒーは冷めても美味い。


「もう心配はしないでください。あず君はバリスタオリンピックに向けて頑張ってますし、他の人たちも色んな競技会に向けて頑張っているのに、私だけ足を引っ張るわけにはいきません」

「「とても15歳の台詞とは思えない」」


 2人が同時に呆気に取られながら口遊む。


 うちはこれでもかというほど自己判断が求められる。故に自立心や向上心が育つのだが、それは自分のしたことには責任を取れということの裏返しである。子供扱いするから大人になれないのだ。最初から大人として扱えば、自分で判断せざるを得ない。


 ただそれだけのことをこの国の人間は何故かできないのだ。


 スランプを脱出した伊織に怖いものはなかった。


 それからは連日コーヒーの注文を伊織が優先的に引き受けるようになり、伊織のコーヒーが新たな客を呼び込んだ。葉月珈琲に新人がやってきたと聞きつけた客が押し寄せるようになったのだ。


 僕の誕生日がやってくると、色んな人からのプレゼントが届いた。


「あず君、おめでとうございます」

「ありがとう。でも別に祝うようなことじゃねえぞ。年が1つ増えただけだ」

「あたしも今年で30だけど、年は取りたくないって思う日がいつか来るよ~」


 優子が三十路(みそじ)を迎えたことを嘆きながら僕に抱きついてくる。


 だが見た目が老けることはなく、むしろ年相応の貫禄が出てきたのだ。これが大人になるということだろうか。30にならないと分からないこともあるんだろうな。


 誕生日が楽しいのは20歳(はたち)までだという事実を伊織も知ることになるだろう。知るなら早い方がいい。子供には現実を伝える必要がないと思っていると、後で取り返しがつかなくなる。


「そういうものなんですか?」

「うん。特に女性はね、年を取るほど段々不利な立場になっていくから」


 優子も昔は婚活やってたもんな。婚活市場にいると、20代と30代以降で明らかな扱いの差に苦しむことになる。対照的に男は脂が乗ってきた30代の方が有利だし、何だか不公平な感じがする。


「25歳か。今の内にできることは全部やっておきたいな」

「年取ったら段々動けなくなるもんねー」

「それだけじゃない。貧困に陥った時に取り返しがつかなくなる。伊織、貧乏な老後だけは絶対に過ごすなよ。今の内に知識と技術を磨いて、一生飯を食えるようにしておけ」

「はい。まるで人生を1周した人の台詞ですね」

「別に1周しなくても、周りの大人を見ていれば分かるだろ」


 あの様子だと、貧乏な老後を過ごす人が大量発生するだろう。若い内なら何とかなるが、年を取ってからじゃ、詰むのが目に見えている。年金も生活保護も必ず貰えるわけじゃないし、子供に自分で稼ぐ術を身につけさせないことが如何に罪深いことであるかをあいつらが思い知らされる日がやってくる。


 気づいた時には立派な茹でガエルだ。


 6月中旬、ドリップコーヒーを伊織に任せられるようになった。


 ラテアート部門で使うイラストも決まったため、練習するべく、カプチーノの注文が来た時は僕が担当する。ダブルショットの値段を下げて注文される確率を上げた。


 本戦ではみんなダブルショットにするだろう。その方がより繊細なラテアートを描くことができる。


「ラテアートのイラストは決まったんですか?」


 休憩に入った唯が話しかけてくる。唯はこの年のJBC(ジェイビーシー)に出場するべく、真理愛をコーチにつけてシグネチャーを開発しているところだ。


「一応決まった。動物だ」

「かなりシンプルですね」

「制限時間1時間だから、時間が余ったら残りは全部これに費やす」

「なるほど、時間が余れば難しいラテアートに挑めるわけですね」

「それだけじゃない。日本の牛乳は固まりにくいから、ラテアートにはとても適してる」

「時間を長く費やしたいものを最後に持ってくるわけですか。私順番通りにやってましたね」


 真理愛は部門毎にきっちり時間配分させていた。


 出す順番はバラバラでもいい。ドリップコーヒーを淹れている間にエスプレッソを作ってもOKというわけだ。1時間とは言っても、1つの部門につき10分ペースでやらないと時間に追われてしまう。


 間違いなく、今までで最も難しいバリスタ競技会だ。だからこそ攻略したくなる。


「じゃあラテアート部門は完成なんですね」

「ああ。これに関しては練習を積むだけだ」

「あず君、できたよ」

「おっ、ようやくお出ましか」

「口に合うといいけど」


 優子が作ってくれたのはレーズンなしのチーズケーキだった。レーズン入りの時はレーズンの後味が強く残ってしまっていたが、もう少し味にアクセントが欲しくなる。


「……どう?」

「今度は逆に足りないかな。レーズンなしだと、何かが物足りない」

「つまり、何かが足りないけど、チーズケーキとコーヒーの組み合わせに合ったものじゃないと、食材の後味が強く残るわけだ」


 ――どうする? このままだと、マリアージュ部門のスコア差で負けるぞ。


 ハイスコアを記録する方法があるとすれば、優子が作ってくれた昔ながらのケーキしかないと思ってはいるが、コーヒーに合ったケーキを作るのって難しいな。


「確かあず君が持ってるウォッシュドプロセスのエチオピアゲイシャはレーズンやブルーベリーのフレーバーがあるんですよね?」

「うん。エチオピアゲイシャだけでもかなり種類があるけど、うちの主力商品の1つだ」

「葡萄系のフレーバーがあるコーヒーを使えば、葡萄系の食材を使わなくても、チーズケーキとマリアージュするんじゃないですか?」

「「「「「!」」」」」


 伊織以外のスタッフ全員が驚いた。


 なっ……何だとっ! その発想はなかった。


 当人は変なこと言ったかと言わんばかりに困惑しているが、これはかなり優れた発想だ。


「それだっ!」

「えっ! そ、それって何ですか?」

「僕はずっとコーヒーに合ったケーキばっかり考えてた。でもそれだけじゃ駄目なんだ。フードやスイーツに合ったコーヒーを作らなきゃ駄目なんだ」

「ということは、コーヒーは料理やスイーツに合わせたものを作って、料理やスイーツはコーヒーに合ったものを作るってことですか?」

「そういうことだ。それが言いたかったんだろ?」

「は、はい。調べたんですけど、マリアージュってフランス語で結婚って意味ですから、結婚するんだったら、お互いが歩み寄らないといけないと思ったんです」


 考え方が大人すぎる。小学生の時はそんな発想なかったはずなのに。


 伊織はいつの間にか心も成長していた。だがその歳で結婚を考えるのは早いぞ。ただ組み合わせるだけではみんな仲良し教育と同じ。より相性の良い組み合わせのため、コーヒーにも工夫を施さないと。


「マリアージュ部門のコーヒーも工夫してみる」

「ええっ!? マリアージュ部門に使うコーヒーまでシグネチャーにするんですか?」

「それほど多くの工夫はいらないと思うけどさ、そうでもしないと、一生マリアージュできない気がするからな。コーヒーもこれと組み合わせる前提のものにする」

「それで間に合うんですか?」

「何とかなるって。ケーセラーセラー」


 多分、これが1番の難関になるだろうな。


 マリアージュ部門だけ独立した大会が存在しない以上、みんな確実にここには苦戦するだろう。歴代チャンピオンでさえ、マリアージュ部門が最も低いスコアを記録している人が多いのだから。


 だったらここを重点的に煮詰めればかなりの差別化を図れるはずだ。


「優子、何も余計なことを考えずに最高のケーキを作ってくれ。僕も最高のコーヒーを淹れるから」

「うん、分かった。今から作ると、ラストオーダーの時間になっちゃうけど」

「構わん。時間の許す限り続けるぞ」


 もう小手先の手を使うのはやめだ。伊織が言ってたように、自然な形で最高の味わいになるように仕上げればいいんだ。単品としては美味いが、組み合わせに難のあるものは全て除外する。


 自然な形で合う組み合わせのものを作るべきだ。


「あの、フードはどうするんですか?」

「もう考えてある。コーヒーに合う料理と言えば軽食だ」

「軽食ということは、サンドウィッチですか?」

「ご名答。サンドウィッチも無限と言っていい種類がある。同じサンドウィッチでも食材が違っている場合は違う料理の扱いになってレパートリーポイントが認められるってルールブックに書いてあった」

「料理は持っていくんですか?」

「いや、料理は競技中に作る。バリスタ競技会はエンターテイメントでなければならない。ホスピタリティポイントもあるんだから、狙うしかないだろ」

「そうですね」


 この中で最も料理に精通しているのは唯だ。フードの方は唯と相談しながら作るか。


 6月下旬、ある日の晩のことだった。


 いつものように4人で食事を取っている時だった。


「ねえお兄ちゃん、私にも手伝わせてよ」

「駄目だ。璃子には別の大会があるだろ」

「私はもう大会で作るものが決まってるから、後は練習するだけだよ」

「もう決まってんの!?」

「うん。私が出る大会は毎回テーマが決まってるの。予めテーマが用意されてる分作りやすいし、お兄ちゃんの場合は特にテーマとかないから、全部自分で考えないといけないでしょ。だから苦戦してる」


 璃子は僕を心配していた。僕としては課題に集中させるために距離を置いてたんだけどな。


 どうやらそれが裏目に出たらしい。璃子は心配性だからなー。


「むしろ僕の得意分野だ」

「創造性や好奇心があっても、完全に自由って言われたら案外何も思いつけなかったりするものだよ」


 瑞浪がハンバーグを上品に食べながら璃子の代弁をする。言いたいことは分からんでもない。自由とは言っても、漠然としすぎている。無から何かを発想するのは難しいのかもしれない。


 アイデアの一部を伊織や優子に頼ってしまっているのも自分だけで思いつくのに限界がある証拠だ。伊織がアイデアを思いつき、僕がアイデアを加工し、優子がアイデアを完成させる。子供だったら余計なことは考えず、片っ端からやりたいことを始めるんだろう。


 だが大人は何かを始めるだけじゃなく、結果も出さないといけない。


「それはあるかもな。完全な自由は、ある意味不自由なのかも」

「この前参加者のリストを見たから分かるんだけど、条件はみんな一緒でも、お兄ちゃんは初めての出場だし、参加者の中で数少ない20代なんだからさ、もっと人を頼ってもいいんじゃないかな?」

「人を頼るのは慣れてるけど、みんなだって僕に時間を割く余裕ないだろ」

「昔のお兄ちゃんは他人の都合なんてお構いなしに振り回してたくせに」

「昔より丸くなりましたよね」


 丸くなったわけじゃない。振り回される者の痛みを知っただけだ。


 接客業をするようになってからは、接客業を営む人の気持ちが分かるようになった。自分が客という立場の時、店員に怒鳴ったりする発想がないのだ。


「詳しいことは分からないけど、他の国の代表は色んな人に力を貸してもらってると思うよ。1人の人間にできることなんてたかが知れてるんだし、頼るのはちっとも恥ずかしいことじゃないよ」


 僕は気づいてしまった。いつの間にか迷惑をかけることを恐れるようになっていた自分に。日本人規制法だって、あいつらと距離を置きたいというよりは、迷惑をかけた時の制裁を恐れて始めた。


 身内を頼る時でさえ、相手の都合を考えてしまっている。


「優子さん言ってたよ。お兄ちゃんは人を用いる時に全然人をこき使わないけど、労働基準法を気にしすぎるせいで、労働力をフルに活用することができなくなってるって」

「そりゃそうだ。僕はこの10年間、ずっと奴隷のように働いてきたんだからさ」

「「「……」」」


 実際、その通りだから困る。しかし、だからと言って労働基準法を破る理由にはならない。身内が過労で死にかけたことは璃子たちも知っているのだから尚更だ。


 その影響で……僕が全く人をこき使わなくなってしまったことも。

気に入っていただければブクマや評価をお願いします。

読んでいただきありがとうございます。

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