148杯目「せめてもの清算」
祝勝会が終わると、2次会のバリスタパーティに誘われるが、当然断った。
僕、伊織、真理愛の3人は同じタクシーで岐阜まで帰ることに。
夜遅くに岐阜に到着すると、伊織を家に帰してから葉月商店街でタクシーを停め、僕と真理愛と2人きりのまま、隣同士で一緒に歩いた。夜中の商店街は文字通りシャッター街だ。窓越しに明かりがついている家もあったが、ほとんどの家は次の日に備えて寝静まっている。
「真理愛」
「……はい」
「次はもう庇ってやれないぞ。僕が背中を押せるのはここまでだ。もう大人なんだからさ、後は何もしなくても、自分の足で歩けるよな?」
「そうですね」
真理愛は力なく頷いた。あまり介入しても彼女のためにならない。
これでも彼女がやりたいことを言えないようなら、一生雑魚キャラとして生きていくことを余儀なくされる。身内であれば助けてやれるが、彼女は他人だ。これが良い塩梅だろう。
真理愛と別れると、欠伸をしながら帰宅し、就寝するのだった――。
翌日、璃子たちから選考会優勝を祝福され、昨日のことを話していた。
「何だか浮かばれないですね」
「寄りによって自分の夢を奪ってくるのが実の親とはねー」
「まっ、バリスタオリンピック日本代表に内定したし、来年まで本番用のコーヒーでも考えるか」
「トラックが交通事故に遭った時はどうなるかと思ったけど、何故かお兄ちゃんだったら乗り越えられるって思っちゃった。思った通りだったね」
璃子が久しぶりに忌憚のない笑顔を見せてくれた。本当に可愛いな。
「スーパーで買ってきた食材を使って勝つなんて、あず君って本当に面白い」
優子がクスクスと笑いながら僕の健闘を褒め称える。
「後で穂岐山社長が僕の作ったクラッカーのクリームチーズ乗せと、フルーツの盛り合わせヨーグルト蜂蜜添えを絶賛してた。世の中何が評価されるか分からんな」
「でもコーヒーと相性の良いメニューをよく用意できたよね」
「コーヒーマリアージュには昔から注目してたからな。酸味の強いコーヒーならクラッカーとかチーズといった軽い味わいが合ってるし、苦味の強いコーヒーなら甘くて濃厚な味わいのフルーツが合ってると思ったからさ、チーズもヨーグルトも牛乳由来の食べ物だし、コーヒーとの相性はバッチリだ。あれで少しでも減点を抑えられればラッキーって思ってたけど、大きく足を引っ張らなくて良かった」
「あず君、これ見てください」
唯がスマホの画面を僕に見せてくる。昨日の選考会のスコアが掲載されていた。
1位 葉月梓 586.8
2位 松野翔吾 472.5
3位 加藤真理愛 470.7
4位 石谷雄一 463.0
5位 岡田明人 456.3
6位 結城俊 443.6
7位 山本友香 442.9
8位 穂岐山美羽 423.7
9位 本多健介 422.1
10位 杉浦一花 421.0
真理愛……あともう少しだったな。
基礎がちゃんと固まっている上に多くのアジア勢が苦手としているコーヒーカクテル部門のスコアが10人中2番目に高かった。僕のマリアージュ部門スコアは10人中3番目だった。
相性の良い組み合わせを知り尽くしていたのが功を奏した。
「どのバリスタも凄いですけど、やっぱりあず君が頭一つ抜けてますね」
「もしマリアージュ部門で予定通りのフードとスイーツを使っていたら、もっと得点が高くなっていたと思うと、底が知れないね……お兄ちゃんは」
「次は事故らない運送会社に頼んでくれよ」
「そんなに心配なら、会場に近い場所で作ってから持っていった方がいいかな?」
「そうだな。また穂岐山珈琲にお願いするか」
話が終わると、みんな元の業務へと戻っていく。
優子は僕のサポートから璃子のサポートへとスイッチした。この日からは晴れて璃子のサポートに集中できるようになった。璃子はこの日もクローズキッチンでチョコレートのテンパリングをしており、チョコレートを伸ばしたり集めたりすることで、チョコレートを均一に冷やしている。
課題が多い上に、当日は璃子1人で競技に挑まなければならない。スイーツは作るのに時間がかかるため、スイーツ系統の競技は1回戦だけでも1日かけて行われることが多い。だが決勝大会は1日だけで済むらしい。決勝大会へと駒を進めたのは僅か5人、璃子は決勝大会が来る日までの間、ずっとチョコ作りに没頭していた。大会前の僕の姿とよく似ていると唯が言っていた。
璃子が練習に集中できるよう、璃子には店の営業をさせなかった。
様子を見守りながら、僕らは店の営業を続けるのだった――。
11月上旬、璃子がワールドチョコレートマスターズの国内予選から戻ってくる。
結果は悲願の優勝だった。これで次の年の10月に行われるワールドチョコレートマスターズの日本代表として出場することとなったわけだが、璃子にとっては大きな意味があった。
「「「「「優勝おめでとー!」」」」」
クラッカーが一斉に鳴ると、帰ってきたばかりの璃子が紙吹雪に包まれる。いつもは僕がこのサプライズを受けていたのだが、璃子が考えたこのサプライズを僕が仕掛ける側になるとは思うまい。
「ふふふふふっ、まさかこんな日が来るなんてね」
璃子が余裕のある笑顔でトロフィーを見せ、事実上の巻き込み参加となった他の外国人観光客からも祝福されていた。璃子がスイーツの大会で優勝したのはこれが初めてだった。
インタビューでは感極まってしまい、ずっと涙が止まらなかった。
後日、幸運なことに、その様子が動画にアップロードされていた。
世界的な某動画サイトでこっそりと動画を見た。
インタビューの時、しばらく涙ぐんでいた状態が続くと、璃子はようやくその重い口を開けた。
『ここまで……会社や……兄から……サポートしていただいたにもかかわらず、失敗したり、結果を残せなかったりで、ずっと……申し訳ないと思ってたんですけど……やっと……今まで育ててくれた恩を……返せたと思います。感謝しても……しきれません』
――ずっと耐えていたんだな。
ボンボンショコラからピエスモンテまで、様々な課題を優子に手伝ってもらいながらも、ようやく内に秘めた想いを形にできたのだ。璃子が優勝できたのは、きっと逆境を乗り越えたからだ。
璃子はずっと口角を上げたまま、報われたような顔だ。うちのスイーツ用ショーケースは、しばらくの間大会で使っていたチョコレートばかりとなり、連日その全てが売り切れていた。
「璃子さんの作品、売れるようになりましたね」
「そうだな。あいつもそろそろ……独立の時かもな」
「ええっ! どういうことですか?」
「一人前になった者は独立するのが葉月珈琲のルールだ。自分が作った作品を買いに来るファンが大勢できたってのに、いつまでも僕に依存するのはどうかと思うぞ」
「じゃあ、会社を辞めさせるんですか?」
「どっちでもいい。会社を辞めて自分の会社を立ち上げてもいいし、うちの傘下で別の店舗マスターになってもいいし、そこはあいつに選ばせる」
唯は不安そうな顔だ。彼女にとって璃子は姉のような存在である。
いつかは巣立っていくのが家族というものだ。璃子の同級生も来年には大学を卒業するし、既に働いている者もいる。遅くても30までには巣立ってもらわないとな。
璃子は自力で飯を食える大人になりつつある。
僕はそのことがたまらなく嬉しいのだ。リサもルイも来年からは本格的に動画制作の方に集中してもらうため、新しく用意した施設に移動してもらう予定だ……となると2人は雇う必要が出てくるな。
――考えるべきことが増えた気がする。
11月中旬、休日を迎えた僕は『美濃羽美容室』へと赴いた。
店の外から中が見える。中では小夜子たちが機嫌良く客を迎えている。営業中の合図だ。中を覗いてみると、小夜子と明日香の2人が姉妹で店を営業していた。
店内には2人の店員に対して5人分の席が用意され、部屋の端っこには客が待つための黒いマットのようなベンチがある。これも座れるのが5人くらいだ。
「いらっしゃいませ。あっ、あず君、久しぶり」
「お久しぶりでーす」
2人が元気良く挨拶する。流石は接客業だ。あっ……うちも接客業だった。だが客とつきっきりで接客をするのとはわけが違う。また来てもらうために攻めの接客が求められている業界もある。
「えっと、背中の中央部分まで調髪ね」
「はーい」
店の奥の方にある席に座り、水色の散髪マントを着用し、首から下が全部隠れた。終わるまではずっとこの席に固定され、目の前の鏡に映る僕の美しい顔を見られるというご褒美が待っているわけだ。
2人とは積もる話をした。小夜子はこの店で明日香が美容師になるための修行をしている。
明日香は既に成人しており、今は専門学校へ通いながら美容師を目指している。まずは手に職つけてから長い人生を謳歌していくのだろうか。
それにしても、さっきから明日香の豊満な胸が当たってくるんだが。
「あず君、バリスタオリンピック日本代表になったんだってねー。おめでとう」
「ありがとう。一時はどうなるかと思ったけど、何とかなって良かった」
「何かあったの?」
当時の状況を詳細に説明した。
2人共笑っていたが、僕が優勝していなければ、かなり気まずくなっていたに違いない。
「そっかー。そんなアクシデントがあったんだー」
「お前は昔っから変わった奴だな」
この声、聞き覚えがある。まさか……。
嫌な予感が脳裏によぎりながらも、少し離れた隣の席を見た。
隣には岩畑が座っていた。以前のイケメンでガタイがよかった頃の面影すらなかった。太り気味で清潔感がなく、短パンもTシャツもヨレヨレで、すっかりと不貞腐れていた。
「君は昔と変わったな」
岩畑とは一切顔を合わせずに会話をする。
内心ビビってはいたが、昔のいじめっ子と会話が成立したのは大きな進歩だ。
「ああ、高校に行ってからは転落続きだ。甲子園には行けないし、親父の会社は倒産するし、俺も職を失っちまったし、お前とは対照的だよ」
「闇人格は隠さなくていいのか?」
「闇人格? 何のことだよ? 俺は元からこうだよ」
なるほど、周囲から好かれるために演じていたあの姿が裏の顔だったわけね。
「良い子を演じる必要がなくなったわけか」
「ああ。でも今思うと、お前みたいにもっと伸び伸びというか、自分に素直に生きとけばよかったと思ってる。もう手遅れだけどな」
「だったらまた立ち上がればいいだろ。死ぬ以外は掠り傷だ」
「……強くなったな」
「ばーか、お前が弱くなったんだよ。心も体もな」
「――あの時は悪かった」
「どんな時?」
答えを分かっていたが、あえて尋ねた。我ながら趣味が悪い。
謝ってくる時点で、今さら逆恨みする気力すら残ってはいないんだろう。
「茶髪を理由にいじめたのが原因でトラウマになったのは、俺の責任もある。常識に囚われすぎてた。許せとは言わん。ただ、どうしてもけじめをつけておきたかった」
「偉いっ! ちゃんとあず君に謝れたねっ!」
小夜子が岩畑の勇気ある行動を褒め称えた。僕に言わせりゃ、褒めたところで甘やかしてるとしか言いようがない。自らの過ちに気づいて更生したところで、スタートラインに立っただけだ。
「別に偉くも何ともないだろ。マイナスがゼロに戻っただけだ。それに君は自分を加害者だと思ってるかもしれないけど、とんだ勘違いだ。君も悪魔の洗脳が生んだ犠牲者だ。だから謝れとは言わない」
「……」
意図せずいじめっ子になり、社会で生きていく力を奪われた。いじめは人の人生を狂わせる記憶の麻薬だ。いじめの代償は十分に払っている。悪魔の洗脳はいつだって誰かの犠牲の上に成り立っている。
だからこそ僕は……現状維持を無条件に肯定する連中を静かに軽蔑する。
「何となくですけど、あず君の言ってること、分かる気がします。どれだけ管理しやすい人間になれるかの実験につき合わされていたんだと思うと、何だかやるせない気持ちになります」
明日香が小さな声で言いながら、鋏で岩畑に最後の調髪を施した。
「はい。終わりました」
「おう。じゃあな」
金も払わずに出ていった。ということは先払い勢か。
本当にこの町には変わり者が多いな。まるで普通の人なんて最初からいなかったような。つまりみんな普通の人を演じているだけの変人だったというわけか。
僕が見てきた普通の人っていうのは、みんな演技だったというのか?
しばらくは小夜子に調髪してもらったり、頭を洗ってもらったりして、最後はドライヤーで髪を乾かしてもらい、特別に耳掃除までしてもらった。
流石は美容師なだけあって手際がいいな。
「岩畑君ね、今就労支援施設で次の仕事を探してるの」
「あれは探してない。遊びに行ってるだけだ」
「何で分かるの?」
小夜子が僕に尋ねた。理由は彼らと同じ匂いがするからだ。
でもこれじゃ伝わらないだろう。あいつらの行動パターンはすぐに分かる。
「あいつは昔っから周囲にちやほやされていた文武両道の御曹司だぞ。そんな奴がある日突然人から口うるさく指示される立場になるのはかなり応えるはずだ。あいつは親父の会社が倒産した後、仕方なく入った町工場もクビになってプライドがズタズタになってる。あいつはもう労働者には戻れない」
奴隷は王になると、奴隷だった時を忘れるが、王は奴隷になっても、王だった時を忘れられない。
そればかりか自分を守るためにプライドは高くなっていくばかりだ。人間はプライドが高い奴ほど、嫌なことをしたがらない。彼は勉強も運動も人並み以上にできてしまったために、栄光を忘れられず、社会に出た後も感覚麻痺を起こし続けているのだ。
「確か工場長と反りが合わずに辞めてしまったって言ってたような……今度詳しく聞いてあげよっか?」
「遠慮しとく。聞かなくても分かる。あいつらの一連の言動が全てを物語っていたからな」
施設やFランで数多くの飯を食えない大人を見てきた。
過去を語らずとも、彼らの言動が全てを物語っていた。僕は彼らの人生が何故うまくいっていないのかが容易に想像できる。Fランの文化祭に行ってからは尚更分かるようになった。吉樹が僕のバリスタ講義の後、Fランの連中に自分の淹れたコーヒーを飲ませた感想を聞いた時だった。
彼らは感想を聞かれたにもかからわず、飲みやすいとしか言えず、表面的な部分にしか触れなかったばかりか、肝心の内容には一切触れなかったのだ。彼らは総じて物事に対する読解力、理解力、分析力というものが致命的に欠如しており、そのためにハードモードな人生を歩まされている。読解力がないために感想の1つもまともに言えず、理解力がないために自分を高めるための学習もせず、分析力がないために浅い知識で終わってしまう。彼らは物事の内容をうまく噛み砕くことができないのだ。
野球で言うなら、彼らは武器も持たずに打席に立ち、延々と見逃し三振をし続けるような人生を送っている。失敗を恐れて武器を振らないばかりか、そもそも自分に合った武器を探そうとすらしない。にもかからわず、彼らはうまくいかない原因を自分以外に求め続けた。
そんな奴は当然他人からも見限られ、お金の方から離れていく。故に彼らは人間関係でも生活面でも苦労を強いられ、そのことに気づかないままルールのせいにする。
こういう奴に限って、僕に人生で成功する方法を聞いてくるのだからお笑いだ。
正直に言えば、愛や想いが欠落した連中に仕事をしてほしいとは思わない。彼らが就活で負け続けるのはエントリーシートの拙さや面接での幼稚な受け答えもあるだろうが、それ以前にまず人間としての逞しさや魅力に欠けているからだ。そんな人間力のない人たちと、一緒に仕事をしたいとは思わない。
故に僕は、施設とFランを人間力がない連中が集まる巣窟と断じた。
「ここ気に入った。今度から常連になろうかな」
「本当ですかっ!?」
「ああ。理解のある人に手掛けてもらった方が僕も気楽だし」
「大スターが常連になってくれるなんて感激ですっ!」
「明日香、他の人に言っちゃ駄目だよ」
「分かってるよぉ~」
小夜子が釘を刺すように忠告する。明日香がお喋りな性格であることを知っているようだ。
明日香は小夜子とは対照的にお茶目な性格だ。
お代を払った後、美濃羽美容室を後にする。
11月下旬、今度は『和菓子喫茶飛騨野』へと赴いた。
散々行く行くと言っておきながら、1年以上も行っていなかった。我ながら忙しい日々を過ごしていたことを改めて自覚しながら空を見上げていた。
葉月商店街から少し離れた場所に位置し、飛騨野と書かれた緑色の暖簾がある。
――ここだな……ん? ここって確か……。
「いらっしゃいませー。あっ、あず君」
「ふーん、珍しいお客さんだねー」
誰かが入ってきたことが分かったのか、美咲と成美が裏から出迎えてくれた。2人とも緑を基調とした和服姿であり、和服には派手な刺繍が施されている。店内は木造で面積が狭く、10人が座れる程度の広さだった。客は全く来ておらず、2人は暇を持て余していた。
――昔のうちを思い出す。
メニューは控えめではあったが、大福、団子、饅頭、羊羹、小豆餡、練り切りといったものが何種類かに分かれて揃っており、どれも和菓子の代表と言えるものだった。
「御手洗団子とカステラとウーロン茶ね」
「はーい。御手洗団子とカステラと烏龍茶ねー」
美咲が楽しそうに注文を成美に伝えると、成美は注文の品を作り始めた。
和菓子は苦手だが、いくつか例外的に食べられるものが存在する。
しばらくして注文の品が届いた。
御手洗団子とカステラが2つ。数に対して値段が高いが、それは味に自信があるからだろう。
――美味いな。和菓子ってこんなに美味かったっけ?
「あず君、顔がめっちゃ嬉しそう」
「うん。とっても美味しそうに食べてるよねー」
あぁ~、幸せだぁ~。やっぱ飯を食う時は1人が1番だ。
誰にも邪魔されずに至福の時を過ごす。
これだけのために……今日を生きる価値があるっ!
最後にキンキンに冷え切った烏龍茶を飲み干した。
「あぁ~、美味いっ!」
「あず君ってこういう時だけおじさんになるよね」
「おじさん言うな」
「ごめんごめん。でも口に合って良かったー」
「他に客はいないのか?」
「うん。宣伝はしてるんだけど、全然来なくてねー」
「あず君の元居住地なのにねー」
成美が笑いながら、さりげなくここの正体を明かした。
――え? 今なんつった? まさかここって……。
「僕が住んでた場所?」
「そうだよ。以前は自営業をしていた時の葉月珈琲、その前はおじいちゃんが経営していた和菓子喫茶飛騨野だったわけ。どう? びっくりしたでしょー。近所の人に教えてもらったんだよー」
おいおい、マジかよ。全く近くを通らなかったし、内装までガラリと変わっていて気づかなかった。
自営業時代の住所だったとは。あの頃は本当に苦労ばかりだったけど、今となってはすっかり良い思い出だ。この場所は人気が少ない分鬼門ではあるが、ライバルがいないことの裏返しだ。つまり流行すれば滅茶苦茶売れる場所でもある。こいつらがこの場所で次のイノベーションを起こしたりして。
和菓子に満足した僕は、和菓子喫茶飛騨野を後にするのだった。
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