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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第6章 成長するバリスタ編
144/500

144杯目「親戚の課題」

 葉月珈琲の繁盛期はピークを過ぎた。


 葉月ローストでも親父が何とか頑張っているようだ。


 最初は親父とお袋だけだったが、客席が広がったことで、新たに2人のスタッフを雇っている。心配になった僕は店の様子を探るべく、葉月ローストへと赴いた。


「あっ、あず君、いらっしゃい」

「何でレオとエマがうちの制服を着てるの?」

「転職したいって言ってたから、うちで雇った」

「あのさー、人を雇う時は一言僕に言ってくれないか?」

「わりいな。客席を増やしたことで、急に人手が必要になったんだ。レオもエマも葉月商店街で働きたがっていたし、実家の楠木紅茶にいたこともあって接客には慣れてるから問題ない」

「……柚子はどうした?」

「相変わらず踏ん張ってるぞ。でもな、どうも会社の売れ行きが悪いらしい。それで柚子が仕方なくリストラ候補を探していたら、この2人が真っ先に転職を希望したわけだ」


 なるほど、そういうことか。レオもエマも安定志向が強い。より良い条件の会社に転職することに躊躇いがない。それで純利益が毎年増加傾向にあるうちに転職……いや、この場合は移籍と言った方が正しいかもしれない。いつの時代も……若者ほど感性が鋭い。


「何で楠木マリッジを辞めたの?」

「だってさー、段々給料は下がっていくし、婚活イベントにもお客さんが来ないし、岐阜コンだってあず君頼みだし、丁度ここがスタッフ募集中だったから」


 要するに見限ったわけか。柚子可哀想。


「吉樹はどうしてる?」

「吉樹だったら、楠木マリッジの雑用係にいるよ」

「……雑用係?」

「うん。名目上は色んな部署に駆り出される何でも屋だけど、実態は社内で無能の烙印を押された人たちが集まってくる部署で、吉樹は社内の仕事が全然できないから、そこに追いやられちゃったの」

「つまり各部署がいつ増員することになってもいいように、人的資源としての社員を保存しておく会社の墓場みてえな場所ってことだろ」

「会社の墓場って……言うねえ」


 エマが苦笑いしながらその場を誤魔化そうとする。一度は耳を疑ったが、ずっと楠木マリッジにいたこの2人のレビューだ。きっと正しいに違いない。


 ――墓場のような部署があるなんて、一体どういうことだ?


 所謂窓際族ってやつなのは分かるが、うちだったらクビだぞ。


「そんなことがあったんですねー」

「ああ、うちだったらそんな部署絶対作らないよ」


 この日の夜、唯に耳かきをしてもらいながら膝枕をしてもらっている。1日の出来事や思ったことを呟いてから彼女が答えてくれる時間は至福の一時だった。


「でも分かる気がします。私も昔は窓際族だったので」


 唯が何かを思い出したかのように呟く。


「唯が窓際族? 冗談だろ?」


 笑いながら唯に言葉を返す。唯の過去は知っていたが、信じたくはなかった。


「本当ですよ。私の人生は……あず君と出会うまでは、差別との戦いでしたから」

「……」


 ――ふと、僕は唯の言葉を頼りに彼女の過去を思い浮かべる。


 唯はイギリスで生まれ、最初は子役として生きていたが、日本人寄りの顔だったこともあって人種差別を受けた。しかも父親が日本マニアだったことも重なり、日本に移住した。


 日本でも貧しいままだった。唯も子役として稼いでいたが、日本の学校でもまた人種差別を受けて不登校になってしまった。ルックスやスタイルに嫉妬の目を向けられたこともあるという。


 家に引き籠り、インターネットを漁る毎日を送るようになっていたが、世界的な某動画サイトで僕の動画を発見すると、すぐ動画に没頭するようになった。僕のラテアートを見る度、親に同じラテアートを描くよう強請ることもあったという。最初は創業間もない葉月珈琲を外から偵察するだけに留めていたが、段々と自分の気持ちを抑えられなくなり、気がつけば僕に声をかけていた。


 唯はどうすれば僕に貢献できるかを常に考えていた。僕の遠征について行けるように体を鍛え、身嗜みにも気を使うようになっていった。だからあんなにスタイルが良いのか。晴れて親公認の仲になってからもずっと一緒に風呂に入り、2人きりの時には度々キスを交わしていた。僕が座りながらシャワーを浴びていると、しばらくはボーッとしたまま鏡に目を向けた。


 相変わらず風呂場の鏡に映る自分を見ながら頬に手を当てながらうっとりしていた。


 小柄で引き締まった体、うっすら割れている腹筋、女性のような顔と髪、どこにも無駄のないこの美しいフォルムに恋をしてしまいそうになる。


「あず君はナルシストですね」

「自分が好きで何が悪いんだ?」

「悪いとは言いません。むしろ凄いと思います。自分を好きになるって難しいんですよ。私も昔は自己肯定感の低い女子だったので」


 ――えっ! そんなに良いルックスとスタイルなのに自己肯定感低いのっ!? なんて贅沢な女だ。他の女がいたら間違いなく嫉妬を買うぞ。


 僕らは体を洗い合った後、再び一緒に湯船に浸かった。


「妊娠しているとはいえ、満足させてあげられないのが申し訳ないです」

「僕には十分すぎるほど良い刺激だけどな」

「なら良かったです。赤ちゃん、無事に生まれるといいですね」

「そうだな。元気な子供が生まれてくれたらそれで十分だ」


 唯もずっと我慢していたようだ。


 僕らは恋人同士になってから、お互いのことをより一層考えるようになった。毎晩一緒になってからは性欲が強くなる一方だ。ある研究によると、仕事に対する熱意と性欲の強さは比例するらしい。


 唯は腹が大きくなってきたら産休を取ることが決定している。


 しばらくは妊娠がばれないよう、体形が分かりにくい服を着てもらっている。


 8月上旬、僕は岐阜コンに運営側で参加する。


 この時だけ繁盛する親父の店を手伝うために、僕は璃子と一緒に駆り出されていた。


 客席を広げてリニューアルオープンしていたのは正解だった。


 葉月商店街で街コンを開催することで『町興し』とするためのイベントなのに、繁盛の理由が完全に僕頼みになっているのは頂けない。ていうか僕に恋人がいることがばれたら、岐阜コンはどうなっちゃうんだろうか。当分は誰にも言わない方がいいんじゃなかろうかと考えた。


 この日はレオやエマを中心とした住人が、商店街復興のために来客の案内をする。僕としては自分がいない時でも客が来るようにならないと、岐阜コンというより葉月梓劇場になってしまうのが運営側として複雑だった。僕が参加しなくなれば、確実に人が激減することを意味していた。


 そうなる前に何とかしたいが、電車で30分の距離に名古屋という強力なライバルがいる上に、商店街自体の魅力に乏しいのが空洞化の原因になっている以上、ベッドタウンの地位からダウンタウンに返り咲くのは厳しいだろう。地方から大都市に引っ越す現象が起きてるし、岐阜の不便さから名古屋に引っ越した者もいる。大都市の方が便利だし、利便性を重視する人からすれば当然だ。僕はどうせどこにいても引きこもるから関係ないけど。インターネットさえあれば、場所は関係ない時代だ。引き籠りならコストも安いし車も使わない。出勤している人にはきついだろうけど。


「柚子、ちょっといいか?」

「どうかしたの?」

「前々から思ってたんだけどさ、僕がいない時どうすんの?」

「それは……」


 柚子は答えられなかった。彼女はどっちでもないところを突破する力がない。


 僕がいたらいたで僕頼みになるし、いなかったらいなかったで客が来なくなる。僕とてずっと暇というわけではない。繁盛期と岐阜コンが重なったら、アドバンテージなしでこのイベントを成功させないといけないわけで、いつかは岐阜コンから卒業する予定だ。


「他のイベントはどうなの?」

「他の婚活イベントは固定客がいるから問題ないけど、岐阜コンはあず君頼みになっちゃうかな」

「なら今の内に解決策を探しておけ。今は参加できるけど、今後僕が何らかの事情で岐阜コンから卒業する時までに課題を解決できなかったら、もう庇いきれない。いいな?」

「分かった。でも心配しないで、経営なら大丈夫だから」


 ――嘘だ。今の楠木マリッジは火の車。


 苦虫を噛み潰したような顔で、ずっとリストラ候補を探していたくらいだし。


「雑用係があるって聞いたけど、本当か?」

「……うん」


 柚子は少し下を向きながら素直に雑用係の存在を認めた。


「クビにしないのか?」


 柚子に迫りながら覚悟を問う。


「そんなことしたら……あの人たちはどうなるの?」

「人の心配をしてる場合じゃねえだろ。経営者ってのはな、事業を継続するためには、時として冷徹な判断が求められる仕事だ。それくらい分かるよな?」


 柚子は楠木マリッジの倒産よりもクビを恐れている。


 クールビューティーな女というイメージがあるが、本当は物凄く優しい女性だ。


 それこそ……競争社会には向かないと言えるくらいに。


 楠木マリッジ本社には一度だけ行ったことがある。葉月商店街からあまり距離のない場所にあるオフィスビル。氷河期世代、Fラン卒、障害者枠で雇用されている人たちが大勢いた。障害の有無に関係なく有能な人のみを雇う方針の葉月珈琲とは対照的だ。何故あんな人たちを雇っているのか。それはなかなか雇用されない彼らを見かねた柚子が積極的に雇用機会を与えた結果である。施しが凶と出たのか、1人あたりの生産性が段々と下がってきており、このままでは倒産の危機である。


「そんなの分かってる。でも……彼らは自力で稼げない人たちだよ。生活保護を拒否された人たちも大勢いる。そんな彼らをリストラするなんて……まるで命の選別をしているみたいで……辛いの」


 柚子が涙声で僕に正面から抱きついてくる。しっかりと受け止め、片手で柚子の頭をそっと撫でた。柚子が言いたいことも分からなくはない。彼らを雇い続ければ人件費が嵩み、雇用を維持するために利益を上げなければならない。それができなければ、どこかを諦めて経費削減をする以外に方法はない。


 この日の夜、唯と一緒に風呂の湯船に浸かっていた。


 唯は僕の左隣に座り、頭を僕の左肩に預けてくる。たまらず背中から唯の胸に手を回した。


「あず君だったらどうするんですか?」

「規模を縮小して、実績のない人を全員クビにする」

「残虐極まりないですね」


 落ち着いた声で感想を述べる唯。


「それが営利企業ってもんだ。残念だけど、このまま利益を上げられないようなら、仕事のできない人からクビにするしかない。もし無理をして会社が倒産したら全員失業だ。そっちの方がずっとまずいんだからさ、リストラも悪い手じゃねえよ」


 唯は納得しながらも、残念そうに息を吐いた。


「何で優しい人ほどうまくいかないんでしょうね」

「あれは優しいんじゃない。自分に甘いだけだ」


 柚子はうちの親父がいた大手コーヒー会社と同じ結末を辿ろうとしていた。


「結局どうするかは決まったんですか?」

「保留だとさ。せめて早い段階で決められるといいけど」

「あの、万が一の時は柚子さんと吉樹さんだけでも助けてあげられませんか?」

「――考えとく」


 8月中旬、某ビデオゲームの世界大会に出場するべく、僕、真由、拓也の3人で一緒にワシントンまで飛んだ。6体のパーティの中から3体を選出して戦う1対1の形式だったが、環境をうまく読んでいたこともあって、無事に優勝することができた。このゲームのシンボルである某電気ネズミが土台に乗ったトロフィーを持ち帰った。この時はみんなからトロフィーコレクターと呼ばれていた。


 もちろん、ワシントンでもカフェ巡りをした。訪れたカフェにも大勢僕のファンがいて、彼らに写真を撮られていた。応援に来てくれていた拓也と真由の3人でカフェ巡りを楽しんだ。普段は独り飯を好む僕だけど、身内と一緒に食べたり飲んだりするのも悪くない。


「あず君がこの前うちにおった時、姉貴にめっちゃ触られとったな」

「あれはマジで応えた。厚化粧のままベタベタ触ったり抱きついたりしてくるし、まずはあの距離の詰め方をどうにかしないとな。結婚したいなら自分で稼ぐか、条件を下げるように伝えておいてくれ」

「多分効果ないと思うで」

「あはは……結構大変なんだね」

「あっ、そうだ。美月とはどうなったの?」

「……振られちゃった」


 真由はため息を吐きながらがっくりする。


 だがそこまで落ち込んではいない様子だ。彼は気持ちを新たに恋人を探している。


 美月は親父があの件で失業してからというもの、彼女自身の立場も段々と悪くなり、穂岐山珈琲にいられなくなって退職した。同僚からは何も言われなかったが、味方をしてくれたわけでもなく、同情の目を向けられていた。美月は何も悪くないのに……これだから世間ってやつは。


 最後に美月に会った時、彼女は浮かない顔をしていたし、他の人と全然話さなかった。いや、話せるような空気じゃなかった。真白会長がコーヒー業界の信用を失墜させたことによるダメージは家族にまで広がっていたのだ。このままでは美月が不憫だと思い、早速スマホで美月にメールを送った。


『話は聞いた。1つ提案があるんだけどさ、もし美月が親父の代わりに罪を償いたいと思っているんだったらさ、岐阜で一緒に働かないか?』

『別に気を使わなくてもいいんですよ』

『美月は何も悪くないのに、あの件で会社に居られなくなって退職はおかしいだろ。僕も原因の一端を担ってるんだから、尚更放っておけない。脅すつもりじゃないけど、これは君が親父の代わりに贖罪をする唯一のチャンスだと思ってくれ』


 しばらく経ってもメールの返信が来ない。悩んでいるのだろうか。


 真由と拓也と話していると、ようやく返信を知らせる電子音が鳴った。


『分かりました。今度履歴書を書いて持っていきます』


 ――良しっ、かかった。美月には穂岐山珈琲の育成部にいたバリスタとしての経験を存分に活かしてもらいたい。せっかく才能があるのに、活かさないのは勿体ない。


『手書きの履歴書は受け付けてないから注意してくれよ』


 履歴書を送るってことは、失業してからしばらくの時間が経っている。美月には親父の店で働いてもらうか。あれだけ親父の実名と噂が広がってしまったのだから、他の企業には当分雇ってもらえないことが手に取るように分かった。複数の店舗を持っていて本当に良かった。


 十分すぎるほどカフェ巡りを楽しんだ僕は日本へと帰国するのだった――。


 9月上旬、うちで親戚の集会が行われた。


 お盆を9月に行ったのは初めてだった。8月に参加した頃はみんな繁盛期の中で参加していた。誰かが継続しなければ、唯一の癒し要素だった親戚の集会がなくなってしまう。そう思った僕は、おじいちゃんが始めたこのイベントを継続するべく、バトンを引き継ぐことを決意した。


 あず君の親戚で良かったと言う人もいた。昔はトラブルメーカーとして有名だったが、今じゃ葉月家のマスコット的存在だ。基本的にみんな朝から集まる。昼を過ぎる頃には親戚一同の約90%が揃う。日曜日が仕事の人もいるため、全員が揃うことは少ない。この時のうちは店じゃなく家という扱いだ。外から酒や出前の料理を持ち込んでも構わない。だが店のメニューを注文する場合は、通常通りお金を払って注文してもらうことになる。スペシャルティコーヒーは貴重であるため、流石にこれをただでばら撒くわけにはいかなかった。偶然にもうちが収容できる客数は親戚一同の数を上回っていた。


 席が足りない時はなかった。主な話題は僕の活躍と璃子の縁談の話なのは相変わらずだ。


 璃子は吉子おばちゃんと話していた。


「うちの知り合いに良い男がいるんだけど、良かったらつき合ってみない?」

「これからショコラティエの大会に出るから、当分は恋愛とかしてる暇ないかな」

「璃子ちゃんまであず君みたいなこと言うねぇ~」


 大きなお世話だ。大会の方が百兆倍大事に決まってんだろ。


「ねえ璃子~、どんな大会なの?」


 璃子の隣に座っているリサが話しかけてくる。


「ワールドチョコレートマスターズ国内予選。簡単に言うと、2年に一度開催されてるショコラティエの世界大会があって、それに出るには日本代表にならないといけないの」

「国内予選はいつ出るの?」

「書類選考を通過できれば、今年の11月に出られると思う。優子さんにも十分サポートしてもらったから、多分大丈夫だと思うよ」


 ――えっ! 嘘だろ! 璃子もかよ。僕も優子に選考会のサポーターをお願いしているんだが……もし先にお願いしたのが璃子だったら、後々断られる可能性があるな。


 隠すわけにもいかず、璃子に話すことに。


「えっ! じゃあお兄ちゃんもなの?」

「ああ。だからさ、9月の間は優先的に優子にサポーターをお願いしてる」

「うん、いいよ。どうせ駄目って言ってもそうするんでしょ?」

「まあな。でも最終的にコーヒースイーツは自分で作るから心配すんな」

「それは私も同じだよ。最終的には私1人でやらないといけない大会だし」

「あず君も璃子ちゃんも、コーヒーとチョコレートの話をしてる時は生き生きしてるね~」


 吉子おばちゃんが僕らの喜ぶポイントを指摘する。当たり前なんだよなぁ~。


 吉子おばちゃんは未婚の親戚に対してお見合いの仲人をしている。僕の仲人をしていたのも吉子おばちゃんだ。人に縁談を勧めるのが趣味と言っても過言ではない。璃子は仕事に専念したい様子だった。僕みたいに得意分野を究めるまでは恋人なんて考えられないと言っていたし、男に会う度に胸ばかり見られるのも苦痛だったらしい。璃子はスレンダー巨乳の女だ。モテるのも無理もない。


 僕が璃子のために服を作る時は、胸を強調したデザインになることが多い。それもあって巨乳が余計に目立ってしまうのだが、璃子は僕が作ったものだからと大会の時に着ていくこともある。健気で従順なところが長所でも短所でもある。近くで誰かが怒られると、怒りが自分に向けられていないと分かっているのにもかかわらず、ビクビクと体を震わせながらビビってしまうところがチャームポイントだ。


 この繊細さこそ、璃子の可愛いところなんだよなぁ~。


 都市部ではあるが、田舎の色が強い分、結婚の圧力も根強いのだ。大輔も優太も結婚を勧められるようになった。僕が仕事を振って収入が安定してからは、大輔たちも婚活をするようになった。それまでは求職中で、婚活なんてしている場合じゃなかった。無職でいる内は、余程の魅力がない限り、女から相手にされることはない。女が男に求める条件はいつだって経済力だ。


 僕がおじいちゃんの始めた風習を受け継いだことで、どうにか親戚一同の居場所が守られたことを改めて確認できた。葉月珈琲こそ、葉月家と楠木家にとっては心の拠り所と言ってもいい。


 他愛もないことを考えながら、最後まで親戚の集会につき合うのだった。

気に入っていただければブクマや評価をお願いします。

読んでいただきありがとうございます。

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