140杯目「生きる力を守るために」
5月上旬、ゴールデンウィークの日曜日に親戚の集会が行われた。
うちで親戚の集会を始めるようになってからは、移動の手間がなくなった。
唯は同居人という立場ではあるが、難なく親戚にも馴染めている。
唯は外堀から埋めていくタイプか。なかなかに強か。唯のように三大欲求を全て満たしてくれる女は男からすれば手放せない存在だ。手料理、耳掃除、濃厚接触ができれば無敵である。
謎の倦怠感に襲われていた。まだ何もしていないというのに、まるで全ての作業を終えたかのような状態である。もしかして疲れてるのかなと、自分自身を問い質す。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
バックヤードで横になっている僕に璃子が話しかけてくる。
「大丈夫じゃねえよ」
力なく答えた。脳裏には伊織のことばかりが過っている。
「もしかして、昨日寝てないんじゃないの?」
「一応寝たよ。あんまり寝れなかったけど」
「お兄ちゃんは虚弱体質なんだから、睡眠の質が良くないと倒れちゃうよ」
――睡眠の質? ……! そうか、確か伊織のことばっかり考えててあまり眠れなかったんだ。伊織とは相談してみますという返信を最後に連絡が途絶えている。
あれから数日が経つ――伊織は大丈夫なのか?
「あず君っ! 伊織ちゃんに伊織ちゃんのお母さんが来てますっ!」
――えっ! どういうことだっ!? 今確か伊織って言ったよな!?
「それ本当か?」
「はい。あず君に会いたいと――」
バックヤードから飛び起き、伊織の元へと向かう。
「伊織?」
「あず君、お母さんを連れてきました。遅れて申し訳ありません」
「そうか。じゃあ早速見せてやろうぜ。バリスタがどれほど素晴らしい職業なのかを」
「……はい」
「一体何をするんですか?」
「彼女の未来を懸けた戦いだ」
唯はきょとんとしていた。伊織はすぐバックヤードまで移動し、自分用のスカイブルーを基調とした制服に着替え、オープンキッチンに舞い戻る。璃子のライトブルーの制服より少し濃いくらいの色だ。久しぶりに見る彼女の制服姿は、とても可愛らしく美しい光景だった。
「伊織、この前のメソッドでパナマゲイシャを淹れてくれ」
「あれ高いはずですけど、いいんですか?」
「うん、いいぞ」
1杯3000円のコーヒーだが、これで伊織の未来を守れるなら安いくらいだ。
伊織の母親を連れてきたのには訳がある。実際に伊織が淹れたうちのコーヒーを飲んでもらい、彼女が持つ無限の可能性に気づいてもらうためだ。
伊織は僕の意図をすぐに察していたのか、時間をかけて説得していた。
「伊織、何をするつもりなの?」
「お母さん、さっきも言ったけど、私が淹れたコーヒーを飲んで。お母さんが納得しなかったら、バリスタの夢は諦めて、大人しく高校に行くって約束するから」
「本当に?」
「……うん」
伊織が覚悟を決めた表情だ。ていうかこれ、どんなに美味くても彼女が首を横に振れば確実に負ける勝負なんだが……そこはもう少し作戦を練るべきだったな。
本気で高校に行ってほしい人に決定権を握らせてしまうのはピンチと言っていい。
「あず君、これは一体どういうことだ?」
何の事情も知らない大輔が親戚一同を代表して僕に問い質してくる。
僕は伊織がペーパードリップでコーヒーを抽出している間、彼女が抱える事情を説明する。伊織は自分で自分の未来を決めたがっていた。これは伊織が高校に行かずに済む最後のチャンスだ。
「できました」
伊織の母親がカウンター席に座り、コーヒーのアロマを嗅いだ。
伊織は2杯同じコーヒーを淹れていた。まずは僕が飲んでみる。
……! 爽やかなレモンティーのフレーバー、オランジェットのアフターテイスト、流石はJBrCを制覇したコーヒーなだけあってずば抜けた美味さだ。ここまで味を引き出すのは難しいが、彼女が僕の代わりに出ていても結果を残せていたまである。
ドリップコーヒーのセンスだけなら僕以上だ。
「――駄目かな」
「「!」」
伊織の母親がこのコーヒーに対して疑問を呈す。
「えっ! 何で?」
「これは私の知っているコーヒーじゃない。まるで別物。レモンティーとしてもどうかな。悪いけど、これじゃバリスタとしてやっていけないと思う」
「そんな……」
――おいおい、ふざけんなよ。アロマ、マウスフィール、フレーバー、ボディ、アフターテイストに至るまでの全ての項目で1番を取ったドリップコーヒーだぞ。
修行の成果は十分に出ている。やはり出来レースをするつもりか。
「俺も少し飲ませてもらうぞ」
哲人のおっちゃんがカウンター席に座り、僕が飲んでいたドリップコーヒーを口に含んだ。
「私も飲ませてもらおうかな」
伊織の母親の隣には哲人のおっちゃんの妻、恵梨香おばちゃんが座り、伊織の母親が飲んだドリップコーヒーを飲んだ。僕も伊織もテイスティングが行われる光景を固唾を飲んで見守っている。
エドガールのおっちゃん、お袋にとっては1番上の姉にしてエドガールのおっちゃんの妻、京子おばちゃんまでもが伊織にドリップコーヒーを要求する。伊織は僕の方を向き、僕が首を縦に振ると、伊織はサーバーに余っている残りのドリップコーヒーをコーヒーカップに注ぎ、提供していく。
「――美味い。コーヒーが持つ味を存分に活かしている。柑橘系のフレーバーをここまでクリーンに引き出すのはあず君でも難しい。まだ中学生なのに、ここまでのコーヒーを淹れられるのは、あず君以外には見たことがないですよ」
「ありがとうございます」
伊織が哲人のおっちゃんに頭を下げて礼を述べる。
すると、今度は京子おばちゃんが伊織の母親に厳しい表情を向けた。
「私の見立てですけど、素質は十分だと思います。どうして背中を押してあげないんですか?」
「……私がPTAやママ友の会に出席する度に、みんな私がシングルマザーであることを理由に、私や娘のことまで貶してくるんです。娘には良い大学を出てもらって、大手企業に就職してもらわないと困るんです。ましてや中卒でバリスタになるなんて、そんなの恥ずかしくて、近所の人に言えません」
伊織の母親が伊織に対して思っていた本音を話し始める。なるほど、要するに近所の人からのマウンティングに対抗するために、娘を大卒のエリートサラリーマンにしようとしているわけだ。
あーあ、どんだけ重要な理由かと思いきや、しょーもな。こんなクソみたいなプライドのために1人の才能が潰されようとしているのかと思うと、マジで泣けてくるぜ。
「その気持ち、分かります!」
今度はうちのお袋が伊織の母親に向かって意気揚々と話しかけた。
――えっ! 分かるの? 僕全然分かんないんだけど。
「あなたもですか?」
「はい。うちの子は2人共中卒で、しかも息子に至っては、かなり後味の悪い卒業の仕方だったので、近所の人には全く話せなくて、ずっと成績優秀な高校生だと嘘を吐いていました。でも息子が有名バリスタになってからは尊敬を集めるようになったんです。息子は集団生活が苦手で、教師からも反省する知能がなさすぎると言われてましたけど、人に恥じるような生き方はしていません。だから私は息子を信じることにしたんです。今では中卒で起業することを容認したのは正解だったと思っています。子供って、案外ちゃんと考えているものなんですよ」
「……」
しばらくの間、伊織の母親が黙っている。何だか気まずいな。親戚の集会の最中に伊織が親を連れてくること自体予想外だったが、伊織にこの慣習は全く伝えていなかった。
「娘さんなら大丈夫ですよ。なんてったって、あのワールドバリスタチャンピオン、葉月梓がその腕を保証してるんです。きっと大丈夫です。なーに、あず君にかかれば立派な大人になれますよ」
今度は親父が得意げな顔で説得に回った。僕の事業がうまくいってからというもの、親戚内から学歴信仰はすっかりと消えてなくなり、学歴よりも生きる力を重視するようになった。
「娘が成功できなかったら……責任取れますか?」
伊織の母親が僕のいる方向に真剣な顔を向け覚悟を問う。
彼女もまた、伊織の親として娘の将来を考えているのだと、僕はジト目のまま悟った。
「成功するかどうかは保証できないけど、成長は保証する。最悪この店がなくなっても、飯を食える大人にはしてみせる。少なくとも、うちは学校に行かせるよりずっとコスパ良いぞ。給料だって出るし、スキルも身につくし、世の中で活躍できることの喜びだって味わえる」
「私は娘を高校に行かせた後、娘が人生に失敗しても責任を取る覚悟はありません。でもあなたにその覚悟があるというなら、娘のことをお任せしてもよろしいでしょうか?」
「――ああ、任せてくれ」
ふんわりと笑みが浮かべながら言った。伊織の母親の両手を握った。身内以外の日本人とここまで向き合ったのはいつ以来だろうか。正面からぶつかっても話が通じない連中と思っていた。だがそれは僕の決めつけだ。正面からしっかりと向き合えば、話が通じるかはともかく、想いは通じると気づいた。
「伊織、決めたからにはちゃんとあず君の所で頑張るんだよ」
「うん。私、必ず世界一のバリスタになってみせるから」
――やっとやりたいことを言えたな。
「でもどうしてあんなに熱心に伊織を誘ったんですか? 才能を活かすだけなら、大学を卒業してからバリスタになってもいいと思うんですけど」
「それじゃ遅すぎる。学校は生きる力を身につける術を教えてくれない。餌の取り方を知らないまま成人してサバンナに放り込まれてみろ。あっという間に資本主義の餌食だ。早い内から何かに没頭した方が社会で活躍できる確率が高い。残酷なことを言うけど、人間って20歳を迎えた時点での生きる力の質で、将来がほぼ決まってしまう。10代で生きる力を身につけた人は、将来得意分野で活躍できる確率が高い。でも10代の時期に生きる力を身につけられなかった人は、引き籠りになる確率が高い。活躍できる人もできない人もなるべくしてなってる。これは歴史が証明してきた事実だ」
実際に話を聞いたところ、施設やFランの連中は、10代の時期に好きなことへの没頭を周囲に邪魔されたり、嫌なことばかり強いられていたと口を揃えて話している。
つまり、彼らはずっと苦痛の日々を過ごしてきた反動で好奇心を削がれ、その結果やりたいことを言えないようになってしまっていたのだ。全員がそうとは言わないが、成人した頃に施設やFランに通っている時点で、人生がほぼ詰んでいると言っても過言ではない。
吉樹が施設に行くことを示唆する発言をした時はマジでビビった。
吉樹には耳の痛い話をしてしまった。
「そうですか。あず君、不束な娘ですが、よろしくお願いします」
「伊織を任せてくれるのは嬉しいんだけどさ、そうやって子供を卑下するのやめろよ。大半の人は不束者とか言われるだけで自己肯定感なくすからな」
「は、はい。分かりました。伊織をよろしくお願いします」
「任された」
その後、伊織が毎日のバリスタ修行に復帰した。
家でも練習はしていた。努力を怠らない習慣を身につけさせていたのは正解だったようだ。学校の勉強は一切しなくても許されるようになった。宿題も無視するのが当たり前になっている。伊織の母親が伊織を高校に進学させない旨を担任教師に伝えてくれた。伊織は授業中にもバリスタの本を堂々と読むようになり、学校教育をあからさまに無視するようになっていた。
どうせ授業でやってることなんて、社会に出たらほぼ使わないわけだし、受験でしか通用しない勉強を9年もかけてやる意味があるとは到底思えないんだよなー。
結局、飯を食えればそれでいいじゃねえか。
5月中旬、伊織に遅れた分の修行をさせながら、WBrC用のコーヒーと抽出メソッドを考えていた。伊織にも様々なパターンで淹れたドリップコーヒーを飲んでもらった。
静乃と莉奈も遊びに来てくれていた。静乃は伊織の進路が決まったことを心から祝福していた。
しかし、莉奈は異なる見解を示していた。
「……どう?」
「個人的にはナチュラルプロセスのパナマゲイシャが1番良いと思いました。でもこれだけだと、バランスが良い反面、小さく収まっているので、インパクトに欠けてしまいます。ブレンドした方がいいと思いますね。後はレモンティーのフレーバーを引き立たせる何かがあれば、ですかね」
「ブレンドかー。これと組み合わせるんだったら、同じく柑橘系のフレーバーがいいかな」
「味を変えずにフレーバーを補強するなら、ほとんど同じ品種を使ってもいいかもしれませんね」
ほとんど同じ品種か、そうしたところで大して味の差は……いや、できる。
精製方法が異なる同じ品種を使えばいけるかもしれない。
本当に彼女は――いつも良いヒントを与えてくれる。
「ちょっと一晩かけてやってみるか。伊織、試作品ができたらまた飲んでくれ」
「はい。あず君に貢献できるよう頑張ります」
「……」
唯が羨望の眼差しを僕の方へと向けている。伊織が帰ったら、たっぷり可愛がってやるか。最近はずっと唯のことをほったらかしにしていたし、唯もサポーターであることを忘れていた。
店の営業が終わった後、僕は唯一緒にオープンキッチンの掃除をしていた時だった。
「唯」
「はい」
「後で一緒に風呂入るか?」
「――はいっ!」
さっきまで不機嫌そうな顔をしていた唯がニコッと笑い、僕に抱きついてくる。ちょろい。唯とは毎日のように一緒に風呂に入り、睡眠に至っては毎日僕の部屋で一緒に寝ていた。寝る前には耳かきをしてもらい、すっかり眠くなってしまうのが当たり前の毎日だ。本当に良い彼女を持った。
6月上旬、伊織と共に最終調整に入った。
伊織から貰ったヒントを元に、焙煎から抽出までを繰り返す。伊織は焙煎もブレンドもできないが、風味に対する深い理解力を持っている。コーヒーに何が足りないのかを教えてくれているが、それは僕も同じである。世界一のコーヒーは誰が飲んでも美味い味わいに仕上げるべきだ。
だからこそ、僕以外にも味がちゃんと分かる人に試飲してもらう必要があるのだ。伊織は全ての香りと風味を理解できる達観したセンスを持っている。コーヒーはペーパードリップで抽出することを前提としたオリジナルブレンドを使用することとなり、メソッドもそれに合わせた調整を施した。
「――これ、いけるな」
「はい。甘美の響きです」
「ジャッジもこれに対してなら、文句のつけようがないと思う」
「これでスコアが低かったら、どうしようもないですね」
「伊織、もし良かったらさ、WBrCに一緒に行かないか?」
「私がですか?」
「うん。世界の広さを早い内から知っておくに越したことはない」
「でもその日は学校ですよ」
「どうせ授業の内容なんて社会に出たら使わないから問題ない」
「お母さんに相談してみます」
自分で決めてほしかったな。社会に出たら、自分のことくらい自分で決めなきゃ駄目だ。自分自身に命令できない者は他人にこき使われる。人はそれを社畜マインドと呼ぶ。
「伊織、今は学生だからそれでもいいけど、学校を卒業したら、自分のことくらい全部自分で決めろ。誰かに相談するのは最終手段だ。いいな」
「はい。分かりました」
大会3日前、全ての準備が整った僕らは飛行機でリミニまで赴いた。
世界大会用のコーヒーは現地で作ることにして、焙煎レシピも抽出メソッドも体に染み込ませた。
僕は日本代表として、唯は僕のサポーターとして、伊織は僕のコーチとして参加してもらうことに。伊織は親を通して私用で学校を休んだ。飛行機内で学校のことを聞いたが、伊織には友人がいた。だがいずれも彼女の夢には否定的だった。休む理由は誰にも伝えないよう口止めした。
大会2日前、僕らは大会が行われる会場まで赴いた。
場所を覚えた後は、リミニの町をしばらく探索する。
リミニはローマ時代に起源を持つアドリア海沿岸の都市で、海運と漁業を伝統としている。近接するコムーネのカットーリカやリッチョーネと共に夏季は海水浴客で賑わう。サンマリノ共和国への観光客の主要な玄関口であり、リミニ駅前よりサンマリノ行きのバス路線が出ている。
海の近くにあるレストランでパスタやピザを堪能する。
僕の好きなカルボナーラやクワトロフォルマッジもある。
「あず君がイタリアに行くのは2回目なんですね」
「そうだな。ヴェネツィアは本当に良い所だった」
「――あず君が初めてバリスタの世界大会に出た場所ですよね。行ってみたいです」
「じゃあ大会終わったら行くか?」
「えっ、でも伊織ちゃんが休むのは1週間だけなんじゃ」
「別に問題ねえだろ。高校に行かないならテストを受ける必要もないし、テストで勝てなくてもいい」
「あの、行きたいのは山々なんですけど、私はここでカフェ巡りもしたいです」
伊織が遠慮がちな表情で答える。まっ、あんまり滞在期間が長すぎても怪しまれるしな。
本当なら学校なんて行かないのが正解だけど、伊織には友達とのつき合いもある。僕は友達がいなくても平気だけど、そういうわけにはいかないんだろう。
唯はずっと少食だった。少し前から様子がおかしい。
彼女に話を聞いても大丈夫としか言わないし、これは明らかに何かを隠している。何だか無理してついてきた感が否めないが、本当に大丈夫なのか?
大会1日前、僕はリミニの地で24歳の誕生日を迎えた。2人からは誕生日を祝ってもらっていた。
見た目は15歳の女子中学生のままであったため、身分証明書を見せるまでは性別も年齢も信じない人が多かった。唯はコーヒーを焙煎できる場所を事前に借りてくれていた。
うちに来てくれた外国人観光客の内の何人かがイタリア人のロースターであり、リミニの地に住んでいたため、焙煎機を使わせてもらい、大会用のブレンドコーヒーを作り上げることができたのだ。このことからも、人脈はマジで大事だとつくづく思った。
テイスティングは伊織の担当だ。ここで味が悪かったら意味がない。自分でテイスティングすることもできるが、僕としてはロースティングに集中したかったため、テイスティングは伊織に任せていた。一通り焙煎が終わった後は自分でもテイスティングをした。
「凄いです。日本で飲んだのと同じ味です」
「私にも飲ませてくれない?」
イタリア人ロースターの1人、レオンティーナ・ロレンツィーニがイタリア語で話しかけた。ここは彼女の家のコーヒー部屋で、僕らはしばらくここに泊まらせてもらっているのだ。
レオンティーナは金髪のミディアムヘアーでおっとりした印象だ。スタイル抜群で、イタリア人女性のお手本のような外見である。そして何より……でかい。人懐っこい性格なのか、僕の体をもふもふと触ってくる。彼女からは花のような香りがした。
「うん、いいぞ」
「とても興味深い味だね。こんなコーヒー飲んだことない」
「ありがとう。大会のために考えたメニューだからな」
「明日はいよいよ大会だね。応援してるよ」
「ああ、必ず優勝してみせる」
レオンティーナは笑顔でキッチンへ戻っていく。夕食を作ってくれていたのだ。できれば僕も手伝いたかったが、今日はアズサがお客さんなんだからゆっくりしていってと言われ、好意に甘えることに。
僕が大会に集中できるよう、色んな人が配慮してくれているのだと気づいた。非常にありがたい。
誰かのためにここまで尽くせるのは母性だろうか。
気に入っていただければブクマや評価をお願いします。
読んでいただきありがとうございます。
葉月哲人(CV:郷田ほづみ)
葉月恵梨香(CV:麻生美代子)
楠木エドガール(CV:井上和彦)
楠木京子(CV:田中敦子)