130杯目「カクテルの女王」
真理愛と2人きりのまま、時間だけが過ぎていく。
彼女と出会ってまだ1年くらいしか経ってないが、ここまでよく話す相手も珍しい。真理愛はベッドに座りながら僕の方を見る。親しいかと言われればそうでもなく、かと言って仲が悪いわけでもない。
ビジネスパートナーと言った方がいいだろうか。
「唯ちゃん、何もあそこまで言わなくても……」
「あいつは何も間違ったことは言ってない。調整は大会前に済ませておいて、大会中は余裕を持って他の競技者から学べって言いたいんだよ。昔の僕はいつもそんな姿勢で競技に挑んでいたからさ、今の僕にはそれがないって気づいたんだろうな」
「でも、唯ちゃんの様子を見る限りだと、それだけが理由だとは思いませんけど」
「他にも理由があると?」
「私にはそう見えます。詳しい事情は知りませんし、根拠もありませんけど、あず君と唯ちゃんが物凄く仲が良いことはよく分かります」
うわ……見抜かれてるし。でも最近の唯は僕に容赦がないな。
この前も色んな女に手を出してるとか、訳の分からないことを――。
――! 唯、もしかしてあいつ……。
「どうしたんですか?」
「いや、何でもない。明日は大会だ。今日はもう寝るぞ。真理愛も部屋に戻ってくれ」
「はい。期待してますね」
真理愛はニコッと笑いながら語りかけると、大人しく部屋に戻っていく。
今頃は機嫌の悪くなった唯を宥めている頃だろうか。
そんなことを考えながら眠りに就くのだった――。
――大会1日目――
朝早くから目覚まし時計よりも早く唯に起こされ、身支度を済ませてから会場へと向かう。大会を迎える前に下見で来ていたこともあり、僕らは道に迷うことなく会場に着いた。
多くの人が集まっており、既に何人かのナショナルチャンピオンが佇んでいる。
WCIGSCには21ヵ国から21人が参加していた。この中から決勝に進めるのはたった6人のみ。僕の本命であるアイリッシュコーヒーは決勝に進出しなければ作れない。
今すべき最重要任務は、予選を突破することだ。
競技者は競技の準備時間が始まる前に司会者がサイコロを投げ、指定アルコールを決める。1か2が出れば1種類目、3か4が出れば2種類目、5か6が出れば3種類目だ。競技中に指定アルコールを使わなければ失格となる。競技の時間が一刻一刻と迫ってくる。開会式が終わると、次々と世界各国から集まったバリスタたちが競技を始めていく。どのバリスタも示唆に富んだドリンクを作っていた。
僕の準備時間がやってくると、司会者がサイコロを振る――。
出た目は1だった。よって僕が使う指定アルコールはキルシュヴァッサーに決まった。璃子がよくキルシュトルテを作る時に使っていた酒ということもあって知っていた。一体何の因果だろうか。
競技時間がやってくると、唯は1つ1つの食材や道具などを入念に確認しながら、競技用テーブルの上に置いていく。いつも競技で使っているパンフレットも今は唯が作るようになった。
すると、唯が予想外の道具を取り出し、それを次々とアルコールが入ったボトルに取りつけていく。
唯が持ち込んでいたのはコントロールキャップだった。ボトルからメジャーカップに注ぐ際、投入しすぎないよう、かなり慎重に注いでいたのだが、それがタイムオーバーの原因だった。だがコントロールキャップがあれば、格段に調整がしやすくなる。唯は僕の弱点を見抜いていた。確かにこれなら注ぐ時間を大幅に短縮できるし、気持ちの面でも余裕が持てるようになる。
唯は昨日しばらく真理愛と買い物に出かけていたが、これを買うためだったのか。
「あず君、私ができるのはここまでです。ここからはあず君の番ですよ」
「――ああ、やってやるよ」
準備時間が終わり、競技時間がやってくる。準備時間中にはコントロールキャップを試していたが、使い心地はなかなか良かった。司会者から紹介されると、深呼吸を済ませて自分を落ち着かせた。
会場中の観客が僕に目線を集中する。
「タイム。僕はここに来るまでに多くのコーヒーカクテルの開発をしてきた。最初はアルコールへの理解が足りないこともあって苦戦していたが、コーヒーカクテルの専門店を営む人と相談しながら、世界一のコーヒーカクテルを淹れるためだけに一緒にアイデアを出し合い、最高のコーヒーにして最高のカクテルを完成させた。今回は是非それを堪能してもらいたい」
英語でプレゼンをし、見分けがつくようにコーヒー豆をグラインダーで砕き、それとは別のコーヒーの粉も作り、グラインダーからポルタフィルターに詰め、エスプレッソを抽出する。
「まずはカフェ・コレットを作っていく。カフェ・コレットはエスプレッソとアルコールというシンプルなコーヒーカクテルだ。使う酒は何でもいいとされているだけあって、組み合わせや味の自由度が高いが故に淹れる人を選ぶコーヒーカクテルだと思っている。これに使うコーヒーは、エチオピア、ナチュラルプロセスのコーヒーで、ビターチョコレートのフレーバーを持つこのコーヒーは、甘くなってしまいがちなカフェ・コレットの強い甘味を抑えてくれるため、とても相性が良いと感じた」
まずは用意したコップにキルシュヴァッサーを投入し、ダークチェリーをブランデーに漬けた自家製のチェリーブランデーを少し投入し、抽出したエスプレッソを投入してバースプーンでよく混ぜる。
ちなみにカルヴァドスが当たっていた場合は、カルヴァドスを少し投入した後、林檎をシードルに漬けてから、林檎の風味をより強くした自家製シードルを少し投入したカフェ・コレットになっていた。
多少の工夫は必要だったが、この方法であれば、どれが当たってもカフェ・コレットになる。
味は全く異なるものだが、どちらもそれぞれの食材が味を阻害しないように細心の注意を払うことでバランスの取れた味に仕上がっている。これが僕の指定アルコール対策だ。
伊織のアイデアがここで活かされていたとは、彼女も思っていないだろう。混ぜ終わったキルシュヴァッサー軸のカフェ・コレットを温めておいた2つのカクテルグラスへとゆっくりと注いでいく。
「カフェ・コレットにはホイップクリームを乗せる場合もあるが、僕が作ったのはこれだけでも十分に味わいを楽しむことができるため、今回のメニューには使用していない。このカフェ・コレットが持つフレーバーは、サクランボゼリー、アフターにはストロベリーチョコレートを感じる。一口目はアロマを楽しんでから飲んでもらい、二口目にはスプーンで掻き混ぜてから飲んでもらうことで、より刺激的な甘さが口の中に広がっていく。プリーズエンジョイ」
2杯分のカフェ・コレットをセンサリージャッジに提供する。次に淹れるのは真理愛の看板メニューを進化させた、僕らのオリジナルコーヒーカクテルであり、この日の主役を飾る一品だ。
「次はマンハッタンコーヒーをドリップコーヒーで作る。このコーヒーはカクテルの女王、マンハッタンを元に作られたコーヒーカクテルで、僕の知り合いの店の看板メニューだ。今回はその知り合いと協力して完成させた全く新しいマンハッタンコーヒーだ。使うコーヒーは、ケニア、ナチュラルプロセスのコーヒーで、このコーヒーにはカシスの風味やグレープフルーツを思わせるシャープな酸味があり、浅煎りで仕上げることで酸味が前面に出て、まるでフルーツジュースのような明るいコーヒーになる」
まずはミキシンググラスに氷を投入し、さっきとは別のバースプーンでステアし、水を取り除いてからコーヒーの粉、クラフトバーボン、スイート・ベルモット、ミード、ヨーグルトのホエイを少しずつ投入して混ぜる。コーヒーに混ぜる酒は、多くても30ミリリットル程度で十分である。
多すぎるとアルコールの味がコーヒーの味を阻害してしまう。
両方の味が引き立つようにバランスを考えて混ぜることが重要だ。クラフトバーボンは元々のマンハッタンコーヒーと同じ食材であり、このコーヒーカクテルのベースだ。最初こそ蜂蜜を使っていたが、これをミードに変えることで、よりコーヒーの風味を引き出している。ヨーグルトのホエイはコーヒー由来の酸味に近いため、すっきりとしたマンハッタンコーヒーに仕上げることができる。
ドリンクを2つのクープグラスに注いでいく。音がするくらいに冷え切ったマンハッタンコーヒーは一度飲むとコーヒー好きも酒好きも、たまらずクセになってしまう味だ。
「このマンハッタンコーヒーのフレーバーは、カシスオレンジ、ハニーキャラメル、アフターにはミルクチョコレート、ロゼワインをほのかに感じる。最後にマラスキーノ・チェリーをガーニッシュとして添えて完成だ。プリーズエンジョイ。タイム」
タイムは7分58秒、唯のお陰で気持ちに余裕が持てたこともあり、無事に終了した。
後は結果を祈るのみ。予選とはいえ、世界大会でゲイシャを使わなかったのは久しぶりだ。
ゲイシャを使っても良かったが、オーガストにゲイシャの豆はない。
あくまでも真理愛と一緒に開発したコーヒーカクテルを認められなければ意味がない。大事なのはどんなコーヒーを使うかじゃない。コーヒーが持つ可能性をどこまで引き出してやれるかである。素材の味を最大限に引き出せば、ゲイシャをも上回る味わいになると信じている。
「あず君、お疲れ様です」
インタビューを終えた後、片づけの時間を迎えた途端、唯が僕の腕を掴み、豊満なダブルメロンを当ててくる。いずれもアルコール入りのシグネチャーなだけあって考えるのは大変だった。
「ホエイの技術を今度はコーヒーカクテルに活かしたんですね」
「ヨーグルトのホエイはあず君のアイデアなんです。最初はその案に慎重でしたけど、コーヒーの味を引き上げてくれていることが分かった時は、飛び上がりそうになりました」
「僕がこのアイデアを思いつくきっかけは、1人のドジっ子だった。あいつには感謝しないとな」
ふと、カレーパーティを思い出す――。
ホエイの技術をコーヒーに活かすことを思いつかなければ、僕はとっくに過去の人になっていた。
花音は僕が紹介した花屋でパートとして働いている。時々椿がいる金華珈琲にも飲みに行っている。問題が無事に解決してよかった。彼女にはいつか恩返しをしよう。
「そうだったんですねー」
「あいつらも捨てたもんじゃねえな」
「あず君って、何気ない出来事に助けられることが多いですよね」
「他の奴は単なる普通の出来事だと思って見逃してるだけだ。チャンスは常に転がってることを知ってさえいれば、案外どうにでもなる」
他愛もない話をしながら片づけを始める。唯のサポートのお陰で、どうにか制限時間内に競技を終えることができた。こんなに細かいところまで分析し、解決する能力を持った人はなかなかいない。
真理愛がどこかへ去っていき、僕と唯の2人になる。会場には人がいたが、競技に参加中の人には話しかけないことがマナーである。みんなそのことを知っているようだ。
「唯、さっきはありがとう」
「私はあず君のサポーターなんですから、当然ですよ」
「まさかコントロールキャップで分量の調節を早くできるようにするなんて思ってもいなかった。僕としたことが、こんなシンプルなことにも気づけなかったとはな」
「日本を出る前に過去の動画を見たんです。大半の人は慣れているので使ってませんでしたけど、早く注ぐために、コントロールキャップを使っている人がいたんです」
「最初に言ってくれたらいいのに」
「だってずっと他の女性を見てばかりで、私を放置してたんですからお返しです」
「意地悪だなぁ~」
「お互い様です」
唯は僕に振り向いてもらいたがっていた。ここんとこずっと真理愛や伊織につきっきりで、唯にはちっとも構ってやれなかった。エチオピアコーヒーとケニアコーヒーの生豆を手に入れることは無理だったが、そこでまたしても美羽に頼んで仕入れてもらうことに。
穂岐山珈琲のバックアップがなかったら別のものを使う予定だったが、今回も助けてもらった。
WBCでゲイシャの費用を負担してもらった時といい、さっきの日本産の牛乳といい、穂岐山珈琲には世話になりっぱなしだ。
帰ったらお礼でもしてやるか。
そんなことを考えている時だった――。
「やあ、君がアズサだね?」
フランス語で話しかけてきたのは、金髪でスーツ姿のダンディーなおじさんだった。
隣には緊張感を漂わせている真理愛がいる。
「そうだけど、あんたは?」
「私はジャコブ・シャリエール。真理愛は私の娘なんだ。いつも娘が世話になってるようで」
なるほど、この人が真理愛の親父か。堂々とした立ち振る舞いに、ただでは近づかせてくれそうにない威厳まである。今までにたくさんの修羅場を経験してきた男の姿だ。
「世話になったのは僕の方だよ。彼女がいなきゃ、ここまで来れなかった」
「ほう、フランス語が話せるのか。ハハッ、真理愛に訳してもらう手間が省けたな。娘は将来ソムリエの仕事を継ぐことになっているんだ。もし良ければ、君が娘のパートナーになって、真理愛のことを生涯支えてやってくれないか?」
「僕にその役目は重すぎるなー」
「どうしてだい?」
「いつも自分の意志で生きてるから」
僕の言葉にジャコブが厳しい表情になる。まるで弱いところを突かれたかのように。
「お父さん、あず君は結婚向いてないから」
「そうか。短い間だが、仲良くしてやってくれ」
ジャコブがそう言って立ち去ろうと後ろを向いた。
「それはあんたが決めることじゃない」
彼は足を止めて僕の方へ向くと、再びさっきまでいた位置にスタスタと戻る。
どうやら僕の言葉が刺さったらしい。
「私が決めることじゃないとは?」
「そのまんまの意味だ。彼女の将来は彼女自身が決めるべきだ」
「そうは言っても、真理愛にはソムリエの才能がある。なのにバリスタの道なんて馬鹿げてるだろう。私は一度バリスタをやらせてみて、ソムリエの方が良かったことが3年も経てば分かると思ったんだ。コーヒーカクテル専門店をやりたいと言うから、ソムリエ修行をすることを条件に3年間バリスタの仕事をする約束で資金提供もしたし、ソムリエとしてうちの会社の後を継ぐ約束もした」
「! 真理愛、それは本当か?」
「……はい」
真理愛が力ない声で答えるが、頷きはしなかった。
――おいおい、修行だけならともかく、ソムリエになるって約束なんかしたら、その時点でゲームオーバーじゃねえか。何故そんな約束をしてしまったのか……後悔するのは自分なんだぞ。
「まあ、そういうことだ。予選突破できるといいね」
ジャコブが言い残すと、ツカツカと靴を踏み鳴らして去っていく。真理愛も居たたまれない顔のままどこかへと去っていき、唯は片づけを終えていた。
「あのー、さっきから手が止まってますけど」
「あー、悪い。ちょっと話してた」
「もしかして、あの人が真理愛さんのお父さんですか?」
「ああ。思った通りの偏屈おじさんだった」
「あず君が将来つけられそうなあだ名ですね」
「一緒にするな。偏屈さなら、あのおじさんの足元にも及ばない」
意地を張るように言うと、唯はジト目になりながら荷物を運び、黙々と次の競技者のためにスペースを空けた。今の僕の仕事は他の競技者から知識や技術を学ぶこと、そして予選突破を祈ることだ。
ホテルに戻ると、真理愛が僕の部屋へとやってくる。メールで僕が呼び出していたのだ。
彼女にはどうしても聞きたいことがあった。
「真理愛、ソムリエ修行だけが条件じゃなかったのか?」
「はい……ごめんなさい。ずっと黙っていて」
「修行だけだったら、すっぽかすこともできたのに」
「お父さんもそれは分かっているみたいでした。私は大学を卒業した後、しばらくはお父さんの店で働いていました。見習いということもあって、ソムリエの仕事はさせてもらえませんでした。私はそんな地味でつまらない下積み生活が嫌で嫌で仕方なかったんです……どうしてもあそこから脱出したかった。一生あんな生活が続くのかと思っただけで、もう恐怖でしかなかったんです」
「真理愛は案外アウトドア派だな」
「そうかもしれませんね」
不完全燃焼の状態のまま、1日中同じ場所で地味な下積み作業ばかりをさせられてたら、そりゃ嫌にもなるわな。ジャコブもきっとそんな下積み時代を過ごしてきたんだろう。だから自分の子供にも下積みをさせたかった。それが最も成長できる手段であると信じて。だがそれじゃ駄目だ。
真理愛はジャコブじゃない。ましてや自分の子供だからといって、同じ修行にずっと耐えられるとは限らないし、才能というのは、他の人がつまらないと思うことを楽しく続けられる資質のことだ。
そういう意味では、本当に才能があるかは怪しいものがある。
彼女は一体……何者になりたいんだ?
「真理愛、オーガストの期限はいつだ?」
「2014年の12月までです」
「だったらそれまでに黒字を出せる店になればいい。赤字になっても全部親の金で埋めてもらってるからここにも来れたんだろ?」
「何で分かるんですか?」
「店に客が全然来ないのに、君の表情からは焦りどころか余裕さえ感じた。まるで誰かの後ろ盾のお陰で安心しきっているように見えた」
この状態のまま約束を反故にして独立したとしても、精々半年が限界だろう。コーヒーカクテルの美味い店ではあるが、いかんせん集客力が低い。葉月商店街は比較的人通りの多い昼間でも苦戦を強いられている店が多い。ましてやオーガストは人通りの少ない夜からの営業だ。昼間からコーヒーカクテルを飲みに来る人も少ない。とどのつまり、彼女の店は葉月商店街とは明らかに相性が悪いのだ。
真理愛はカフェでバリスタの仕事がしたかった。しかし、ソムリエ修行の約束がある手前、どうしてもアルコールは外せなかった。真理愛にとってコーヒーカクテルは妥協の産物なのだ。
「1つ提案なんだけどさ、どうしてもバリスタの道を諦められないんだったら、3年目が終わる時に約束を反故にして独立しろ」
「ええっ!? そ、そんなのできませんよっ!」
「できなきゃ一生ソムリエやらされるぞ」
「――考えさせてください」
真理愛は力ない声で言い残すと、逃げるように僕の部屋から出ていく。
自分の道さえ決められない人は、後になって振り返った時に必ず後悔する。彼女は人生の岐路に立たされていた。こうしてみると、親ブロックとは恐ろしいものだ。親によっては胃袋を掴まれることさえあるのだから。今まで厄介だと思っていた親父とお袋が良心的に思える。両親だけに。
そんなことを考えながら控えめの夕食を済ませ、就寝するのだった――。
――大会2日目――
他の競技者のプレゼンを聞きながら作業工程をじっくり眺めていた。世界最高峰のコーヒーカクテルを淹れる連中が集まる大会だ。唯の言った通り調整も大事だけど、学び続けることも大事だと思った。
彼らのプレゼンの中に、次に出る大会を攻略するヒントがあるかもしれない。
全員の競技が終わると、すぐに結果発表が行われた。
司会者が次々と名前と国名を発表していく。
フランス、イギリス、ドイツ、ベルギー、スロバキアの代表が発表された。ファイナリストの残りの枠は1人。枠が少なくなるにつれ、どの国の代表も表情に焦りが出始める。
そして――。
「6人目のファイナリストは、日本代表、アズサーハーヅーキー」
――良しっ! 何とか予選は突破できた。
ここからが本当の勝負だ。みんなの努力は無駄にならなかったようだ。真理愛の切実な想いがスコアに反映されたような気がした。ソムリエとしての才能もあるだろうが、バリスタ、バーテンダーとしての才能もある。なのにどれか1つしか選べないのは勿体ない。
どうせなら一生の間に全部やればいいのに。
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