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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第6章 成長するバリスタ編
127/500

127杯目「紅茶の風味」

 しばらくすると、僕不在の岐阜コンが開催された。


 葉月珈琲からも璃子と優子が多くのコーヒースイーツを売るために葉月商店街の店舗を借り、1日限りの店を開くのだが、果たして売れるのだろうか。


 午後6時、璃子が帰宅する。優子は家に帰ったようだ。


 だが璃子の顔色は優れなかった――まさかうちの商品が売れなかったのか?


「お兄ちゃん、今日の岐阜コンだけどね……コーヒースイーツは売れたよ」

「何だ売れたのかよ。てっきり売れなかったと思った」

「スペシャルティコーヒーを使ったホールケーキもフィナンシェもプリンも全部売り切れた。でも1つだけ問題が発生していたの」

「どんな?」

「岐阜コンに来たお客さんが圧倒的に少なかったの」

「「!」」


 璃子が言うには、岐阜コン自体は大失敗だったそうな。


 岐阜コンは毎年4月、8月、12月の上旬に開催される。レオもエマも運営側として岐阜市の空洞化を危惧していた。2人共昔のような活気のある商店街を取り戻そうと、婚活イベントで客寄せをしていた。僕は運営側として、葉月ローストで淹れたコーヒーを販売する役目だったが、コーヒーカクテルの開発のために参加できなかった。利益は見込めなかったが、商店街は人で賑わっていた。


 参加者は岐阜コン史上最も少なかった。だがうちから即日出店したコーヒースイーツや親父が焙煎したコーヒー豆はよく売れた。岐阜コンが大失敗に終わった原因は、婚活のつまらなさにある。葉月商店街にやってきた客のほとんどが岐阜コンには参加せず、葉月珈琲の商品ばかりを買いに来ていたのだ。全く予想していなかったわけではないが、柚子にとっては誤算だっただろう。


 結果、葉月珈琲は儲かったが、楠木マリッジは大損害だった。


「――ということは、多分僕が来ても同じだっただろうな」

「ですね。葉月珈琲の商品は、岐阜コンに参加しなくても買えるわけですから、お客さんがみんなそのことに気づいちゃったんでしょうね」

「岐阜コンには何人参加してたの?」

「それが……50人くらいだったの」

「いつもは300人超えてたのにな」

「優子さんが言うには、お兄ちゃんが淹れたコーヒーのためだけに来ていたんだって。お兄ちゃんのコーヒーは岐阜コンの参加者しか貰えないし」

「岐阜コンにあず君がセットになったというより、あず君に岐阜コンがセットになる格好ですね」

「だから柚子は僕が淹れたコーヒーを岐阜コンの参加賞にしたわけか」


 柚子は身内の中でもかなりの策士だが、策士策に溺れるとはまさにこのことだ。


 結婚願望のない人にしてみれば、婚活ほどつまらないものはない。


「お客さんはみんな去年の暴行事件の影響だと思ってるみたい。お客さんから聞いたんだけど、お兄ちゃんを襲った人たちの家族がみんな退職しちゃったの」

「「!」」


 僕も唯も思わず息が止まった。理由はすぐに察しがついた。璃子は理由を説明してくれたが、おおよそ当たっていた。ファンの一部が暴行事件の影響であると思い込み、ショックを受けた暴行事件の加害者家族を特定し、彼らは職場でも同僚から散々なことを言われていたらしい。


 コーヒーカクテルに夢中で、岐阜コン不参加の理由を限られた人にしか言わなかったせいだ。柚子も今頃は自分を責めているだろう。柚子はこの騒動を聞くと、慌ててホームページを更新し、僕の不参加理由がWCIGSC(ワシグス)参加の準備のためであると公表したが、既に手遅れだった。


 この日の夜、僕はあの騒動についての生放送を流し、世間の暴挙を非難した。


 咎められるのは犯人だけであるべきだ。関係者まで巻き込むのは違う。人間がどう育つかなんて家族にはコントロールのしようがない。かつての親父とお袋がそうであったように。あいつらには個人という概念がない。組織内の誰かがやらかすと組織全体の責任にされる構図だが、組織内の人からすればたまったものではない。世間とはこの世で最も暴力的な全体主義であり、加害者家族は世間の被害者だ。


 正義の名の下に、何の罪もない人の人生まで奪おうとする不届き者という自覚もないまま、暴挙に及ぶことの罪深さを日本人は理解できないらしい。


 ――だから僕は……あいつらが苦手だ。


 今度同じことがあれば手加減はしない。あいつらを一生出禁にしてやる。僕だって差別主義者を演じたくはないが、制裁がなければあいつらを鎮静化できないのも事実だ。頼むから良い子でいてくれ。


「はぁ~、今日は何だか疲れたぁ~」

「生放送であれだけ怒り狂ってたらそりゃ疲れますよ。私の部屋まで聞こえてましたよ。あず君、横になってください。今日は特別に耳かきしてあげます」


 唯は梵天を右手に持ちながら、左手で自分の膝をトントン叩き、ウインクをする。


「……ほんとぉ?」


 思わず頬が緩んでしまう。他の人の感覚で言うなら、風呂上がりのビールを飲んだ気分である。


「えへへ~、気持ち良い~」


 今、僕は唯の膝枕に頭を置き、コーヒーを飲んでいるかのようなとろけた顔で横たわっている。唯は耳を擽るように綿棒を挿入する。これが完全に懐柔された男の姿である。流石は唯だ。僕をコントロールする術を身につけているとは、なかなかに強か。


 疲れていたこともあり、色白で柔らかい膝の上で眠りに就いた。


 4月中旬、日曜日を迎えると、唯の誘いで外に出た。


 久々のデートなのは嬉しいが、交際がバレそうなのが怖かった。


「どこに行くの?」

「息抜きができる場所です」

「あのなー、他の国のナショナルチャンピオンはコーヒーカクテルの研究を進めてるんだぞ」

「ナショナルチャンピオンだって人間なんですから、休む時はきっちり休んでるはずですよ。そんなに焦らなくてもいいじゃないですか。焦っていると、見えるものも見えなくなります」

「見えるものねぇ~」


 しばらくすると、リサたちの実家にして紅茶専門店の『楠木紅茶』が見えた。


 ――まさかとは思うがここに入るつもりか?


 店の外観は至って普通の2階建てである。店の前には看板があり、おすすめメニューと値段が大きく表示されている。唯に誘導されるように扉の前まで行くと、唯が古びた木造の扉を静かに開いた。


 ここに来たのは何年ぶりだろうか。レオとエマが店番をしている。店内には世界中から取り寄せた紅茶が棚に並べられている。店で飲めるだけでなく、気に入った茶葉をテイクアウトすることができる。


「いらっしゃいませー。あっ、あず君に唯ちゃん」

「お久しぶりです。リサさんに勧められたので、一度来てみたかったんです」

「あー、お姉ちゃんが勧めたんだー。お兄ちゃんとお姉ちゃんは今買い出し中で、お父さんとお母さんはキッチンで調理してるよ」

「今日はそこそこ来てるな」

「日曜日だからね。でもお兄ちゃんとお姉ちゃんのお陰で昔よりずっと楽できるようになったし、高級な茶葉も取り寄せられるようになったんだよ」

「手柄の分だけ出来高が上がるっていうのがいいよねー」


 唯はレオとエマの2人と会話を楽しんでいた。店内にはそこそこ客が居座っており、色んな茶葉の香りが漂ってくる……この紅茶の香り、なんて香しいんだ。思わず飲んでしまいそうな香りだ。


「お勧めは?」

「うーん、確かあず君って、ベルガモットフレーバーが好きだよね」

「そんなあず君には『アールグレイ』がお勧めかなー」


 アールグレイはベルガモットの香りをつけたフレーバーティーの一種だ。採れた季節によってフレーバーが変わるのが特徴的で、シーズンが進むにつれて、円熟した味わいへと変化していく。


 3月頃から4月頃に収穫される『ファーストフラッシュ』は春らしい爽やかな風味、柔らかな新芽、緑色の茶葉、黄金色の明るい水色、緑茶のような爽やかで若々しい風味と程良い渋みが特徴だ。


 6月頃から7月頃に収穫される『セカンドフラッシュ』はしっかりとした葉、褐色の茶葉、薄いオレンジ色、マスカテルフレーバーが際立ち、味、コク、香りのバランスが良い。


 10月頃から11月頃に収穫される秋摘みの茶葉、『オータムナル』は収穫量こそ少ないが、引き締まった印象のは厚みのある葉、深いオレンジ色、芳醇な味わい、刺激的な甘みとコク、ミルクティーにしても消えない豊かな風味を持っているのだ。


「じゃあ、アールグレイを貰おうかな」

「私も同じものをお願いします」

「うん、ちょっと待っててねー」


 エマが注文を済ませると、すぐにエドガールのおっちゃんたちが調理をし始める。


 席を立ち、キッチンまで赴く。目の前で学ばせてもらおうと思った。


「あず君、どうしたの?」

「目の前で見たい」

「あず君は見て学ぶタイプだったな。好きなだけ見ていってくれ」


 エドガールのおっちゃんは気にも留めないばかりか歓迎してくれた。アールグレイを淹れる作業を進めると、出来上がるにつれて良い香りが鼻を吹き抜ける。


 完成すると、一足先に席へと戻り、エマが2杯分のアールグレイを運んでくる。


「お待たせしました。アールグレイです」


 エマがドヤ顔を決めながらアールグレイを置く。淹れたのはエドガールのおっちゃんだけど……。


 ……! 美味い。香りの時点で美味いのが分かってたが、この香りに負けないくらいの味だ。しっかりとベルガモットのフレーバーが伝わってくる。唯もこの風味を楽しんでいる。


「唯、何でここに連れて来ようと思ったのかな?」

「コーヒーも好きですけど、ずっと開発ばかりでしたし、たまには別の飲み物を味わった方が、今よりも視野が広がると思ったんです」

「その発想はなかったな。ずっとコーヒーのことばっか考えてた」


 唯の言うことはもっともだった。毎日少量ずつとはいえ、あんまり酒を飲むと体に悪い。カッピングだからトータルだとあんまり摂取することはないけど、ずっと実験ばかりしていたら、コーヒー以外の味を忘れてしまいそうだ。ふと、そばに置いてある紅茶のメニューが目に入った。


 紅茶と一口に言ってもさまざまな種類があり、紅茶によってフレーバーは大きく異なる。


 種類の多様さはコーヒーと同じであると知る。


「メニューが豊富だね。説明まで書いてるし」

「ですね。あず君の大好きなベルガモットのフレーバーを強く感じますから、これをコーヒーの香りづけにも使えたら、とても素敵だと思いますね」

「! ――今、何と言った?」

「コーヒーの香りづけに使えたら、とても素敵だと思いますねって言いましたけど」

「それだっ!」


 唯の何気ない台詞が新たな閃きをもたらした。紅茶は香りの強さから、ミルクティーの香りにも使われているのだ。だったらコーヒーにも使えるんじゃないかと閃いた。


 早速コーヒーと紅茶の組み合わせに目をつけた。


「どっ、どうしたんですかっ!?」

「唯、飲み終わったら、ここのアールグレイの『茶葉』を全部買うぞ」

「全部ですかっ!?」

「ああ。良いことを思いついた」


 アールグレイを飲み干すと、すぐに土産用の茶葉を全部購入し、楠木紅茶を後にする。


 エドガールのおっちゃんは大人買いに驚きを隠せない。コーヒーカクテルのフレーバーにだけ注目していたが、それだけじゃない。香りづけでフレーバーを補強する手段があるじゃねえか。僕のコーヒーカクテルには決定打に欠けていた。見た目も良い、味も良い、だが大事な何かが抜けていた気がした。それはアロマである。紅茶の香りを使えば、アロマに乏しい弱点を消しながら、フレーバーを強化できるかもしれない。だったら試す他ない。どの道アイデアが枯渇しかけてたし、ベルガモットの香りを加えておけば、カクテル版ベルガコーヒー、即ちベルガスピリッツコーヒーと呼称しても問題ない。先にベルガモットのアロマ強く感じさせ、センサリージャッジに本来とは違うフレーバーを感じさせる。


 嗅覚で先入観を持たせると、風味も変わるのはよく聞く話だ。


 香りをつける前とつけた後でフレーバーの変化を確認する。この実験は大成功だった。アロマ、フレーバー、アフターテイストまでもが見事に強化されていたのだ。また唯に助けられた。


 数日後、ラストオーダーの時間になると、真理愛にも試飲で飲み比べをしてもらった。


 この時は伊織もバリスタ修行のために訪れていた。


 最近は中学の行事が忙しく、あまり来られない。部活が終わってから急いでここに来たとしてもすぐにラストオーダーの時間になってしまう。僕はそれが気掛かりだった。


「――! 凄いです。フレーバーが変わっています。でもまさか、紅茶を使ってコーヒーにフレーバーを足すなんて、思いもしませんでした」

「ああ。これなら世界でも戦えそうだ」


 この原理を利用すれば、他から一歩抜きん出ることができるかもしれない。まさか紅茶やその香りを利用していたとは誰も思うまい。紅茶の香りはコーヒーカクテルに使えると思い、決勝の2種類目は紅茶を意識したコーヒーカクテルに決めた。これでアイデアは揃った。後は実験あるのみ。


「決勝用のコーヒーカクテルは全て完成ですね」

「問題は予選だ。参加者全員がランダムに決められた3種類のアルコールから当日1種類のみがサイコロで決められて、必ず2種類のコーヒーカクテルの内のどっちかに使わないといけないルールだ。こればかりは発表されるまでどうしようもない。合計4種類のコーヒーカクテルを作ることになるな」

「……別に4種類作らなくてもいいと思うんですけど」

「えっ、何で?」

「3つのお酒を使ったコーヒーカクテルを全部作って、どれか1つをホットドリンクとコールドドリンクにしておけば、その3つだけで済むと思うんですけど」


 ――確かにそうだ。じゃあ残り4週間前になるまで待つか?


 でもできなかったらどうするんだ? 4週間で3つのコーヒーカクテルの開発は骨が折れる。


 どうする……やはり制限なしのコーヒーカクテルを今から作るか。


「それも1つの手だけど、4週間で3種類はきつくない? 残り4週間前になるまで予選用の制限なしの方を作って、残り4週間前になってから制限ありのコーヒーカクテルを決めた方がいいと思うけど」

「それだと結局4種類作ることになりますから、どの道しんどい気がします」


 思ったより粘ってくるな。だが彼女の言うことにも一理ある。ずっとコーヒーカクテルをカッピングし続けるのは流石に体力の限界もある。ここは真理愛の言う通りにするか。


「あの、ちょっといいですか?」


 伊織が僕に近づきながら尋ねる。


 まさか伊織もコーヒーカクテルに興味を持ったのか? 伊織は中学生だ。あと7年早いぞ。


「私はコーヒーカクテルには全然詳しくないんですけど、それでしたら、どのお酒を使っても美味しくなるコーヒーカクテルを作ったらどうですか? コーヒーと別の食材まで決めておいて、後はどのお酒を入れても、ちゃんと美味しい味になるみたいな」


 ――こいつ天才か? 確かにその方法さえうまくいけば、どの酒を使うことになっても、開発に大幅なコストをかけずに済む。ここまで柔軟な発想は初めてだ。


「伊織ちゃん、そんな魔法みたいなコーヒーカクテルは難しいと思うよ」

「……ですよね」

「いや、やってみる価値はあると思うぞ」

「ホントですかっ!?」


 伊織が目をキラキラと輝かせながら顔を向けて微笑んだ。自分のアイデアが採用されるのが心底嬉しいのだろうか。できるかどうかはやってみるまで分からないが。


 そんなことを考えながら、コーヒーカクテルの研究を続けるのであった――。


 4月下旬、WCIGSC(ワシグス)に出場するために準備を進める。


 フレーバーだけでなく、紅茶の香り使ったアロマにも注目していた。今までは天然の香りに全てを任せていたが、香りを自分で作れることを知った。日曜日を迎え、伊織が何日かぶりにやってくる。最近はうちにバリスタ修行をしに来る頻度が下がった。そんなに部活が忙しいのだろうか。


「あっ、伊織ちゃん久しぶりだねー」

「はい。なかなか修行に行けなくて困ってました」

「部活が好きで入ったのか?」

「いえ、部活が強制入部の学校なので、友達に誘われてテニス部に入ってみたんですけど、1年は体操とか球拾いばっかりで、全然面白くないです」


 面白くないことをあと3年も続けさせられるのか。理不尽にも反抗しない従順性ばかりを身につけさせる教育は相変わらずだな。僕が子供の頃とほぼ変わっていないことが見て取れる。


「強制入部ねぇ~、お兄ちゃんだったらアレルギー起こしてるかも」

「でも先輩によると、例外的に帰宅部になった人もいたそうです。しかもその人、最後の登校日に教室中の窓ガラスを全部割って、不登校になったんです」

「「!」」


 ――えっ! それってもしかして!


「その学校って……長い坂道を上った場所だったりする?」

「はい。あの坂って、下校の時は楽なんですけど、登校の時はきついんですよねー」


 ふと、僕はあの日の悪夢を思い出す――。


 間違いない。僕と璃子が行かされていた学校だ。


「その不登校児は僕だ」

「えっ!?」


 伊織が口を開けながら驚愕する。僕が当時のトラブルメーカーだったとは思いもしなかっただろう。


 大半の人は法人化してからの僕しか知らない。表向きは隠蔽されている以上、至極当然である。僕が日本人恐怖症であることは知っていても、理由までは知らない人が多いのだ。


「あず君もやんちゃしてた時期があったんですね」

「お、おう、そうだな。でもあれは正当防衛だ。ああでもしなかったら今の僕はなかった。今はむしろ感謝してる。早く学校を追い出してくれたことにな」

「そんなに学校が嫌なんですか?」

「お兄ちゃんは集団アレルギーだから、人が無作為に集まる場所は苦手なの。特に人間関係が固定化されやすい場所だと、尚更気が滅入る体質なの」

「でも、今も集団の中で仕事してますよね?」

「あず君は一緒に働く相手を選んでるの。身内ばっかりだけど」

「そうなんですね」

「伊織はさ、仲間を自分で選んでるか?」

「……それは」


 伊織が口を塞がれたかのように黙る。これは図星だな。


 沈黙もまた、コミュニケーションであることを知らないのだろう。


 伊織は自分で決断せず、流されることに慣れている。いや、流されているという自覚すらないんだ。卒業すれば会わないような連中に気を使う必要はない。そのことに気づけば、きっと自由になれる。


「僕は友達を自分で選んできた。その結果、今でも友達いない歴=年齢だ。そんなことしたら友達いなくなるよってよく言われたけど、失って困る友達がいないから、ずっとやりたい放題だったわけだ」

「全然自慢になってないよ。伊織ちゃん、堅物お兄ちゃんの言うことは無視して大丈夫だからね」

「……はい」


 璃子が釘を刺すように指摘する。全てにおいて僕のようになってほしいわけじゃない。ただ、伊織はどちらかと言えば、ぼっちの方がずっと合ってる気がしたのだ。


 伊織は僕に……どこか似ている気がするのだ。

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読んでいただきありがとうございます。

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