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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第6章 成長するバリスタ編
126/500

126杯目「目に見えない成長」

 心配になった僕は優子に相談した。何故璃子だけ成長しないのかが気になった。


 ずっと昔に比べれば進歩したと言っていいが、璃子はまだ新メニューの開発をしたことがない。全部優子に任せっきりなのも困る。優子がいない時にどうするつもりだろうか。


「というわけなんだけどさ、なんか心当たりある?」

「うーん、特にないけど、何でそんなに焦ってるの?」

「焦ってるのは璃子だ。このまま璃子だけ取り残されていったら、結婚に逃げる可能性がある」

「ふふっ、心配しすぎじゃない?」

「可能性はゼロじゃない。あいつは蓮との交際に否定的じゃなかった」

「璃子は結婚してもずっと働き続けると思うよ。それにショコラティエとして成功するまでは、絶対に結婚しないって言ってたし」

「……本当に?」

「うん、本当だよ」


 そうだったのかと、璃子の密かな決意にホッと胸を撫で下ろす。


 何で僕安心してるんだろ。璃子が結婚したら、璃子はここを離れることになる。でもこのままじゃいけないと思っている自分がいる。一体何故……。


「優子、一度璃子に新メニューの開発をさせてみてくれ。璃子の弱点がハッキリするかもしれない」

「了解しましたっ!」


 優子が軽いノリでビシッと敬礼をする。


 それからというもの、璃子に新メニューの開発をさせてみたが、どれも既存の商品に少しばかりの工夫を施しただけであり、そこに斬新なアイデアはなかった。当然、全て没案である。


 ずっと開発を見ていた優子が言うには、決まった正解のある課題ならこなせるが、正解のない課題は苦手なんだとか。僕はその原因がすぐに分かった。


 義務教育と今までの修行である。璃子に教えてきた教師も、ショコラティエ修行で璃子に教えてきた優子も、決まった正解のある問題を教えるプロだ。故に独自性が問われる作品を作れなかった。優子は親から基礎だけ教えてもらった後はずっと独学である。故に彼女は正解のない問題を解く能力が高く、お陰で新メニューの開発にも長けているのだ。


 しかし、璃子が独学で何かを作ったことはなかった。


「璃子、開発はできそうか?」

「それが……なかなか思いつかなくて」

「何で思いつかないと思う?」

「今までやってこなかったから」

「僕はしばらく大会だから、その間は僕以外の人に開発を任せたい。周りの人が全員入れ替わったら、今度は璃子が教える立場になる。その時開発のやり方を全く教えられなかったらどうするわけ?」

「どうするって言われても……」

「まあまあ、あず君の言いたいことも分かりますけど、誰にだって得手不得手はあるんですから。あず君が1番分かってるはずだと思いますけど」


 唯が僕を咎めるように諭す。だが僕は引かなかった。


「唯、これは得手不得手の問題じゃない。何か新しいものを自分で考えて作るというのは、自分を創造することだ。自分を創造できない人間はいない。もしいるなら、今まで受けてきた教育に問題がある」

「また教育批判ですか……そりゃ誰かのせいにするのは楽ですけど、今更そんなことを言ってもしょうがないじゃないですか。過去は戻ってこないんですよ」

「蓮が言うには、璃子は真面目に授業を受けていた。その弊害が起こっていると考えればこの現象に対して説明がつく。何故あいつらがしてきた愚かな所業の尻拭いをしないといけないのか理解に苦しむ」


 吐き捨てるように言うと、僕は自分の部屋へと戻った。


 璃子は独学とチョコレートの研究をしていた。最初は戸惑っている様子だったが、優子はつきっきりで璃子に教えていた。もっと自由に考えていい。それを教えていると、次第に自分で作品を作るようになっていった。優子は璃子が好きなものをモチーフとした作品を璃子自身が自分の頭で考えるように仕向けていた。優子は僕の考えを理解しているようだった。


 しばらくは優子に任せるか。覚えている技術を活かして今までにない作品を作るのは、慣れてしまえばそこまで難しくない。自分で考える訓練をしてこなかった人に創造性が問われる職業は難しい。それを打開するためには、過去の教育を全部壊すしかない。


 積み上げたものをぶっ壊して、身につけたものを取っ払って、子供の頃のような真っ新な状態に戻してから研究をさせようと思ったが、これがなかなか難しい。固定観念を全部吹き飛ばすために、青いリンゴや赤いバナナといった色んな種類の実が生っている木、頭の中で考えた建造物などをチョコレートで作ったりしていた。全部優子が作ったトレーニング方法だ。


 こうしてみると、今までの教育は何だったのだろうかと思う。


 創造性が問われる時代に均質性を鍛える教育を受けた結果だ。僕はその代償をあいつらの代わりに払わされている。それを考えただけで腸が煮えくり返る。


 僕自身、WCIGSC(ワシグス)が迫っていたこともあり、本来であれば再教育などしている暇はなかった。しかも思った以上に璃子の伸びが遅かったために苛立っていた。


 ある日のこと、店の営業終了後に、苛立ちを璃子にぶつけてしまった。


 リサとルイはもう帰宅しており、まだ優子が残っていた。


「璃子、もう期限迫ってるけど大丈夫?」

「それが……まだ全然思いつけなくて――」

「じゃあとっとと辞めちまえよ!」


 璃子は驚いた。まさか僕に言われるとは思ってもいなかった顔だ。


「ちょっと、何言ってるんですか!」

「僕はチョコレートに関してはあんまり詳しくないけどさ、ショコラティエが創造性を問われる仕事だってことくらいは傍から見てても分かる。誰かのコピーができるだけの人間なんていらない。うちが必要としているのは、自分のアイデアを創造できる人だ。仕事舐めんな!」

「……うっ……ううっ」

「「「「「!」」」」」


 珍しく声を荒げ、今まで思っていたことを全部ぶつけると、璃子はその場で泣き崩れてしまい、優子の胸に顔を預けて涙を流していた。こんな弱々しい璃子は初めて見た。


「あず君っ! 今のは言い過ぎです! 璃子さんは仕事に誇りを持ってるんですよ! 私の知る限りですけど、璃子さんが仕事を舐めていたところなんて、一度も見たことありません!」

「だったら何故……その誇りを形にしようとしないんだ?」

「あず君はなーんにも分かってないなー」

「……どこが?」


 優子が白けた顔で僕を見る。何だか責められているみたいだ。


「確かにショコラティエには創造性が必要だし、コピーができる人よりも、自分のアイデアを形にできる人の方が有利なのは確かだよ。でもあず君は大事なものを見落としてる」

「大事なもの?」

「うん。一度璃子が作ったチョコを食べてみて。そしたら分かると思うよ」


 疑問に思いながら首を傾げた。食ってみれば分かるだと?


 作品の中に見落としている答えがあるとでもいうのか?


 誘導されるようにクローズキッチンに行くと、1切れのチョコレートケーキを見つける。何かに導かれるかのように、茶色い光沢を放っているチョコレートケーキを口に頬張った。


 ……美味い。最初の一口は柔らかく、口の中に入ったチョコレートが徐々にその甘味を解放し、食べる者を安心させる。シンプルではあるが、何だか優しさに包みこまれているかのようで、思わずうっとりする味だ。赤の他人であっても分かる。これを作った人は、食べる人の気持ちを考えて作っていると。


「どんなに取り繕ったって、味は絶対に嘘を吐かない」


 ――えっ? 何で優子が知ってるんだ? ――まさかっ!


「唯ちゃんから聞いたよー、祝勝会でのやり取り。どーせあず君のことだから、穂岐山珈琲の人たちにえらそーなこと言ってたんでしょー。ひけらかしてドン引きさせるまでが容易に想像ついちゃう」

「ひけらかして悪いか? それが仕事だ。僕はバリスタとして情報提供しただけだ」

「ふふっ、まあそういうところも好きなんだけどね。どう? これでも辞めさせる?」

「……璃子の処分は見送る。優子はもう帰っていいぞ。唯は夕食を頼む」

「分かりました……」

「じゃあ帰りますか」


 唯も優子も僕の意図をすぐに察したのか、すぐにその場を離れた。


 クローズキッチンには僕としょげている璃子の2人だけが残る。


「……」

「璃子、さっきはごめん」

「……」

「あのチョコレートケーキ、最初は優子が作ったものだと思ってた。でもあのチョコレート細工に施されていた繊細な技術、まるで精密機械で作ったかのような正確さだった。優子でもあそこまで作るのは流石に骨が折れるだろうと思った。まさか甘さ控えめのチョコレート細工をケーキの中に入れて、チョコレートケーキ特有の強すぎる甘さを緩和しながら、触感の良さを加えるなんてな」


 食べて初めて分かった。璃子にも創造性はあった。


 見た目こそ地味だが、目に見えないところに彼女のアイデアが活かされていた。


 なのに僕は……大事なものに全く気づこうともせず、璃子を傷つけてしまった。


 ……何やってんだよ僕は。


 さっきまでの自分の行動を責めた。一体何を焦ってるんだと。こんなの冷静に考えれば分かる話じゃねえか。こんなの僕らしくもない。きっと疲れてるんだ。


「――気づいてたんだ」

「そりゃ気づくよ。昔バレンタインチョコを作ってくれた時のこと、覚えてるか?」

「うん……結構やばいことしてたからね」

「あの時の味とよく似てた。チョコの甘さが控えめだった。まるで僕が嗅覚も味覚も鋭いことを知っていたのようだった。そうだろ?」

「ふふっ……」


 思わず笑みを浮かべる璃子。変わらない。だがそれがいい。璃子は昔ながらの良いところを残しながらも成長を続けていた。それを知った僕は……璃子を咎めることをやめた。


「璃子、今は新メニューの開発はできなくてもいい。いつか璃子が教える立場になった時、新しいものを創造する面白さを伝えられるようになればそれでいい。どうしても無理だったら独立してくれ。ここは起業家を育てる場所でもあるからな」

「……分かった。私は仕事を舐めたことはないし、夢は今でも捨ててないよ。お兄ちゃんが世界一のバリスタを目指すなら、私は世界一のショコラティエを目指すって決めたから」


 こうして、璃子と無事に和解を果たした。璃子はこの出来事をきっかけに奮起するようになる。これが璃子にとって、きっと人生の転換期だったのかもしれない。


 夕食を終えて部屋に戻ると、唯がノックをして部屋に入ってくる。


 唯は僕のベッドに座って静かに語り始めた。


「あず君、璃子さんとは仲直りできたんですか?」

「とっくにしたよ」

「いつものあず君らしくなかったですけど、何かを焦ってるみたいでしたよ。あのチョコレートケーキを食べるまでは――」

「葉月珈琲はどんな人にも確実な成長を求められてる。璃子は成長しても表には出さないってことがよく分かった。それを確かめるには、食べるしかなかった」

「ふふっ、あず君は頭で理解するよりも体で感じるタイプですからねー」

「どういう意味だよ?」

「そのまんまの意味です。習うより慣れろって感じがします」


 唯の言うことはもっともだった。頭で理解するのと、実際に経験するのとでは全然違う。上辺だけの知識を得ただけで納得した気になるんじゃなく、まずはやってみることを重視してきた。


 成長は経験からでしか得られないことを知っている。


「うちに入れば成功することは保障できないけど、成長することは保障できる。だから成長しない人がいるとな、僕の経営方針が悪いのかなって思っちゃうし、そんなの絶対に認めたくなかった。だから璃子を責めたのかもしれない」

「あず君はバリスタとしては立派ですけど、経営者としては手探りの段階なのかなって気がします」

「そりゃ個人事業で5年、会社で2年だし、まだまだひよっこだ。元々僕は集団組織に向いてない人間だからさ、下手と言えば下手かもしれない」

「あず君は自分の短所には鈍感ですからね」

「短所なんて他人が勝手に教えてくれるんだから、長所とだけ向き合っていればそれでいい。僕はまともに接客できない弱点があるけど、普段は唯が接客をしてくれるお陰で楽をさせてもらってる」

「あず君……」

「唯……」


 いつものように顔を近づけ、しばらくは唇を重ねながら抱き合った。もう何回目だろうか。目を瞑っていても彼女の唇だと分かるようになってきた。唯は静かに部屋へと戻る。僕はキスの心地良さの影響からか、まるで魔法にかかったかのように眠くなり、就寝するのだった。


 3月下旬、息抜きで某ビデオゲームのオフ会に出場したが、途中で強い相手と当たったところで敗退してしまった。某カードゲームは拓也からの誘いだったが、某ビデオゲームは真由からの誘いだ。いずれも対戦相手と話す必要がないために気楽である。向き合うのはゲーム画面だけでいい。


 束の間の休日を過ごした後、僕はコーヒーカクテルの開発に没頭し、もう当分は誰の誘いも受けないと決意する。柚子がやってくると、すぐにその目的を察する。この時期に来るということは、当然岐阜コンに僕を誘いに来たんだろうが、できれば大会に時間を割きたい。


「ねえ、4月の岐阜コンだけど――」

「悪い、僕、岐阜コンには出られない」

「どうしてっ!?」

WCIGSC(ワシグス)の準備がある。悪いけど、WCIGSC(ワシグス)が終わるまでは誰の誘いも受けないって決めてる」

「そんな……みんなあず君が来ると思って岐阜コンに予約してくれてるんだよ。あず君が来ないって分かったら、みんなキャンセルしちゃうかもしれないのに」

「だったら早く伝えた方がいい。じゃないと信用を失うぞ」

「去年までは出てくれたのに」

「毎回出るなんて一言も言ってないけど」


 柚子は僕の思わぬ返しに落胆する。何だか突然裏切られたような絶望的な顔のまま、柚子は注文したエスプレッソを見つめている。天井でクルクルと回っているいくつかのシーリングファンが、柚子の企画に一刻一刻とタイムリミットが迫っていることをリアルタイムで知らせている。このまま黙っていれば確実にクレームが来る。だがこれは僕の責任ではない。確認しなかった柚子の責任である。


「――あっ、そうだ。代わりに璃子が行ってやったら?」

「えっ!? 何で私がっ!?」


 咄嗟に驚きの顔を見せる。璃子にとって婚活イベントは未知の領域だ。


 男にとっての客寄せにはなると思うが、案外僕がいた時よりも来るかもしれない。葉月梓の妹という肩書きがどれほどの効果を発揮するのかも見ておきたい。


「岐阜コンにはうちの親も参加するわけだし、僕がいなくても大丈夫だろ」

「でもっ、あず君に会うために来てる人もいるんだよ」

「メインは婚活イベントなんだからさ、最終的には婚活で来てくれるようにならないと意味ないだろ。それで来なくなるってことは、その程度のイベントだったってことだ」

「私たちの企画が駄目だって言いたいの!?」

「そうじゃない。今までの岐阜コンは何故大勢の客が来てくれたのかを考えろって言ってんだよ。柚子の会社が利益を出すためのチャンスは十分に与えたはずだぞ」


 今までは僕がいたから盛り上がったというだけじゃ駄目だ。


 僕の有無に関係なく、楠木マリッジが企画した婚活イベントだから行きたいと思わせなければ、商売としては失敗と言っていい。柚子は正念場を試されている。


 ていうかこっちの都合も考えてほしいんだけどな。


「――分かった……もういい」


 柚子は力なく言うと、不貞腐れた顔で店から出て行ってしまう。


 いつまでも僕に頼りきりは駄目だ。一度は僕がいない岐阜コンがどんなものかを見れば、自分たちの本当の実力が分かるだろう。また璃子と優子に葉月珈琲名義で出店してもらうか。


 4月上旬、WCIGSC(ワシグス)の準備を本格的に始めた。手を拱いていたわけではない。ここまでの期間中、ずっと真理愛にWCIGSC(ワシグス)を分析してもらっていたのだ。


 WCIGSC(ワシグス)予選では運営側から指定されたアルコールを使い、ホットドリンクとコールドドリンクを10分以内に2種類4杯分作る。


 アルコールは大会4週間前に公開される。


 つまり僕の得意なアイリッシュコーヒーは、JCIGSC(ジェイシグス)と同様、決勝に進出しなければ淹れることができず、課題となるアルコールが公開されるまでは予選用のコーヒーカクテルを淹れられないというなかなか厄介なルールなのである。運営側からすればさぞ楽しいんだろうが、参加する側からすればたまったもんじゃない。指定アルコール以外が分からないため、決勝用のアイリッシュコーヒーとコーヒーカクテルを開発していた。決勝まで行けるかどうかは分からない。だが準備をしておかなければ決勝進出が決まった時、確実に負ける。引き出しの多さを問われている気がした。


 この大会の大変なところは、用意するべき物資が多いところだ。ほとんどの物資を現地調達で賄える大会もあるが、それ以外の大会は原則自分で調達するしかないのが苦戦しやすいポイントだ。ほとんどの場合において会社や周囲の人のサポートがなければならないのが実に面倒である。しかも予選用のものまで考えないといけないから、隙を生じぬ二段構えで準備しなければならない。指定アルコールは課題の2種類の内のどちらかに使えばいい。もう片方は自分で考えたものでいいのが幸いだ。


 指定アルコールは1人につき3種類が大会4週間前公開され、大会当日にサイコロでどれを使うかが決まるため、どのアルコールが当たってもいいように3種類全部のコーヒーカクテルを考えておかなければならない。この指定アルコールはバリスタによって異なる。


 みんな条件が同じであるとはいえ、合計で6種類も考えないといけないのは辛い。


 アイリッシュコーヒーに必要な生クリームは、日本産の生クリームを調達することを決定した。早めに現地に着いてから調整を重ねるしかない。


 大会4週間前までは決勝用のコーヒーカクテルを作る。


 オリジナルコーヒーカクテルの方はアイリッシュコーヒーがホットドリンクであることもあり、コールドドリンクをベースにした新作を作ろうと思った。だが柑橘系の食材と相性の良いアルコールや食材がなかなか見つからず、WCIGSC(ワシグス)で出した時以上の味が出せなかった。


 またしてもアイデアに行き詰まった――。


「はぁ~、駄目だぁ~」

「どうしたんですか?」

WCIGSC(ワシグス)の決勝で使う予定のコーヒーカクテルが全然思いつかない。僕の好きなベルガモットフレーバーを出したいんだけどさー、もう一工夫欲しいところなんだよなぁ~」

「メニューはもう決まってるんですか?」

「一応決まってはいるけど、いまいち決定打が足りない気がする」

「あず君がそう言うならそうなんでしょうね。じゃあ私も考えておきます」

「――お、おう」


 唯は酒が飲めないが、彼女はいつも僕にも思いつかないきっかけを与えてくれる。


 僕はコーヒーにこそ詳しいが、べき論に縛られることもある。


 唯の発想は僕以上に自由だ。べき論に縛られないからこそ、専門家よりも柔軟な発想ができるのかもしれない。僕も今一度コーヒーに関する知識を洗い直した方がいいのかもしれない。


 創造とは知識ではなく、発想から生まれるものなのだから。

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読んでいただきありがとうございます。

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