125杯目「再教育の成果」
祝勝会は相変わらず僕を置き去りにしていた。
人数はいつも50人余りで、ほとんどが穂岐山珈琲の面々だ。
この時、僕は真由の家からJCIGSC決勝に出ていたこともあり、真由とはずっと一緒だった。大学はサボったらしい。祝勝会の間、ずっと真由とばかり話していた。真由は美羽たちと仲良しになっていたばかりか、美月のことが気になっていたが、どうやって告白すればいいか分からない。真由は小さい頃からテーマパーク好きで、年に何度も行くほど某夢の国に精通している。園内の全アトラクションや全キャラクターを知り尽くしており、新アトラクションも初日に並ぶほどだ。それもあって今の仕事をしているが、親からは兄と一緒に温泉旅館を継いでほしいと言われている。
いつも兄と比べられるのが悩みの種であるとのこと。真由の兄は大卒後に家業である温泉旅館で働いており、結婚して子供までいる立派な兄である。家に居辛くなり、親の別荘で一人暮らしをするようになったが、後を継ぎたくない理由も、一生兄と比べられるのが嫌だからだ。
次第に家族を遠ざけ、趣味に没頭するようになった。某夢の国にいる時は現実を忘れられるからという理由で某夢の国のスタッフになった。大学を卒業してからもしばらくは続けるらしい。
「おこちゃまみたいな理由でしょ?」
「……そうだな」
「ふふっ、あず君は正直だね」
「僕は誰かと比べられても、気にしたことねえからな」
「何でそこまで気にせずにいられるの?」
「――だってさ、比べられたところで、成長できるわけでもないのに、そんなくだらないこと気にしてもしょうがねえだろ。人からの評判なんかどうでもいいじゃん」
「比べても成長できないか」
「別に立派じゃなくてもいいだろ。僕なんて今でも社会性ないし、ずっと社会不適合者だけど、それなりに楽しく生きてるぞ。自分と他人を比べるのは、自分に対する最大の侮辱行為だと思うけどな」
簡単なことだけど、気づいている人は意外と少ない。
みんな自分と他人を比べるの大好きだよな。全ての項目で1番になれる人は存在しない。比べても自己肯定感が下がるか、優越感に浸るだけの結果にしかならない。
「ここだけの話なんだけど、あそこにいる美月さん、いいなって思っててさ。そこで彼女につき合ってる人とか、好きなタイプとか、さりげなく聞いてくれないかな? こんな大事なこと……お願いできるのあず君しかいないからさ」
「自分で聞くのが恥ずかしいのか?」
「……うん。あっ、でも、僕が言ってたなんて言わないでよ」
「分かってるって」
真由に頼まれ、美月につき合っている人の有無と好きなタイプを聞くことに。真由が言うには、本当に気になる相手には踏み込んだ質問はしにくいらしい。僕は相手に関係なく聞くべきことは聞くと割り切っているが、それで振られるようなら縁がなかったってことだ。関東予選の時は、自分の家を宿泊先に提供してくれたり、一緒に遊びに行ってくれたりと、世話になっていたこともあって断れなかった。
就職なんてしたら、毎日こんなことをお願いされるんだろうと想像する。
あぁ~、めんどくせぇ~。
「美月、ちょっといいか?」
「あっ、はい、いいですよ」
さっきまで美羽たちと普通に話していた美月が急に嬉しそうな顔で僕に近寄ってくる。明らかに美羽たちと話している時の態度じゃない。他人だからか?
僕は美月とツーショットになる。最も静かな会場の端っこで。
「育成部はどう?」
「それが……育成部を設立してからというもの、なかなかチャンピオンを輩出できなくて困ってるみたいなんですよねー。私も育成部にいたんですけど、なかなか大会に出られませんでした」
「確か1軍が50人いて、その中から5人しか大会に出られないんだよな?」
「はい。社長も凄く焦っています」
「みんなどうやってプレゼンを作ってるのか、詳しく説明してくれないか?」
「……は、はい」
美月は育成部の方針を僕に細かく説明する。
彼女の話を要約すると、穂岐山珈琲のバリスタたちは競技で使用するコーヒーからプレゼンに至るまでの全てを穂岐山社長に決められ、穂岐山社長が指導した通りに競技に臨んでいるのだ。
つまるところ、彼らは穂岐山社長の影武者だ。どうりで彼らのプレゼンは心に響かないわけだ。松野も結城も機械的なプレゼンだったが、理由が今分かった。
「君らはバリスタ競技会の意義を履き違えてる。いいか、バリスタ競技会っていうのは、言ってしまえばコーヒーにまつわる研究成果を発表する場だ。自ら研究し、新たな味を創造し、それが出来上がるまでにどんなプロセスを歩んできたかっていう体験を披露する場なんだよ。誰かに作ってもらったコーヒーを発表したって、自分がないものを本物とは言わない。美味いコーヒーには必ず人の心が宿ってるんだ。血と汗の結晶と言ってもいい。プレゼンだってそうだ。採点するのはジャッジなんだからさ、プレゼンから滲み出た味を通して、この人に世界に行ってほしい、この人なら世界でも戦えるって思わせるような、心に響く体験を再現しなきゃ、プレゼンとは言えない。言っちゃ悪いけど、穂岐山珈琲のバリスタたちには自分の味というものがない。どんなに取り繕ったって、味は絶対に嘘を吐かない」
拳を自分の胸に当てながら力説する。こうなるともう止まらない。コーヒーに関しては誰よりもうるさい自信がある。だが彼女はドン引きせずに最後まで辛抱強く話を聞いてくれた。
「自分の味……ですか。でもバリスタオリンピックの選考会はワンツーフィニッシュしてましたし、基礎は十分だと思いますけど」
「それは総合スコアで勝てる人が誰も出場しなかったからだ。その証拠に本選の時は、コーヒーカクテル部門で大差をつけられていただろ。自らの体験に裏打ちされたプレゼンじゃなかったことも、恐らく見抜かれていただろうし」
「そう……ですか」
美月が呆気に取られた表情のまま力なく返事をする。
だが彼女の目線は僕ではなく、僕の後ろを見つめている様子だ。
「言ってくれるじゃねえか」
後ろから知った声が聞こえる。振り返ると穂岐山珈琲の面々が揃っていた。声の正体は松野だった。穂岐山社長までいて、さっきから真剣な表情で僕の力説を聞いていた様子。
やっと状況に気づいた僕は、咄嗟に美月の後ろに隠れた。
――しまった! またやっちまった!
昔教室にいた時と同じ光景だ。間違ったことは何1つ言っていないが、僕の知る限りでは、あいつらにとって耳が痛い言葉は正論であっても受け付けない習性がある。言葉は通じるが話は通じない。そんな連中に正論を言えば問答無用の迫害を受ける。迫害の歴史はこうやって繰り返されるのだ。
そう思っていたが――。
「そうか、それが原因だったか。確かにそうかもしれないね」
穂岐山社長が自分たちの敗因を素直に認めた。
「ムカつくけど、お前の言う通りかもな。俺のプレゼンのどこにも俺の体験はなかった。プレゼン中に言った主語のほとんどが社長だったし、ちゃんと俺はって言えないと駄目ってことか」
「私も同感です。自らの生の体験を伝えないとジャッジの心には響きませんもんね」
「あず君は松野君と結城君のプレゼンも見てたもんね」
僕は驚いた。彼らの素直さに――何を言っても通じないと思っていた。
人に話を聞いてもらえることのありがたみをこの歳になってようやく知った気がする。どう考えても遅すぎると思うが、それだけ僕の周囲は話を聞かない人が多すぎるのだ。
「あず君、みんなをワールドバリスタチャンピオンへと導くにはどうすればいいかな?」
「まずはその導くっていう考えを捨てることだ。全部あいつらに任せた方がいい。穂岐山社長にできることは、信じて任せることだけだ」
「はははははっ! そうか……俺に出る幕はなしか」
「社長、葉月の言い分に乗っかるわけじゃないけど、今後はコーヒー開発も、豆を選ぶのも、プレゼンも好きにさせてくれませんか?」
「――ああ、分かった。そこまで言うなら信じて任せるよ。ワールドバリスタチャンピオンがそう言ってるんだから、間違いないと思うぞ」
「ありがとうございます」
松野が素直に言って頭を下げると、穂岐山社長が満足した表情で去っていく。あの面々の中で誰よりもバリスタ競技会に出場したかったのは……穂岐山社長なのかもしれない。
そんなことを考えていると、松野が僕の前にやってくる。
「ありがとな」
「えっ? 僕何かした?」
「俺たちを自由にさせてくれただろ」
「君らは元から自由だよ。鉄格子の扉が開いていることに気づいてなかっただけだ」
「ふふっ、あず君らしい言い回しだね」
話が終わると、すぐに真由のことを思い出す。
そういえば、真由の要件を伝えるんだったな。
「穂岐山珈琲は今、葉月珈琲みたいな会社を目指してるんですけど、どうやったら結果を出せるバリスタが出てくるんですか?」
「一言で言うなら、試行錯誤だ。僕は試行錯誤ができる人が好きでね。美月はどんな人が好きなの?」
「私は誠実な人が好きですね」
「じゃあ美月の恋人も、誠実な人なんだろうなー」
「恋人はいません。なのでその……つき合っていただけませんか?」
「ええっ!? でも……僕は君が思っているほど誠実な人間じゃないよ」
まさか僕を狙っているとは思わなかった。
「そんなことありませんよ。誠実な人じゃなかったら、みんなの心を動かせるわけがありません。どうしても……私じゃ……駄目ですか?」
「えっと……たまーにデートするくらいならいいけど」
美月は思ったよりも頑なだった。話を最初に振ったのが僕ということもあり、断りきれずに仮交際という形で度々デートすることになってしまった。真由……すまんな。
この時点で二桁以上の女と仮交際同然の状態になっていた。既に本命がいるとは言えないし、仮交際自体は何人としていいものだし、問題にはならない。普段は岐阜から動けないし、基本的には相手の方から店に来てもらって家デートをすることになる。最初はやんわり断ったが、相手の押しが強かった。
美月がフリーかどうかを聞いたつもりが、僕に交際を申し込んできたからビックリだ。
「どうでした?」
「誠実な人が好きみたい。恋人はいなかった」
「誠実な人かー。まあでも、それだったら何とかなるかな」
だが美月は僕を狙っている。こんなの到底言えない。本来であれば、女の取り合いに勝ったと喜ぶべき場面なんだろうが、男として複雑だった。僕は美月との会話に真由を誘った後で僕だけ離れ、真由と美月を2人きりにした。真由の精一杯のアプローチの甲斐あってか、2人はすぐに仲良くなった。
僕が真由にしてやれるのはここまでだ。
岐阜に戻ると、すぐにWCIGSCの課題を確認する。
課題は決勝こそJCIGSCと同じだが、予選の課題に少し捻りがある。だがそれ以上に気にかかることがあった。璃子のことだ。
璃子は僕が起業して以来、ずっと僕の下で働いてきた。仕事はできる方だが得手不得手がなく、何をやらせても平均以上の成果を出すオールラウンダーである。扱いやすいと言えば聞こえはいいが、どちらかと言えば、能力に尖りがあり、得意分野でずば抜けた成果を発揮する人の方が、うちの仕事に適性があると言える。リサもルイも料理人としてかなり尖っていた。
みんなバリスタ競技会で早くも入賞するようになっていたが、バイトとは思えない働きぶりだ。リサの開発したメニューが店の看板商品の1つになるほどだ。
唯も規模は小さいが、度々ラテアートの大会で優勝している。
優子はゲイシャで作ったスイーツが岐阜コンで爆発的なヒットを記録した。彼女は岐阜コンの時に1日限りのスイーツショップを開いているのだ。葉月珈琲が身内以外の日本人相手に商品を売る数少ない手段である。これなら僕が彼らの相手をする必要はない。優子の頭の良さには毎回脱帽する。
どうやら再教育の成果が出始めたようだ。
再教育を必要としている時点で、義務教育は失敗だったと認めざるを得ないのだが、目指すは葉月珈琲がなくなっても一生飯を食える人間だ。もし他の企業に就職していたら、どうなっていたことやら。考えるのも恐ろしい。周囲が成果を上げていく中で、璃子は焦りを感じていた。
3月上旬、うちのお袋が葉月珈琲へとやってくる。
蓮も一緒であり、お袋は蓮の隣に座る。常連は決まってカウンター席に座りたがる習性がある。
「ねえ璃子、確か浅尾君と仲良かったよね?」
「まあ、どちらかと言えば……仲は良い方だけど」
「2人はどんな関係なの?」
「元同級生です。世間的に言えば、友達ですね」
「ふーん。うちの子とつき合ってみない?」
「「!?」」
璃子も蓮も顔が真っ赤になる。どうやら多少はお互いのことを意識していた様子。
何を言い出すかと思えば、何故璃子を蓮とつき合わせようとするのか。
仲が良いなら仮交際くらいしてもいいと思ったのだろうか。璃子はショコラティエの仕事に専念したいと言っていたし、それで断ってるのかな?
「なっ、何言い出すのっ!? まだそんな歳じゃないからっ!」
「でも璃子って、普通に就職して、普通に結婚したいって言ってたじゃん」
「そうなのか?」
不思議そうに蓮が璃子に尋ねた。
「――そりゃ……そう思った時もあったけど」
璃子が僕の方を困った顔で見つめ、助け舟を出せとサインを送っている。
「璃子が普通の人生を歩みたいなら、僕は別に止めないぞ」
「お兄ちゃんはそれでいいの?」
「璃子の人生だろ。自分が1番悔いのない道を璃子自身が選ぶべきだ。ていうかさ、何で璃子は普通の人生を歩みたいわけ?」
「不安定な人生はストレスなの。お兄ちゃんの自営業時代とかさ、いつ潰れてもおかしくなかったから凄く不安だったし、私の同級生はみんな大学生で、将来は就職して、30までに結婚して、幸せな家庭を築いていくんだろうな~って思うと、羨ましいというか、憧れちゃう」
「憧れねぇ~」
小馬鹿にしたような顔で言った。
「何その顔?」
「璃子は人生というものを何にも分かってないな~って思ったんだよ」
「そーゆーお兄ちゃんは人生に詳しいのかな?」
「詳しくは分からないけど、1つ確かなのは、安定した人生なんて存在しないし、計画通りに人生を歩んできた奴もいないってことだ」
「何が言いたいの?」
「憧れだけで普通の人生なんて選んだら、必ず後悔するぞ」
「……」
璃子はしばらく黙っていた。何か思うことがあるのだろうか。
僕だって最初はのんびり暮らせればそれでいいと思っていた。でもそれじゃ駄目だ。若い時にボーッと生きていたら、歳を重ねた時に取り返しのつかない事態になる。それはあいつらが証明している。
優子と同様、璃子も取り柄のない人間でいたかったのだろうか。
だが憧れという軟弱な言葉を使っている時点で、安定など目指すべきではない。
憧れは理解から最も遠い感情なのだから。
「無理すんな。璃子は璃子だろ」
「ふーん、下の名前で呼び合ってるんだー」
「あー、いやっ! そのっ! 璃子とは小1の時からのつき合いなので……駄目でしたか?」
「そんなことないよー。うちの璃子でよかったら、いつでも貰ってあげてねー」
「「!」」
お袋がからかうように言った。早くも親公認かよ。一体何を焦ってるんだか。
ていうか貰ってあげてねって何だよ……女は男の所有物じゃない。もういい加減主人とか嫁に貰うって言葉は死語にしてくれよ。それができない内は、男女平等なんて永久に無理だ。
お袋も蓮も帰宅し、僕と璃子の2人きりになる。唯は夕食の準備を始めている。唯が夕食を作るようになってからは、和食が目立つようになってきている。
「蓮って今大学生だっけ?」
「今は大学2年生。教師を目指してるんだって」
「人間動物園の飼育員か。受かったら大変だろうな」
「口が悪いよ。蓮が教師を目指すようになったのは、他でもないお兄ちゃんがきっかけなんだよ」
「何で僕なのっ!?」
「ラジオで今後の日本社会は飯を食えない大人が課題になるって言ったでしょ。それを真に受けたの」
「選んだのはあいつだろ。それに教師になったからといって、問題が解決するとは思えない」
「……何で?」
「教師になったら、必ず学習指導要領に従わないといけない。あんな化石制度に従っている内はどうにもならねえよ。精々あの先生は良かったで済んじゃうだけだと思うし、それに社会経験のない人が教師をやったら、確実に頭おかしくなるぞ」
学校という仕組み自体が時代に合ってない。しかも徹底した我慢と服従を教わるし、教師であればそれに反対であっても、学習指導という形で行わなければならない。子供を飯を食えない大人にしたくないのであれば、自分の子供だけでも学校に行かせないようにするくらいしか対策方法がないのだ。
「あー言えばこーゆー」
「世の中を変えたいなら、まずは何でもいいから自分の言葉に耳を傾けてくれる人数を増やすことだ。僕の活動はそれも兼ねてる」
「お兄ちゃんは凄いね」
「いやぁ、それほどでもぉ」
喜んでみせると、璃子はジト目で僕を見つめた。
「――私、時々お客さんとも話すことがあるけど、お兄ちゃんがあれだけ活躍してるんだったら、妹の君だってさぞ活躍してるんだろうなって言われることがあるの。でも実際はそうでもないから、あんなことを言われる度に疲れちゃう」
「だったら活躍すればいいじゃん」
「簡単に言わないでよ。比べられるのって辛いんだよ」
またしても真由のことを思い出す。兄弟姉妹に立派な人がいると比べられるのが辛い話はよく聞く。
うちも例に漏れずだ。昔はよく璃子と比べられ、勉強しないところを咎められていた。今はむしろ璃子が僕と比べられている。僕だって苦痛だった。璃子にとっても苦痛だろう。璃子は僕とは対照的で、学生時代は特に何の問題もなく、模範的な生徒として過ごしていたけど、ショコラティエ修行をするようになってから未だに成果なしだ。何度か小さな大会で入賞しているものの、世界大会の国内予選決勝にも行けない。良くも悪くも尖った部分がないのがうちの妹だ。
人間関係でも特に問題を起こしたことがない。璃子も僕の影響でゲーム実況をしているが、特に炎上したことはなかった。ショコラティエとしての腕前はプロ級だが、何というか、無難な作品になってしまう傾向が強い。技術は完璧だが、独自性はないという印象だ。正確さが求められる大会では予選通過率が高いが、個性が求められる大会ではいまいち予選通過率が低い。見本と全く同じ物を作る課題、同じ物を複数作って均質性を競う課題は得意な一方で、今までにない独創的な作品や奇を衒った作品は苦手だ。作品の中に自分自身がない。璃子は自分という枠の中に小さく収まっている印象だった。
やろうと思えばできるはずだが、一体何が璃子の本来の実力を抑えてしまっているのか、それがずっと分からないままだった。ボンボンショコラからショーピエスに至るまで、チョコレートであれば全部一通り作れるものの、いずれも誰かが作った作品の模倣だ。
コピーはできるけど、模倣止まりというか、店でも商品開発するのはいつも優子だ。
璃子は進歩のない自分に焦りを感じていた。
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