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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第6章 成長するバリスタ編
122/500

122杯目「カクテルワールド」

 1月中旬、ようやく重い腰を上げた僕はオーガストへ向かう。


 唯はまだ未成年であるため、アルコールが飲めない。そこで僕は知り合いの中で最もコーヒーカクテルに詳しい真理愛にコーチをしてもらおうと思ったのだ。


 思い立った理由は他でもない。大会に出るためだ。


 ジャパンコーヒーイングッドスピリッツチャンピオンシップ、略してJCIGSC(ジェイシグス)に出場するための準備をしていた。所謂コーヒーカクテルの大会で、日本でもこの年から国内予選が開催されることになったのだ。元々は国内のコンペティションの一環でコーヒーカクテルの大会が行われていたものだったが、それがこの年から正式に競技化されたのである。


 予選はホットドリンクとコールドドリンクの2種類を淹れて提供する。


 東京予選と神戸予選に10人ずつ出場し、それぞれのスコア上位2人が決勝に進出する。決勝はアイリッシュコーヒー、ホットかコールドのドリンクを淹れる。優勝すればワールドコーヒーイングッドスピリッツチャンピオンシップ、略してWCIGSC(ワシグス)の出場権を得る。


 つまり合計で4種類のコーヒーカクテルを考えなければならないわけだ。僕はあの桃色騒動を解決したばかりでぐったりしていたし、事件の影響もあり、新作を考える余裕はなかった。


 そこで今まで使えなかった試作の中から出すことにしようと思ったが、試作程度のドリンクでは予選は突破できても、決勝で負ける可能性が高い。一応うちの店で色んなコーヒーカクテルを作って試飲を繰り返してはいたのだが、専門家がいないと流石に限界がある。


 この大会を制したい理由はもう1つある。バリスタオリンピック予選においてアジア勢が全滅した理由として、アジア勢でコーヒーカクテルを究めている人がいなかったからだ。


 WCIGSC(ワシグス)歴代チャンピオンにも、アジア勢は1人もいなかった。


「というわけだ。僕はどうしても世界一のコーヒーカクテルを作りたい。そのためには真理愛の協力が必要不可欠だと思ってさ」

「そういうことなら構いませんよ。というかそんな大会があったなら、私も参加したかったです」

「参加募集は去年の12月で終わってるし、その日の内に予約が締め切りになったから、参加したいなら次の募集を待つしかないと思うぞ」

「……ですよねー。分かりました。では今回はあず君のコーチとして協力させていただきます。課題を教えていただけますか?」

「うん、ちょっと待ってて」


 JCIGSC(ジェイシグス)の課題を真理愛に説明する。


 今までの大会と全く違うところは、アルコールを必ず使うという点だ。今までに出た大会は全てアルコール禁止である。どんな抽出方法でも構わないが、2種類のコーヒーカクテルの内、1杯は必ずエスプレッソマシンを使って抽出したものを使わなければならない。


 アイリッシュコーヒーは通常アイリッシュウイスキーを使わなければこの名称は成立せず、例えばスコッチウイスキーを使った場合はゲーリックコーヒーに名前が変わってしまうのだが、この大会では、どのウイスキーを使ってもアイリッシュコーヒーと定義される。


 一通り簡単な説明をした後、真理愛はスマホを通してルールブックを確認する。


「フレーバーだけじゃなくて、見た目の創造性まで問われるんですね」

「そういうことだ。コーヒーと相性の良いアルコールはダブリンに行った時に学んだけど、この大会はバリスタとしての知識だけじゃなくて、バーテンダーとしての知識も必要になると思ったからさ、まずは予選の課題である、ホットドリンクとコールドドリンクだな」

「あず君はどんなフレーバーのコーヒーが好きですか?」

「やっぱ柑橘系かな。あのパナマゲイシャの味が忘れられない」

「では、パナマゲイシャを使った柑橘系のコーヒーカクテルはどうでしょうか? 私はWBC(ダブリュービーシー)であず君が使っていたベルガコーヒーをカクテルにしたら、凄く美味しいと思うんですけど、フレーバー確認のために、一度飲ませてもらっても構いませんか?」

「いいぞ。じゃあ明日うちに来れるか?」

「はい、席を予約してもいいですか?」

「分かった。じゃあカウンター席を開けとく」


 翌日、真理愛が私服姿でやってくると、英語で予約と書かれてあるカウンター席に座る。


 流石に僕のお願いで試飲に来てもらった人からお金を取るわけにはいかないと思い、料金は払わなくていいと伝えたが、飲んだ分は払わせてくださいの一点張りだった。


 仕方なく普段店に出しているものに限り、料金を取ることに。


 真理愛がベルガコーヒーのアロマを優雅に楽しんだ後、シャンパングラスに口をつけた。


「……! 文字通りベルガモットのフレーバーが強いですね。しかもそれでいて、キャラメルのような風味がジワジワと襲ってきます。これ、本当に5年前のコーヒーなんですか?」

「そうだけど」

「凄いです。まだ誰も考えていなかったゲイシャのシグネチャーをここまで開拓していたなんて、やっぱりあず君は凄いです」

「いやぁ、それほどでもぉ」

「ゲイシャをベースにしたコーヒーカクテルを作ったら、きっと想像もつかないほどの究極の味になるんでしょうね。私は怖くてできませんけど」


 ゲイシャを使ったコーヒーカクテルか。確かにそれは興味深い。


「ベルガモットのフレーバーを活かしたいから、柑橘類をベースとした酒を使ってみようかな」

「それでしたら、ミモザを使ってみてはどうでしょうか?」

「……ミモザ?」

「はい。オレンジジュースとシャンパンを使ったカクテルです。両方とも柑橘類なので、パナマゲイシャが持つベルガモットのフレーバーと凄く相性が良いと思います。ミモザは冷やして飲むので、コールドドリンクで出すのがお勧めです」

「なるほど、じゃあそれから試してみるか。残るはホットドリンクだな……ん?」

「どうしたんですか?」

「カフェ・グロリアってブランデー使ってたよな?」

「はい。そうですけど」


 ブランデーは主に葡萄からできた酒だ。仕入れているコロンビアゲイシャはワインのアロマ、巨峰のフレーバー、アフターにはシャインマスカットを感じる。つまり葡萄類のフレーバーということだ。


 だったらこれも工夫をすればいけるんじゃないか?


 どこまで噛み合うかは分からないが、コーヒーのフレーバーの核となる部分を引き上げるなら、まずはコーヒーとよく似ている風味の酒を使ってみるか。


「真理愛、しばらく実験に時間を費やすから、また飲みに来てくれないか?」

「はい。任せてください」

「あず君と仲良いんですね」

「仲が良いってほどじゃないですけど、私はあず君がきっかけでバリスタになったので、少しでも彼に恩返しがしたいんです」

「……恩返し?」

「はい。あず君は私に夢を与えてくれたんです」

「私と同じですね。阿栗唯です。普段はここであず君のお手伝いをしながらバリスタやってます。唯って呼んでください」


 お手伝いしながらバリスタか……あくまでサポーターがメインなのね。


「加藤真理愛です。普段は葉月商店街のオーガストという飲食店でコーヒーカクテルを淹れています。唯さんも成人したら是非来てください」

「私、今17歳なので、真理愛さんのお店に行くとしたら、3年くらい先になりますね」

「……」


 唯が3年と言った時、真理愛が一瞬だけ悲しそうな顔になった。


 何気ない一言が、彼女を夢から現実へと引き摺り戻した。


 愛してるんだろうな――バリスタという職業を。


「どうしました?」

「いえ……何でもないです」

「そうですか。ゆっくりしていってください」

「……はい」


 真理愛はどこか迷っているような仕草を見せながら笑顔で唯に返事をする。彼女はバリスタであり、バーテンダーでもある。だがこの競技会に出たいと願うなら、どちらかと言えばバリスタなんだろう。


 午後6時、店の営業が終わると、すぐにコーヒーカクテルの実験を始める。


 自分の感覚と真理愛の導きを信じよう。バリスタとしての経験は僕の方が上だが、バーテンダーとしての経験なら真理愛が勝る。ゲイシャのコーヒーで作ったコーヒーカクテルが美味いのであれば、その通りにやるまでだ。最終的には僕が判断するが、やるからには究めたい。コーヒーカクテルもな。


「真理愛さん、凄く綺麗な人でしたね」

「そうだな。腰まである黒の姫カットに、お淑やかな性格、美白の肌にあのスタイルの良さ」

「まさにあず君好みですね……」

「何でそんな嫌そうに言うんだよ?」

「あず君の勘違いです」


 唯は吐き捨てるように言うと、2階へと戻ってしまった。


「ふーん、そういうことかぁ~」

「何だよ?」


 何かを悟ったような顔をしながら、リサが僕に後ろから抱きついてくる。


 まさか交際がばれたのか? いや、そんなはずはない。ばれてないよな?


「あれは焼きもち妬いてるなー」

「何かに嫉妬してるってこと?」

「多分あず君にね」

「そうか……僕が美しすぎるのがいけないんだな」

「いや、それはないと思う」

「なんか冷たいな」

「あず君って物事には敏感なのに、人の気持ちには凄く鈍感だね」


 リサは変人を見るような冷たい目で僕を見ている。そんなことを言われても、僕は昔から気持ちは言葉にして言うべきだと思ってるし、ましてや察するなんて、なかなかできるもんじゃない。


 表情や仕草からおおよその感情を読み取ることはできても、深層心理まではどうしても分からない。僕はエスパーではなく人間だからだ。むしろ言わなくても分かる人たちの方が特殊に見える。


「あたし、唯ちゃんの気持ち分かるなー」

「何で?」

「あたしもあず君が好きだから」


 直接言われるまで唯の好意に気づかなかったのに、リサは分かってたんだ。


 じゃあ、僕に対して機嫌が悪かったのは……。


 急いで2階に赴き、唯の部屋に入った。


「……えっ!?」

「あっ、ごめん!」


 慌ててバタンと扉を閉めた。唯は着替えの最中だった。下ろした髪は腰まで伸びていて、ゆるふわで薄い色の茶髪がとても美しく見えた。下着も凄く可愛かったし、あの時見た色白の肌が目に焼きつく。


「どうぞ……」


 しばらく待っていると、唯が部屋の扉を開けて僕に呼びかける。誘導されるまま部屋に入ると、何やら恥ずかしそうな顔でベッドの上に座っている唯の姿があった。


 唯のすぐ隣に座り、ベッドがふわりと揺れた。


「用があるなら早く言ってください」

「唯、さっきはごめんな。真理愛と仲良くしているのが気に食わなかったんだろ?」

「あず君にしては察しが良いですね」

「さっき教えてもらった」

「そんな予感はしてました。あず君は私とつき合っていることも忘れて、その……他の女性とあんなに仲良くなんてされたら、妬いちゃいますよ」

「……唯、今つき合ってるのがバレたらややこしいことになる。だからしばらくはただの同僚のふりをしてほしいって言っただろ」

「しばらくって、いつまでですか?」

「いつって言われても、世間が僕を忘れた頃としか」

「あず君への注目は日に日に増してるんですよ。2人でいる時しか恋人でいられないなんて……そんなの辛すぎますよ。最近のあず君は、ずっと真理愛さんに夢中じゃないですか」

「夢中ってわけじゃねえよ。僕よりもアルコールの知識に長けているから、それで頼らせてもらってるってだけで、唯はまだ未成年だし、今回は頼れなかった」


 恋人を持つのは初めてだ。故に、どうしてもこういう時の立ち回りが分からない。


 でもこれでよく分かった。一般的な女は男が他の女と仲良くしているところを見ると、焼きもちを焼いてしまうらしい。なら他の女とはほどほどに距離を置くようにするか。


「どうしてそこまでコーヒーカクテルに拘るんですか?」

「そんなの決まってるだろ。バリスタオリンピックで優勝したいからだ」

「バリスタオリンピックですか」

「前にも言った通り、アジア勢が予選で全滅したのは、コーヒーカクテル部門で大きく差をつけられたからだ。多分、僕が出ていたとしても、確実に予選落ちしていたと思う。前回は出られなかったから、次は確実に出たいっていうのもあるけど、何よりあの舞台で活躍していたトップバリスタたちに圧倒されて、出ていたら負けていたことを悟ってしまったのが1番悔しかった」


 負けを悟るということは、相当な差をつけられている証だ。


 一度コーヒーカクテルを学んだだけの付け焼き刃程度の知識や経験では、到底越えられない壁がそこにあったと痛感した。僕と彼らの間には、アルコールに対する知識や経験に大きな差があった。不十分な状態で出場しようと思った自分が恥ずかしいと思えるほどに……。


 あの時、お前に大舞台はまだ早いと、コーヒーに言われた気がした。


 どうやら彼女は、僕の敗北を見たくないらしい。出られない方がずっと屈辱なんだけど。


「あず君でも悔しがることがあるんですね」

「僕が昔感じていた悔しさはこんなものじゃなかった。あの時は自分の力ではどうにもならないことがいかんせん多すぎた。努力で変えられるものと言えば、精々どうでもいい紙切れの数字くらいで、肝心なものは何1つ変えられなかった。でも今は違う。努力次第でどうにでもなることのありがたみを僕は知っている。ここにきてようやく努力する価値が出てきた」

「それは同意ですけど、努力のしすぎで倒れないでくださいよ。あず君は誰かが止めなかったらずっと実験を続けちゃうような人なんですから」

「えへへ、だってコーヒーの実験ってさー、恋人の着せ替えをしているみたいで楽しいんだよ。あれはやめられないわー。やればやるほど癖になる」

「変態ですね。はぁ~、コーヒーが1番の女ですか。あず君らしいですけど」


 唯はそう言いながら冷たい呆れ顔になる。


「僕の最愛の恋人にして、血液だからな」

「あず君」

「何――」


 唯の方に顔を向けると、そこには唯のプルプルとした柔らかい唇が待っていた。唯に身を預け、彼女の隙だらけの背中に手を回し、豊満な果実をもふもふと揉みしだく。


 もう1人恋人がいることを思い出した。


「あず君の最愛の恋人は、大きくて柔らかい果実は持ってますか?」

「……彼女が持っているのは……歴史を変える風味だ」

「――嫌な女ですね」


 唯までをも嫉妬させてしまう驚異の存在。


 流石は僕の人生を大きく変えてくれただけあって、一筋縄ではいかないようだ。


 やはり君は――罪な女だな。


 1月下旬、僕らはJCIGSC(ジェイシグス)神戸予選に参加するべく、早速拓也の家に泊まりに行くことに。何度か実験を重ねた後、僕と真理愛の2人で試飲を繰り返し、特に評価の高かったドリンクで挑むことに。コーチをつけて大会に出るのはこれが初めてだ。昔はコーヒー農園との二人三脚だったが、今回はコーヒーカクテル専門家との二人三脚だ。バリスタオリンピック予選突破の鍵を握るコーヒーカクテル部門でスコアを伸ばすにはまずコーヒーとアルコールのシナジーを理解する必要がある。


「今度はコーヒーカクテルかー。あず君はいっつも何か新しいことに挑戦し続けてるから、見てて全然飽きないわー。どうやったらそんな好奇心を維持できるん?」

「いらないものを全部捨てる。それだけ」

「いらないものを捨てる?」

「つまり、何かに没頭する上で邪魔になるものを全部排除する。進学も就職もせずにガミガミ言ってくる親とも距離を置いたし、僕はそうやって好きなことに没頭できる環境を作ってきたわけ。みんな行きたくもない学校とか会社とかに行かされて、ずっと嫌なことばっかりやらされて、嫌な奴と時間を共にすることを余儀なくされて、そうやって自分に嘘を吐いている内に好奇心をゴリゴリ削られてるんだ。社畜を作る上で好奇心を削ぐのは効率の良い方法だ。僕は好奇心を削ぐ要因を徹底して排除してきた。今でもやりたいことを見つけたら、すぐ没頭することだな」

「みんなにはハードル高いやろなー」

「そりゃみんなと同じ道から外れるのがリスクだと思ってるからなー」


 他愛もない会話をずっと続けていた。僕にとっても、拓也にとっても、この時は昔のストレスを発散できる絶好の一時である。場所が場所だから大きな声は出せなかったが。


 僕が居座っている時は拓也の店に人が殺到する。いつもは席の半分も埋まらないらしい。昼食の時は鉄板焼き城之内の料理を食べた。拓也の両親からは毎日でも来てほしいと言われていた。食べている最中に何人かの人に話しかけられた。その度に僕の体は震え、顔は強張り、怯えた表情になる。正直集団の場は辛いけど、持ち堪えられたのはコーヒーのお陰だと思っている。


 唯が隣にいてくれていることも大きな支えだ。


 WSC(ワスク)優勝を祝ってもらったり、まだ大会に出続けるのと聞かれることもあった。あいつらにとっての大会は、現役選手の試合感覚なんだろうが、僕にとっての大会は花火大会ような感覚だ。


 大会は気軽に出てもいい。僕にとってもバリスタ競技会にとっても、1番の目的はコーヒー業界の地位向上だが、僕の場合は暇潰しで参加しているのもある。唯は部屋の都合上、僕と一緒に寝ることを条件に泊まることを認められている。とはいえ1つのベッドに2人で寝ると、やはり狭く感じてしまう。だがこれを回避するためだけに、翌日合流もどうかと思った。真由の家が如何に広いかがよく分かる。


 夕食の時間になると、僕らに気を使ってくれたのか、拓也の両親が先に食事を終えた。


 その後、僕、唯、拓也の3人に料理を振る舞ってくれた。


 3人だけになると、僕が黙々と食べている間に唯と拓也との間で会話が始まった。


「確かあず君の店の常連やってたやんな?」

「はい。今はあず君のサポーターとして働かせてもらっています」

「相当気に入ってるんやな」

「それは拓也さんも同じじゃないんですか?」

「せやな。俺とは全く違う人生送ってるけど、本質的には結構似てるって思うんよ。俺は社会の闇に呑まれたけど、あず君はそうならんでよかったわ」

「拓也さんは何かやりたいことはないんですか?」

「正直に言うと、遊ぶ以外は特にやる気ないな。生まれてから20年もずっと嫌なことを我慢し続けた反動が大きすぎて、なんもやる気起こらん。こんなんが働いても、迷惑にしかならんやろ」

「ふふっ、そういうところはあず君に似てますね」


 拓也の決意とは裏腹に、拓也の両親は拓也が就職できないかを心配していた。けど今のまま就職させたところで、ブラック企業だったら、また同じことの繰り返しになるだろう。


 うちの親もそうだが、みんな就職ありきで仕事を考えすぎだ。計画しないと起業しちゃいけないと思われがちだが、失敗を恐れて行動しないようでは話にならない。僕だって最初は計画なんてなかった。世間から独立するのに必死だったし、経営方針だって起業してから考えた。行き当たりばったりは駄目という風潮があるけど、用意周到に生きてる人なんて見たことがない。


 翌日、僕らは昼食を済ませて大阪の街を3人で一緒に歩いた。なるべく人込みを避けるようにしていたのだが、拓也と一緒に歩いていると、いつも異性愛カップルと間違われてしまうのだ。


 やっぱり僕の見た目は女子中学生なんだな……。

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読んでいただきありがとうございます。

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