120杯目「舞い戻る恐怖」
優子は僕を抱きしめる手を放そうとしない。
だが僕は不思議と落ち着いていた。本来何かで突出しようとするような人間ではない自分に気づいてしまった。だからこそ、僕は唯を許すことができた。
唯には僕のサポーターとして、引き続き活躍してもらうことに。
優子が言っている意味が分かる気がした。取り柄がないのは無価値であると勝手に思い込んでいる自分がいた。だがそれは大きな思い上がりであることに気づかされた。
「唯、サポーターに徹したいならそれでもいい」
「本当ですか?」
「ああ。ただし、自分を偽って生きるのはやめろ。自分が何者であるかを放棄して生きようとするのは死んでいるのと同じだ。この国の連中のようにな……」
「……はい」
僕は優子の手を解くと、唯と仲直りのハグをする。
唯はトップバリスタを目指すことなく、別の形で葉月珈琲に貢献することを誓うのだった――。
12月上旬、僕は勢いに乗ったまま、新しいバリスタ競技会に参加登録をする。
開催は次の年の1月下旬だ。それまでに競技で使用するコーヒーとプレゼンを組み立てておかなければならない。課題が課題だから、またゼロから研究のやり直しだ。
岐阜コンの時期がやってくる。当日は日曜日であり、僕も璃子も実家へ戻っていた。親父もお袋も焙煎したコーヒーの販売をしていたが、客数が多かったために僕が運営のお手伝いとして駆り出された。
2012年の最後を締めるこの婚活イベントにも僕目当てに大勢の客が全国から集まっていた。それもあって久々に葉月商店街の経済が潤っていた。すると、僕を見た客がたくさん寄ってきた。僕がコーヒーを淹れて渡しただけで何故か感極まる人も多くいた。
客は日本人ばかりだったが、それを分かって参加したのは治療の一環である。
「あず君、お客さんに手渡ししてみたら?」
「……えっ!?」
「心配すんなって、流石にここで迫害はできないだろ」
「それはそうだけど……」
「お兄ちゃん、一度やってみたら? 無理そうならすぐに交代するから。ねっ」
「しょうがねえなー」
この時も運営側としての参加だったが、受付でコーヒーを渡すのではなく、葉月焙煎にてペーパードリップでコーヒーを淹れ、客に渡す役だ。注文の受付は璃子、焙煎は親父、外での宣伝と行列の管理はお袋が担当している。岐阜コンとは別に、小夜子、美咲、紗綾、香織もやってくる。
小夜子たちは岐阜コン参加者ではないため、通常料金でコーヒーを飲むことになったが、それでも彼女たちはゲイシャを注文する。1杯3000円もかかるこのコーヒーだが、果たして……。
「……! これ美味しい」
「うん。これ気に入ったかも」
「紗綾だったら、毎日飲めるんじゃないの?」
「飲めるけど、何よりあず君が手渡しで淹れてくれたコーヒーなのが嬉しいかな」
「だよねー。あの時は近づくだけで体が震えてたもん。もうすぐ日本人解禁になるんじゃない?」
「来年からでも試験的にやってみようと思ってる。あんまり顔は見れないけど」
小夜子たちと世間話をする。小夜子は美容師に、美咲は姉が始めた飲食店で働き、紗綾は父親の会社に内定し、香織は地元でそこそこ有名なローカルミュージシャンになっていた。
僕の世代は次の年でほぼ全員が学生を卒業する。22歳にしてやっとスタートラインか。個人的には遅すぎるくらいだが、学校を卒業してからがチュートリアルだ。彼女らは学生時代で刷り込まれた常識を取っ払い、新たな常識を吸収するという二度手間の作業に追われるだろう。
社会に出て初めて仕事のやり方や現実を知るのは、あまりにも非効率である。
「ふぅ、やっと終わった」
「お兄ちゃん、完全にマスコットだったね」
「ホント、ここまで人が集まるとは思わなかったなー」
璃子とお袋が僕に話しかけてくる。
お袋は僕と会うこと自体が久しぶりだったのか、とても喜んでいる様子。普段は店の仕事でうちに来れないだけに、定休日の月曜日には必ずと言っていいほどうちにやってくる。
「葉月焙煎をオープンさせたのは、親父とお袋のためっていうのと、あいつらがうちに不満をぶつけてこないようにするためだったけど、あいつらは僕のために来てた」
「そりゃそうだよ。何だかんだ言ってもあず君の淹れたコーヒーが1番飲みたいに決まってるでしょ。あくまで人気があるのは、葉月珈琲でも葉月ローストでもなく、あず君なんだから」
「普段は売れてるのか?」
「お客さん自体はあんまり来ないけど、時々ゲイシャの豆を求めてくる人がいたかな」
――ということは、ゲイシャもやっと認知されるようになってきたってことか。
「あず君、ちょっといい?」
出会い頭に声をかけてきたのは柚子だった。
「どうかした?」
「お客さんが全然来てないお店があるの。一緒に来てくれない?」
「やだよ。僕は客寄せパンダじゃない。ていうかそこ、営業努力してるのか?」
「してるけど、みんな人気店舗にばっかり行くの」
「コーヒー好きが相当多いようだな。オーガストはどうなってる?」
「オーガストは午後6時からの開店だから、岐阜コンには参加できないって」
「夕方以降に開催するタイプの岐阜コンも検討した方がいいんじゃねえか?」
「簡単に言わないで。平日はみんな疲労困憊で時間が取れないし、ただの飲み会に終わるのが関の山」
――そりゃそうか。でもこれで、夕方以降に開店する店を放置する課題が残ってしまった。
「うわぁ~! 凄く良い店ですねー!」
「唯、何でここに?」
「様子を見に来たんです」
「唯ちゃん、あず君に何か変なことされなかった?」
「いえ、大丈夫です。なかなか人に興味を示さないので」
「進展なしかー」
「何期待してんだよ」
お袋は僕が誰ともカップリングしないことを残念がっていた。
唯とはWSBC以来、2人きりの時は唯からキスをする関係になっていたが、正直に言えば、どんな関係なのかはずっと曖昧なままだった。
午後5時、岐阜コンが無事に終わり、集まっていた参加者が次々と帰っていく。
商店街はいつものようにガラガラな状態に戻っていたが、昔よりかは改善している様子だった。交通量はそれなりに改善していた。僕は璃子と唯と一緒に商店街の中を歩いていた。
「目は合わせられませんでしたけど、身内以外の日本人でもうまく対応できるようになっていました。もう日本人規制法もいらないんじゃないですか?」
「そうだな。でも迷惑な客は全部シャットアウトだ」
「ふふっ、そんなの当たり前ですよ」
「――当たり前のことって、難しいんだぞ」
「ですね。私も当たり前の生き方を知らないままですから」
唯が僕に微笑みかける。僕も唯も普通というものを知らない。いつも手探りで藻掻いてきた。だがどんな時もひたすら藻掻く癖がついていたからこそ、課題解決能力が一般の人より高い自負がある。日本人恐怖症は淹れたコーヒーを手渡せるところまで症状が改善していた。治療の効果が徐々に表れていたのだ。これで全くビビらなくなった時は、日本人規制法を撤廃しようと考えた。
来年からはようやく分け隔てから卒業できると思っていた。だがそうは問屋が卸さなかった。
午後6時、唯と一緒に帰ろうとしていた時だった。璃子はもうしばらく実家に居座るようだ。独立すれば必然的に親と会える機会が減る。璃子にはそれが寂しいのだ。
僕らが璃子に見送られ、商店街から家に帰ろうとしていた時だった。
「おい、待てよ」
葉月焙煎から少し離れたところまで歩いたところで、数人ほどガラの悪そうな男たちが僕の行く手を前方から遮った。僕は危険を感じたのか、咄嗟に唯の後ろに隠れる。
「なんか用?」
「葉月梓だな?」
「そ、そうだけど」
「ちょっといいか?」
「できれば帰らせてほしいんだけど」
「そういうわけにはいかねえんだよ」
男たちの1人が唯を僕から引き離す。唯はとても怯えていた。
髪がボサボサなリーダーらしき男が僕のそばに近寄ってくる。
「ぐふっ!」
「「「「「!」」」」」
出会い頭に僕の腹を抉るように殴ってきた。何度か上半身を殴られて倒れると、僕の体をサンドバッグのように何度も蹴り始めた。学生時代の集団リンチを思い出す。
「調子に乗ってんじゃねえぞこの野郎!」
「ぐうっ! がはっ!」
「やめてくださいっ!」
唯が咄嗟に僕の前に出て両手を広げた――。
「そこをどけっ!」
「嫌ですっ! 何でそんな酷いことをするんですかっ!?」
「そいつが余計なことをしたせいで、俺たちみんなクビになっちまったんだよ。だからそいつを徹底的に痛めつけて、二度と舞台に立てないようにしてやる」
「彼が一体何をしたって言うんですかっ!?」
「うるさいっ! どけっつってんだろっ!」
ガラの悪い男が唯を横に突き飛ばし、僕の方に物凄い剣幕で向かってくる。
「ああっ!」
「唯っ!」
またしても僕はガラの悪い男たちにボコボコ殴られた。
「やめてくださいっ! お願いですからっ! やめてくださいっ!」
唯は大声を出しながら暴行を続ける男を必死に止めようとする。
だが他の男に腕を掴まれて力負けし、いとも簡単に引き離されてしまう。
「おいっ! お前ら何やってんだ!?」
少し遠くから怒鳴り声が聞こえる。
「やべっ! 行くぞっ!」
「お、おう」
男たちが退散していくと、1人の男が駆け寄ってくる。
「大丈夫かっ!?」
「こっ! 来ないでっ!」
脊髄反射的に男が近づくことを拒んだ。
「あず君っ! 大丈夫ですかっ!?」
「……唯、無事か?」
「私は無事です。ちょっと転んだだけです」
ちくしょう……全身がいてぇ……手も足も胴体も全部いてぇ……僕……このまま死ぬのかな?
段々と意識が遠のいていく――。
「あず君っ! あず君っ!」
「――ん? ここは……」
「! あず君っ……ううっ、あああああん!」
気づけば病院にいた。天井には見慣れない蛍光灯があり、白を基調としたベッドの上にいた。どうやら気絶した後で病院に運ばれたらしい。唯は涙を流しながらベッドにいる僕に泣きついていた。
頭から足に至るまでズキズキと痛む。走るように痛む場所は内出血しており、患部には丁寧に包帯が巻かれていた。ここまで包帯が多いと、もはやミイラである。
ガラの悪い男の言葉を思い出す――。
「今何時だ?」
「午後9時です。あず君はあれからここに運ばれて傷の手当てを受けていたんです」
「……生きてて良かった」
「本当ですよ。もう死んじゃったと思ったんですよ」
「! 唯も腕怪我したの?」
心配するように言うと、唯は包帯が巻かれている腕の患部を隠そうとする。
「さっさと逃げればいいものを。無茶しやがって」
「そんな言い方ないと思いますけど」
「……ありがとう」
「えっ、今何て言ったんですか?」
「患者に同じことを何度も聞くのか?」
「い、いえ、そういうわけじゃ」
唯は逃げようと思えば逃げられたはずだ。あいつらは僕しか見ていなかった。
なのに何故、自分を盾にしてまで僕を守ろうとしてくれたんだ?
いくら僕が好きでも、普通そこまでするか?
「何で逃げなかったんだよ?」
「あず君、言ってましたよね? 夢を叶えたいなら、本気で好きなものを全力で守れって」
「……そんなこともあったな」
「私は本気であず君を愛してます。あず君の痛みは私の痛みなんです。ずっとあず君と一緒に楽しく働き続けることが私の幸せなんです。私が……本気で好きなものなんです」
「唯……」
唯と目を合わせると、彼女の方から顔を近づけてくる。
僕らは相手の気持ちを確かめるようにキスを交わした。僕にとって唯は掛け替えのない存在になっていた。全身がズキズキと痛んでいたが、最もズキズキしていたのは心だった。病院の反対を押し切り、唯と共にタクシーで帰宅すると、家の前に着いてからは唯に肩を貸してもらっていた。この全身打撲により、怪我が治るまでは店を休むことを余儀なくされた。またしても日本人恐怖症が再発してしまい、しばらくは1人で外出ができなくなる。体のあちこちを打撲した重症患者だ。
――僕は忘れていた。あいつらが嫉妬深い民族であることを。
あいつらを見るのが怖くなった。このままだとまた日本人恐怖症を差別と見なす人が出てきそうだ。
外を見てみると、月の光が僕を見つめているかのように、この寝室を照らしているのが見えた。
「! お兄ちゃん! 駄目だよ。安静にしてないと」
「もう家から出たくない! あんな奴らと関わりたくない! 大会も出たくない! もうずっと引き籠りでいい! あいつらは一生ブラックリストだっ!」
情緒不安定な僕を見た璃子は、すぐに最悪の事態を察知する。
「お兄ちゃん、落ち着いて。さっき犯人が逮捕されたの」
「……どんな奴だった?」
「あくまでも噂だけど、犯人は虎沢グループの元社員かもしれないの。お兄ちゃんが虎沢グループと戦っていた時、虎沢グループの子会社が倒産したでしょ。潰れなかった子会社からも何人かリストラされていて、リストラされた人の一部がお兄ちゃんを恨んでて、ずっと復讐の機会を窺ってたみたいなの」
「僕が岐阜コンに出ることを知って、人がいなくなるのを待ってたわけか」
「あんなことをしたんだから、社会復帰は絶望的かもね」
「何で絶望的なの?」
「全国にはお兄ちゃんのファンが何百万人もいるんだよ。テレビに犯人の顔も出ちゃってるし、これから世間による報復が始まるかも」
「報復なんて意味ねえよ。あいつらは失うものがないんだからさ」
璃子が言っていた通り、このことがニュースになると、インターネット上では犯人が総叩きにされ、犯人の住む実家までもが特定された。連日取材攻勢を受けたり、石が何度も投げ込まれたり、殺害予告の手紙が何度も送られたりしていた。家族に罪はないだろうに。犯行動機は僕が成功して調子に乗っているように見えたのが妬ましかったこと、日本人を差別していると思い込んでいたことと発表された。
虎沢グループの名前を出さなかったってことは、何らかの圧力がかかってるのか?
彼らは無敵の人と呼ばれる部類の連中だった。
冷徹ではあるが、あれくらいで倒産するような会社は、遅かれ早かれ倒産する運命にある。リストラの件だって、いつクビになってもいいように備えなかったのが悪いと思っている。就職という生き方が不安定になっていることは、氷河期世代の連中を見れば分かるだろうに。
サラリーマンが途中でリストラされて飯の食えない中年になるのは、就職以外の生き方しか知らないからだ。時々昼間の公園を通りかかると、魂が抜けたように無気力な表情の中年おじさんがスーツ姿でベンチに座っているのを見かけるが、あれがリストラされたサラリーマンの成れの果てと確信した。
親父も求職中はあんな状態だったのだろうか。
――いかん、想像しただけで笑いが込み上げてくる。だがそんなことも言ってられない。
無敵の人が出てきたということは、それだけ社会の不安定化に追いつけない人が多くなっていることの裏返しである。自力で飯を食えない大人を量産してきた教育の成果がまた1つここに表れたのだ。
12月中旬、事件で一歩も外に出なくなってから少しばかりの時間が経つ――。
事件以降、僕に対して日本人規制法のことで文句を言う者が遂に1人もいなくなった。毎朝筋トレや柔軟体操をしていることもあって、体力こそ維持しているが、外食ができなくなったのが地味に痛い。リサ、ルイ、優子も僕に同情の念を寄せるのが精一杯だった。だがお陰で反論をする手間が省けた。
全員風呂から上がってパジャマに着替えた頃、唯が僕の部屋にやってくる。
僕は動画の編集を終え、もう寝ようかと思っていたところであった。
「あず君、本当に大会出ないんですか?」
「ああ。いつ襲われるか分かったもんじゃねえからな」
「……私はバリスタ競技会に出てほしいです」
「……外に出るのも怖いのにどうしろと?」
「今日柚子さんが来てたんですけど、凄く自分を責めてました。岐阜コンに誘わなければ、あんなことにはならなかったって。あず君が大会に出なくなったら柚子さんはもっと……いや、柚子さんどころか、世界中のファンが落ち込むと思います」
「僕はみんなのために生きてるわけじゃない」
「そうだとしても、私はバリスタ競技会で活躍するあず君の姿をもっと見たいんです。コーヒー業界の地位を上げられるのは、あず君しかいないんですから」
――そうだ、僕にはコーヒー業界の地位向上という崇高な目的があったはずだ。元はと言えば僕が店を成功させた後もバリスタ競技会に出続けるようになったのは、このためじゃねえか。
もう少しで大事な目標を見失うところだった。
「唯、僕は自分の身勝手な行動で無敵の人を生み出してしまった。だから文句を言える立場じゃないと思ってる。今の社会はああいう連中に文句を言う資格はない。それでも大会に出ろと?」
「たとえそうであったとしても、それが人の夢を壊してもいい理由にはなりません。あず君はあず君の人生を堂々と生きるべきです。あず君はコーヒー業界の希望なんですから」
「……もう一度考えてみる」
ここは唯の言葉に甘えて頑張ってみるか。自分のためじゃなく、コーヒー業界のために。
今更キャンセルするのもどうかと思うし、あんなつまんねえ連中のために、夢を諦めちまうなんてあほらしい。明らかに昔よりも立ち直りが早かった。
不思議なことに、何故ここまで軽症で済んだのか、何となく分かる気がする。
12月下旬、クリスマスがやってくる。
去年と同様、店は貸し切りにし、葉月珈琲には僕の身内ばかりが集まる。自営業時代よりもずっと席が多かったためか、みんな無理なく座れている。東京からは美羽と美月も来てくれた。
「あず君、怪我は大丈夫?」
「ああ、何とかな。あの時は死ぬかと思った」
吉樹がカウンター席から僕に話しかけてくる。あれからずっと就活をしていたために会うことは全くなかったが、無事に就職はできたようだ。吉樹は身内のコネで就職が決まった。僕の見立てだと、吉樹は職人向けの気質だと思うが、本人がそれでいいなら別にいいか。
しばらくは様子を見てもいいが、吉樹も施設やカレーパーティで見てきた連中と大差ない。
「あず君の元同級生って、凄く可愛いよねー」
「そうだな。みんなクラスの人気者だったし」
「でも1番好きなのは美羽さんかな。あのさ、美羽さんに恋人がいないか聞いてくれないかな?」
「んなもん自分で聞け。今の時代は自分から動かないと、何も手に入らないぞ」
「手厳しいなー」
「生まれるのがあと30年早かったら、さぞ幸せな人生だっただろうに」
昔は会社の方から誘われ、所属しているだけで段々と増えていく給料を無条件で貰えて、結婚相手も親か仲人が勝手に見つけてくれた。だが今は……仕事も、お金も、恋人も、全て自ら行動して勝ち取っていく時代である。良くも悪くも頑張った者が報われる社会になりつつあるのと、僕は改めて自覚する。
年末を迎えると、僕は璃子と唯と談笑しながら食事を楽しんでいた。唯のお陰で新たな一歩を踏み出す勇気が持てた。とても感謝している。唯のためならどんな困難だって乗り越えられる気がした。
除夜の鐘と共に、時は2013年を迎えるのであった。
第5章終了です。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
第6章を書くモチベになるので、
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