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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第5章 経営者編
115/500

115杯目「不穏な企画」

 6月下旬、静乃、莉奈、伊織の3人が遊びにやってくる。


 僕、璃子、唯が彼女たちを快く迎え入れる。もはやいつもの光景になっていた。特に伊織は唯以来の常連である。客のほとんどは外国人観光客であるため、常連はなかなか根付きにくい。


 彼女たちが言うには、僕の1日の流れを聞きたくて来たらしい。特に断る理由もなかったため、僕の1日を紹介することに。僕の動画だけじゃなく、生放送にも毎回来ているらしい。元々拓也とチャットをするために始めたものだが、いつの間にか目的が変わり、ゲームプレイを拓也に見せるためにやっている。時々雑談もしたりするが、視聴者がいつも1万人以上いるからビックリだ。つまり彼女たちは頼んでもいないのに勝手に視聴する連中の一部なのだ。


 視聴者は身内だけで十分なのだが、それでも見に来る理由は楽しそうだからという単純なものだ。


「あず君はいつも何時に起きるの?」

「大体9時以降かな。11時に起きる時もあるし」

「遅めなんですね」

「営業が12時からですもんね」

「そういうことだ。早起きは僕の体に合ってない」

「起きたらまず何をしますか?」

「――ベッドから降りる」

「「「ふふっ、あはははは!」」」

「お兄ちゃんはすぐ相手の言葉を鵜呑みにするの」

「お店の準備をするか、動画を作ってますよね」


 僕が朝苦手なのは体質もあるけど、9時よりも前に起きると、学校や会社を連想してしまう。大会以外の時はまず起きない。昼までは店の準備か動画制作だ。


 うちの店には全部で3つの担当がある。バリスタ担当、シェフ担当、パティシエ担当である。


 朝9時くらいからパティシエ担当が仕込みを始める。スイーツは作るのに時間がかかるため、12時の営業に間に合うように作ることになる。材料の仕入れはそれぞれの担当が行う。昼になると腹が減ったタイミングで昼食だ。飯を食う時間には特に決まりはない。


 腹が減ったから飯を食うというだけである。少なくとも時計の針を見て飯を食うことはない。時間には縛られない工夫をしている。時期によって夏だから夏服とか、冬だから冬服にしている人がいるが、個人的にはナンセンスだ。暑いから夏服を着るとか、寒いから冬服を着るとかならまだ分かるが、時期によって服装を決めるのは、思考停止もいいとこだ。


 葉月珈琲は作業に適した服装であれば、時期を問わず自分で選べる仕組みである。自分で調達できない場合、僕や璃子が作った制服を着ることになる。夏服冬服とは呼ばず、厚着薄着と呼んでいる。季節を意味する言葉を使ってしまうと、該当する季節以外は着てはいけない印象を与えてしまうため、季節を問わない呼び方にするよう心掛けている。みんなにかかっている洗脳を解く鍵にもなる。


 昼以降は店の営業か、午前に引き続き動画制作をするか、どこかに遊びに行ったり、カフェ巡りをしたりするのだが、泊りがけの時は店を璃子に任せて行く。うちは他の日本の会社とは雰囲気が違うし、みんな好きで仕事してるため、休んでいる人に嫉妬することがないのだ。うちは店の営業以外にも一流の職人の育成もしているため、最終的に今いる連中には最初の成功例として独立してもらう。


 うちは起業家を育成する役割も担っている。営業時間中に暇になった場合、いつうちを離れてもいいように経営に必要な知識を学ばせるようにしている。


「葉月珈琲って給料高いの?」

「莉奈、そういうことは聞いちゃ駄目だよ」


 静乃が莉奈の質問をいつもより強い口調で咎める。


 お金のことは考えちゃいけないって学校で教わっているんだろう。でもお金の勉強をしないと一生貧乏になってしまうことも、大人が教えてくれない事実である。


「基本給20万円+出来高。うちの基本給は労働への対価じゃなくて、どっちかって言うと、生活費としての意味合いが強い。葉月珈琲はベーシックインカムだ」

「「「ベーシックインカム?」」」

「最低限の所得って意味で、無駄遣いをしなければ生活できるだけの給料を保証する制度だ。労働への対価は出来高の方でやる。学生バイトの場合は保護者がいることを考慮して時給1000円+出来高。基本的には負担の軽い雑用、知識と技術の習得に努めてもらうことになってる。学生を卒業してうちへの就職を希望する場合は正社員昇格ってわけだ」

「お兄ちゃん、何現実的な話してんの。まだ中学生だよ」

「どうせ数年後には稼ぐ側になるんだ。今からでも金融教育を受けておいた方がいいと思うぞ。学校は生き方を教えてくれない。教えてくれるのは、従順な社畜になる方法だけだ」

「「「……」」」


 ――全てを知った静乃たち3人が目を覚ましたように落ち込む。


 そりゃそうだろう。自分を磨くためだと言われて行かされていた場所が、実は社畜養成所だってことを知ったら、まともな人間ほど落ち込むわなー。


「じゃあ、私たちは騙されてたってことなんですか?」

「そゆこと。僕はそれに気づいたから進学しなかった。学歴を積み重ねただけのポンコツが、今こうしている間にも量産され続けている。うちの店が身内ばっかりなのは日本人恐怖症のためだけじゃない。身内から生きる力のないポンコツが出てくるのを防ぐためでもある」

「「「へぇ~」」」


 そんなことを話していると、クローズキッチンから優子が姿を見せていることに気づく。


 どうやら仕事が一段落したらしい。


「ねえ璃子、あず君っていつからあんな感じなの?」

「多分、就労支援施設を見学してからだと思います」

「――あぁ~、そういうことかぁ~」


 優子が何かに気づいたようにパックリと口を開けながらゆっくりと頷く。


 うちはいつ会社が潰れても大丈夫なように、1人1人の生きる力を養う目的もある。自分で仕事を作れるようになったら、失業しても生きていける。だが日本は起業家になりたい人が非常に少ない。失敗した人に対する社会的制裁が強すぎるのだ。起業家を辛抱強く支え続ける土壌もない。


 みんな失敗が怖くてサラリーマンになろうとするけど、仕事を貰う立場のままだと、失業した時に何のスキルも持っていなければ、人生がハードモードになる。その最たる例がうちの親父である。


 うちが潰れてもみんなが生きていけるよう、今の内から仕事を作る立場を経験させている。親父が失業してからは僕も璃子も『相対的貧困』の立場にいた。他の人たちにまで味わわせたくない。あんな経験はもうたくさんだ。親父が自分で仕事を作れる人であれば、あんな風にはならなかった。


 僕が社員の生きる力を養っているのは相対的貧困を味わった自分の無力さに対する贖罪だ。もう二度と身内から貧困者を出さない並々ならぬ決意の表れだ。もちろん、うちから独立した後、全く別の職業に就くのもありだ。うちの場合は既に柚子という前例がある。独立は店の中心人物でもあり得る話で、ずっと慣れ親しんだ人が出ていってしまうことがある。心が痛む瞬間だ。だがそれで落ち込んではいけない。その先にあるはずの希望を祈るべきなのだ。


「あぁ~って何だよ」

「あず君も見ちゃったんだね」

「えっ……じゃあ優子も?」

「うん。あたし、ヤナセスイーツにいた頃にね、他の洋菓子店のおばちゃんに誘われるまで近くの就労支援施設に通っていたことがあるの。そこにいた人たちはとにかく無気力でね、好奇心が全部抜けきったような状態で、学ぶことも働くことも全然しようとしない。小学生くらいの漢字も全然読めなくて、訓練の一環でケーキ作りをした時も、3人の班だったからホールケーキを3等分するよう班の人に言ったら、3等分の仕方が分からなくて、大きさも形もバラバラな3等分になったの」


 ――えっ!? いくら何でも知的水準低すぎじゃね!?


 静乃たちも優子が言っている意味をすぐに理解したのか、呆気に取られた表情になっている。


 優子が話していた人たちは、僕が見学で行った施設の連中と良い勝負をしていた。


 あっちはあっちでかなりやばかったからなー。


「じゃあ、その人たちは、何のためにそこに行ってるんですか?」

「親から就職しろって言われてるから。それで仕方なく来てるって言ってたけど、あの様子じゃ、一生親に寄生し続けるだろうねー。あたしは本気で職を探すために来ていたけど、まともに就職するために来ている人は少数派だったの。みんなやる気満々で来てるもんだとばかり思ってたから、あの時はビックリしたなぁ~。今そういう人たちが段々増えてるんだよ。だから、君たちも今の内から、これだけは負けないっていう長所を伸ばしていかないと、家族に迷惑をかけ続ける大人になっちゃうよ」

「――私、ちゃんとコーヒーの勉強をして、必ずあず君のようなトップバリスタになります。お母さんに迷惑はかけられませんから」

「うん。分かればよろしい」


 優子が言うと、静乃たちが雑談をしている間に、僕に向かってウインクをしながらとびっきりの笑顔を見せてくる。こう言ってほしかったんだろと言わんばかりだ。


 お陰で伊織のやる気に拍車が掛かった。優子のファインプレーだ。


「あず君はコーヒー以外のメニューを作ることもあるんですか?」

「最初は決まった役割だけの方針だったんだけど、色々と試行錯誤を重ねた結果、手が空いた人は別の担当を手伝うという方針に落ち着いた」

「「「へぇ~」」」


 葉月珈琲は小さい店だ。人数が足りない時は別の担当を手伝うこともある。専門じゃないからできないという考え方は習得中ならありだが、習得済みならなしだ。習得済みで暇な時間帯があるなら、別の知識や技術を習得することに時間を割いた方がいい。特技やできることは多いに越したことはないし、璃子は本職こそショコラティエではあるものの、僕を手伝うためにコーヒーを淹れるようになった。


 璃子は美味い『カフェモカ』を淹れられるようになったのだ。


 カフェモカはエスプレッソとチョコレートを両方よく知っていなければ美味いものは作れない。苦手を克服する目的で何かを習得することには反対だけど、得意を増やす目的であれば賛成だ。器用貧乏になるくらいなら、得意分野にフォーカスし、できる部分だけでオールマイティを目指す方が生産的だ。義務教育で苦手の克服をさせられている連中は、今の内にさっさと目を覚ました方がいい。


 夕方以降は社員に清掃をさせて帰らせる。僕自身はあまり清掃はしないようにしている。かつての掃除事件を連想させるからだ。あの事件の影響で掃除が嫌いになった。それでもエスプレッソマシンの掃除はする模様。店の営業がない日であれば、外食をしたり、動画制作をしたり、生放送を始めたりしている。動画投稿も投稿日の午後6時に予約投稿する。店の営業日に生放送をすることもあったが、その場合は多少時間が遅れてから始めることが多く、ゲーム実況から雑談に近況報告といったものばかり。


 午前1時から3時くらいまで動画編集の作業をしてから寝る。典型的な夜行性人間である。世の中的には昼行性人間が中心の社会であるため、僕のような夜行性人間には辛い面もある。


「つまりあず君は朝9時以降に起きて、夜の1時以降に寝るんですね」

「まあ、そういうことになるかな」

「羨ましいです。私は朝早く起こされて学校に行かされますから」

「1日中好きなことしてるんだね」

「うちは平日と休日の差なんてあってないようなもんだし、個人的に今の生活が1番合ってると思う」

「あず君、いつか私をバリスタとして雇ってほしいです」

「今は人が足りてるし、募集は滅多にしないけど、伊織がその気なら考える。うちは実力主義だ。中学卒業までに知識と技術を身につけておけ」

「はい。必ずここに入ってみせます」


 伊織の期待に満ちた笑顔に、僕は思わず笑みを浮かべた。だが最初は伊織も唯と同様、トップバリスタになることの厳しさを知ることになるだろう。


 ここまでが僕の1日のおおよその流れである。


 基本的に店の営業と動画制作と生放送で1日を終える場合が多い。家から出ることはないが、普段から運動していることもあって、スタイルが良いとよく言われる。


 ずっと健康に引き籠りを続けていくには、やはり運動は欠かせないのだ。


 店の営業が終わり、僕はコーヒーブレイクを楽しんでいた。


 リサとルイは料理の注文が多いのか、常に大忙しである。あの時は璃子と唯が手伝ってくれていたくらいだし、僕らのやり取りなんて微塵も聞いちゃいないだろう。


「日本人規制法があるのに、常連が全員日本人なんて滑稽だねー」

「……そうだな」

「聞いたよー。特に伊織ちゃんのことを買ってるんだって?」

「ああ。幼少期からコーヒーの研究に没頭していたら、間違いなく世界レベルの逸材になっていた」

「あず君にそこまで言わせるとはねー。あの子、うちで雇うつもりなの?」

「できればそうしてやりたいけど、若い内にトップバリスタになるんだったら、いくら才能があっても中学を卒業してすぐに本格的なバリスタ修行を始めないと手遅れになる。無論、高校なんて行ってる場合じゃないし、本当なら小学校も今すぐ卒業させたいくらいだけどさ、15歳までは昭和型社畜(ポンコツ)量産カリキュラムにどぼ漬けだ。でも中卒でうちに就職させようとしても――」

「親に邪魔される可能性が高い。でしょ?」

「ご名答……」


 まあ、ほぼ確実に反対されるだろう。大卒率が上がっている今、進学させない親の方が珍しい。大学まで行かされれば合計で16年もの時間を無為に過ごすことになる。社会に出る頃には、主体性なし、創造性なし、好奇心なしという時代のニーズに全く合わない昭和型社畜(ポンコツ)の完成だ。


 日本人の奴らがこの罪深さに気づく日は来るのだろうか。


 僕はそんなことを考えながらこの日の業務を終えた。


 2階で唯たちが作ってくれた夕食を囲み、3人で一緒に食べるのだった――。


 7月上旬、レオとエマが葉月珈琲に遊びに来る。


「ねえあず君、話があるんだけど」


 何かを企んでそうな顔で言ってきたのはエマだった。笑顔も可愛いけど、陰謀に満ちた顔も可愛い。胸は柚子と同じくらいか。身長は親戚内で最も低く、それが彼女の可愛さに拍車を掛けている。


 レオは高校を卒業し、柚子の会社に就職した。親戚内では柚子の次くらいに勉強ができたが、大学に興味がないのと、僕の影響で親戚内から学歴信仰がなくなったことで就職を決めたらしい。


「話って何?」

「柚子の会社が葉月商店街と提携を結んでるのは知ってるよね?」

「うん、知ってるけど」


 レオが言うには、柚子の会社で何やら変な企画が始まるとのこと。


 岐阜市内に住むニートや引き籠りたちを集めてカレーパーティを開き、集まった全員で班分けをしてカレーを作る。カレー作りやコミュニケーションなどの過程を見て、誰かが気に入れば、葉月商店街の店舗でバイトとして採用されるという、なかなかトンチンカンな企画である。


 しかもそれが商店街に住む大人たちだけの会議で決まったとのこと。


 ――いやいやいやいや、もう企画段階で詰んでるじゃん。誰が言い出したのかは知らないが、引き籠りのことを良く思っていない人が言い出したのは確かだろう。


「その会議だけど……現場の人いなかったよね?」


 半ば呆れ顔でレオに言葉を返す。


「うん、いなかったと思う」

「いなかったって、どういうこと?」

「もしその会議に引き籠りの当事者が1人でもいたら、間違いなく猛反発を受けて成立しなかった企画ってことだ。僕も普段は引き籠りだから分かるんだけどさ、ただでさえ集団生活に馴染めない人の代表例と言っていい連中だぞ。そんな連中が初対面の人ばかりの環境に放り込まれたら、間違いなくストレス地獄だ。ちょっと考えれば分かるだろうに」


 これが会議と現場の乖離ってやつだな。


 当事者が1人でもいればもっとマシな企画になってたと思うが、これだから会議ってやつは。そんな机上の空論だけで全てがうまくいくんだったら、誰も苦労なんかしてないっての。


「いやー、あたしたちは引き籠りじゃないから分かんないよ」

「言っちゃ悪いけど、企画倒れするのが目に見えてる。早めに企画をやめるよう言った方がいいぞ」

「それが……もう決まっちゃって」

「ええっ!?」

「そこであず君にお願いなんだけど、良かったらカレーパーティに――」

「絶対やだ! んなもんやりたい奴だけで勝手にやってろ! 一度大赤字を出せば反省するだろうよ」

「この企画には商店街の多くの店も関わってるし、会社もお金を出してるから、大赤字になったら最悪会社が倒産しちゃうかもしれないよ」

「柚子がそんな馬鹿げた企画にお金を出すとは到底思えないけどな。ていうかその会議に柚子がいなかったってことは、商店街の独断で決めたってことか?」

「楠木マリッジの社員もいたけど、誰1人ロクに反対しなかったから企画が通っちゃって、元々は社員たちが商店街活性化のためにお金を払って、新しい企画を商店街の人たちに任せてたけど、それがどうも裏目に出ちゃったみたいで、お金も払ってしまってるから、戻るに戻れなくなっちゃって」

「要するに、現場を知らない素人連中に楠木マリッジの社員が企画を丸投げした挙句、トンチンカンな企画にお金を払う格好になってしまったわけだ。それでカレーパーティの売り上げがなかったら、楠木マリッジは丸々損をするってことだろ。自業自得だ」


 メールが普及しきった今の時代に会議とは。しかもカレーパーティってのもセンスがない。それじゃ林間学舎の模倣じゃねえか。この世で最も恐ろしいのは無能な働き者だ。反省もないまま次々と間違いを犯すことが日常化すると、もはや自分が間違っていることにさえ気づかなくなる。


「はぁ~、情けねえ。柚子は何て言ってる?」

「あず君に協力してもらうしかないって言ってたから、それで僕らがここに来たってわけ。商店街に企画とお金を丸投げした人は柚子に怒られてたよ」

「当たり前だろ。うちだったら……これだ」

「「……」」


 首を切るジェスチャーをすると、レオもエマもようやく事態の重さを知ったようだ。


 JSC(ジャスク)決勝に向け、シグネチャーの実験をしていたいのだが、このままじゃ柚子の会社が潰れそうで放っておけない。さて、どうしたものか。


「……今回だけだぞ」

「「ホントにっ!?」」

「但し、次から会議をする時は必ず現場の人を入れること、岐阜コン以外で僕を呼ばないこと、これらを約束するのが条件だと柚子に伝えてくれ」

「うん……分かった」


 また面倒事に巻き込まれちまった。本当なら会議はメールですることも条件にするべきと思ったが、ここまでやると完全な内政干渉になる。シグネチャーのアイデアは全く思いつかないし、暇潰しにしかならないだろうけど、僕を餌にして本当に来るのか?


 まあでも、引き籠りの多くは社会から淘汰された敗北者だ。


 そいつらを救いたいという思いから生じた企画だろうが、彼らにとっては余計なお世話でしかない。うまくいけばラッキーってとこか。この企画は利益を出すのではなく、赤字を少しでも減らすのが目的である。企画というよりは敗戦処理と言った方がいいのかもしれない。


 今月は親戚のせいで忙しくなりそうだ。

気に入っていただければブクマや評価をお願いします。

読んでいただきありがとうございます。

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