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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第5章 経営者編
109/500

109杯目「実家改革」

 楽しくも忙しい夏が終わり、季節は秋を迎える。


 唯との交際は順調だった。就寝する時は誰もいないことを確認してから僕の部屋でキスを交わすのが毎日の楽しみになっていた。唯はキスを済ませると、上機嫌のまま唯の部屋へと戻っていく。彼女に対して恋愛感情があるのかどうかも分からないまま、初々しい日々を送っていた。


 張りと艶のある形の良い豊満な胸を服越しに見つめる度に、今日も頑張って働いたのだと実感する。


 意図的ではないだろうが、いつも体型が分かる服を着ている。葉月珈琲の制服もそれなりにスタイルが分かりやすいのだが、中でも璃子と唯はいつも客の目を惹くほどである。


「以前も君の店に来たことがあるんだけど、昔よりも大きくなったねー」

「あー、そうだな。自営業時代はもっと狭い店だったし、より大勢の客を収容できるようになったのはいいんだけど、そしたら今度は人手が必要になったんだよなー」

「羨ましいよ。うちの店は今の状態を維持するのが精一杯だからさ」


 9月中旬、僕がWSBC(ワスボック)で優勝したこともあり、葉月珈琲にはハワイからの外国人観光客が数多く訪問してくれていた。うちに訪問してくれた外国人観光客がすぐに帰国したり、大都市に流れてしまったりする問題は相変わらずだったし、そこには懸念を持たざるを得なかった。


 心配になった僕は、このことを親戚たちに話した。


 この時は、柚子、吉樹、レオ、エマがうちの店に飲みに来てくれていた。


 柚子は婚活イベント会社の仕事、吉樹、レオ、エマは学業に追われている。


「レオが大学には行かないの一点張りでさー、高校卒業したら働くって言うんだよ。どう思う?」

「別にレオの人生なんだから、好きにさせてやればいいじゃん」

「そうそう。好きにさせてよ」

「何でレオは進学したくないの?」

「あず君を見てる内に、学校で学んでる能力と社会に出てから必要な能力が全然違うって思うようになってさ、このまま通い続けても意味がないと言うか、学校の中でしか通用しない勉強をしたところで、学費を溝に捨てるのと一緒じゃないかって思うんだよね」

「大卒は無意味って言いたいの?」


 リサがいつもより少し低めの声で威嚇するようにレオを睨みつけ、レオの言い分に疑問を呈する。


「……いや……そうは言ってないよ」


 反応を見たレオは、怯んで返事をするのが精一杯な様子。


「何かやりたいことでもあるの?」


 見るに見かねた柚子は何か策があるのかと思い、レオに尋ねる。


「いや、特に何もないよ」

「何もないけど大学には行かないってこと?」

「レオ、ニートになるのは許さないからね」


 リサがレオに対して不快感を示し、執拗なまでにレオに釘を刺そうとしている。リサは核心を突かれたのだ。自分が大学で学んできた能力が今の仕事に活かされていないことに。リサは自分の大学生活がモラトリアムの延長でしかなかったことを認めたくないのだ。故にリサは自分の痛いところを突かれたかのようにイラついていたが、逃げるようにクローズキッチンへと引っ込んだ。


 ――あーあ、ある意味最も怒らせちゃいけない人を怒らせちゃったなー。


 今頃は優子に慰めてもらっているのだろうか。


「ちょっと言い過ぎたかな?」

「次から本当のことを言う時は、真実と向き合える人だけにするんだな」

「あず君も辛辣だね」

「そんなことより、今大事なのはどうやって葉月商店街を復興するかでしょ」

「岐阜コンだけじゃ足りないのか?」

「その岐阜コンですら、あず君目当てで来てる人が大半だったの。他に開催した婚活イベントにはあんまり人が集まらなかったの。もしあず君が岐阜コンに出なくなったら、参加人数も確実に減ると思う」


 柚子の岐阜コンにかける想いは半端なものではなかった。柚子は婚活イベントを通して、岐阜市と葉月商店街の復興を心から願っている。そのために岐阜市内のあらゆる企業に下げたくもない頭を下げ、度重なるパワハラやセクハラに耐え、顔で笑い心で泣きながら協力を呼びかけている。


 柚子から仕事の愚痴を何度も聞かされていた。


 人を雇って仕事をするのって、本当に大変だと思う。


「心配すんな。大会と時期が被らなければ大丈夫だからさ」

「でもさー、今のままだと岐阜コン頼みになっちゃうよね?」

「うん。あっ、そうだ。レオ、良かったらうちの会社に来ない?」

「柚子の会社に?」

「うちは女性社員しかいなくて、男性視点で婚活イベントを企画してくれる人を探してるの。やりたいことが見つかるまでは、うちで働くってことでどうかな?」

「……分かった。じゃあそうさせてもらうよ」


 流石は柚子、人の扱いには慣れている。


 目標のない人に対して、やりたいことが見つかるまでという誘い文句はかなり効く。やりたいことが決まればいつでも辞められるし、決まらなければずっと戦力として働いてもらえる。


 大学で心理学を学んでいただけのことはある。


「じゃああたしも柚子さんの会社に入りたい」

「エマはまだ高1だろ」

「卒業するまではボランティアで手伝うからさー、お願いっ!」

「ふーん。エマは婚活に興味あるの?」

「あるにはあるけど、あたしも葉月商店街を復興したいの。あたしがまだ小さかった昔の頃のような賑わいを取り戻したい。昔は結構買い物しに行ったりしてたけど、あたしの行きつけのお店がみんな閉まってたり引っ越したりして、活気がなくなっちゃったから」

「――いいよ」

「ホントにっ!?」

「但し、適性がないと思ったら落とすからね。うちもあず君を見習って通年採用にしたから、人がいっぱいになっちゃったの。次以降の採用から篩にかけるつもりだから」


 この様子だと、市場価値の低い人を安く雇っているのだろう。


 以前の岐阜コンの時には明らかに柚子よりも一回り年上の人が何人もいた。婚活イベントの仕事は接客さえできれば誰でもできるらしい。どうりで接客に慣れている中高年の人たちが、柚子の指揮の下、婚活事業に携わっていたわけだ。この状況を打開するには町興ししかない。だが町興しのアイデアなんて僕に考える余裕なんてなかった。しばらくは岐阜コンだけでどうにかするしかない。


 レオとエマは柚子の会社に行きそうだ。僕や柚子が起業しなかったら、みんな就職が不安定になっていく時代に、一斉に就活をする破目になっていたんだろうか。休日に唯と家デートをしたり、カフェ巡りをする日々を送っていた。僕がいない時でも店が回る方法や商店街を復興させる方法といった課題の解決策を考えていた。あれから柚子の会社とは特に業務提携はしてないが、事実上の同盟状態である。


 店に関しては某世界的な動画サイトの収益化システムのお陰で客が来なくても何とかなるけど、商店街がもしシャッター街になったら、うちの親の住む家の家賃を僕が払わないといけなくなるし、僕が常連である金華珈琲が潰れるのは避けたい。誰かが商店街でコーヒーの焙煎でもやってくれれば、僕の紹介で外国人観光客を葉月商店街へと向かわせたりできるのだが……。


 ――そうかっ! その手があったかっ!


 うちの親に焙煎をやってもらえばいいんだ。親父はおじいちゃんの影響で焙煎も抽出もできる。僕が投資して実家を店にしてもらえばいい。あのままじゃどうせ正規の仕事には就けないだろうし、親父からすれば、自分のしたい仕事ができるんだ。別にいいよな……。


 9月下旬、休日を迎えると、唯と一緒に葉月商店街へと赴いた。


 相変わらず殺風景であり、岐阜コンの時以外はあまり客足が振るわない。近くを通りかかった客は、近くにあるショッピングモールへと吸われていく。


 実家の真向かいにある、古びた木造の扉に手をかけた。


「おっ、いらっしゃい。久しぶりだねー。しかも今日は連れがいるんだ」


 マスターが僕らに気づく。親父は糸井川と一緒にコーヒーを淹れている様子だ。


「ああ、うちの同僚だ。ブルーマウンテンとデミグラスオムライス」

「私も同じものをください」

「畏まりました。あず君の同僚ということは、仲が良いんだね」

「何でそうなるんだよ?」

「お前は仲が良い人としか一緒に働かないだろ」

「親父は相手に合わせすぎな」

「はははっ、まあ、あず君に仲の良い同僚ができたのは良いことなんじゃないかな。その人も含めて同僚は全員身内なんでしょ?」

「……まあな」


 唯とここに来るのは初めてだ。だが唯はまるで常連であるかのように緊張の素振りも見せなかった。この肝が据わったところは見習いたいものだ。


 僕が端っこのカウンター席に座ると、唯もすぐ隣に座った。


「僕はここでマスターを務めている、桂川慶と申します」

「阿栗唯です。唯でいいですよ。それと話し方も普通にしてもらって大丈夫なので」

「分かった。あず君とはいつ頃から知り合いなの?」

「出会ったのは5年前です。あず君を動画で見て、葉月珈琲に行きたくなったんですけど、最初は日本人規制法の看板の前で立ち往生してたんです」


 唯は僕と出会ったからの経緯をマスターたちに説明する。


 時間はあっという間に過ぎていく――。


 葉月珈琲創成期からの常連であったこと、今一緒に住んでいること、僕の専属サポーターになっていることなんかを昔話のように話している。今まで本当に色んな場面を共にしてきた。彼女はもうすっかり僕の身内になっている。血は繋がっていないが、他人という感じがしなかった。


 ずっと一緒に住んでいるからだろうか……あれから1年、唯がいつも家にいることに対する違和感は綺麗さっぱりと消え去っていた。むしろいない時の方が何か物足りない感じがする。唯はすぐにマスターたちと仲良くなり、金華珈琲に溶け込んでいったが、僕がここに来たのはカフェ巡りのためじゃない。


「なあ親父」

「何だよ?」

「今でも焙煎はできるか?」

「当たり前だろ。今でも休日には家で焙煎をやってるけど、それがどうかしたか?」

「いつか実家を改装して、ロースターになりたいって言ってたよな?」

「あぁー、そんなことも言ってたな。まっ、正社員になることを諦めた今、夢のまた夢だし、とっくに諦めた。できるからやってみたいけどな」


 元々親父が大手コーヒー会社に入社したのは、ロースターになりたかったからだ。結局才能を活かせないままだったけど、親父の『焙煎技術』はおじいちゃん譲りだ。親父がバリスタを始めたきっかけはおじいちゃんの焙煎に夢中だったからである。技術を活かさないままでいるのは宝の持ち腐れだ。


 親父に葉月商店街の復興案として、『ロースター』への転職を勧めてみることに。


「というわけだからさ、今の商店街を復興するには、親父が店を始めるしかないと思う。親父が焙煎した豆を色んな人やカフェに売って味を知ってもらえれば、親父の焙煎したコーヒーを買おうと、全国から客が押し寄せてくるはずだ」

「確かに一理あるね。世界的バリスタの父親という肩書きで勝負する作戦だね」

「どうする?」


 実際、この国における肩書きは大きな効果を持つ。


 岐阜コンで僕が世界的バリスタとして運営側で参加したことによる宣伝効果はかなりのものだった。だが岐阜コンは1年の内、4月、8月、12月のたった3回しか行われない。故に開催された日以外のイベントにはあまり客が来ないが、僕の名前を連ねた店であれば、休日以外は客が訪れる機会がある。うちの店に入れない日本人客への配慮でもあった。親父の店であれば、うちと同等の味を体験できる。


 だが最初は親父を説得するのに骨が折れた。


「そうは言っても、それでうまくいくとは限らないし、俺は賛同できないな」


 親父は腕を組み、壁に背中をもたれさせながら困ったような顔で答える。


 ――まあそうなるわな……この頑固者め。


 この案に対して親父は難色を示していた。親父は昭和中期の生まれであり、高度成長期やバブル期の経験者ということもあってか、変化を嫌う性格になっていたのだ。特にバブル崩壊が親父に与えた心理的影響は凄まじく、あれが親父にとって、変化=悪と思わせる大きな一因となっていた。


 しかもやっと生活が落ち着いてきたところに、人生を左右しかねない選択を突きつけたのだから無理もないが、ここで納得してもらわなければ葉月商店街が変わることは永久にないと確信していたため、精一杯の説得を試みた。方法は見つける。なければ作る。


 商店街1つ変えられない人間が、コーヒー業界を変えられるとは到底思えなかった。


「何かあっても、その時は僕が何とかする」

「金華珈琲はどうすんだよ?」

「あー、大丈夫。うちは2人いれば十分回るから」


 マスターが親父の背中を押すように、いつでも辞めていい旨を伝える。


「俺に辞めてほしいのかよ」

「そうじゃないよ。好きな道を歩んでほしいんだよ。せっかくあず君が夢を叶える機会を与えてくれてるんだからさ、そろそろ羽ばたいてみたら? もう十分我慢したと思うよ」

「店は大丈夫なのかよ?」

「お客さんもそこそこ来るようになったから問題ないよ」

「雇用形態は?」

「もちろん正規雇用だ。普段は焙煎したコーヒーを売る専門店のマスター兼ロースターをやってもらおうと思ってる。それから座ってコーヒーを飲めるスペースも作る予定だけど、1人じゃ足りないから、できればお袋にも一緒にやってもらおうかなと思ってるけど――」

「もちろんやるよ」

「うわっ! ……いつからここにいたの?」

「さっきからずっと蜂谷さんと一緒に話してたんだけどなー」

「いるなら言えばいいだろ」


 ていうか蜂谷さんもいたのね。すっかり店の雰囲気に溶け込んでいて気づかなかった。


 丁度良い。宣伝してもらうか。まあ、この人なら頼まなくても勝手にやってくれるだろうけど。


「それは楽しみですねー。じゃあそれ、新聞に掲載させてもらいますよ」


 ――ほらね、やっぱり乗ってきた。


「そのためには改装工事が必要になるけど、費用はどうするんだ?」

「費用はうちが負担する。確かカスタマイズOKだったよな?」

「それはそうだけど、本当にやるのか?」

「冗談で言うわけねえだろ。失敗するなんて当たり前のことなんだから、うまくいくまでやり続ければ必ずうまくいく。だから心配すんな」


 その時、親父が何かを思い出したかのように驚きボーッとする。


「どうしたの?」

「いや、先代と全く同じことを言ってたからさ、つい子供の頃を思い出しちまった」


 親父は幼少期の頃、みんなよりもテストの点数が悪いのが悩みだった。そんな時におじいちゃんから全く同じことを言われた瞬間を思い出したらしい。


「失敗するなんて当たり前のことなんだから、うまくいくまでやり続ければ必ずうまくいく。俺はずっと先代から同じことを言われ続けてた。最初はただの負けず嫌いが言う台詞くらいにしか思っていなかったけど、その意味がやっと分かった……」

「おじいちゃんも言ってたんだな」

「ああ……お前は先代に似てるよ」


 親父がさりげなく言った言葉に、僕は無意識にホッとした表情を浮かべた。おじいちゃんに似ていると言われると、何だかおじいちゃんの技術を見事に継承したような気がするのだ。


「丁度良い機会じゃん。あず君もこう言ってるんだし、ねっ」

「……分かった。勝手にしろ」


 話はまとまった。後は行動するだけだ。僕は親父とお袋に今年中の改装を依頼し、来年にはコーヒー焙煎の仕事を始める計画を公表した。改装した店はうちの会社の傘下となる。つまり親父はうち会社の雇われマスターになるということだ。焙煎したコーヒーの販売がメインであり、店内でのコーヒー提供がサブである。僕の名前がブランドとして使えるなら、とことん使ってやるまでだ。


 親父が商店街でコーヒーの焙煎を始めたと店に来た外国人に宣伝すれば、商店街に再び活気が戻るかもしれないと思った。外国人たちに葉月商店街を勧める理由が欲しかった。最初は躓くこともあるかもしれないけど、葉月梓の親父という肩書きにはかなりの宣伝効果があるはずだ。奇しくも親父が最もなりたがっていた正社員になった。一体何の因果なのやら。


 10月上旬、バリスタオリンピックの時期がやってくる。


 唯と共にシアトルまで飛んだ。唯は僕の代わりに時間管理から荷物持ちまでを担当する。バリスタオリンピックは1週間かけて本戦が行われる長丁場である。


 1日目から5日目が予選、6日目が準決勝、7日目が決勝である。バリスタオリンピックでは選考会でも本選でも、予め世界中のコーヒーやマシンが一通り用意され、コーヒーは購入で、マシンは貸し出しで使用できる。目当てのコーヒーやマシンが会場にない場合は自分で用意しても構わない。


 バリスタは合計1時間の持ち時間の中、エスプレッソ部門のエスプレッソとシグネチャードリンク、ラテアート部門のフリーポアとデザインカプチーノ、マリアージュ部門のコーヒー2種類、ブリュワーズ部門は機械動力を伴うコーヒーマシンを使わずに抽出したコーヒーを2種類、コーヒーカクテル部門はオリジナルコーヒーカクテルをそれぞれ2杯ずつ淹れるため、合計20杯のコーヒーを淹れる。これはテクニックやアイデア以前に、体力勝負になりそうだ。


 だがこんなところでめげているようでは、バリスタの頂点には程遠い。


 コーヒーは全て4人のセンサリージャッジに提供する。出すのはそれぞれ2杯ずつであるため、各部門の1種類目は1番目と2番目のジャッジに、2種類目は3番目と4番目のジャッジに提供する。


 プレゼンは必要最低限で構わない。バリスタオリンピックは選考会でも本選でも英語が必須のルールであり、競技中は必ず英語でプレゼンをすることになる。そのため英語を話せない人も書類選考で落とされるのである。どうりで選考会は参加者が少なかったわけだ。


 バリスタでアルコールが扱えて、英語が話せる人となると、かなり人数が限られてくる。


 日本におけるバリスタオリンピック選考会の歴史が浅いわけだ。しかも他のバリスタ競技会で、ある程度の実績を残していなければ、やはり脱落の対象になってしまう。これらの制約を全て潜り抜けた者たちの中で突き抜ければ、本選に参加できるというわけだ。


 バリスタオリンピックの優勝賞金は100万ドル。


 だがそれ以上に価値があるのは、ファイナリストになった者がバリスタ史にその名を刻めることだ。大会は最初から大盛況の中で始まり、日本代表である松野と結城はかなり緊張している様子。初挑戦で初日から2人共出番だし、1日目を戦うバリスタは、昨日の時点でリハーサルを済ませている。


 1人1時間という持ち時間だが、提供時間には細心の注意を払いたい。会場には日本代表の応援団までもが来ており、中には美羽、美月、今や日本のコーヒー協会の顔となった穂岐山社長といった面々が顔を連ねる。できればあの連中とは距離を置きたかったが、奇しくも近い席になってしまう。


 僕がここまで来たのは日本代表の応援ではない。世界的バリスタたちの競技を間近で見るためだ。


 今までの大会とは桁が違う。それだけは確かだった。


 バリスタ史に名を刻むための戦いが、今ここに始まろうとしていた。

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