103杯目「お見合い地獄」
親からは完全独立したと思っていた。
だがそれは仕事をしている時のみ。法人化したこの時期は、仕事以外にも色んな出来事があった。
話は少し遡る――。
引っ越してから店をオープンし、しばらくの時間が経過した後のことだった。
2月上旬、日本のテレビ番組がやってくる。外国人タレントからインタビューを受けた。僕の日本人恐怖症に配慮してくれたようだ。葉月珈琲はオープン当初から繁盛していたため、営業が終わってからインタビューを受けることに。生放送じゃなく、編集してからテレビで流すらしい。親と親戚は僕がテレビに出る度に盛り上がり、店に話題を持ち込んでくる。
「どうやったらそんなに優勝できるんですか?」
「自分らしさを追求することかな」
「彼女はいますか?」
「――いないけど」
「好きな女性のタイプは?」
「寛容で大らかな人」
しょうもない質問が続いた。自分史の一部も話した。更には視聴者からの質問にも答えることになっていたのだが、今にして思えば、当時はこれが僕と日本人を繋ぐ数少ないツールだったのだ。インタビューの機会があまりなかったこともあり、質問が溜まっていた。
主にやりたいことの見つけ方を聞かれた。
結論から言えば、やりたくないことをたくさん見つけることだ。
向いていないこと、苦手なこと、嫌いなことを片っ端から見つける。それを繰り返していれば最終的に向いている職業だけが残る。僕にとってやりたいことを見つける作業はジグソーパズルだ。ジグソーパズルのピースは全部形もデザインも違うけど、どこかに必ずピッタリと一致する場所がある。
どうしても分からない人に限って言えば、自分の適性に合わない職業を1個ずつ除外していき、最後に残ったものの中から選べばいい。僕はそうやって今の職業に辿り着いた。合うか合わないかは自分で試してみなければ分からない。だからこそ、体が動く若い内に色んな経験をしておくべきだと思う。
この放送は次の週のテレビ特集で放送された。この回答は全国の視聴者にウケたらしい。だがほとんどの人は試行錯誤すらしないだろう。彼らは悪魔の洗脳により、学習性無力感に陥っているのだから。
ある日のこと、唯はまだ見習いであり、僕らの様子を見守りながら皿洗いや掃除をしていた。だが義務教育を終える前から店内の様子や仕事の流れを学べていたことが、彼女にとっては大きな経験となっているのだ。そのことが彼女を雇った時から大いに役立っている。
既に店内に精通していて、わざわざ研修を行う必要がなかった。
今、僕は璃子の淹れたドリップコーヒーを飲んでいる。
店の営業は既に終わっており、僕、璃子、唯の3人だけが店内に残っている。
ゲイシャが持つ酸味と甘味を存分に引き出している。これなら客に出しても恥ずかしくないな。
「うん、合格だ」
「ふぅ、やっと合格って言ってくれたね」
その時だった――。
「あず君、彼女いないって本当なのっ!?」
勢い良く入ってきたのはお袋だった。何やら慌てている様子だ。
「ほ……本当だけど」
「何でもっと早く言ってくれなかったの?」
「言う必要ねえだろ」
「お陰で近所中から笑い者にされちゃったんだけど」
お袋は嘆きながらカウンター席に腰かけ、肝が冷えたようにため息を吐く。
「それ、別に僕のせいじゃないよな?」
「近所の人はみんな結婚して、子持ちの人だっているのに、あず君はずっと仕事ばっかりで、彼女も全く作っていなかったなんて……知らなかったぁ~」
「まあまあ、あず君はコーヒーが恋人なんですから」
唯が僕の代わりにお袋の相手をする。どうやら僕が彼女持ちじゃないのが不満であるとのこと。お袋は僕に彼女がいないことをテレビの全国放送で知ると、あろうことか僕のプロフィールカードを作り、仲人をしている吉子おばちゃんに渡してしまったのだ。それまでは僕に彼女がいると思い、お見合いはいらないと勝手に思い込んでいたらしいのだが、このことが全国放送で近所にバレたしまったために、お袋は赤っ恥をかく破目になったらしい。世間体なんて無視すればいいものを。
この全国放送がきっかけで、お袋はあまり外出ができなくなってしまったらしい。
「お兄ちゃんって、確か病院の先生から恋愛をするように勧められたんだって」
「あー、そうなの。じゃあさ、病気の克服も兼ねてお見合いしてみたら? たくさんの女の子とデートしたいんだったら協力するから」
――おいおい、余計なことを。
うちの親にとって、璃子は僕の近況報告担当だった。僕が稲葉山先生のいる病院に行き、恋愛治療を勧められたことをお袋が知ってしまい、毎週の見合い話が決定的になったのだ。
大変なことをしてくれたな……。
「あず君が病気を治した上で、彼女までできたら嬉しいなー」
「病気はともかく、お兄ちゃんと長く関係が続く人っているのかな?」
「あず君って結構モテるでしょ。だから大丈夫だと思うけど」
「モテることと一緒に生活することは別だよ。私は生まれた時から一緒に生活してるから、あの偏屈な性格に愛着すらあるけど、特に初見の人はタジタジになると思うよ」
「どこかにあず君のことをよく知っていて、あず君の全てを受け入れられるような器の人がいればいいんだけどねー。地道に探すしかないかー」
「もうその人を探すだけで骨が折れそう」
「だから今、吉子おばちゃんに探してもらってるんだよねー」
どうやら僕に拒否権はないらしい。僕に彼女が不在であることが全国放送され、病気の治療の一環として恋愛を勧められたことも重なったため、以降、婚活市場に参加させられることに。
しかもうちの親は璃子のプロフィールカードまで作っていた。これには璃子も驚きの顔を見せた。
璃子は今年から葉月珈琲役員兼専属ショコラティエとして、普段はパティシエ担当を務めることになったわけだが、まだまだ優子に修行してもらう予定だ。仮に好きな人がいたとしても、当分は結婚しないと決め込んでいる様子だっただけに、余計なことを言うなと言わんばかりの顔だ。
これで少しは僕の気持ちが分かっただろう。璃子はショコラティエの大会のみならず、色んな洋菓子のコンテストに自ら進んで出場するようになっていた。分野こそ違えど、毎年世界大会で結果を残している僕に少なからず刺激を受けたらしい。しかもお袋が帰った後、僕が色んな女性とデートをするようになっていたことを親父から聞いてしまい、お袋はチャンスと受け取った。
子供が独身なのがそんなに耐えられないのか?
そんなこんなで、お袋は2月上旬から毎週、うちの営業時間が終わる度にお見合い写真とプロフィールカードを持ってくるようになった。酷い時はお見合い相手を店に連れてくることもあった。
2月中旬、美羽が久しぶりに遊びに来てくれた。
どうやら仕事が一段落したとのこと。
彼女は広くなった店内と大勢の外国人観光客に驚くと共に1つだけ空いているカウンター席に座り、エスプレッソを注文する。しばらくは世間話で時間を潰した。
5ヵ国語を使い分けながら彼女たちと会話をする。
「ふーん、あず君も大変だねー。いかにも恋愛は専門外ですって感じだもんね」
「恋愛治療を言い渡されたすぐ後のタイミングであれが全国放送されたからさ、あればかりは、もはや悲劇としか言いようがない」
「あのさ、差し出がましいようだけど」
「どうかしたの?」
「バリスタオリンピックの選考会でね、松野君と結城君がワンツーフィニッシュしたの。そこであず君に2人のサポーターをしてほしいと思ってるんだけど――」
「駄目だっ!」
彼女が台詞を言い終える前に返事をする。
誰かのサポーターなんて冗談じゃない。ただでさえ誰かに合わせたり、みんなで一緒に何かをすることに全く向いていない僕には……到底務まる気がしなかった。
「そ、そうだよね。ごめん」
「ただでさえ不当な理由で落とされたんですから、それは無茶だと思いますよ。でも日本代表が2人共穂岐山珈琲から出るなんて凄いですね」
唯が僕を擁護するように美羽を咎めながらもフォローの言葉を残す。
しかし、美羽にとって唯の言葉は残酷なものだった。
「ありがとう。でも2人共全然嬉しそうじゃなかったの」
「どうしてですか?」
「選考会が終わった後でね、新聞記者たちから質問攻めをされて、あず君が出ていたらどうなっていたかとか、色々と不毛な質問をされてたの。その後あたしたちが一緒に食事を取っていたら、あず君が出ていたら、どちらかは代表になれなかったとか、あれはライバル不在による勝利だとか、あず君じゃなきゃ本戦で勝ち目ないとか、本人たちがいることも知らないで、周囲の人が良くない噂を飛ばしたの。それで松野君がキレちゃって大変だったんだから」
「まあ、その人たちの気持ちは分からなくはないです。あず君がいたら優勝確実と言われてましたし」
「選考会にもほとんど観客が来なかったの。あず君が出ていた他の大会の国内予選にはあれだけ多くの観客が来ていたのに……今思うと、観客はあず君の宣伝効果で来てたんだなって思い知らされたの」
選考会に観客がほとんど来なかったことで、観客たちは僕を見るために来ていたのがハッキリしたということか。世界中のコーヒーが集まるジャパンコーヒーイベントで行われた国内予選の時は僕が有名じゃなかった時でも大盛況だった。大会のためじゃなく、他のイベントのために来ていたのだ。
つまり世界はおろか、日本におけるコーヒー業界の地位さえ、低いと言わざるを得ないのだ。
バリスタオリンピック選考会ですらこの体たらくだ。
これはバリスタの地位が低いと事実上認めているようなものである。コーヒー業界の地位をメジャー業界に押し上げることを目標としている僕としては、由々しき事態に他ならなかった。
「ねえ、あず君、あたしたちもコーヒー業界の地位を上げたい気持ちはあず君と同じなの。だからさ、もし良かったら、穂岐山珈琲とコラボしてほしいんだけど、駄目かな?」
「駄目だっ!」
「どうして?」
「誰かと一緒に仕事をするのは苦手中の苦手だ。特に自分を押し殺して集団に合わせるような仕事は絶対無理だし、他の企業とコラボすると、自分が雇ったわけでもない人のミスでうちまで損害を被る可能性があるわけだし、それは他人の借金返済を突きつけられるとの一緒だ。僕みたいに足の引っ張り合いになるのが嫌だから人と仕事したくないっていう奴は、1人でできるような仕事をするべきだと思う」
「そう思えるような出来事があったの?」
「……うん」
ふと、小1の頃の運動会を思い出した――。
特に足の遅い生徒だった僕は、参加すれば確実に足を引っ張ることが目に見えていた。
案の定僕のせいで紅組は敗北してしまい、運動会終了後に集団リンチを受けてしまったが、あれ以来誰かと一緒に密接な共同作業をするのが嫌になってしまったのだ。
ましてや苦手分野に強制参加させられるなど言語道断。
企業とコラボなんてすれば、またあんなことが起きるかもしれない。誰も金銭的に損をしない娯楽程度のコラボなら気楽なのだが、お金が動くビジネスの世界では話が別だ。自分や自分が雇った人のミスで失敗したのであればまだ納得がいくのだが、自分が雇ったわけでもない誰かのミスで自分まで損をしたり、自分のミスで誰かに責められるのはもうたくさんだ。
本来であれば、僕のような人間は、お金が動く場所では極力人と関わるべきではないのだ。
僕が進学も就職もしなかったのは、集団行動が苦手だからだ。
だから他者との関わりは必要最小限に留めているというのに。食材の仕入れもインターネットによる発注で済ませてきた。一緒に仕事をする場合、自社であれば好きな相手を選べるが、他社とのコラボは気に入らないタイプの人間とも必ずつき合うことになる欠点がある。
結局のところ、他の企業とビジネスでコラボをするのは、つき合う相手を選べなかった学生の頃と同じであると感じたのだ。昔の僕には決定権がなかった。最悪の結果を予測できたにもかかわらず、回避することができなかった。だが今は違う。僕には決定権がある。
あんな経験をした以上、人との関わりには慎重にならざるを得ないのだ。もう同じ過ちは繰り返したくない。その気持ちだけが……他者と必要以上に関わることを拒ませていた。美羽にはこのことを伝え、穂岐山珈琲とのコラボを断った。美羽は残念そうな顔をしながら東京へと帰っていくのだった。
2月下旬、営業時間を過ぎた後で、何人目かのお見合い相手が親父とお袋に連れられてやってくる。日本人規制法をすり抜けた相手は、毎度のことながら喜んでいた。僕はその度に反射的にビビりながらクローズキッチンに引き籠ろうとするが、最終的に璃子の後ろに隠れながら、お見合い相手が座っているテーブル席に移動し、相手と対面するように座った。
「あず君、久しぶりだね」
「何で香織がここに!?」
お見合い相手としてやってきたのは香織だった。学生の時とは随分と風貌が変わっている。
黒髪を茶髪に染め、少しばかり露出度の高い服装になっている。
自称、売れないミュージシャンであるとのことだが、こんなにも変わるものなのか……。
「いやー、あの時から全然変わらないねー」
「まさか元同級生を連れてくるとは」
「えっ、同級生だったの?」
「はい。同じ小中学校でした」
「ふーん、赤い糸で結ばれてるんじゃない?」
「お袋は昔っから皮肉の効いたジョークが上手いんだ。気にしないでくれ」
「別にジョークなんて言ってないけど」
「こういうのは腐れ縁って言うんだ。昔は便宜上友達と呼んでた奴ってさ、ほとんどはたまたま近所に住んでいたから出会ったってだけだ。卒業後に全然会わないのが証拠だ」
「あず君の方が皮肉屋だと思うよ。あたしはあず君に出会えて良かった。出会った時から変わった子だと思ってたけど、誰よりも筋が通ってたし、何であの時助けられなかったんだろうって後悔してる」
香織とは中3の時の出来事を語り合った。香織が言うには、あの後僕がいたクラスは授業時間が潰れてしまい、みんなで割れた窓ガラスの掃除をしていたらしい。
ナチ野郎共はあいつがいなくなって清々したと言っていたとか。
あんな様子じゃ、恐らく高校や大学でも同じことを繰り返してるんだろう。
僕の中学校追放処分は、香織に噂をされるまでもなく、中学の歴史に残る珍事となり、僕が有名になってからは、僕が在籍していた中学として有名になった。
香織は高卒後に『フリーター』をしながら小さい頃からの夢であった『ミュージシャン』として活動している。元々は何となく大卒のOLになる気だったが、WBCでの活躍を見て夢を追いたくなったらしい。時々はライブにも出ているとか。
売れるかどうかはともかく、悔いのない生き方を選ぶ人が増えたのは喜ばしいことだ。
サラリーマンを選んだって、安定するとは限らない。
香織は不安定な状態のまま生きるのはきついため、夢が叶わなかった時の最終手段として結婚を考えているらしいが、これは男をATMとしか思ってないな。
「ふーん、これがあず君のプロフィールなんだー」
「イケメンの三高には程遠いだろ」
「あず君はイケメンだよ。美少女系イケメンって感じ」
「当分は仕事に没頭したいのに、親に勝手に登録されちゃって。でも日本人恐怖症も克服したいから、それで色んな女とデートしてるってわけだ」
「そうだったんだー。またここに来てもいいかな?」
「いいぞ。でも身内以外の日本人は連れて来るなよ」
「そういうこと言ってるから、いつまで経っても日本人恐怖症が治らないままなんだよ。でもあず君がどうしてもって言うならそうする。あず君はあたしの人生を変えた人だから」
人生を変えた人……か。僕みたいな人間でも、誰かの人生に影響を与えることってあるんだな。
以降、小夜子たちが一緒に来る頻度が上がった。
僕の特徴は身長155センチ、中卒、手取り年収500万円の社会不適合者。だが世の女は三高の男を求める人ばかり。経営者や自営業は人気が低く、正社員や公務員が人気だ。お見合い相手はいずれも僕を知っていたが、僕の詳細までは知らない人が多かったのか、女子と間違われることもよくあった。
すると、お袋が後はお若いお2人でごゆっくりと言い残し、親父と共にそそくさに帰っていく。
いつの時代のお見合いだよ。昔はお袋がこれを言われる立場だったんだろうが。
香織は昔から僕を知っているため、ピッタリではないかと親からも交際を勧められるが、バリスタの仕事に没頭したいこと、婚活自体には興味がないことを伝え、デートの約束をした。
「あたし、今でもあず君が好きだよ」
「! ……ごめん」
「何で謝るの?」
「香織は僕に対して真剣なのに、僕は誰に対しても真剣に向き合ったことがない。自慢じゃないけど、僕は友達いない歴=年齢だ。友達も満足にできないのに、恋人なんて尚更無理じゃないかって思う自分がいて、つき合うからには相手のことを幸せにしてあげないといけないわけじゃん。僕はコーヒーを淹れるのは誰よりもうまい自信があるけど、人に気を使うのは誰よりも下手だから……それでなかなか一歩踏み出せないというか……」
段々と歯切れが悪くなり、淹れてからしばらく時間が経ったコーヒーをもじもじと見つめている。
こういう話をすると、何故か背徳感が僕を襲ってくる。
「あず君が何でみんなに愛されてるのかが、ちょっと分かった気がする」
「ほとんどの場合、その気持ちは勘違いだと思うけどな」
「勘違いだとしても、人を惹きつけるって凄いことだよ。あず君は自分が幸せになるよりも、相手の幸せを願ってる。だからみんなあず君が好きなのかな。ふふっ、あたし何言ってんだろー。恥ずかしー」
香織がさりげなく言いながら顔を手で覆い隠す。
こういう仕草を可愛いと思ってる人となら、うまくいくのかもな。自分よりも相手の幸せを願うというよりは、僕自身が既に幸せだからこそ、考える余裕があるのかもしれない。
僕はコーヒーがあればそれだけで幸せだ。
みんなはあれもこれも欲しいみたいな欲望に塗れ、常に何かを欲することに飢えている。だがそんな状態では幸せには程遠い。何かを成し得たり、何かを勝ち取る前に、まず感じる心が重要なのだ。
幸せは勝ち取るものではなく、感じるものなのだから。
「つまり、あず君は人を信用できないってことだね」
「まあ……そういうことになるのかな……」
「でもさー、あず君って何だかんだ言っても、他人に気を使えてるじゃーん」
「優子っ! いつからいたのっ!?」
突如優子が隣からヌッと現れ、僕の心臓にショックを与えようとする。
――あぁ……恥ずかしい。
「お袋は昔っから皮肉の効いたジョークが上手いんだ……って言ったところからー」
「ほぼ序盤からじゃねえかっ!」
「まあまあ……あず君はね、本当は誰よりも相手に気を使えるからこそ、鈍感さから相手を傷つけてしまうのが怖いの。でもそれ以上に、自分自身が傷つけられることの方が恐ろしいと見えるね」
「なるほど……あっ、優子さん、お久しぶりです」
「久しぶりー。あたしもあず君とお見合いしてみたいなー」
「あのなー、これは遊びじゃねえんだぞ」
「あたしだって真剣だよ。じゃあそろそろ帰るねっ」
風のように去って行く優子の様子を、僕と香織は顔をポカーンとさせながら眺めていた。
一体に何しに来たんだ?
後日、僕は香織と岐阜市内でデートをした。あくまでも交際のためのデートじゃなく、治療のためのデートだ。元同級生とお見合いからのデートをすることになるとは夢にも思わなかったな。
もしかしたら、これも何かの縁かもしれない。
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