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オストの風 ー乙女たちに幸せの風あれー  作者: 笹原 篝火


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過去からの兵隊 -2

シィタの復活、そして人形討伐へ

 ファミリーはみな焦燥感に駆られている。ただアクアの命が終わる瞬間をただだまって見ているしかなかった。

 「はぁ・・ はぁ・・ あぁ・・」

 「アクア・・しっかり・・・」

 内臓の損傷からか高熱がでており汗まみれになっている。うすらと目を開け手を取るグレイに問いかける。

 「・・グレイねぇ・・お・・願い・・ 止めを・・」

 「それは・・できない・・」

 あまりの苦しさに殺してくれと訴えるアクア。

 それに答える訳にはいかない。

 あまりの苦しみように子供たちは目を塞ぐしかない。

 首を振る山猫、ふと一人いなくなっていたのに気づく。

 「あれ・・ミリエッタは?」

 「え?」

 グレイもミリエッタがいなくなっているのに気づいた。

 「一体・・どこに・・・ まさか責任を感じて・・・」


 ─ミシ・・ ミシ・・

 二階から階段をゆっくりと降りてくる足音が響く。

 ひらひらと数枚・・鳥の羽が舞い落ちる。

 家族みんなが音のする方向を・・・ そしてみな息を飲んだ。


 「ねぇさま・・・ おはようございます・・」

 息を引き取ったミリエッタをだきかかえ・・

 白い大きな羽・・・で彼女を包み込むように・・・

 

  ***


 シィタの治癒術のおかげでアクアの死は免れた。臓器まで精霊の加護が届き、綺麗に直ったのだ。ただ失った血が多かった為、まだ昏睡状態ではあった。

 ただグレイは非常に複雑な心境・・・ ミリエッタが命を使ってシィタをを蘇生させた。

 その強い意志の行動は元はグレイの軽率な行動と判断が原因だと思ったからだ。

 「ねぇさまが悪いわけではないわ・・これも彼女の運命なの・・」

 「でも・・ わたしがあんな判断をしなければ・・・」

 「いいえ、まちがってないわ。それもヨルを・・家族を守るたもの判断でしたから・・」

 シィタの膝の上で眠るように横たわるミリエッタ。シィタは優しい笑顔で彼女の髪を撫でていた。

 「彼女は私が必ず蘇生させます・・・だから・・大丈夫ですよ・・ねぇさま」

 「・・でも、もう霊薬は・・・」

 グレイは唇をかみしめる。シィタが強い精霊術を行使するための霊薬はすべて使い切ってしまった。それに兵役をやめ冒険者の活動もなかなかすすんでいないためお金もないのだ。

 それにそうそう手に入る物ではない。

 山猫もそのまま朽ちていく彼女をみるのもよくないと思った。そして埋葬を提案する。

 「埋葬しようぜ・・そのままミリエッタの亡骸を置いとくわけにはいかないしなー。腐っちまうだろ」

 「そうですね・・でも損傷が酷くなると記憶とかに影響が出てしまいます。デュナメスのように」

 シィタはそっとミリエッタを抱きかかえると、床に寝かせる。

 「氷の精霊よ・・永久の眠りを与えて・・」

 シィタは精霊術を行使した。

 付近に強い冷気が帯び、ミリエッタの体を包むと瞬時に凍りつく。そして氷の中にミリエッタを封じ込めたのだ。

 「これで、損傷は押さえられるはずです。けど、太陽の日が当たると氷の精霊の力が弱ってしまします。この状態でハウスの近くに埋葬しましょう?」


 そしてミリエッタは茂みの中に埋葬された。セタとナナシーは花を摘んできて添えて上げる。

 「・・・こうなるまえにわたしの体・・さわらせてあげればよかったね・・」

 ぽんぽんとグレイはナナシーの頭をなでる。

 「そうね・・・ミリエッタには本当に助けられたわ・・ おかげで道が開けた・・・・ 彼女の覚悟・・無駄にしない・・ 先に進むわ」


 ***


 数日後、アクアが完全に回復した後にファミリー皆あつまってロビーでミーティングが始まる。依頼の達成。人形の討伐だ。

 「ミリエッタのおかげでシィタが家族にもどったわ。ヒーラーはシィタ、サトリも回復術がつかえるけど今回の依頼はギルドからの依頼・・それにまだ目をつけれていると思うから参加できないわ」

 サトリは協力できないと知るとがっくりと肩をを降ろす。

 「おれは意地でも参加するぜー。いいだろ!まえのクエストみたいに猫のお面つけてさ」

 「そうね・・・ 山猫の力は必用だとおもっていたところ。人形の速さは尋常じゃないから」

 「おっけ!まかせろ!」

 セタとナナシーも身を乗り出して意見する。

 「ねぇ・・わたしたちは?」

 「セタも剣技は一流だし、ナナシーも阻害術がつかえるから危険だけど今回は参加してもらうわ」

 「うん、がんばりますかあさま」

 「セタ!がんばろ!」

 子供ら二人も乗る気だ。

 そこにアクアも乗り出す。

 「あたしも・・・」

 「アクアは駄目!」

 「なんで!!」

 「まだ回復しきれてないでしょ?無理はさせられない」

 「いや、参加するっす!ミリエッタのおかげであたしがたすかったのはたしか!恩をかえさず冒険者をやってられるかっす!」

 「というか、人形を倒す手段・・あたし・・思いだしたっす・・」

 「え・・本当?思いだしたって・・」

 アクアはポシェットから手帳を取り出した。

 「えーっと・・あった。ヨルと遺跡にいったときの帰りに赤ちゃんの面倒を見ながら話をしてたんすが・・・」

 「万が一ヨル自身が暴走したときに止めてくれと頼まれていたんっすよ。人形は結構不安定らしいんで」

 「ヨルと同族ならこの方法が有効だと思う・・ただ・・人形の動きを封じ込めないとだめだけど・・」

 「そうね・・取りあえずミリエッタをだけを襲った・・そして過去の殺人事件の話を聞いた所で思ったんだけど・・人形の狙っているのは冒険者だけだと思う・・」

 そういって、グレイは自分の冒険者証を掲げる。

 「多分、これを持っている物を無差別に狙っている」

 山猫はぽんと手を叩いて納得する様子。

 「おとりはグレイがやるってことだな」

 「えぇ・・わたしがヘイトをとるわ。そこでだけど・・・」

 「他のみんなにはその隙をみて動きをとめてほしいの・・ ただ・・ ヨルの装甲をみるかぎりそう簡単には動きは止められそうにないけど・・」

 アクアがメモをみながら話を挟む。

 「ヨル自身がいってたっすけど・・・彼女も自分自身の弱点を・・えっと・・・」

 「ヨルの体の皮膚に相当する物質はたしかに刃が通りづらいのはたしかっす。ただ、間接部分・・たとえば肘周りや膝まわり・・稼働させるために薄くされているそうっす。その下はすぐに駆動部で鋭利な刃物で切りつければ人間にあたる筋になる部分を切断でき、手や足を使えなくなるとかなんとか」

 「なるほど・・ それは剣が使える山猫とセタにまかせる・・・ナナシーはわたしがひきつけているあいだに重力魔法で動きを鈍らせて・・ 鈍った隙に二人が剣で可動部を攻撃して破損・・・動きがとまったところでそのヨルに教わったことでアクアが人形を停止させる・・・それでいきましょう・・・」

 『了解-!!』

 「シィタは後衛・・・また殺されたらもう生き返らせる手段がないし、みんなが失敗して負傷したら直せるのはあなただけだから・・・」

 「わかったわ、ねぇさま」

 「人形は神出鬼没いつでてくるかわからない。みんなで歩いて付近を調べる。冒険者証はわたしだけが掲げるからおそってくるのは多分わたしだけ・・さっきもいったけどわたしはヘイトだけとるからみんなは動きをとめることに集中して!」

 「さぁ、ミリエッタの死を無駄にしないために!そしてヨルへの疑いをはらすために!」

 『おー!!』


 ***


 森の中を一人歩くグレイ。冒険者証を掲げ歩く。 少しはなれて茂みの中を他の家族が後を追うように歩いた。

 いつ現れるかわからないし、どこにいるかもわからない。とにかく歩いて探し回り、相手に気づいてもらうしかないのだ。

 いつまでも歩き回るわけにもいかないし何所で襲撃をかけられるかわからない。

 根のいることであった。


 これをつづけ数日。


 (・・今日もでないかな・・)


 グレイため息をついた瞬間・・戦輪が一直線にグレイの胸に向かって飛んでくる。

 とっさに伏せ、グレイは戦輪をかわす。

 「・・標的確認・・初動・・失敗・・作戦継続します」

 (・・でた・・ 人形・・)

 グレイは生唾をのんで剣を構える。

 「さぁ、あなたの探している『冒険者』はここにいるわ!殺しにきなさい!」

 人形は構えると一気にダッシュで走ってくる。グレイに近づくと同時に手刀での心臓の破壊を試みる。

 「グラビディーフィールド!」

 草むらからナナシーが飛び出し、人形に重力魔法を掛ける。

 陣が貼られた瞬間に超重力がかかり人形の体を沈める。

 しかし相当な怪力。速度を落としたがグレイに近づき心臓を狙う。

 体をそらし、その腕に斬撃をくわえる。案の定剣が通らない。

 人形はグレイの動きを目で追い、もう片手で首を掴もうと狙う。首の骨をへし折るたためだ。

 (やば・・)

 さすがに回避行動最中・・そして近距離だったためこれは避けられなかった。

 「ぐ・・あ・・が・・」

 人形の指がメリメリと音を立てて食い込む。

 剣を放して両手で人形の手を掴み引きはがそうとしたが力がありすぎて指すら動かせない。

 (・・くぅ・・ ま・・まず・・)

 グレイが意識を失いかけた瞬間、茂みから山猫とセタが飛び出す。

 「この化け物!!!くらいやがれ!!」

 山猫が腕の付け根に力一杯切りつける。アクアの言ったとおり装甲が弱い。皮膚に当たる部部がきれ中の駆動部を切断した。

 力が抜け、手が緩む。とっさにグレイは人形の腹部に蹴りをいれて間合いをあけた。

 そしてセタが低い姿勢で駆け走り両膝を切断。人形は体を支えられなくなり前のめりに倒れる。

 「けほ・・けほ・・ あ・・アクア!!」

 「了解っす!みんな人形を押さえつけて!!!」

 山猫とセタがのりかかり人形を力一杯押さえ混む。人形は動かせるのが片手だけだったので怪力でも二人に体重掛けられた状態では動けない状態だった。

 「任務続行・・困難・・ 次のルーチーンを検索・・」

 「いーや・・次はないっすよ・・観念してあたしのゆうことをきいてもらうっす」

 アクアは人形のまさぐり、髪をかき分けてなにかを探す。

 「けふ・・アクア・・なにを・・」

 「『ほくろ』っすよ。ヨルがいってたっす。人形にはみなほくろが二つある・・」

 「みつけた・・首筋は必ずあるっす・・後一カ所・・おしりか・・」

 そしてアクアは同士にそのほくろを両手で押す。

 ビクンと体をそらす人形。

 「rootモード作動・・ID・パスワードを要求」

 「えーと、あいでー あどみん ぱすわーど のっと・・だい・・でびる」

 「管理者確認・・管理モードを要求」

 「ふぉーまっと」

 「初期化します 10 20 30 ・・・ 100 初期化終了しました 管理モードを要求」

 「しゃっとだうん」

 「シャットダウンします。 お休みなさいませ・・マスター」

 ・・・・

 そのまま人形は動かなくなった。

 「はー、成功っす・・みんなおりていいっすよ。」

 「へ?これでとまったのか?」

 山猫は疑心暗鬼でまだ押さえつけている。

 「止まったっす。ヨルのいった通りっす。やっぱヨルと同類だったみたいっすね」

 「いったいどうやって・・けほ・・」

 シィタはグレイにかけよって首の治療のため精霊術を行使する。

 「ねぇさま・・しゃべらないで・・首の骨にヒビがはいっているのかも・・」

 「けほ・・大丈夫・・」

 アクアはあぐらをかき座り両手を後ろにつけて体を伸ばしつつ離した。

 「緊急停止用らしいっすが、それに入るための手がほくろ同時押しっす。場所は人形によってまちまちだったらしいっすが」

 「・・ヨルの場所はあそこのちかくだったからなぁ・・・練習のために押せといわれても・・はぁ・・まぁこいつはお尻だからよかったけど・・」

 「?」

 「ま・・まぁ・・そのあとはかんりけんげん?がさっきの言葉でヨルに教わった通りにいっただけっす」

 「ふぉーまっとは人形をまっさらにするっす。それで冒険者を襲え・・っていう命令は消えるっす。また動き出しても襲うことはなくなるはず・・そしてしゃっとだうんは人形を眠らせるおまじないみたいなものっす」

 「なるほど・・で、この人形は人を襲うことはなくなったってことね」

 「ヨルのいうとおりならそうっす。あとはこいつを冒険者ギルドにつきだすだけ」

 みんなは胸を撫で下ろし、みなそれぞれその場に座り込む。

 「まぁ、こいつを倒せたのもヨルのおかげっすね」

 「いや・・ミリエッタがシィタを蘇らせてアクアを生かさなければこの情報は永遠にでてこなかったわ。みんなのおかげ・・」

 「・・そう・・っすね・・」

 「でも人形を討伐しただけでは終わらない・・そんな気がする」

 グレイはまだ何かを気にしている。

 「なーんか、臭いよな。これもなにか仕組まれた感じがしてな。俺もひっかかるよ」

 山猫は顎に手をやって考え事をしている。

 「そうっすね。ヨルもいってたけど兵器だったらしいすから。しかし人形を操れるのは古代人だけだったらしいっす。ということはそれを調べ上げたかなりの識者がいたってことっすよね」

 「私の読んでいた古文書には人形の事はこの事はのってなかったわ・・・」

 シィタはほぼ国の本をすべて読んでいたため、この情報は確かだった。

 「・・ということは仕組まれたのは国外の誰か・・・か・・」

 ふと、グレイ自身を襲った国外の人間の事を頭によぎる。しかしこれは定かではない。

 しかし、厳重に守られている国境がたびたびこえられて送られてくる・・。

 やはり国内内部に内通者がいる事が正当だと思った。

 

 (・・・力ある者・・ 国政に関わる・・存在・・ そしてわたしを執拗に狙う存在・・・)


 「まぁ・・いいか」

 

 (ミリエッタ・・あなたのおかげで家族が護れた・・ ありがとう・・ こんどはわたしたちがあなたを救う番ね・・)


 いつの間にか日は沈み夕日がそらを赤く染め上げてる。その空を眺めながらグレイは心の中で次の覚悟を決めるのだった。 

 

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