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オートマータ・ヨルが自我に目覚めた時の話(過激な残虐表現あり・苦手な方は読み飛ばしてください)

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 XX年 古代文明の某国。─

 古代文明とはいえ今とは考えられないほど技術が栄えていた。一つの火薬で広範囲を焼き尽くす爆弾・・・ 人を消滅させるほどの火力をもった兵器。その卓越した技術と戦力が色々な国でせめぎ合い、奪い合い、殺し合いを行っていた。


 その中には人形兵器というのもあった。対人戦に特化したオートマタである。人間の力を遙かに超えた能力と力を持っていたためそれらで構成された部隊は「不死大隊」や「堕天使」といわれ数々の国を滅ぼし大量の人間の兵隊や一般人の命を虫けらのように奪っていった。

 その部隊の中にヨルはいた。何万もいるオートマタの大隊に所属し国の命令で侵略をおこなっていた。


 ──そして、今日も彼女は殺戮を続ける──


 敵国某市街地・・・ 深夜の町は炎・・そして人の焼ける臭い・・血と内藏の臭いで充満している・・不死大隊は作戦行動を実施していたのだった。

 「!!きたぞ!! 人形共だ!!!」

 「弾を惜しむな!! ぜんぶうちこめぇ!!!」

 「糞!! きかねぇ・・ く、くるぞ・・・!!!」

 「!!」

 「ぎゃあああああああああああああ!!!」

 ひとりの兵士の体が四散する。無表情で苦痛に歪む表情のの生首を拾い上げ見つめる人形。そして死体の散らばる街の中を大量の他の人形らが走り抜けていく。

 そしてあちらこちらから悲鳴や銃声が響きわたり、炎や煙が立ちこめ壁面や道路は血や肉が散乱している悲惨な状態だった。

 人形たちに指示されている命令はこの街の生命をすべて停止させること。ようは兵士だけでなく一般市民も皆殺しにしろということだった。


  ──はぁ・・ はぁ・・


 炎や煙が立ちこめるなか逃げる一般人がいた。どうやらこの街の市民の若い夫婦。妻のほうは妊娠しており走るのがかなり辛そうだった。そろそろ出産の時期が近かったのだろう。

 姿が隠せそうな路地を見つけ二人はそこに駆け込んだ。少しでも妻を休ませ身を隠せればと思ったからだ。

 しかしそう人形は甘くない。熱や生命活動を検知できるセンサーがついていたので逃げられるわけではなかった。

 二人が路地の突き当たりらへんまでさしかかったとき、建物の真上からガシャンっと石畳を割って何かが飛び降りてきた。

  裸の女性・・・ しかし体には赤い模様が入っている。長い黒い髪の間から赤い瞳を光らせていた。

 「・・あ・・・あぁ・・ ばけもの・・・」

 夫は妻を後ろにかくまい見逃してくれるように懇願した。

 「た・・ たのむ・・ おねがいだ・・ 見逃してくれ・・・ せ・・ せめて、妻だけでも・・・」

 「・・・ 見逃せ・・? 命令の意味が分かりません」

 「お・・俺はどうなってもいい・・ 妻・・ 妻は・・ 身ごもっているんだ・・ たのむ・・・」

 「・・・ 理解不能です。 私は管理者から『ここの生命活動の全停止』を指示されてます。ですので目前の二個体は停止させなければなりません」

 「本当にお願いだ・・ 見逃し・・ ぐ! あぁぁ・・・ あが・・・」

 人形は片手で男の首をつかみ持ち上げた。

 「あなたぁぁぁ!!!」

 妻が悲鳴を上げる。しかしそれに動じず人形は夫の首をじわりじわりと締め上げていった。

 「が・・・ぎ・・・ がぁ・・・」


 ─ゴキン!!─


 ・・・夫の首の骨がへし折れる音が路地に響く。それと同時にだらんと力なく垂れる夫の体。人形はもう片手を夫の体に突き刺すと一気に引き裂いた。

 血と内臓が飛び散る。 そしてへたりこんでいた妻の体を血で染めた。

 妻は唖然とした表情でその惨状を目の前で見続けるしかなかった。

 「・・・一体の活動停止を確認・・ もう一つの個体も処理します」

 「・・・い・・いや・・ せ・・せめてお腹の子だけでも・・・」

 「理解不能です」

 人形は手のひらから青白く光る光の輪を具現化させると目に見えない速さで妻の体を両断する。

 「こぽ・・・ あ・・ ぁ・」

 切断された妻の体はびちゃっと音をたてて滑り落ち石畳に血と内臓を広げた。

 「・・処理を確認・・次の個体を・・・」

 妻の生命活動が停止したのを確認し次の標的を探しに行動をうつそうとした・・

 ・・時、人形はその妻の遺体の腹部から生命活動がまだあることに気づく。

 「・・今までにない現象・・・ 個体の中に個体・・・? 停止したはずの個体の中に生命反応が」

 人形は妻の腹部に手をいれぐちゅぐぎゅとかき回した。 そして・・・

 「? 小型の生命体? なぜ個体の中に? 理解不能・・ 処理が追いつかない・・」

 内臓の中から手に取ったのはその妻の血まみれの赤子。子宮から取り出した瞬間に呼吸をし産声を上げていた。

 「・・ 個体が個体を作る・・・? 個体の中に別の個体・・ 製造する機能がある? ストレージを検索・・ 生体:人間 ・・ 繁殖・・ 生殖・・ ・・結果が理解出来ない・・ しかし、この個体は特例のと判断・・」

 いままで遭遇したことのない新しい命をまのあたりにした人形は処理・判断が出来なくなりその赤子を抱えると命令を無視し本部へもどるのだった。


 ***


 「おい、なんで戻ってきた! 作戦はどうした・・ って、おいなんだそれは!赤子ではないか!」

 「・・この個体をみてから致命的なバグが発生した模様です。個体が個体を生み出すとか理解不可能です。これはいったいなんなのでしょう」

 「人形が余計な事を考えるな。これは我ら人間の子供だ。人間は交わることによって子孫を残すことができる! おまえら人形には絶対に出来ないことだ。気にすることではない!」

 人形はその言葉を聞くと同時にビクっと痙攣させ、頭を抱え始めた。

 「・・交わる・・ 子供・・・ ・・ストレージを再検索・・ 人間・・ 男女・・ 性交・・・ 子孫・・ い・・

命・・ 新しい生命・・・ 私達には・・ でき・・ ない・・?」

 「おい、どうした」

 「・・・ あ・・ あ・・ 私は・・ 生命を・・ 奪う・・ こと・・ は・・ できるが・・ 生み出すこと・・ は・・ 

 ・・・ で・・ できない・・ 生命を・・ 生み出す・・ 私達を ・・ 超越した・・ 個体・・ を・・ 処理・・・ それは・・ あ・・ ああ・・・」

 「おい!どうしたんだ!(くそ・・バグか・・ 識別番号100046号か・・ これは破棄だな・・)」

 そして人形の手にしてた赤子を無理矢理奪おうとする上官らしき男・・・ の瞬間・・

 上官の首がゴロンと落ちた。そのまま膝をつき前のめりに倒れた。

 「きゃあああーーーーーーーーー!!」

 近くにいた女性の兵隊が悲鳴をあげた。そして他の兵隊もそれを見て焦りだし動き出す。

 「おい!停止コードをおくれ!!!」

 「ダメです!! システムに通りません!!! 異常コードがでてます!!」

 「なんとしてもとめろ!! 銃をだせ!! 銃を!! 」

 「無理ですよ!! 人形部隊に対人兵器は通りません!!」

 他の兵士がわたわたとしているのを横目でみながら人形は歩みはじめ、女性兵士の目の前にたった。

 いまの惨状をみた女性兵士はガタガタと震えていた。

 人形はそっと赤子を女性兵士に・・赤子を手渡された女性兵士は涙目で人形を見た。

 「・・その個体は人間の女性が育成するのが望ましいとデータにありました。私は私達を超越した人間を停止させてしまった。 今プログラムが私にこう処理させてます。 やってはいけなかったことだと。命を生み出す個体を止めることは許されない行動だと。」

 「私はこの行動を是正しなければなりません。部隊からは離れプログラムを整理します。私の行動は間違ってました。今までの行動を改め今まで止めてきた分新しい個体を作る方法を考えたいと思います」

 銃を構え怯えながら銃を構える兵士達を抜けその人形は自分の意思で本部を去った。

 その後、停止命令の効かなくなった人形はそのままどこかに消えてしまった。

 のちにこの人形は長い年月の間世界をさまよい続けたという。

 人の波に身を潜めながら・・・生命とはなんなのかを考え続けたのである。


 

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