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ある神の世界

彼女たちはある神の夢の中にいた

 今日も夢を見る──


 ふと、気づくと当たり一面の木々、当たり一面の緑、足元には小川が流れ、私の裸足の足が足首までつかっていた。

 しかし、不思議なことに冷たさが感じないのだ。

 それだけではない空気の冷たさも匂いも感じない。

 聞こえるのは、ただ森に響きわたる小鳥たちの囁き・・風になびく葉のせせらぐ音。


 その森のなかに一人の女性が立っていた。

 軽装の甲冑をまとい、手を木々の隙間から差す太陽を眺めていた。

 短めの髪、そして異様な白・・いや灰色の髪をしている。


 ふと私に気づいたのかこちらを見た。吸い込まれるような綺麗な灰色の瞳をしていた。

 ・・・しかしその瞳には涙を溜めている。

 しかし、彼女は私の顔をみると笑顔になり、ゆっくりと歩みよってくる。

 そして、手袋をつけた手を私に差し向けた。


 その差し向けられた手を私は私の手を重ねる。


 ── 暖かい・・・


 水も空気もなにも温度を感じなかったのに彼女の手はとても暖かかった。

 

 そして彼女とそっと目を合わせる。


 そして、彼女は私に笑顔で問いかける。


 「──────」


 ***


 そう、これは毎日私が見る夢の光景だった。

 気が付くといつも私はベッドの中、そして窓を見るとカーテンから眩い月の光が差し込んでいる。

 深くため息をつくと、姿勢をかえて、また眠るのだ。


 ─そう、彼女は私の心の・・夢の中の存在・・夢の中で命を燃やしている。

 楽しいことも、辛いことも、悲しいことも、私と共有してくる存在・・・。

 

 彼女はこれから夢の中でどこに進み、誰と出会い、誰と命を共有し、そしてこの世界を去っていくのか・・・。

 

 その綺麗な後ろ姿、涙を溜めた瞳でみせた笑顔を思い浮かべながら私はまた夢をみるのだ。




 ── 白髪をなびかせて森を走り去っていく彼女の夢を ──

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