第1話
初めての投稿です。小説を書く上でのルールなどはほとんど知りません。素人が書いてるので至らぬ点が多くあると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。ですが、コメントは気軽に書いていってください。
目の前が真っ暗だ。何もない。体が沈んでいるような感じがする。寝てしまって夢を見ているのか、そんなことを考えたとき目の前が白くなり光に包まれた。
ガクッと突然頭が重力に引きつけられて危うく机にぶつかりそうになる。徐々に意識が澄んでいき、英語の授業中だったことに気づく。
「起きたか?」
後ろから小声で声をかけられる。
肩を広げて軽く伸びをしてから声のした方向へ少し体を向ける。
「もう少しでお前の番だぞ。15ページの3問目だ」
「サンキュー」
小学校からの付き合いで親友の木浦慧が気を遣って今授業で解いているところを教えてくれた。お礼を言ってから体を戻す。すると窓から差してくる陽光が体を温かく包み、再び眠りに誘ってくるが先生に当てられるまではと気を引き締め、来たるべきときに備える。
「はぁー、やっと終わったな」
授業が終わったと同時に大きく伸びをしながら慧はそう言った。
「さっきはありがとな。助かった」
「いいよいいよ。もともと起こすつもりだったし。そんなことより昼飯食おうぜ」
慧はそう言うと、自分の椅子を俺の机の横に置いた。俺も鞄から弁当箱を取り出し机に広げて食事を始める。
弁当を食べ終えてふと窓の外を見ると、正門へと続く大通りに、昨日の雨で散り気味になった桜が咲いていた。
「なぁ、薬飲まなくていいのか?」
慧が聞いてくる。
そう、俺は病気を患っている。それは未だ世界でたった100人ほどしか罹患したことのない病気。もちろん有効な治療法や薬なんてものはない。つまり俺はもうすぐ死ぬ。
初めて医者から告げられたのは中学1年生の春のころ。最初は体育で転んでできた傷がなかなか治らないことからだった。検査を続けていくうちに大きな病院を紹介され、告げられたのは未知の病。それは「細胞の時限爆弾」と通称されている。細胞の1つが何かが原因で変異し全身に転移する。そして約2年の時間が経つと、突然転移した臓器の機能を停止させるというもの。受診時、すでに変異細胞は全身に転移していた。今まで罹患した患者が約2年でなくなったという統計から余命は2年だと告げられた。両親は余命宣告を受けてからしばらく泣いていた。でも、俺にはあまりにも唐突で漠然としていて実感が湧かなかった。それもあってか、俺は医者や両親の反対を振り切り、どうせ死ぬのなら学校に行って普通の人のように過ごしたいと言った。
それから今年で3年目。高校1年生となった。定期的に通院しつつ、痛みや吐き気などの対症療法を続けながら過ごしてきた。これまでと特に変わったことはなく、本当に死ぬのか疑わしくもなってきた。
「あぁ、ちゃんと飲むよ」
慧はこのことを知っている。おかげで色々な面で助けてくれて、迷惑もかけてきた。
「慧、いつもありがとうな」
「なんだよ今更。まだまだこれからもあるって言うのに……」
そう言つつ、その声は細くなっていった。慧は余命のことも知っている。だから、いつもは明るい性格も自分の言葉により沈んでいってしまう。
「そう落ち込むなって。まだしばらくは生きてるだろうよ」
俺は慧の様子を察しておどけてみせたが逆効果だったようでより落ち込んでしまい俯いてしまった。なんとかしなければと思考を働かせる。
「じ、じゃあ、今週末遊ぼう!どっかに行くでもいいし、お金がないならゲームでもしよう!」
俺がそう言うと、慧は自分が暗い雰囲気を出していたことに気づき、顔を上げ笑顔を作ってみせる。
「そうだな……。すまん、気を遣わせちゃったな」
「そんなことない」
俺はホッと一息し、椅子に深く座りなおす。
「慧には色々面倒かけてるしな」
「さっきの授業とかな」
「あー、あれは危なかった。もしかしたら俺の2年はここがピリオドなのかもしれないと思ったわ」
そんなふざけたことを言っているとチャイムが鳴り、昼休みが終わりを告げる。
今日も特に変わったことはなく帰宅した。最近は2年の時間が過ぎたので毎日受診することになっている。なので遅めの帰宅となった。帰宅するなり母が玄関まで不安そうな顔をして迎えてくれる。検査の結果を告げたがその表情は少し和らいだ程度だった。するとすぐに父も帰ってきた。最近は早く帰るようにしているらしい。とりあえず、玄関をあがり、入浴や着替えを済ませる。そして家族みんなで食事をしながら会話する。両親はなるべく明るい話題をと気を遣ってくれてはいたがその中に不安が見え隠れしていた。
食事をすませて自室に戻り、明日の支度をし終えてベッドに入る。週末に慧と何をしようかと考えながら眠りにつく。
そして、私は2ヶ月後に目覚めることになる。